ARMORED CORE VI ハスラー・ワンになり真の最強[皆のトラウマ]となる 作:影後
『巫山戯んな!なんで……なんで……ランク1が』
「レッドガン、お前達には同胞が煮え湯を飲まされている。消えろ、フォーリナー(来訪者)」
ベイラム特殊部隊レッドガン所属G7ハークラー。
それが、目の前の男の名前であった。
ACの機体名など知ることもなく、ハスラー・ワン。[ナインボール]と会敵してしまった。
ルビコン3に到着し、この星の傭兵支援システムオールマインドに登録し、ランク1[ナインボール]の実力は嫌というほど知っている。
レッドガンの総長、ミシガンだけでない。
敵対企業アーキバスのヴェスパー部隊V.Iフロイトですらデータの[ナインボール]に勝利できていないという噂がある程だ。
『くそ…だが』
バズーカを[ナインボール]へと向けるハークラーだが、既にその場には居なかった。
『ありえな…こんなの、ACの動き…え……なに…が』
G7ハークラーは背後からブレードで貫かれ、死亡した。
『ナインボール!』
ルビコン解放戦線のMTが手を振る。
それに[ナインボール]はパルスライフルを掲げてみせると、アサルトブーストで即座に消えた。
留まり過ぎれば待つのは敵対者との戦闘である。
企業や惑星封鎖機構だけでない、ルビコンを脅かす存在は内側にも居る。
ハスラー・ワンはそんな者達を討伐する依頼を良く受けていた。
『よぉ、ハスラー・ワン。アンタに受けて欲しい依頼がある』
声の主はドーザーと言ってもまともな部類の勢力、RaDの頭目シンダー・カーラからの依頼である。元の記憶から何時かは殺さなければいけない相手だと知っているハスラー・ワンだが、今の彼にとってシンダー・カーラ及びRaDは依頼主の一人であり、殺すにしてもあのC4-621がどのルートに向かうかで決まってくるのだ。
『ハスラー、うちのラミーがドジってね。キメすぎて今は動けないんだ。コヨーテスの屑どもが攻めてくる、うちのジャンカー共が見つけちまってね。報酬は払う、勿論殺してくれた分だけ増やすさ』
ジャンカー・コヨーテス殲滅
ベリウス西部 グリッド086
敵部隊殲滅
180.000
敵撃破に応じて報酬を加算
ハスラー・ワンはグリッド086にてじっと殲滅すべき敵を待っていた。
『ハスラー・ワン、RaDのチャティ・スティックだ。今回の依頼を受けてくれたこと感謝する』
「礼は不要だ……お前の主にもな」
元々が寡黙な二人だ、会話は起こらない。
RaDのチャティ・スティックAC[サーカス]。
AIでありながら、その実力はアリーナが示している。ランク14、ハスラー・ワンからすれば容易く破壊できる程度の実力であるが、コヨーテスのMT部隊なら容易く殲滅できる力はある。
しかし、あまり表に出ないのはシンダー・カーラなりの親心なのだろうか。
『来たぞ、ハスラー・ワン』
「ターゲット確認、排除……開始」
アサルトブーストが紅き閃光を残し、コヨーテスのMT部隊に襲撃をかける。
『ナッ…ナインボールだぁぁぁ』
『ざけんなよ!カーラの奴なんて』
纏まっていた場所にグレネードが放たれ、爆炎に何機も巻き込まれ死んでいく。
『援護しよう』
チャティはマルチロックを行うとファーロンの12連装ミサイルが降り注ぐ。
さらにそれだけではない、まるで花火を地面に向けて放ったかの様に手持ちの小型グレネードと、小型バズーカ、さらにクラスタミサイルが地面を砕きながら全てを殺す。
「目標、増援を確認」
だが、増援の部隊も[ナインボール]のパルスライフルに一撃で破壊されていく。
終わらない殺戮、滅ぼし、殺す為に繊麗された動きはAIでありながらチャティのシステムに刻み込まれる。
『見えてるかい、チャティ』
『あぁ、ボス。アレが』
『アタシ等、ドーザーの敵。ルビコンの守り神さね』
だが、チャティもカーラもそれをどういう目で見るべきか理解している。
残骸をまるで墓標の様にし、ナインボールはじっと佇んでいる。
ルビコニアンにとっての守り神とは、カーラ達の組織にとって最大の障害なのだ。
そして、その実力はカーラは良く知っている。
(…どうやって殺すかね)
彼女の仲間がもうすぐルビコン入を果たす。
それが何を意味するか、それは彼女の、彼女達オーバーシア(観測者)の目的達成の日が近いことだ。だが、ルビコンを焼くとなれば現れるのは最大の障害。
「敵ACを確認、殲滅する」
チャティの[サーカス]から送られる映像の先で、ACだろうが無慈悲に殺していくそれは、悪魔以上の物だ。
「どうした」
『面白かったよ、ハスラー・ワン!こんなショーを見せてもらったんだ!報酬にボーナスを入れておくよ』
ハスラー・ワンは入金された報酬約380.000コームから自身の弾薬費を引いていく。
ハスラー・ワンの武装は彼の拠点にしか存在しないが、弾薬は替えがきくのだ。
「……食料は……備蓄はある」
ハスラー・ワンは人間である。
人間には常に三代欲求が付き纏う。
生きている限り、それは必要であり、生きている証明である。
この中で、性欲は管理できるが睡眠欲と食欲の管理は難しい。
ルビコン3において食事は基本的にミールワームという存在だ。
コーラル汚染によりまともな土壌は存在せず、食料はない。
だからこそ食べなければならない、タンパク源としてミールワームは必要なものなのだ。
BAWS等の土着企業では食料生産プラントが存在するが、それはあくまでも社員達の為である。
しかし、それでもレーションなのだ。
フルーツ等はない、ビタミンゼリーと固形レーション。
それでも、ミールワームよりは格段に旨い。
子供は餓死し続け、未だにコーラルドラッグに救いを求め中毒死するものも多い。
ルビコンの食料事情はかなり苦しい。
だからこそ、ハスラー・ワンは自身の拠点をどうにかプラントの様にしている。
救いたい、死んでほしくない。
ハスラー・ワンの我儘である。
ハスラー・ワンは拠点に戻り、表向きのハンガーに[ナインボール]を格納する。
客人が居るようでAC2機とルビコン解放戦線のエンブレムが記載されたヘリが止まっている。
この拠点は入口をハスラー・ワンにより擬装され、設備もルビコン3に現存するどんな物よりも優れている。そんな拠点の上層部には数多くの孤児が住んでいた。
拠点の最大の秘密はハスラー・ワンと[ナインボール]の為の地下施設である。
だからこそ、上層部に客人が居ようと気にしないのだ。
「……兄貴」
「これは、兄上殿。お久しゅう」
「ハスラー・ワン、この前の依頼の物資。ありがとう」
彼等はルビコン解放戦線のAC乗りリトル・ツィイーAC[ユエユー]そして、その家臣である六文銭AC[シノビ]、ヘリパイロットであるアーシル。
「……久し振り、兄貴」
そうつぶやくのは10代後半の少女、ツィイー。
ハスラー・ワンの血縁上、血の繋がった妹である。
「……まだその機体に乗っているのか」
「皆が組んでくれ」
「……死ぬのが見えている、六文銭からも言われなかったか」
「兄上殿、姫は」
「……」
「サム・ドルマヤンを見習え。お前達は機体の特性を理解していない」
「わかってるよ、兄貴から武装は送られてくるし、兄貴がアーキバス、ベイラム、封鎖機構の基地を奪う度に色々手に入ってる。悔しいけど、兄貴の言うとおりだ」
「……そうか」
「あっ!ハスラー・ワン!」
「ハスラー・ワン!!!お帰り!!!」
「……あぁ」
「ハスラー・ワン、戻られましたか」
「……ラナ・ニールセンか」
彼女はハスラー・ワンが始めて拾った女性であり、ハスラー・ワンと同じドミナントである。
ドミナント、先天的に戦う素質のある存在。
もし、ハスラー・ワンが死ねば彼女が次のハスラー・ワンとなる。
だが、今はこの拠点の最大の護衛であり、もう一人の⑨[ナインボール]を駆る女である。
「戻られましたか、プラントは正常に稼働。食料と水の確保はできています。ただ」
「ハスラー・ワン、子供達は」
「これ以上は苦しいか、教育者は」
「……私が教えています」
「ラナ先生!お花かけたよ!!」
「えぇ……良い絵です」
教育を施せば、ルビコン解放戦線なり、BAWSなり、就職先はある。
「六文銭」
「何か」
「妹を頼む、信用できるのはアンタだけだ」
それは、ハスラー・ワンとしてではなく一人の兄としての言葉である。
もうすぐ来るイレギュラー、それにツィイーは殺されかねない。
そして、自分もハスラー・ワンとして死にかねない。
「……お任せを」
深々と、たった一つの恩義のために、六文銭はツィイーを守る。
だからこそ、ハスラー・ワンは過去を捨てられた。現実だが、非現実だと知っているから。
自身を、プレイヤーではなくキャラクターとすることで。
「ハスラー・ワン、我々は一度壁に戻る。子供達の為に本等は掻き集めたのを置いておく」
「すまない、感謝する。アーシル」
「孤児院を支援するのも我々の任務だ、子供は宝だと帥叔ミドル・フラットウェルも仰る」
「……感謝する」
ハスラー・ワンは頭を下げると再びハンガーへと戻る。
「どちらに」
「ラナ・ニールセン、金は自由に使え。お前なら間違えはしない」
手元に自身の生活費である10.000コームのみを残し、ラナ・ニールセンの管理する孤児院の資金とする。
「貴方のACの」
「自分で稼ぐ」
10.000コームがあるだけで一般市民の生活費とするなら1ヶ月は保てる。
しかし、AC乗りには端金だ。
だが、[ナインボール]に限ればこの拠点の地下部に入るだけで完璧な状態を保てる。
定期的に弾薬等も仕入れている為、補給も可能である。
基本的にハスラー・ワン自体も拠点に長く居ることはない。
生きる為の金を稼ぐ必要があるからだ。
「……」
キャンプを設営し、肌寒い中で眠る。
拠点ならば安全に寝れただろうが、ハスラー・ワンはこの戦場でしか生きられない。
ドミナントだと、自分を信じ何人も殺してきた。
そんな自分に、無垢な子供は眩し過ぎる。
「ベイラムの輸送部隊か」
ハスラー・ワンの食料は基本的に各勢力の拠点輸送部隊を襲撃し奪う野党の様な事をしている。
それの何割かを回収し、残りをルビコン解放戦線に流すのだ。
「運がなかったな」
『なっ、なんで……こんな所』
『連絡しろ!ミシガン総ち』
輸送部隊の護衛にはACは居ない。
MTではナインボールを止めることは出来ない。
両手で補給物資の積められたコンテナを回収し、近くの解放戦線の拠点に連絡を取る。
『こちらはルビコン解放戦線、ハスラー・ワンどうした』
「ベイラムの物資輸送部隊を襲撃した。食料品のようだ。お前達に持っていく」
『わかった、感謝する!ハスラー・ワン!!』
持ち運べる最大限の量を解放戦線の拠点へと運ぶ。カーゴであればより運べただろうが、ハスラー・ワン[ナインボール]はポーターではない。
無慈悲な殺戮者なのだ。
[ナインボール]は仕事が終わればその場からすぐに立ち去る。
ハスラー・ワンはそこから活動を沈めた。
あくまでも大きな戦闘を起こさないというだけだが。解放戦線の拠点を攻撃している部隊があれば殲滅し、野盗やドーザーが市民を脅かせば無慈悲に殺す。
レッドガンやヴェスパーに喧嘩を売られれば、相手のプライドを砕く様に動き、生きて返す。
ハスラー・ワン[ナインボール]の実力を教え込む為に。
殺す価値もないと伝えるように。
大体20日、ハスラー・ワン[ナインボール]は大きな行動は起こさず静かにしていた期間だ。
普段なら企業の邪魔をし、企業MT部隊や惑星封鎖機構を殲滅せしめる活動をしていた[ナインボール]が比較的大人しくしていたのだ。
これを好機とみた惑星封鎖機構は汚染市街地へと装甲ヘリを派遣した。
ハスラー・ワンの目的はヘリコプターをおびき出すこと。
戦闘ヘリコプターは輸送部隊としても遥かに優秀であり、数を減らすに越したことはない。
何度もその手の部隊を襲撃しているが、多くの護衛により邪魔をされるのだ。
無論、逃がしはしないがその手のパーツを解放戦線に手渡そうとする前に破壊される。
「……」
そして目にしたのは憎むべき存在であるレイヴンと似たアセンブルを組んでいる機体。
どうやらまだ、かのイレギュラーはヘリを落とすまでには成長しきれていないようだ。
「…独立傭兵だな、手を貸そう」
『621、回避しろ』
ハスラー・ワンはアサルトブーストからコックピットに蹴りを入れるとそのままブレードを突き刺す。コックピットに上から下へと貫通するそれはまるで墓標の様であった。
「……独立傭兵か、立ち去れ。俺が居るとなればここは奴等にとっての地獄となる」
『此方を援護してくれたこと、感謝する』
壮年の男性の声が通信越しに聞こえてくる。
目の前のACもまるで頷くように頭部を揺らす。
「……速く行け、惑星封鎖機構がくる」
『621、帰還しろ』
そのACはアサルトブーストでこの場から消え去った。そして、ハスラー・ワン[ナインボール]を殺す為に数多の戦闘ヘリコプター、LC、HCが現れる。
「汚染市街地付近の解放戦線に伝える。1時間後、物資回収班を出せ。サルベージだ」
『ナインボール、今日こそ……仲間の仇を』
そう話したLC機体の胴体をパルスライフルが撃ち抜いた。
「ターゲット……排除開始」
因みにランキングからサム・ドルマヤンが消えてキングがランク4です。
意見は別れると思いますが、爺様は引退して。
なお、621の前には引退してもブレード引っ提げて帰ってくる模様。
また、ハスラー・ワンの顔を知るのは本当に一部。写真も撮らず、集合写真にも決して移りません。なお、お察しの通りレイヴンの火では確実に死亡、ルビコンの解放者では生存、賽は投げられたでは、不明となります。