天音永遠という極悪非道な女に騙されて心が傷ついた次の日、二人でシャンフロにログインした。
やはりというかなんというか彼女のプレイヤーネームは鉛筆騎士ではなくアーサー・ペンシルゴン。
顔はリアルのまんまだが一から作っているというから恐れ入る。
彼女のレベルは34、僕のレベルは26。昨日、エリアボスである蛇を倒したのにまだこんなにレベル差がある。一体何をしたらこんなにレベルが上がるんだよ。
「それで、今日は何すんの?」
「サードレマにある歓楽街らへんで弟がイキってるらしい」
「なるほどね」
最後まで明言しなかったけど多分いじめに行くのだろう。
いや、あの顔を見る限り多分じゃなくて絶対か...
可哀想にオルスロットくん。姉から逃れたいというのに完全に捕捉されている。
てかサードレマに居んのか結構前に始めたはずなのに全然進んでないな。
彼、自己顕示欲が凄いから格下プレイヤーに強く出てんだろうなぁ。
「じゃぁ行くか」
早速セカンディルを出てサードレマに向かう。
道中は沼荒野であり移動の際阻害されるだるいマップである。
割とリアルの干潟で足を土に取られる感覚だから少しイライラする。
その後、それなりの時間歩いて移動したとき地面の中から勢いよくエネミーが飛び出して来た。第二のエリアボスである。
確か「泥堀り」。たしかなんか土竜みたいなやつだ。なんかキモイ。
「ペンシルゴン、僕一人にやらせてよ。経験値が欲しい。」
「まぁ、いいけど。死なないでよ」
許可が貰えたので武器を手に取り合えず突貫して斧を胴体めがけて振ってみる。
けれど泥堀りは地面に潜ってしまい攻撃は当たらなかった。
てか沼地なのがエグイ、走れないし移動に時間が掛かる。
「シギィィィィィィィ」
泥堀りが土の中から飛び出してきて嚙みつきいや、かみ砕き攻撃をしようとする。
こっちは沼の上にいるため移動できないから受けるしかない。
てか動けないならスタミナ値使わないんじゃね?
そんなアホみたいな考えに至り兜割を発動させる。
「死ね‼」
斧を横なぎにし命中重視で泥堀りに兜割を放つ。これがTECステの恩恵。スキルの縦振りと横振りを選択できるというもの。
使えると案外便利で今回みたいに縦切りの兜割を横切りで使える。
「流石にこれだけじゃ倒せないか」
胴体を狙い放ったが運よく急所に命中したらしくクリティカルだったらしい。
それでもHPを半分以上削ったが全損させるには至らなかった。
ホントは追撃したいがスタミナが無いのでそれも叶わない。
泥堀りが再度こちらを攻撃しようと土の中に潜り進んでくる。移動もできないしスタミナも兜割を出すほどはない。
その事を察知したのか泥堀りは嬉々として近づいて攻撃しようと近づいてくる。
スピードを上げて突進をしようとしてくる。
「ヴオオオオオオオォォォォォォォォォ‼‼‼」
「シギィィ」
近づいてきたタイミングを狙い咆哮を使用し泥堀りを硬直させる。
多分僕のレベルが低いからそんなに効果時間は長くはないけれどもスタミナを回復させるには十分な時間。
力を振り絞り頑張って距離を詰め泥堀りの顔面にリキャストが終了した兜割を叩き込む。
スタミナがさっきより少なかったので与えたダメージは少なく少しHPが残ってしまった。
泥堀りは焦って再び泥の中に逃げようとしていたので落ち着いて狙いをすましゴブリンの斧を投擲する。泥に潜る直前さっき当てた兜割で鱗が剥がれた部分に命中しクリティカルが発生する。
結果、泥堀りのHPは全損しポリゴンとなって消えた。
やっぱりボス経験値独り占めは気持ちがいいなぁ」
今のでレベルが三つぐらい上がった。早くペンシルゴンに追いつきたいのでこれからもどんどん狩っていこう。
てかTECもっと上げたいな、そしたら斧でのガードがしやすくなって生存率があがりそう。
「やっぱ頭おかしいよランスロット、自分からスタミナ全損させるなんて私だったらそんな賭け絶対しないね」
「ありがとう、頭おかしいは蛮族にとって誉め言葉だわ」
確かにスタミナ全損の状態で敵前にいるのは結構絶望的な状況だもんな。
咆哮が強いスキルで助かった。まぁ多少傷ついても蛮族なので問題なし。
「エリアボス倒したことだしさっさとサードレマまで行っちゃおう!格下にイキってる弟にお仕置きしなければ」
「オルスロットくん南無三」
「おいっそこのお前‼誰の前を歩いてるんだ、俺は高レベルプレイヤーだぞどけ‼」
「それ僕に言ってる?」
サードレマに着いて数分、自己顕示欲の塊ことオルスロットくんを探すためペンシルゴンと別れ彼を探していた。途中で彼が格下プレイヤーに強く出ることを街にいたプレイヤーに聞いたので装備を初期装備に変更しオルスロットくんを誘い出すことにした。
すると5分も経たないうちにまんまと現れ声を掛けてきたという訳である。
なんていうか鉛筆に比べて三下感が凄い、ほんとに兄弟なのかを疑いたくなるレベルだ。
「当たり前だろ‼お前みたいな低レベルな奴がこの辺をウロチョロされると俺の邪魔になるんだよさっさとどっかに行きやがれ」
「それ素で言ってんなら凄いな」
「あぁ!?」
威嚇するように声を荒げてこちらを睨みつけてくる。
凄い‼典型的な三下だ‼ここまでくると一種の感動すら覚える。
「そんなに強いって認めさせたいならPvPでもする?」
「ハッ‼お前みたいな雑魚が俺に勝てる訳ねぇだろ、やってやんよ」
という事でPvPをする事となった。
モードはHP半分まで削られたら負けのモード。
オルスロットくんは勝ちを確信しているらしく滅茶苦茶ニヤニヤしてる。
この笑みはなんとなく鉛筆の面影を一応感じる。多分本人に言ったらどっちにも怒られそうだけど。
PvP開始の合図が流れる。開始の合図と同時に僕はオルスロット君との距離を詰めて彼にインファイトを仕掛けに行く。一方オルスロットくんはまさか格下が自ら飛び出してくるのは予想外だったのか対応に遅れている。
駄目じゃないか、格下でも油断したら簡単に喰われる。蛮族じゃぁ常識だぞ。
「クソがァ‼」
怒りに任せて剣を振るうオルスロットくん。
しかし密着するほど近くにいる僕には中々剣を当てることが出来ない。
僕は彼の剣を最小限の動きで避けカウンターを大振りで隙だらけになった胴体に打ち込む。
殴られた衝撃で行動が遅れているオルスロットくんに対してそのまま前蹴りを加える。
そのまま僕の打撃に耐えられなかったオルスロットくんを一方的に殴ったり蹴ったりラリアットを決めたりした。最終的には顔面に膝蹴りを喰らいオルスロットくんは負けた。
試合が終わり落ち着いてからオルスロットくんはかなり荒れていた。
「なんでこんな奴に俺が負けるんだよ‼」
「それは君が弱いからだよ」
「うるせぇ‼チート使いやがって‼」
遂にはチートを疑われ始めた。流石にそれはダメだろ...
まぁもう少しで鉛筆来るだろうし放置でいっか。
「随分と騒がしいね、オルスロットくん」
「あぁ!?誰だオマェ、うざい顔しやがって」
「忘れちゃったの?おねえちゃんのこと」
「」
その言葉を聞いた瞬間オルスロットくんの顔が青ざめる。
あんなにうるさかったオルスロットくんが秒で静かになった。
あーあ、うざい顔とか言っちゃたね。僕にはフォロー出来ない。ドンマイだ。
そうしてこの日からオルスロットくんは常に緊張しながらシャンフロをする羽目になった。
スキル:『咆哮』
一定範囲内にいる生物を硬直させる.
相手とのレベル差で硬直時間が変化する。
スタミナ消費が無いスキルなので使い勝手はいい
このスキルはパーティーメンバー以外すべての存在に有効なためレイド等には適さない。
100デシベル以上の声量で叫びなおかつデータの塊である敵エネミーをビビらせる必要がある鬼畜な取得条件。
主人公は蛮族パワーというご都合主義で手に入れた。