鉛筆騎士の腹心   作:姉小路

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早めに


まだ染まる前

あのあと対抗戦は後続組がちゃんと拾ってくれた事で終了した。ただ京極ちゃん、あんなにイキって負けるのはちょっと...ま、まぁ「ランスロットの仇取らせてもらうよ」ってセリフは嬉しかったけどさ、開幕特攻は特殊な訓練を受けた人間にしかできません。一般人は従剣に蜂の巣にされて終わりだから。僕が変に避けたから行けそうだと思わせてしまったのかもしれない。

 

「それで?何か言い訳はあるかい望クン?」

 

実は京極ちゃんの事は凄くどうでもよくて、今凄く危機的な状況に陥ってる。それは対抗戦前に永遠に言われた「全部殺って来い」という約束という名の命令。それを惜しくも達成できなかった訳で、今はその言い訳タイムに突入しようとしている。

 

「だいたいさぁカッコつけて了解とか言ってたけどモモちゃんに負けてる時点で京極ちゃんと何ら変わり無いからね」

 

「うっ」

 

「更に言うと最後の方モモちゃんに馬乗りになって喜んでたよね?おねーさんそんな子に育てた記憶はありませーん」

 

「その言い方は語弊があるだろ!!」

 

「でも満面の笑みだったじゃん」

 

「それは...そうなんだけど」

 

この魔王に口で対抗しようとした事が間違いだったのかもしれない。実際試合のあとリプレイを皆で見たのだが馬乗りになった後のあくどい満面の笑みをしていて本当に恥ずかしかった。なんであんなに笑ってんの?何かいつもあんな顔をしてるらしい、気をつけよ。

 

「取り敢えずなんか罰を考えよっか」

 

「軽いので頼む」

 

せめてもの思いで罰が軽いものになるようにお願いしておく。重いものだとスケジュール確保して来いとか言われるから本当にキツイ。自身がカリスマモデルって事が分かって言ってるんだからたちが悪い。今回もその手の類にならない事を祈ることしかできない。

 

「うーん別にコレと言ってやってもらいたい事は無いんだよね...あっ!」

 

何かを思いついたかの様な顔でこっちを見てくる永遠、絶対録でもない事でしょ。悪い顔をしてらっしゃる。

 

「今度私の動画に出て」

 

「ん?ソレって罰になんの?」

 

「そりゃ個人情報をネットの海に流すわけだからねぇ」

 

「そういうもんか」

 

「そうそう深く考えないで、適当でいいからさ」

 

こういう流れで僕は永遠の動画に出ることになった。カリスマモデルである天音永遠はその人気から当たり前のように某動画配信サイトで動画を公開している。内容は様々でありコスメ系の動画だったり撮影風景の動画が多い。何か特別な事をしている訳では無いのに再生数が多いのは彼女のカリスマと努力の結果だろう。少なくとも僕はあのスタイルで売れてる人をみたこと無いしな取り敢えず今日はオフなのでシャンフロでは無く違うゲームに潜ろうと思う。

 

「いざ幕末へ」

 

VR機器を取り付けて幕末の世界ヘと入っていく。前にインしたのも結構前だからな久しぶりの幕末に心が躍る。

 

「「ログボ天誅!!」」

 

「相変わらずだなぁ」

 

アバターが形成されたその瞬間を狙い奇襲をかけてくる二人組を焦ることなく切り払う。基本ログボ天誅組は攻撃全振りで襲いかかって来るのでこちらが先に相手を切れば訳無い。ポリゴンになったことを確認してから直ぐ様思考を切り替え次なる刺客に備える。

 

「「仇討ち天誅!!」」

 

「お前らやっぱアホだよ!」

 

次にやってくるのは仇討ち天誅組、別に仲間でもないのに仇討ちとか言ってこちらに襲いかかって来るヤバい奴ら。相手にしている所、そこまで実力があるわけでは無いようなので漁夫の利が来る前にパッパと終わらせてしまいたい。先行してきた一人の攻撃を刀で受け流しそのまま動きの鈍い後ろにいる二人目を切り捨てる。仲間が先にやられて焦った一人目が襲いかかってくるも先程よりも隙だらけである。落ち着いて攻撃を捌いて心臓を突き刺す。

 

「お前らの装備も一応質屋に流しとくからな、天誅」

 

「本当に感謝する」

 

斬られた奴は涙を流しながら死んでいった。一般人ならそんなにロストが嫌なら装備しなきゃいいのにと思ってしまうだろうがココは幕末、常識が通用するわけがない。みんな天誅がしたくてしょうがないんだ。

 

「天誅する気分でもないし茶屋町の方にでも行ってみるか」

 

幕末だってこんな魔境になる前までは普通だった訳で茶屋町ぐらいは存在している。なんか食べ物でも食べよ〜と思いながら取り敢えず質屋へと行き先程手に入れた装備たちを売り払う。ぼちぼちの金額になったので目当ての食事処を目指す。道中で僕に挨拶してきた人に挨拶仕返しつつ予定よりかなり時間を使って食事処に着く。

 

「婆ちゃん、うどんお願い」

 

「あいよ、ちょっと待っててね」

 

僕が注文すると店主の婆ちゃんは台所の方へ入っていった。中心から少し離れているので少し遠くから喧騒が聞こえてくる。食べ終わったらあっちにでも行ってみようかなと思っていると僕の前に人が立つ。

 

「こっちでは初めてだねランスロット」

 

「ん?なんで分かったの、京極ちゃん」

 

「いや、そんな顔と髪色してるの君だけだよ」

 

サンラクによって幕末に送られた京極ちゃんである。挨拶と同時に襲いかかって来ない当たりまだ幕末に染まりきってはないらしい。こんな時期もあったのかと感慨深くなる。

 

「それで?こんな街の外れまで来てなんか用?今からうどん食べるから忙しいんだよね」

 

「まぁ急ぎでもないし食べてからで良いよ」

 

出てきたうどんをズルズル啜る。目の前の席に座る京極ちゃんはお茶を飲みながらこっちを見ていたので食べるか?と聞いたがいらないらしい。食べたいって視線じゃ無いのか。

 

「早速だけど僕と対戦してくれないか」

 

「OK、やろう」

 

特に対戦を断る必要がないので快く受け入れる。店から出て互いに距離をとる。本来の幕末では殆ど起きない正面でのタイマンが始まる。

 

「君が仲間だからって容赦しないよ」

 

開始の合図は京極ちゃんの攻撃によってされた。術理に適った綺麗な太刀筋、幕末はちゃんとした剣術を使ってくる人は少ないので新鮮な気持ちになる。冷静に京極ちゃんの剣撃を捌きながら様子を見る。

 

「ちょっと攻め手が足りないんじゃない?」

 

「防戦一方の奴に言われてもっ!」

 

僕の煽りを受けて熾烈化した京極ちゃんの攻撃を焦らずに対処していく。突きをステップで回避し横薙ぎを刀を使って弾く...一通り京極ちゃんの攻撃を見たな、と思ったタイミングで攻撃に転ずる。京極ちゃんの袈裟斬りをギリギリの所で一歩後ろに下がることで回避をし、その後すぐに素早く一歩を踏んで下から斜めに斬り上げる。

 

「次はこっちの番ね」

 

「!」

 

ビックリした様子で回避した京極ちゃんに返答させる間もなく次の攻撃に出る。斬り上げた刀を再び構えることなく上から振り下ろす。悪い体勢のなか何とか受け止めた彼女を前蹴りで吹き飛ばす。追撃をしようと思い走り出そうとするも嫌な予感がしたのでやめておく。

 

「なかなかやるねランスロット、でも追撃しないなんて甘いんじゃない?」

 

「まぁ突っ込んでカウンターもらっても怖いからな」

 

「フフフ流石ランスロット、気づいていてたか」

 

追撃にカウンターをしようとしていたらしい彼女だが僕の感じた嫌な予感は殺気では無い。長年の幕末ライフで培ってきた経験が警鐘を鳴らすタイプのやつである。なにか来る!と思いながら目の前にいる京極ちゃんと睨み合いをしていると突如として京極ちゃんがいた方の建物が爆散した。あえてもう一度言おう爆散したのだ。

煙が晴れて出てきたのは京極ちゃんではなく全く異なる男、京極ちゃんは見た感じどこにもいないしデスしたんだろう。

 

「あれ、久しぶりじゃん槍杖」

 

「お前はいつもタイミングが悪いよな」

 

「あ?喧嘩か?」

 

出てきたのは総合ランキングだいたい5位の男、紅蓮寧土である。爆破魔であるこの男は火薬を拠点に溜め込むのでなんかあると時々今回みたいな爆発が起きる。あの爆発は分かっていても避けられないので何回か僕も食らったことがあるがかなりムカつく。多分京極ちゃんも今頃色々な感情が一周してから苛ついてると思う。まぁそんな事は置いといて取り敢えず、

 

「紅蓮寧土、覚悟せよ仇討ち天誅!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後熾烈な戦いの末にランカーたちによって漁夫の利され、高位ランカーたちによる漁夫の利合戦と化したのであった。




SNSで話題のイケメンマネージャーについて

超人気モデルのプライベートを漁っても出てくる男性関係の話はただマネージャーだけ、ファンの中では有名である。ただマネージャーの顔が良すぎるので人気モデルの新規ファンが生まれた際は一定数マネージャーのファンに変わる。
マネージャーのメディア露出は人気モデルを口でしか語られる情報しかないので世間からミステリアスな人物だと思われている。
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