ウェザエモンと初めて戦った時、何の因果か僕の顔に呪いなんてモノを付けてくれた。ウェザエモンを4人で倒した時に呪いは祝福に転じて僕を助けてくれるようになった。
この祝福が僕にとって良い影響と悪い影響のどっちが大きいかは分からない。仮面をつける羽目になったし顔に装備を付けれなくなった。けどこれからは感謝したいと思う。
「まずは一撃」
後半戦が始まって数秒、僕の手に持つウェザエモンから託された刀がサイガ-100の肩を斜めに切り裂く。呆気に取られたという様子のサイガ-100にさらなる追撃を与えようと切り下ろした刀を翻し切り上げようとするも飛来した従剣によって阻まれる。
「装備が変わるだけでこうも動きが変わるのか」
「ユニークを倒したいならこのくらい準備しないとな」
会話を少し交わして再びぶつかり合う。前半戦と同じくサイガ-100が積極的に攻撃を行い僕がその攻撃を捌くという構図はあまり変化していない。だが先程までとは決定的に変わった事はある。
「!」
「もう一撃喰らってくれよ!!」
サイガ-100の振った指揮剣を僕が刀で弾き再びダメージを与えんと距離を一気に詰める。脅威を感じたのかサイガ-100は何かしらの移動スキルを使いこちらの間合いから離脱する。流石にここら辺の判断が上手い。
どうして僕がサイガ-100に対して有利に戦いを進められているのかそれは祝福によるステータス強化の恩恵が大きい。特にTEC強化は僕に新しい選択肢を与えてくれた。
それが「パリィ」である。サンラク談なのだがどうやら今までの僕の弾きは「パリィ」が発生するタイミングより絶妙に早かったらしい。恐らくそれは転生特典の「殺気を感じられる能力」が理由だったんだと思う。このタイミングの問題は何度も直そうと試したけど結局無理だった。しかしココで現れたのがこのTEC強化、コレのお陰で補正がかかり早いタイミングで弾いても「パリィ」が発動するようになったのだ。
「これからは剣聖最強じゃなくて蛮族最強時代じゃぁ!!」
「抜かせ!!」
お互いに残り体力を意識するぐらいの終盤になり始めたので我先に少しでも削ろうと攻撃の手が熾烈化する。サイガ-100の操る5本の従剣が僕に雨のように上から飛んでくる。彼女が今操っているのはインペリアルファイブと呼ばれる自信にバフをかける剣なので剣の種類を見極めずとにかく当たらないことに専念する。刀で弾き身体を捻り、地面に転がる。無様かもしれないがこうもしないと避けられないので仕方があるまい。
何とか剣を全部避けきったので次はこっちの番だとサイガ-100の方向を見るもそこには姿がない。その瞬間首筋に嫌な予感がする。
「セ、セーフ!!」
「戦いの最中に敵を見失うなど随分と余裕があるようだな」
「余裕ありそうに見える!?」
後ろに現れたサイガ-100の首を胴から切り離そうとする攻撃を前転ことで紙一重の所で回避してそのまま勢いで起き上がる。すぐさまサイガ-100の方へ向き直し追撃してくるサイガ-100を向かい受ける。
「パリィ」を警戒してか指揮剣からでは無く従剣から飛ばしてくる。僕としてはサイガ-100が手に持つ聖剣エクスカリバーが一番怖いし、絶好のカウンターの機会でもあるので従剣での攻撃をある程度見逃しながら警戒をエクスカリバーに集める。
サイガ-100の指揮剣での攻撃がなかなか来ないことに少しイラつきながらも我慢してその機会を待つ。
「どうしたまた防戦一方か?」
「」
サイガ-100の従剣を捌きながら彼女からの口撃はスルーする。このゲームでの「パリィ」は発生したときその対象を約2秒の硬直を与える。従剣にも「パリィ」は発生するのだがたった2秒硬直した所では次の剣を相手にし終わったころには硬直は終わりこちらに飛んでくる。サンラクみたいな二刀流ならまだしも今の僕には無理だ。という訳で適当なこと言ってんじゃねぇという意味を込めてサイガ-100の方を睨んでおく。
残りの体力が3割を切り逆境系のスキルが発動する。ステータスが更に強化され動きがさらに良くなる。先程までより余裕を持って対応出来るようになった。これなら案外余裕かも...
「クソが!!」
「迸る雷律」
と思った矢先にこの状況を一手で変える魔法がサイガ-100の左手から放たれる。直前に感じ取った僕は回避しようと体を捻るもサイガ-100に妨害され当たってしまう。体が「痺れ」の状態異常にかかり一瞬の硬直状態に陥る。
硬直状態は一瞬とはいえこの隙は近距離間合いでは勝負を決めるのには十分過ぎる時間になる。
「存外長い時間耐えられたがこれで決める!!従剣劇「独奏」・至高の一閃」
剣聖が最初に覚える技であり奥義のスキル。飛ぶ斬撃が凄まじい速度でこちらに向かってくる。このスキルは指揮剣の使用歴が長いほど威力が上がるので恐らく僕の残り体力は余裕で消し飛ばせるだけの威力はあるだろう。
「痺れ」による硬直が解けたが斬撃はもう目前、底上げされたステータスでも回避することは不可能。一歩前へと踏み出し自らその斬撃を喰らう。コレで僕の負けとは決まった訳では無い。
「食いしばりは勇者の専売特許じゃねぇんだよな!!」
「それは理解しているさ」
前へと踏み出した一歩に力を込め刀を鞘に納め居合を打つ準備をする。一方のサイガ-100も僕の職業に「死兵」系の職業が入っている事から削りきってなお動きを止めないことを理解していたのだろう、既に迎撃の態勢を取っている。初披露なんだ、勝てないと困る。
「致命刀術【鎧袖一触】」
僕が習得した致命系のスキル、高速で刀の間合いを居合する技であり相手のHPが30パーセントをきっているとダメージに補正がかかる。今の状況なら補正の条件は間違いなく達成される。
サイガ-100の操る5本の従剣が僕を止めるべく襲いかかってくるがそれらを温存していたブリンクスキルで回避して一撃を放つ。
「死ね、サイガ-100」
確実に当たった刀はサイガ-100の体力を全損させたが未だにポリゴンとは化していない。あぁコレってアレかぁ
「流石に負けたと思ったよ」
「食いしばりかよ、クソ職業がよ!!」
スキルを発動させたあとの硬直で丸腰の僕は簡単にやられてしまう状態にある。首に対して殺気が物凄いする。
「これで終わりだ、ランスロット」
振り下ろされた剣が僕の首を斬る。コレで僕の負け、多分周りで見てるほとんどのプレイヤーがそう思ってるんだろ。けど蛮族ならやっぱ死に際が華だろ。
「こっからがボーナスタイムじゃぁ!!」
職業「死騎士」はデスした時に確率食いしばりの効果は付いていない、「死兵」の時と変わらずデス時に少しの時間行動が可能なだけだ。食いしばりが発生したのは「蛮王」の職業スキル、「蛮勇王威」。これは一定確率ではなく30分の間に何人キル出来たかで確率が変動する。今回の場合はサイガ-100の前に3人殺しているので75パーセント、当たらなかったらゲームを辞める確率だ。
という訳で今から少しの時間は無敵のゾンビ兵だ。
「ガンガン行くぞ、サイガ-100」
「クッ」
互いの距離は殆どなくどちらも得物の間合いにある。サイガ-100は剣を使い距離を取ろうとするがそれを許す気は一切ない。
「蛮族なら傷ついてなんぼだろ」
「近づいて来るな!!」
指揮剣を使い牽制してくるサイガ-100を前に一切引くことなく距離を詰める。サイガ-100はリアルで護身術を納めているし鯖癌仕込みの喧嘩体術じゃ分が悪いかもしれない、だが知った事か蛮族なら恐れるにあらず。
「武士だって体術使うんだから蛮族みたいなもんだろ!」
「何を言っているんだランスロット!?」
口での攻撃を織り交ぜながら初見殺しを狙う、ここでアレやってみるか。刀を下ろしゆっくりと近づく、視線が集中しているのが分かる。
パアァァァン
武器から手を離し意識がそちらに行っている瞬間に猫だましをかます。そう暗殺教室のアレだ。硬直状態に陥たこの機会を逃すことなくサイガ-100の態勢を崩す。そのまま馬乗りになり顔面をぶん殴る。ただステータスに身を任せた攻撃、ダメージも殆ど通っていないが関係ない。とにかく殴る、サイガ-100の反撃も気にせず殴る。
絵面は酷いかもしれないが僕は蛮族なんだ。そう言い聞かせて殴る。
「死ね!!」
「調子に乗るな!!」
僕の拳とサイガ-100の反撃の拳がお互いの顔面に突き刺さる。サイガ-100の体力は残り1割ちょっと、対して僕のボーナスタイムは5秒程度。あぁコレは無理だな、そう思いペンシルゴンの方を向くと笑顔で首を切るジェスチャーをしてくる。なんか笑みが浮かんできてしまい最後の一撃を思いっきりサイガ-100に放つ。もちろん体力は削り切ることが出来ず僕はポリゴンと化す。
あぁ楽しかったぁ