ここは王都にある"王都ギルド"。
そして私は王都ギルドで健気に働いている美人受付嬢のキラ!
今日も元気にお仕事頑張るぞー!ってやる気に満ち溢れてたんだけど、その日はギルドでアクシデントが起きたの。
私はその日も、たくさんの冒険者に依頼を回したり、問題を起こした輩の始末書を書いたり、変に絡んでくる同僚のケツを思いっきり蹴り上げたりといつも通りだけど、楽しく受付としての仕事をしていた。
しかし、ちょうどお昼ごろ。
突然、ギルドの扉が乱暴に開かれたのだ。
扉が吹っ飛ぶぐらいの勢いに、私は驚いて入口のほうの見たの。
そこには、最近、ある意味で有名な
カツミ・トウドウ。
半年と少し前に、王城にて異世界から召喚された勇者様のうちの一人である彼は、勇者という大きな看板を周囲に振りまき、受付嬢や女冒険者に対してしつこく言い寄せるという迷惑行為を繰り返してる最低男だ。
少し前から私に対しても言い寄せてくるため、適当なことを言ってのらりくらりとしているが、最近はそんな私の態度が気に入らないのか、無理やり関係を迫ろうとしてくるようになったのだ。
ホントマジ無理しんどい…。
そんな私の内情なんて露知らずな最低男は、ズンズンと大股で歩き、まっすぐ受付のほうに歩いてくる。
「なぁキラちゃん、もうそろそろ俺の女になれよ、な?」
「いつも言ってますが、ここはそういう相手を探すところではありません。さっさと風俗街のほうでその無駄にある性欲を発散してくればいいんじゃないですか?ていうか私、あなたのこと嫌いですし」
遠回しに言うことが意味ないのは分かり切ってることなので、わざとド直球に本音をぶちまける。
が、最低男は何も聞こえないふりをして、さらに詰めよってくる。
気持ち悪いから早く離れてほしい。
「そんなこと言わずにさぁ、気持ちい思いさせてやるからさ!」
「だからここはそういうところじゃ…!」
しつこく詰め寄ってくる男。
その行動に私は思わず後ずさるが、それよりも早く男が私の腕をつかんだ。
「!?っ離してください!」
「俺の女にならないのがいけないんだぜ?ほら、さっさと俺の宿に――」
性格はあれど、さすがは半年で中堅と呼ばれるCランクにまで成り上がった実力者だ。
非力な私の力では、踏ん張ることもできずに引っ張られてしまう。
一瞬周りを見て、助けを求める。
しかし、誰一人として目を合わせようとしてくれない。
相手は腐っても勇者。
勇者相手にケンカを売る冒険者なんているはずもなく、私は最後の防壁である受付カウンターにしがみついて抵抗をする。
が、そのカウンターも限界が近いのか、ミシミシと音をたて始める。
もうだめだ……。
そう思った、その時――。
「なぁ、どけろよ。おっさん」
男の後ろから声が聞こえる。
その声は、まだ変声期が終わってないのか、妙に高い。
「あぁ?」
男は私から手を離さずに声がしたほうへと振り向く。
私も気になってそっちのほうを見る。
そこには、肌が少し浅黒い、ちょうど成人になったといえるぐらいの少年が男を睨みつけていた。
「何ガンつけてんだ、クソガキ」
「あんたがさっきからそこの受付を離さないから、冒険者登録ができなくてイライラしてんの。そんなこともわからないわけ?」
「冒険者登録って……。くは!」
少年は少し苛立った感じで言い放つが、男は一つの単語が引っ掛かったのか、笑い出す。
「お前みたいなクソガキが冒険者だァ?ふざけるのも大概にしとけ。クソガキは家に帰ってママの手伝いでもしてろ」
第三者の私でもイラっとするような半笑いを浮かべた男が言い放った言葉に少年はムッとした顔になる。
そこから先は、男が一方的に少年を罵倒し、挙句の果てにはまだ冒険者登録もしてない少年に対して、暴力をふるおうとしたのだ。
流石に止めに入ろうとしたら、このギルドで結構な間冒険者として活動しているA級冒険者のアレクさんが間に入ってきたのだ。
アレクさんはA級というベテランの領域に入っている人だが、それは人々の尊敬と、地道に依頼をこなしていった実績が実ったもので、実際の戦闘能力はC級より少し上程度の実力である。
そんなアレクさんが性格が最悪とはいえ、A級上位の戦闘能力を保持している男の攻撃を受ければ、当たりどころが悪ければ冒険者引退の可能性も否めない。
私は慌てて受付から飛び出ようとした。
その時、目の前を紫色の何かが複数横切るのを見る。
「…………え?」
その手はなんと、男が勢いよく振り下ろした剣を抑え込んでいたのだ。
紫色をした手だけの存在は、少年が生み出したものらしい。
その後も少年は複数の手を操り、結果は男は足を内股にし、股間を抑えて倒れてしまった。
その後も、男は負け惜しみとばかりに喚いていたが、少年がにらみを利かせながら、もう一つ潰すべきか、と言うと、捨て台詞を置いてギルドを去っていった。
これを一部始終を見ていた冒険者や私を含めた受付は、このことで大盛り上がり。
私もつい、
「私、あの男にずっと言い寄せられてたけど、自分のあんな醜態を晒したんだから、流石に羞恥心でやめてくれるでしょ!」
と、興奮しながら言い放つ。
同僚たちも、よかったなぁ!と、肩や背中をバシバシ叩きながら喜び合ってる。
それほどまでにあの男には手を焼いてきたのだ。
そんな諸悪の根源が、捨て台詞を吐きながら逃げていく。
そんな光景に私たちは、ようやく一泡吹かせられたと、まるで自分たちがやってやったことのように喜び、笑いあい、盛り上がっている。
私も同僚を肩を組んで喜んでいたとき、不意に少年のほうへと目をやる。
そこには、先ほどまですべてを凍てつかせるような眼はすでになく、今は間に入っていった冒険者と嬉しそうに話していた。
その時、私は思った。
え?まさか腐った展開を想像してもいいの?
と。