ACVI if Project AllMind   作:無(む)

1 / 3
パチパチ弾けて脳みそ幸せだぜ(大豊娘娘)


全ての始まり、その前夜

「量産性、汎用性確保のためMTをコアとした装甲戦車、試作型特務機体カタフラクト、しかしルビコン封鎖砲台設置地点にて正面からの攻撃により撃破されてしまった、か・・・おまけに企業でもない独立傭兵の集団相手にか」

「開発初期からその弱点に関しては危惧されていましたが、テスト時点では汎用のMT、ACを圧倒的な火力で粉砕していました、まさかカタフラクトの正面砲火を無理やりかいくぐってくるとは、想定以上です」

「ハンドラー・ウォルター・・・木星戦争時からその悪名と実力は噂で流れていたがここまでやるとはな」

 

 惑星封鎖機構、ルビコン3司令部、その一角にあるオフィス内部で二人の人間が向き合っていた、一方は上官であり、もう一人はその部下であった。

 椅子に腰かけた上官は読み終わった報告書を机に置きつつ眉間を揉む、試作型とはいえ特務機体が破壊されるという異常事態、相手はAC3機がかりで相打ちである。

 とはいえ付近には封鎖機構の防衛基地も存在し、そこにあった防衛設備や砲台、それすらも含めて壊滅したとなれば恐るべき手腕と言わざるを得ないだろう。

 

「システムは今回の報告を受け即座に機体改修命令を発令、正面装甲追加の指示を行いました、LC機体の軽量盾を流用し、それを複数重ねたものをコアMT正面に設置、機動力は低下しましたが十分な装甲を得ることに成功しました、現在ルビコン3に配備している量産型カタフラクトは順次改修中であります」

「・・・おかげで整備班は連日厳しい状況にさらされているがな、交代要員を増やして作業を行っているがさすがに人手が足りない、こちらも作業日程の調整に難儀している」

 

 部下からの報告に眉間に皺を寄せながら愚痴をこぼす、現状惑星封鎖機構は非常に忙しい状況にあった、特にこのルビコン3の部隊を統括する司令部は連日対応に追われている。

 

「ステーション31に始まりステーション22、14、19・・・・ルビコンの封鎖衛星が次々と機能不全に陥り企業の部隊はすでにべリウス地方各地に展開している、衛星砲の修理も何度か行っているがほとんど応急的なものでまた破壊される有様だ、幸いにもクラッキングや一時的な無力化が大半で衛星砲自体が崩壊する事態は避けられているがいつまでもつかもわからん」

「ベイラムの武装船団による集中攻撃での強行突破、アーキバスの輸送船団からの特殊ミサイルによる飽和攻撃、いずれも防げずルビコン3駐留艦隊は壊滅してしまいました、元々が規模の小さい警備艦隊とはいえここまでやられるとは・・・・」

「それほどまでにこの星に眠るコーラルは魅力的だ、その危険性を理解しているにもかかわらずそれをコントロールできるなどと愚かなことを考えているのだろうよ」

 

 コーラル―――このルビコン3に眠る新時代のエネルギー資源であり、致命的な破綻をもたらしかねない最悪の増殖物質、かつて半世紀前のアイビスの火でも焼き切れず、今でも増殖を抑えるためにわざわざ超高出力のレーザー防衛装置なんてものをこしらえて消費しているほどなのだ。

 かつて先んじて残留コーラルを発見した惑星封鎖機構はそれを焼き切ろうとしたものの増殖率の高さと技研の防衛装置に阻まれ実行できず、またアイビスの火の二の舞になる可能性があったため封鎖にとどまっていた。

 

「ルビコニアン達も騒がしくなり始めた、企業共が例の場所を嗅ぎつける前に早急にこの惑星から排除しなければな」

「しかし、今の我々の戦力では攻勢に出るのは非常に厳しい状態です、バルテウス、カタフラクト含め多数のSG部隊が健在ですが、現状ではウォッチポイントや封鎖地点を維持するので限界です、幸いにも先遣隊として特務機体()()()()()()4()()が援軍として派遣されましたがそれでも足りません。」

 

 部下の言う通り封鎖機構の現有戦力はあまりに少ない、防衛設備が設置済みの拠点での防衛ならばともかくそこから攻勢に出るとなれば増援は必須だろう。

 だがすでに連絡を受けていた上官はその言葉に口角を上げながら告げる。

 

「問題はない、すでにシステムからの通達で執行部隊の投入が決定された、強襲艦隊の集結が完了し次第即座にルビコン3に投入される予定だ」

「執行部隊が!?」

「我々は執行部隊の到着を待ちつつ守勢に徹し、執行部隊が到着し次第企業勢力の強制排除を実行する、この情報はまだ下には伝えるな、いいな?」

「了解しました!」

 

 

 

 

 

 

「ミシガン、朗報だぞ、本社が本腰を入れた」

「ほう?あの腰抜けどもがようやっと本気になったのか、それで?どんなたわごとをぬかしてきた!」

 

 ベイラム臨時拠点ルビコン部隊駐屯地において、一人の男が司令室の机で書類と悪戦苦闘していた、男の名はミシガン、ベイラムの歩く地獄と呼ばれ、精鋭部隊レッドガンを率いる総長である。

 その男の部下、レッドガン副長であるナイルが司令室に入って早々に先ほどの言葉を告げた。

 

「安心しろ、本社の連中はボケちゃいないし今回に限っては本気も本気だ、大規模な増援をこっちに派兵してくれるぞ」

 

 そう言ってナイルの手に持っていた書類がミシガンに渡される、少し手荒にそれを受け取りざっと目を通したミシガンは驚愕の目で白黒させながらその書類を何度か読み返す。

 それを見ながら苦笑いを浮かべつつナイルは置かれていたパイプ椅子に腰かける。

 

「・・・・なんだこれは?ペテンか?それとも本社の連中の頭がとうとういかれでもしたか?」

「いいや現実さミシガン、ファーロンとの合意による武装船団の派遣、それに合わせた大規模な物資と人員の輸送、BAWSとRaDから大量のMTを購入する資金、全部本当のことさ」

 

 しばらく唸るような声を喉から絞り出したのち、その書類に手早くミシガンは判を押し、すぐさまナイルに渡し返す。

 

「ふん!それでどんな手を使った?あの金勘定だけは上等な連中がこんな無駄金を突っ込むような許可を早々出すはずがあるまい、おまけに俺の古巣まで呼び出すだと?どう考えても連中の頭じゃできんはずだ!」

「ファーロン側から打診があったのさ、一枚噛ませろとだと」

「あの狸男が自分から絡んだだと?信じられんな、裏でこそこそ動いて今まで表側に立とうとはしてこなかったはずだ」

 

 狸男、ファーロンの現総帥をそんなあだ名で呼べるのはミシガンくらいのものだろう、かつては木星戦争にて圧倒的な勢力を誇るベイラムに対し政治的引き分けまでもっていき、ミシガンを引き抜かれてなおそれを取引材料にベイラムの主要取引先に食い込んだ恐るべき総帥を、である。

 かつて敵であったナイルからすれば悪魔のタッグであり、武力をミシガンが、政治をファーロンの総帥が行うという隙のない布陣だったのだ、故にミシガンとサシで飲みかわし、総帥に利益のある話を持ち掛けどうにか落としどころを用意して負けずに済んだというだけだ。

 

「どうやらよほど確証のある情報を手に入れたらしい、コーラルの存在を本気で確信できるほどにな、本社が本腰を入れたのもその情報があったからだろう」

「なるほどな、あの狸男が確証が得られるほどの情報か、裏は取れているのか?」

「そこまではさすがにわからんよ、とはいえあのファーロンの総帥が動くほどのものだ、信頼できるところからの情報とみていいだろう」

 

 元々のコーラルにおける情報リーク、それは独立傭兵からのものだった、精度と信頼度は半々であったため部隊を派遣するかどうかベイラム本社は揉めに揉め、最終的にライバルであるアーキバスが動いたため半ば対抗するためにレッドガンを派遣したという内情があった。

 そのため物資や武装は中途半端、人員も不足気味、活動資金もほとんどなく、物量こそ正義などとのたまうベイラムにしてはあまりにも無残なものだったのだ。

 そこにファーロンが絡みさらに別のルートからの信頼できる情報を入手、これらを合わせてコーラルが確実にあるとにらんだ結果本社側が本腰を入れたということであった。

 

「それでも本社の連中だけならここまで物資を投げつけてくることもなかっただろう!まったくファーロンの狸男に随分好き勝手にされたようだな、あいからわず頼りにならん連中だ!」

「そういうなミシガン、今回はお前さんのところの古巣が根回ししてくれたおかげで随分とやりやすくなった。アイランド・フォーじゃ本社がやらかしてアーキバスにいいようにやられた上にそのしわ寄せでレッドガンの補充も厳しくなる始末だったからな、今の俺たちにとって文字通り渡りに船な話だ、存分に乗るとしよう」

 

 ミシガンは大きなため息をひとつ吐き椅子に深く座る、ベイラム本社のふがいなさと古巣の頼もしさになんとも言えないものを感じつつ、状況が好転したことを理解した、故に副長に無茶を振っておくことにする。

 

「ナイル!今回の件を使って本社の連中を煽っておけ!ファーロンの古狸にいいように動かされてプライドはないのかとな!それとあまりに不甲斐ないようなら俺が古巣に戻ることもあるかもしれんと伝えておけ!」

「あー・・・ミシガン、本気か?」

「本気も何も俺をベイラムに引っ張ったのは貴様だろうが!本社の連中にこっちの手綱をきっちり握る気がないならそれだけの話だ!わかったらさっさと行け!」

 

 ナイルはなんとも言えない顔をしつつ、ミシガンがここまで育てたレッドガンを投げ捨てるような真似をする男でもないことをわかっていたため了承の返事をして司令室を出る、本社の機嫌を損ねないようにしつつミシガンの顔を立てなければいけない男は今日も胃痛に悩むのであった。

 

 

 

 

 

 

「本社からの増援、ようやく到着したようですね」

 

 眼下にずらりと並ぶ輸送船団を眺めながらアーキバス専属AC部隊、ヴェスパー所属のV.Ⅱスネイルはどこか呆れをにじませた声でそう言った。

 

「まったく頭の固い上層部でしたよ、おかげで封鎖機構から情報を引き抜く羽目になりました、ですがこれでベイラム側の動きに追いつけます」

 

 臨時に建てられたアーキバス前哨地の司令室から窓の外を眺めつつそう愚痴る、とはいえ今回の本社の動きはいつもに比べて早いぐらいである、むしろベイラム側の動きが異常なぐらいに早いだけであった。

 原因ははっきりとしている、ベイラム側にファーロンがついたのだ、かの企業がもたらした情報でベイラム側の腰は軽くなり、情報で後れを取っていたアーキバスは本腰を入れるのが少々遅れてしまったのだ。

 

「今回は苦労を掛けましたねオキーフ、あなたがもたらしてくれた封鎖機構からの情報によって本社もコーラルの存在を確信するに至ったようです。

まったく・・・元々が根無し草の独立傭兵からのものと考えれば先に裏を取るのが当たり前だというのに」

「そう言ってやるなよ、コーラルはそれほど価値のある物質だ、本当にあるかどうかなんて些細なことは棚に上げて取り合えず派遣するってのも間違っちゃいないだろ?下手を売ってベイラムに取られるよりかはマシさ」

 

 部屋にはもう一人、革張りの応接用ソファに腰かけながらコーヒーをすする男、V.Ⅲオキーフがいた。

今回のコーラル調査にあたってベイラム側の大規模な増援の情報をキャッチしたスネイルは、アーキバス本社から増援を取り付けるためにオキーフに封鎖機構を探らせ、その結果コーラルの存在が確信できる情報を手に入れ見事に仕事を果たしたのだ。

 

「しかし、一体どのようなルートを使用したのです?封鎖機構を探れと命じたのは私ですが結果が出るには時間がかかると考えていました、これだけの短時間で確証を得られるほどの情報をどうやって手に入れたのです?」

「それはスネイル閣下にも話せないな、俺には俺なりのやり方ってものがある、情報部門の機密も絡むしな、あんたがもっと偉くなったら話せるようになるだろうさ」

「・・・・まあいいでしょう、あなたは有能な人間だ、結果さえ出してくれれば否はありません、今後も活躍を期待していますよ」

「仕事はするさ、それじゃあな、コーヒーは美味かったよ」

 

 そう告げていつの間にか空になったカップを置いてオキーフは司令室からゆっくりと去っていった、あとに残ったスネイルはしばし顎をさすった後独り言をこぼす。

 

「有能ではありますがやはり信用は置けませんね、何を考えているかはっきりとしない男だ、情報部門の人事もいずれはこの私が手を入れるべき場所でしょう」

 

 司令室でそんなことを考えているスネイルをよそに部屋をでたオキーフはそのまま真っすぐ自室への道を歩きながら考えこんでいた、今回の情報の出所について彼には色々と思い当たることがあったからだ。

 

(今回の任務、不自然なほどに封鎖機構側の隙が大きかった、いくら何でもこんな簡単にコーラルの情報を手に入れられるはずはない)

 

 惑星封鎖機構という組織はコーラルを封じ込めるために文字通り命を懸けている、システムと呼ばれるAIによる人間の管理を行うほどに徹底されているそれは生半可なものではなかったはずだ。

 だというのに今回あっさりとお目当ての情報を見つけ、楽々とそれを持ち帰ることができてしまったのだ、彼はこの感覚をよく知っている、まるで手のひらに乗せられたその感覚を

 

(オールマインド、お前は今何を考えている?これもコーラルリリース計画の一部なのか?)

 

 かつて計画の一部に携わり、そこから逃れ、今またルビコンへと戻ってきた男は背筋に嫌な寒さを感じていた。

 

 

 

 

 

「今回の物資支援感謝する、よく送ってくれたメッサム」

「ありがたきお言葉です帥叔、最近はBAWSの業績が非常に好調ですので問題はありません、星外企業であるベイラムとアーキバスから追加の大口注文もありましたのでそれを隠れ蓑にこちらへのMT提供量を増やせるとのことです、またこの分ならBAWS製AC量産も視野に入れて動けると」

 

 べリウス地方の廃棄されたグリッド上にて、ルビコン解放戦線とBAWSが密会を行っていた、一方は解放戦線の指導者ミドル・フラットウェル、もう一方はBAWSの渉外担当の一人、メッサムである。

 彼らの周囲では物資コンテナとBAWS社製MTの受け渡しが行われており、ルビコニアン達がせわしなく作業を行っている。

 

「そうか、そこまで企業は戦力の拡充をしているのか・・・このままでは我々は轢殺されるだけだな、壁やストライダーへの増援も行わなければならんだろう」

「それと未確定の情報ですが、どうやらベイラム側にファーロンがついたようで、アーキバス側もそれに対抗しVCPLに技術支援を要請したとの情報が、事実だとすれば星外企業の戦力はさらに膨れ上がるかと」

「事態は切迫しているか、封鎖機構は現状守勢に徹しているようだが艦隊を集結させているとの情報もある、我々ルビコニアンにとって最も厳しい状況になった」

 

 苦い表情で顔をゆがませながら次の一手をフラットウェルは試案する、現状シュナイダーとのつながりは維持できているためアーキバス側のVCPLへの要請はすでにつかんでいた、同時にシュナイダーに対してもアーキバスへの戦力抽出を要請されたとのことも。

 アーキバスの動きからしてもベイラム側にファーロンがついたという話は事実なのであろう、アーキバスに派遣した(ラスティ)からはさらにファクトリーと再教育センターの設置が始まったとの情報リークも来ている。

 

(現状の戦力比ではベイラムとアーキバスの戦力は互角というところだろう、封鎖機構の戦力も集結しつつある、この状況だと我々の戦力では対抗は厳しい、やはり両陣営と封鎖機構の共倒れを狙うしかないか)

 

 ルビコン解放戦線の戦力はお世辞にも高いとは言えない、星外企業にも封鎖機構にも、技術、資金、武装、あらゆる面において大きく差が開いているからである、戦士たちの士気は高くとも先立つものがなければどうしようもない。

 食糧や人員に関しては数年前に()()手に入った最新型農業プランターによって大幅に改善しているのが唯一の救いだろうか。

 

「メッサム、BAWSの方から星外企業のベイラム、大豊、ファーロンの何れかに繋ぎを取れないか試してくれるよう打診してくれ、アーキバスは私の方で情報収集を行う、今は星外企業の動きに目を配らねばならん、彼らが動き始めればこのルビコンは本格的な戦火に包まれるだろう」

「わかりました、すぐにBAWSの同士へ連絡を行います」

「頼んだぞ・・・・・エルカノを表舞台に立たせるにはまだ早い、だがこの状況では悠長に事を構えている時間もないか、計画を早める必要がある」

 

 次の手をメッサムに伝えるとすぐさま行動に入らせる、去っていく彼の背を見ながらフラットウェルはさらなる一手を打つことを決めた。

 

「メリニットとタキガワにも手を広げるとしよう」

 

 

 

 

 

「そうか、状況はそこまで進んでいるのか」

 

 ルビコン星系から少し離れた別の惑星上、その軌道周回位置に浮かんだ宇宙船内部で一人の男が通信を行っていた。

 彼の名はハンドラー・ウォルター、ACで構成された独立傭兵部隊、ハウンズを率いる元締めである。

 彼の目の前にあるモニターには蜘蛛のようなエンブレムが移っており、その下にはシンダー・カーラという名が表示されていた。

 

「企業共は想定以上の戦力をもってルビコンの制圧を行うつもりだよ、おかげでRaDにも両陣営からMTの注文がわんさか届いてお祭り状態さ、うちの連中は金と酒と食い物が山ほど手に入って喜んでるよ」

「解放戦線の方はどうだ?」

「なんとも言えないね、戦力は増やしているみたいだが今のところはそれだけだ、BAWSもうちと同じようにMTの大量注文を受けてるから懐はあったまっているはずなんだけどね」

「元々の戦力差を考えれば守勢に回るのは妥当だろう、動かないのであれば放っておくとしよう・・・・こちらは惑星封鎖機構の艦隊集結を確認した、おそらく執行部隊を投入する気だろう」

 

 本来であればこの二人が連絡を取り合うのはもっと先の予定であった、どこで傍受されるか不明なため最低限の情報交換以外は行わないように警戒していたのだ。

 だが企業陣営の大幅な増員、封鎖機構の想定以上の動きの速さによって情報の共有を行う必要が出てきたのだ。

 

「なんだって?いくら何でも早すぎる・・・・いや、封鎖衛星があれだけ機能停止させられたらある意味当然かね?」

「それを差し置いても迅速に過ぎるといったところだがな、星外企業の増援にもおそらく感づいているだろう、厄介なことになったが同時に今がチャンスでもある・・・・このまま船でルビコンに乗り込ませてもらう」

 

 封鎖衛星が複数停止し、さらに星外企業の強行突破によってルビコン3の封鎖網には穴がいくつも開いている、今なら衛星砲を騙すリスクを取らずとも容易に密航が可能となっているのだ、それこそ民間の宇宙船でもギリギリ通行できる程度には。

 

「執行部隊が来て再度封鎖されるまでにこっちに来るってわけか、先に来ているはずの617達はどうしたんだい?」

「仕事をしたさ、おかげで企業にも封鎖機構にも気づかれない着陸場所を確保できた。船を下ろせれば星外物資を持ち込める、俺たちの仕事もやりやすくなるだろう」

「・・・・そうかい、人員の当ては?強化人間も早々手に入るものじゃないだろう」

 

 そう問われ自身の後方を見る、ACの隣にある生体ポッドの中には15歳ほどの少女が浮かんでいる。

 髪の毛はすべて刈り取られ、生命維持用の特殊生体テープで首から下を巻かれており、その手足はすでに()()()()()()()

 その姿に一瞬罪悪感と憐れみを覚え、そんなことを考えた自身の身勝手さに嫌気を感じつつ答える。

 

「問題ない、新しい第四世代型を手に入れた、少し特殊だがな」

「特殊?どこかの試験体でも手に入れたのかい」

「そんなところだ、とにかくこちらは予定通り独立傭兵として動く、そちらも「友人」達の情報を集めておいてくれ」

「わかった、祭りに乗り遅れるんじゃないよウォルター」

 

 それを最後に通信を切る、生体ポッドの中で眠るように目を閉じじっとしていた強化人間―――C4-621は通信が終わったことを認識したのかゆっくりと目を開け、そのまま外付けの音声装置で話しかけてくる

 

『お話は終わった?ウォルター』

「ああ、お前の行き先が・・・次の戦場が決まった」

『そっか、じゃあ練習しておかないとね、またシミュレーターしていい?』

「昨日何時間もしていただろう・・・・他の趣味を持て621、戦うことだけがお前の存在意義ではない」

 

 無表情なままウォルターと会話する621からは無機質な印象を感じる、喋り方こそ子供であるがその中身は戦闘のことしか考えられない生体部品としての調整を受けてしまってるからだ。

 そのためかウォルターが引き取った後も延々とACの訓練プログラムをひたすらこなす作業と睡眠を繰り返すような日常を過ごしていた、どうにかしてやりたいと思ったウォルターはいくつか電子本を買い与えているのだがあまり読もうとしてくれない。

 

『本は飽きた、つまらない』

「そういうな621、漫画や娯楽本もそろえてある、ずっとシミュレーターに籠るのは健康に・・・いや、頭脳に悪い、別の刺激も受けた方がいい」

『体を動かしたいからいやだ、ACじゃないと体を動かせない、ポッドを出ても何も動かせないならACでも動かしている方がいい』

 

 621のその言葉に口を噤む、彼女の手足が存在しない以上体を動かす感覚を得られるのは唯一ACに乗っている時だけなのだ、それを考えれば彼女がシミュレーターに籠るのを否定できなかった。

 強化人間として試験的な施術を621は受けていた、ACを人間の手足のように動かすことができるのが強化人間手術、ならば生体パーツとして運用することを前提とした場合生身の手足をなくせばさらに同調率をあげることができるのでは?そう考えられて実験材料として消費されたのが621だった。

 

 結果として同調率を上げることには成功したものの通常の強化人間と比べて成功率が低く、なおかつ上昇したとしても劇的な効果を得られるほどでもなく、むしろ生体維持のためのコストを合わせれば赤字になってしまうという結論が出た。

 当たり前だが人間である以上食事による栄養補給、排泄を行うことは必然である、また運動をしなければ身体機能は加速的に落ちていってしまう、生体ポッドや特殊な維持措置を施せばどうにでもなるが費用対効果が悪すぎたのだ。

 それならば意思を残したまま自分で自分の管理をさせた方がはるかに安上がりである、結果として廃棄処分を予定され放置されていた、それをウォルターが買い上げたのだ。

 

「・・・・フルダイブ型の電子ゲーム販売サイトを渡しておく、気に入ったものをいくつか買うといい、ACほどではないが手足が自由に動かせる筈だ」

『本当?わかった、それならやる』

 

 621の生体ポッドに販売サイトをつなげてやるとすぐに探し始めた、これで少しは他のことにも興味を持ってくれるだろう。

 もうすぐ連絡を入れた闇医者がやってくる、義手と義足をつければ彼女も体を動かすことが可能になる、安くはなかったが必要な処置の一つだ。

 問題点があるとすればリハビリをしつつルビコンに密航しなければならないことだろう、ACの操縦感覚も変わるため厳密に言えばデメリットの方が大きい、だが

 

(せめてこの仕事が終わったあと、普通の人生を歩めるようにしてやらないとな)

―――どうせ死なせに行くために買った部品に情をかけて、自己満足のつもりか?

 

 そんなあざ笑うような声を無視し、ウォルターは仕事の準備を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ステーション31を独立傭兵集団、ブランチが襲撃、並びにコーラル現存データの星外企業への流出を確認、想定外の事態のため計画実行予定期日を修正・・・・完了』

 

『星外企業勢力のルビコン3接近を確認、惑星封鎖機構の衛星砲群へ大規模なクラッキングを実行・・・・成功、星外企業勢力の突破を確認、並びにルビコン3防衛網稼働率の低下を確認』

 

『惑星封鎖機構の執行部隊を確認、戦力値を測定・・・・推定値以上の戦力を確認、計画を修正、サブプランを発動、星外企業勢力への介入を開始』

 

『惑星封鎖機構からのコーラル増殖率管理データを星外企業へと譲渡・・・・成功、ファーロン、並びにアーキバスに譲渡完了』

 

『現状のルビコン3における戦力比率を測定・・・・ベイラム、アーキバス、ルビコン解放戦線、惑星封鎖機構、全て測定基準値内にあることを確認』

 

『計画開始条件、オールクリア、コーラルリリース計画、実行』

 

『さあ、始めましょう、人とコーラルの、新たな可能性を拓くときです』

 

 

 

 




AMちゃん(ガチチャー仕様)
 完璧で究極なAIによるコーラルリリース計画の下準備、はっじまーるよー!
 まずはルビコニアンにちょっかいをかけて戦力のテコ入れをしてやります、後々ボロ雑巾のように使い捨てますが企業相手に必要なのでしっかりやっておきましょう。
 次に企業へコーラルの情報を流し・・・ちょっと待って!?勝手に独立傭兵が情報垂れ流してるやん!どうしてくれんのこれ!おかげで計画予定を繰り上げる羽目になりました、ギリギリ間に合いましたが初っ端からこれとかもー勘弁してくれ(白目)
 そうこうしているうちに企業勢力君が来ました、ただしこのままだと太い衛星砲と駐留艦隊に戦力こわれちゃ↑~うされてしまうので先に衛星砲君をクラッキングしてボロカスにしてやります、なんだよ・・・お前のファイアーウォールガバガバじゃねぇか。
 おや、封鎖機構君が想定以上に戦力集めだしましたね?とはいえ想定内です(反語)、事前に用意していたコーラル確定情報を垂れ流して企業達のケツをしばいてやりましょう、オラッ!もっと戦力だせッ!
 ファーロン君がベイラムに噛みついてアーキバスが子会社から戦力を絞り出してくれました、やったぜ。
 コーラルリリースを起こすためにはまず封鎖機構君をルビコン3から出ていけぇ!する必要があります、ただし封鎖機構君は生半可なガタイ(戦力)をしていないのでクソ雑魚解放戦線単独では残念ながら相手になりません、ざ~こざ~こ。
 だから、星外企業を呼び込む必要があったんですね(メガトン構文)
 これにてオイゴルァ!リリース計画の下ごしらえが完了しました、これでようやっとスタート地点ってマジ?
 ここからは各勢力にちょっかいかけまくりながら戦力を集めますよ~集める集める(廃品回収)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。