鉛筆騎士の腹心   作:姉小路

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新月

セツナからユニーククエストを受注してから今日までの期間、僕と鉛筆はレベル上げやアイテムの収集をひたすら行った。

結果から言うと成果をしっかり得ることが出来た。二人とも強い武器やアイテムを得ることが出来たし鉛筆に至っては勇者の職業に就くことに成功した。羨ましい。

ここまで準備していても対ウェザエモンとならと万全とはお世辞にも言えない。

しかしもう新月は明日に迫っているのでこれ以上なにかを手に入れることは難しいだろう。

 

「とうとう明日か...果たしてどうなる事やら」

 

「準備段階では全力を尽くした。けれども「黒狼」からリュカオーンの話を聞く限り心配しかないね」

 

「珍しく弱気じゃん、ペンシルゴン」

 

「私だって緊張はしないけれど心配にはなるよ人なんだし」

 

コイツ本当に鉛筆か?いつもの完璧人間‼みたいな鉛筆じゃなくて人間味を感じるこの鉛筆、流石に可愛すぎる...

こんな事を考えているが僕もウェザエモンとの戦いがどうなるのかは予想がつかない。

僕たちのPSや準備がどのくらいヤツに通じるのか、それを確かめることが出来るだけでも価値はある。前は負け確だからやりたく無いって思ってたけど今は格上と戦えることに期待をしている。

自分がどこまで原作でも屈指の強者に戦えるのか、楽しみだ。

 

「まぁ今日は早い事休んで明日に備えよっか」

 

「そうだな、このままシャンフロでダラダラしているよりは明日に備えた方がいい」

 

「じゃぁ、おやすみランスロット」

 

「おやすみアーサー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、朝早くから家を出て永遠を迎えに行く。

いくらウェザエモン戦の日と言っても今日は平日、普段と変わらず仕事がある。

僕と永遠はTV出演や撮影の仕事をこなしていく。

けれど天下一のカリスマモデルの永遠であっても流石に今日は仕事に集中出来ていないらしい。いつもなら完璧にこなしている仕事も所々ボロが出ている。まぁ本当に少しだから周りの人は気づいてないだろうけど...

今日の仕事である雑誌のインタビューを午後一で終わらせて僕たちは速攻で家に帰りVRを付けてシャンフロの世界に入る。

 

「さぁ、とうとうこの日が来てしまったよランスロット君」

 

「どうなるかは分からないが全力を尽くそうペンシルゴン君」

 

最後に落ちた宿屋から二人で出て目的の千紫万紅の樹海窟へと向かう。

道中は他のプレイヤーに付けられていないか細心の注意を払う。

その途中、数人のプレイヤーとすれ違ったもののウェザエモン目当てでは無さそうだったので安心。

二人で小道を抜けて例の彼岸花の花畑に出る。花畑は前回見たとき同様素晴らしいものだがその中心の空間に亀裂が入っている。

 

「セッちゃんの言ってた時空の歪み、多分だけれどこれの事だよね」

 

「うん、これを通ればウェザエモンとの戦闘だと思う」

 

「じゃぁランスロット行こうか」

 

「了解、何があっても守ってやるよペンシルゴン」

 

「それ自分で言ってて恥ずかしくならない?」

 

「うっせ」

 

二人で一緒に空間の亀裂に飛び込む。その時世界は反転する。

眼を開けるとそこは僕たち二人が先ほどまでいた花畑を反転させたような場所だった。

地面は植物を一片も残すことなく消滅しており、そらは白い夜空に黒い星々が浮かんでいる。

そして一本だけそびえたつ木の元には一体のロボ武者が居座っていた。

 

「多分だけどアレが...」

 

「なんか想像してたよりずっとロボットって感じ」

 

僕たちは動かないウェザエモンに警戒しながら近づいていく。

中々動かないウェザエモン、距離が数メートルの所まで来ても動かない。

僕たちとの距離が刀の間合いに入ったその瞬間ウェザエモンが動き居合の構えを取る。

その瞬間、前世の記憶と体が僕に避けろと警告してくる。確かヤツの一撃目は...

 

「断風」

 

頭で思考する前に体が動き出していた。僕はペンシルゴンを守るために体を押し倒して態勢を低くさせる。

その直後凄い勢いで頭の上をウェザエモンの刀が通り過ぎる。

次の攻撃までの時間は殆んどないはず、マズい‼

 

「ヴオオオオオオオォォォォォォォォォ‼‼‼」

 

俺の持っているスキルの中でも利便性が上位に位置するスキルである『咆哮』を『蛮族の闘志』というバフスキルと合体させた新スキル『蛮族の咆哮』を使用する。

効果を簡潔に説明すると『咆哮』の上位互換。レベルに関わらずにスタンを1秒与え、自身にバフを掛けるスキルである。

ウェザエモンの動きが一瞬硬直するその瞬間にペンシルゴンを連れ刀の範囲内から一気に離脱する。

 

「助かったよ、てかよく避けられたねランスロット」

 

「守るって約束したからな‼あと多分死ぬから蘇生よろしく‼」

 

短くペンシルゴンと会話をして再びウェザエモンに対して戦いを挑みに行く。

僕はウェザエモンとの間合いを確かめながらゆっくりと近づく。

僕との距離が間合いの範囲内になった瞬間、ウェザエモンが上段の構えから刀を振り下ろしてくる。

その攻撃を考えるよりも先に体が動きスレスレの所で回避に成功する。

次の攻撃が来る前にバックステップを踏み後ろに下がる。

一拍置いてから目の前をウェザエモンの横なぎが通り過ぎる。

コイツの攻撃速度、早すぎんだろ‼まともに考えながら戦ってたら速攻で殺される‼

そう思い戦線離脱を試みるも高速の突きに気づかず腹を貫かれてしまった。

その直後ペンシルゴンによって宝珠が投げられて生き返る。

コレ時間だと分かってても耐えることは出来るんか?

死んだ位置がウェザエモンの間合いの範囲内だったため蘇生された直後、斬撃が飛んでくる。まっずい。

 

「ヴオオオオオオオォォォォォォォォォ‼‼‼」

 

スキルが溜まったので『蛮族の咆哮』を発動。

ウェザエモンがスタンし一瞬隙を晒す。この間に僕は態勢を整えて攻撃に備える。

なんだか嫌な気がするなぁ

 

「断風」

 

スタン後の第一行動は高速の居合。

なんとなく嫌な気配はしていたのでまさかとは思っていたがホントに来るとは……

回避を試みるも完全には間に合わず頭を切断されてしまう。

そこに再びペンシルゴンからの蘇生が入り僕は復活する。

ヤバい、スタンを入れるとデスコンボをされるかもしれん、むやみやたらに使うのはやめとこう。

 

「ランスロット、宝珠の数ヤバい‼」

 

今こうやって簡単に蘇生をしてもらっているが実際はそうではない。

実はコレ、一回の蘇生に400万もかかっている。

今回の準備期間で用意することが出来たのはたったの五つ。流石に高くて大量には買えなかった。今となってはもっと買って置くべきだったと後悔。

宝珠に関しては前線に僕の方が出るからという理由から1対4の比率でペンシルゴンが多く持っている。

そのため残り蘇生をしてもらえる回数はたったの2回、麒麟の召喚までが無理だとしても頑張って「雷鐘」までいきたい。

 

またウェザエモンが刀を振り上げ僕の体を真っ二つに切断するために攻撃をする。

その攻撃を先程と同様に避ける。

次に凄いスピードで放ってきた突きを空中で曲芸をするかの如く体を捩じり回避する。

避けきることは出来たが着地時に両手を地面につくという良くない態勢になってしまう

それをウェザエモンが見逃すはずもなく横なぎに刀を振るう。

その攻撃を地面から斧を振り上げて受ける。

しかし攻撃の勢いを殺し切れるはずもなく僕は吹き飛ばされてしまう。

HPバーは全損までは行っていないので儲けである。

 

急いで前を向きなおしウェザエモンの姿を確認すると僕からヘイトが外れてペンシルゴンに向いていた。

それを見た瞬間に移動系スキルを発動させてペンシルゴンとウェザエモンの間に挟まりペンシルゴンを蹴り飛ばしウェザエモンの攻撃から庇う。

ウェザエモンの攻撃は僕の胴体をキレイに真っ二つにした。

 

「助かったランスロット」

 

「犬として当たり前の事をしたまで」

 

余裕は無いのがペンシルゴンの方に親指を立てつつ返答をする。

僕は再びウェザエモンとの戦闘に入る。

避ける、避ける、避ける、咆哮、避ける、避ける、受け止める、吹き飛ぶ...

段々と攻撃を避けれるようになっているのを感じる。もう何分経ったかは分からない。

 

何合か交わした後にその瞬間は訪れた。

 

「雷鐘」

 

一秒間で五発の確定即死ダメージの落雷、それが五秒間も続く頭の悪い攻撃。極限まで集中していた僕はともかく鉛筆は反応できていなかった。それならば僕のとる行動は一つ。

ペンシルゴンを庇い僕はデスする。

 

「約束は果たしたからな...」

 

「カッコつけんなバカ」

 

僕のサブジョブである『死兵』の効果のHPが全損したときにすぐデスせずに10秒間留まるというものを最大限使用し残された時間を使いペンシルゴン守り切り約束を守ったことを伝える。

そして最後にウェザエモンが接近してくるのを視界で捉えデスした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレ、なんで顔にウェザエモンからの呪いを受けてんのかな!?

 




スキル:『蛮族の闘志』
スキルブックで取得可能なバフスキル。
一定時間の間STR、AGI、VITにバフを掛けガッツの効果を付与する。
使用できるジョブに制限があるもののかなり便利なので多くの人に愛用されている。
一冊15万マーニもするので財力が無いと手に入れることは難しい。
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