Blue ArcTale 作:博士
プロローグ
キヴォトス。
それはかつて地球のどこかにあったとされる、秘境の地。
神秘があり、恐怖が潜在し、今なお暴かれることのない秘密で満ちた地。
誰もその場所を知らない。
と、されていた。
しかし実際のところは大きく違う。
キヴォトスの中から、一つの要請があったのだ。
『先生』に該当する人間を求む、と。
キヴォトスはバリアで覆われている。
かつて人間とキヴォトスの『人』たちの戦争によって生まれた境界。
これを通ることができるのは強い決意を持つ『先生』だけだった。
今まで七度、七度に渡って『先生』は送られた。
一人目は失踪し。
二人目以降は例外なく『死』を指し示し。
それでもなお、要請は送られ続けた。
事情を知る人間は恐れていた。
決意を持たないキヴォトス人のその身が、遥かに優れていることに。
銃弾をも通さない鋼鉄が如き肉体。
発展を重ね続けた膨大な科学。
人間が唯一対抗できるのは『決意』の力だけ。
『決意』だけが人間が勝る、唯一の点だった。
だからこそ人間は『先生』を送り続けた。
バリアを突破してこないように。
結局のところ、それが自分たちの首を絞めているとも知らずに。
……そして今日、八人目の『先生』がバリアへと向かう。
新たな先生としてキヴォトスの問題を解決するために。
「ここがバリアか……」
その男は数々の戦場を生き残り、強い『決意』で『先生』に選出された一人だった。
彼自身、仕事熱心な男であり、依頼された仕事ならば全力で取り組む。
『先生』に相応しい一人でもあった。
「通れば、二度と帰れない、か……」
上を見上げれば青く透き通る空模様。
そして半円球型に広く広がる大きなバリア。
中から人が出てこれないようにするためのもの。
「中に生徒たちがいる、って言ってたけど……どう言うことなんだろうか」
事前に知らされている情報を少ない。
『先生』としてキヴォトスに行くこと。
やることは悩みを聞き、その悩みを解決させること。
そして『生徒』たちがいること。
たったそれだけだった。
どんな派閥が存在し、どんな組織が存在し。
住人の数も、どんな場所なのかも、知らされてはいなかった。
いや、そもそもの話。
人間たちは知らなかった。
なんせバリアの外に出てきた人間は、
中から飛び出てくる手紙でしか情報のやり取りをできないのだから。
「……行くか」
男は遂に、バリアの中に一歩を踏み出す。
二度と帰れないことを知りながら。
20XX年、キヴォトス領外。
その領域。
警戒網が引かれ、誰一人として通ることのできない場所にて。
男は『先生』として歩き出す。