ペンシルゴンと2人でお買い物したのも数日前、今ではすっかり船の上にいる。この『坂東丸』に乗っているのは主に『旅狼』の面子であと少しすれば新大陸に辿り着くという目と鼻の先ほどまで接近していた。
話で聞いたNPCの船での渡航よりはかなり早いペースでここまで来れていると思う。
「もう目視出来る距離まで来てるし楽しみだな新大陸」
「ま、向こうに行っても色々やる事があるんだけどね」
僕の何気ない独り言に反応してくれるのはペンシルゴン。その姿はどこかウキウキしているようにも見える。多分コレから起こるていうか起きている嵐をいかに荒らすかが楽しみなんだろうな。少し他人事に見えるかもしれないが僕も楽しみではある。文字で見て想像したことはあったが実際に目にするのとは別である。思ってたより微妙だったこともあるがそれ以上に想像より良かった事のほうが多い。そんな訳で今回の新大陸もかなり期待している。
「この船で始めて来たんだけど何処に停めればいいー?」
「奥から二番目にある停泊所に止めておいてくれ、登録は船を止めたあとにこの建物受付で出来るからしっかりやってくれよ」
「ありがとう」
僕からの質問を丁寧に答えてくれたNPCに手を振り進路を変更して指定された場所へと舵を切り船を進める。船が止まった停泊所を見ると設計から建築まで計算されたようにはとても思えない急造されたばかりという雰囲気が出ているがコレは開拓者の気分になれて中々に良いものである。
一同で船を降りた後それぞれの用事のため一度ここで解散することになった。僕は取り敢えず先ほどNPCに言われた受付に向かって『坂東丸』の登録を行う。
船名に停泊予定期間、金額確認など必要か分からないような事も入力する。5分ほどの入力を終えて金を支払ったあと停泊所を出るとペンシルゴンが待っていた。
「どうした?何か暗躍するんじゃなかったの?」
「まぁ急ぎでもないから待とうと思ってね、それにランスロットにも協力して欲しかったし」
「ん?協力って何すんの?」
僕の参加するという言葉を聞いてペンシルゴンはニンマリと悪い笑みを浮かべインベントリから一つのアイテムを取り出す。彼女の手にあるのは最近使ったので見覚えのある青聖杯、僕も有無を言わされず性別変更を行った。
「さて、サンラクくんの目撃情報のあった広場の方まで行こっかお嬢様」
「もしかして僕も普段からそうするべき?」
ペンシルゴン先導のもと何やら騒ぎが起きて人集りができている中を突っ切って行く。進むときに周りからの視線を感じるがきっとコレが普段からペンシルゴンが体験している感覚なんだと思うと嫌ではない。
そんな人集りの中を進んで行くと中心までやって来た。周りの視線を一身に集めているのは半裸で鳥頭の男、ではなく黒衣の女の子と一人の騎士。女の子は一見可愛らしい姿をしているが戦っている動きを見れば中身がサンラクであるとすぐ分かるだろう。
「足癖が悪くて御免遊ばせ」
「ふぎゃぁ!?」
戦いの最中サンラクが足技を使い相手の騎士を転ばして地面へ這いつくばらせる。コレによってサンラクの勝ち、後はコレから騎士をどうしようかという段階に入るのだろう。
「行くよランスロット」
そんな状況の中でペンシルゴンの一言を受けて事前の打ち合わせ通り今度は僕が先頭を歩き群衆の真ん中へと進む。歩き方のイメージは映画で見た貴族のお嬢様、後ろから付いてくるペンシルゴンに負けないように自信をアピールする。
「お話は聞きましたよ、黒衣のお嬢さん」
「うわっ」
なるべくそれっぽく言葉を並べて優しく笑みを浮かべる。僕の言葉に振り返ったサンラクのなんだコイツらって顔をするが一瞬の間のあと表情が変わる。
「あとは私の執事に任せようかしら、お願い出来る?ペンシルゴン」
「分かりましたお嬢様、ということであとは私に任せてもらおうかサンラクくん?」
「な、何でここにお前ら二人がいるんだよ?予定ではあと2日はかかるって話だったろ!?」
「知ってるかいサンラク、プレイヤーメイドの船って結構いい性能してるのよ」
「そんな事知らねぇ!あとその気持ち悪い言葉使いをやめろよランスロットぉ」
まぁ元々はフィフティシアに戻らずルルイアスから直接ここまで来る算段だったんだからそれに比べたらよっぽど現実的だと思うけどなぁ...なんだよ餓死したら蘇生のデスマーチって。
「ということでコレを踏まえて君に選択肢を提示しよう第三騎士団団長のユリアン殿?」
戦っていた騎士ことユリアンの口から語られる第一王子のクーデター、森人族を始めとした新大陸の亜人を奴隷にする等といった征服者的思考をする第一王子の行動に現代的な思考を多くの人が持つプレイヤーたちは否定的な意見が多い。そんな状況にもあって第一王子派閥のユリアンは完全に孤立する形となった。
幸いプレイヤーの中にユリアンを始めとした第三騎士団の人々を虐殺しようとする者はいなかった。だがゲス顔で弄ぶ悪魔は居るわけである、そう我らが女王様だ。
「さぁ最後の一人になるまで樹海の主に突っ込むか私たちの用意する小舟に乗って旧大陸まで帰るか、騎士団長殿の好きな方を選ぶといい」
「げ、外道め!!」
知ってる知ってる、そう思いウンウン頷くのは俺だけではなく他にも数人、というかサンラクとカッツォが頷いていた。やっぱりあの二人は直接浴びることが多いしユリアンの気持ちに共感出来るんじゃないかなと自分のして来た事に背を向けながら可哀想にと同情しておいた。
「旅狼」の人達からの蛮族ちゃん評価
・初見で見抜くことの出来なかった自分が悔しい
・もう俺の事をとやかく言えないな!!
・え、アレがランスロットさん?い、良いと思いますよ...
・とっても可愛らしかったです!!!!
・街で横を通ったら目で追っちゃうんじゃないかな
・多分私より女の子の服に知識があると思う
・へぇ、ランスロットって女装趣味があるんだ...
・容姿より動きが上手いからそれっぽく見えてるんだと思うんだ。やっぱり今度リアルでもやってもらおうかな?