現在、鉛筆に呼び出されたので新幹線に乗り込み故郷である金沢を離れて東京に向っている。
前世で僕は一応会社員をしていた。けれど別によくラノベに出てくるようなブラック企業という訳でもなく定時に帰れるホワイトな企業であった。なので今回のようにいきなり遠く離れた地に来いなんて言われたことは無い。
まぁ僕にとって天音永遠は前世からの推しであり、ゲームの中とはいえ臣下なのだから行くしかない。というのは建前であんな魅力に溢れた人に呼び出されたら脳死で光に集まる虫のように飛びついてしまうというのが事実である。
今世の僕は高校を卒業して動画編集で日銭を稼いでいる。僕のいたころとは違い割と一般的な仕事になっているし需要もそこそこあるので収入は結構ある。
とは言え予定にない出費のため後で鉛筆に請求しようと思う。
「同じ東京でも発展し過ぎて最早どこか分からねぇや」
東京に着いたは良いものの、記憶にある東京の街と全く違っていて困惑した。
なんだここ近未来都市かよ。広告のモニターとか3Dだしロボが配達してる。
転生した直後、金沢の街に出た時も街の発展具合にかなり驚いたものではあるがこっちはもっと凄い。科学の力ってすごい‼
こういう所を見たとき転生したんだなぁって実感する。
「てか、鉛筆に呼び出されて来たは良いもののどこへ行けば良いのやら」
「「キャアァァァァァァァ‼‼」」
なんか高校生か中学生ぐらいの女の子の叫び声が聞こえた。
何事かと思いそちらの方向を見てみると結構大きな人だかりが出来ている。
なんか人気なアイドルかな?と少し気になり遠くから眺めてみる。
見ているとどんどんその人だかりが大きくなっていく。すげぇこんな事ってホントにあるんだ。
ぼーっと眺めているとチラッと中心にいる人物が見えた。
一言で言えば美人。あふれ出るオーラ。そして女性。得られた情報はその程度。
僕はとてつもなく嫌な気がしたのですぐさまこの場所を立ち去ろうとする。
「ねぇ、そこの君ちょっと待ってよ」
後ろから声を掛けられた。女性の声だ。多分だけど中心にいた人物だろう。
いや待て、僕に声を掛けたわけではないかもしれない。と思ったけど周りには誰もいない。
さっきまで近くにいた中年のおじさんは遠くに逃げていた。くそが。
振り返りたくない。振り返ったら負けな気がする。冷や汗がヤバい。
てかあんな注目されてた人に声を掛けられるんだ。当然だけど周りからも恐ろしいほど見られている。
「無視しないでよ、ねぇランスロットくん?」
死亡確定。なんでこんなところで話しかけてくるんだよ。今日会うにあたって服装を伝えたことを後悔しつつ周りをチラ見する。
周りからは怪奇の目でみられている。いや違うような気がする。この視線はなんだ?
とりあえずどうするべきかを考えてみるも正解が全く分からない分からない。仕方があるまい、最終手段だ。
「奇遇ですね、天音さん。こんなところでどうしたんですか?僕、今日はオフなんですけれど。緊急で何か案件ですか?」
もうマネージャーに成りきるしかないのだ。これが頭の悪い僕の限界。
てかこの鉛筆、滅茶苦茶笑ってやがる。許せん。
「いやぁ、偶々ここを通ったら君を見かけてねぇ。声を掛けたって訳よ」
「左様ですか。天音さんも仕事に遅れないようにしてくださいね」
「いや、今日はオフだよ」
「」
コイツ......ふざけんなよ
滅茶苦茶ニヤニヤしてるしこの状況を楽しんでやがる。
「まぁいいや、今からお昼なんだけど一緒に食べない?」
「分かりました」
従うほかあるまい。社会的地位が僕の方が低い以上、今後の人生は彼女の手のひらの上にある。鉛筆は周りにいたファンの女の子たちに一言伝えファンの子たちと別れた。
凄いなファンの子たち、僕という異物について全然質問してなかった。
普通いやでも気になって質問しちゃうもんだと思ってたけど...
これも天音永遠というカリスマモデルの実力の一端なのか
とか考えながら彼女の後ろをついて行き辿り着いたのは高級焼き肉店だった。
店内に入り個室に案内されるやいなや自己紹介を始める。
「さて、自己紹介でもしようか。私は鉛筆騎士こと天音永遠。よろしく」
「ランスロットこと川上望よろしく天音サン」
「なんか望君機嫌悪くない?こんな美人を前にしたのにさぁ」
「僕はお前を人として認めない」
「美人云々ではなく人か否かを出してくるとは意外と鬼畜?」
「そんな事よりどうしたの?東京まで呼び出してさ」
「いや~世紀末円卓で盛大に爆発したからさ次はどうしようかなと思って。今後の相談だね」
確かに、まだシャンフロは発売されていないし次にやるゲームを決めていない。
特にやることが無いのであれば普通に「幕末」で天誅しようと思っていたけれども。
「てか、君今何の仕事やってんの?」
「動画編集とかその他諸々やってるよ」
「へぇ~、因みにその仕事儲かるの?」
「まぁそれなりには」
「ふ~ん」
少し考えるそぶりを見せる鉛筆。こいつが考え事をしているときいい事が起きたためしがないので少し身構えておく。
「うん、その仕事辞めてさ私の仕事を手伝ってよ」
「マジ?」
「マジ」
あの天下の天音永遠の下で働けるのなら一般人からしたらそれはもう天に召されるほど嬉しいものだろう。けど考えてみてくれあの鉛筆の部下だ絶対にロクな事にはならない。
しかし非常に遺憾ながら彼女の魅力にとらわれている者としてこの提案を断る事は出来ない。
「それで、手伝うのはいいけど何をすればいいの?」
「さっき自分でやってたアレ」
「???」
「マネージャーだよマネージャー」
「???」
そういう訳があって僕は金沢から東京に引っ越すことになった。
このことについて僕の両親は滅茶苦茶喜んでた。まぁ天下のカリスマモデルの下で働くんだからそうなるか
新しい物件は鉛筆と決めた。どうやら拠点として自分も使う気らしい。さようなら僕のプライバシー。
さてマネージャーの仕事なんだが前任のマネージャーの人から引継ぎを行われたときなんか滅茶苦茶喜んでくれた。どうやら鉛筆の無理難題を割とこなしていたらしい。きっとこの人で遊んでたんだろうなぁって簡単に想像できてしまった。「安心してください。僕が代わりに生贄になります」って伝えたら涙を流しながら感謝され応援された。鉛筆よお前は一体何をしたんだ。
因みになんだが僕にとってはこの鉛筆のマネージャーはやってて楽しい。
彼女に貢献していることを直で感じることが出来るし鉛筆の仕事姿を見ているのも意外と面白い。デメリットといえば鉛筆にスケジュールを完璧に把握されてしまったがこの程度なら許容の範囲内だろう。
「ランスロット、弟が最近なーんかネットゲームにハマってるらしいんだよね」
「へぇ、自己顕示欲の強い彼がネットゲームねぇ。なんてやつ?」
「シャンフロっていうゲーム」
ゲームをしている最中の何気ない会話から突如として出てきたシャンフロの名前。
最近日常生活が充実しすぎてて頭から抜けていた。
そっか、遂にシャンフロが来たのか。
「やるの?シャンフロ」
「もちろん‼なんなら今回は弟を使って遊ぼっかなー」
「ほどほどにしといてやれよー」
オルスロットくんに敬礼‼
僕も共犯だろうけど許してほしいな
鉛筆の元マネージャー(28)女
2年前に鉛筆のマネージャーに就いた不憫な女性。
憧れの天音永遠のマネージャーに成れたことに最初は喜んでいたが最初の三日でその幻想は打ち砕かれた。趣味は映画を見る事だったが、ハッピーエンドの映画を鉛筆と見た際、鉛筆作のバッドエンドの後日談を聞かされてトラウマになってしまった。基本毎日のように弄られており、多忙な日々を過ごしていた。マネージャーをやめた後は貯金を使って世界各国旅をしている。