異世界でも刀を振れるだけのデブオタなワイ、弟子が出来る   作:胡椒こしょこしょ

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デブオタ、弟子が出来る

朝。

耳心地の良い小鳥の囀る声が道場の中でも微かに聞こえる。

 

「ふしゅうぅぅぅぅ....ふしゅうぅぅぅぅ.....。」

 

そんな中で、僕は変わらず竹刀を振るう。

汗が額を流れ、僕自身のこのふくよかなお腹を流れていくのを感じる。

デブ特有の馬の嘶きのような声で小鳥の声が掻き消えるのが少し忍びない。

 

今振り下ろしたので何千回目かも分からぬ素振り。

熱を帯びる身体を朝の清涼な空気がひんやりと冷やしていくのを感じていた。

 

僕は、転生者だ。

生前はそれこそアニメや漫画などのオタクコンテンツに親しんで、飽食の限りを尽くした所謂デブオタ。

そんな僕も山でのキャンプの帰り。

突如振り付けた豪雨を木の下で雨宿りしている際に雷がその雨宿りしている木に落ちて、木を伝った雷に僕も打たれて今に至るというわけだ。

 

そうして生れ落ちたのがここアルスフィア大陸のニッポ地方。

こんな地名をしていることから分かるだろうが、所謂剣と魔法的なファンタジーの世界だ。

魔物も居るし、なんでも魔王だったり勇者だったりも存在しているらしい世界。

 

ニッポ地方は地域特有の侍などの少数ではあるものの独自の職業があったり、ニッポ文化という固有の文化を有した地方である。

まぁ、つまりはありがたいことに食文化とかそう言う所は日本的な場所に生まれ育つことが出来たのである。

 

僕の家はニッポ地方、ヨロズ村の傍にある森林など自然豊かな『アマハラ山』の中に建つ武家屋敷。

所謂“サムライ”と呼ばれるこの土地固有の戦士職を代々受け継いできた多分それなりの名家だ。

その証拠にこうして山の中とはいえ、広い敷地に道場すらも付いているような場所に住んでいるのだから。

 

まぁそういう家庭で育ったからこそ、幼い頃からサムライになる為のかなり熾烈な鍛錬を積まされたものだ。

そりゃ生まれたばかりのなんの力もないガキが順調に家業を継ぐことが出来るような体つくりから入るわけなので苛烈になるのも当たり前なのだが。

正直、こうして毎日の日課として慣れるまでは辛い物だった覚えがある。

 

けれど、こうして真面目にやってこれたのはこの世界は魔物とか居る以上は僕が元々居た平和な現代日本と違って戦う力がないといざという時マジで死にかねないということ。

そして何よりもせっかくただのデブオタにこんなチャンスが巡って来たのだ。

ファンタジーな異世界に転生したんだったら、せっかくだから今までインドア派デブオタクな自分から変わりたいと思った故である。

今ではそれなりに刀も振るえて戦えるので、やっぱり人間頑張ってみる物である。

 

....ただ一つ誤算があるとすれば、正直今の僕は刀が振るえて戦う為の力を持っているだけで転生前のデブオタからあまり変わっていない点だろう。

いや、本当にそれはしょうがないんだよ~。

 

僕の生まれた家であるオオヤマ家が相伝している“不動流”は『動かざるごと山の如し』を指針としている流派であり、どっしりと構えた所から放たれた二の太刀いらずの一撃を掲げてる。

それ故に、山のようなガタイが必要とされて当主となる人間は筋肉をつけると共に太らされるのである。

その結果が僕のお腹であり、デカい図体である。

 

...まぁ、なんかおかしいなと思いつつも途中から僕自身『こんな食べても良いのかな~なはは~~!』って楽しんで太っていたんだが。

だってほら....ご飯っておいしいじゃん。

それでお前太れって出されたら食べ過ぎちゃうじゃん。

 

そんでもってもう一つのオタクの方は、なんていうかこの世界確かにアニメのような物はないけれどなんと小説や漫画の類のモノはある。

僕はラノベや漫画をよく読んでいた性質のオタクだ。

そりゃ買って読む。

 

....ぶっちゃけ魔物による死が近くに転がっている割と殺伐とした世の中だからか萌えコンテンツの需要が高くてクオリティもそれに従って高い。

どっかの寺院ではお前、これ明らか美少女フィギュアだよね?っていう物を3代前の当主から引き継いできた大事なご神体と言って崇めていたりするし、多分僕以外にも転生者が居たんだろう。

 

そして家の方も別に鍛錬とかに支障きたさなければそういうの見ても良いみたいなスタンスだったので、そりゃオタクのままだよ。

供給はあるもの、この世界。

 

まぁなんだ....僕のオタク趣味の方はまだしも、体格の方はなんとも言えない気分になる。

山を下りてヨロズ村に出向くと『オーク剣士様だ....』とかざわつかれるし、要請があって西の方にあるこの世界における主要地方であるロッパ―ナ地方に出向いたらなんか『オークロード』とか『抜豚斎』とか変な仇名付けられてたくらいだ。

 

はぁ....家の都合的にも、僕はこのままデブを貫かないといけないわけだからどうしようもないけれどちょっと凹むよなぁ....。

 

「ふしゅうぅぅ....朝はこのくらいにしておこうかな..ふしゅうぅぅぅ....。」

 

素振りを辞めると、荒い息を吐きながらそう独り言ちる。

考え事をしている間に結構やっちゃったなぁ.....。

この後、人が来る予定だから身体を清めとかないと。

 

ロッパ―ナ地方において冒険者が一番多く、つい4日前に大きなギルドがある街ビギナスの方から書状が届いた。

“サムライに興味のある人材が居たのでそちらを紹介しました。馬車に乗せてそちらに手配したいと思っているのですが、いつがよろしいでしょうか?”とのこと。

僕はその書状に『今週の日曜日でお願い致します。』と返した。

 

そして今日は日曜。

向こうの方で何かトラブルが起こらない限りは、お客さんが来るのだ。

 

だからこそ、その前に身体を清めないといけない。

やはり、僕も生前と同じ...いや、更に酷いかもしれないが太っているからだろうが“体臭”がきついのだ。

特に鍛錬後とか、自分でも結構獣臭いなって感じてしまう。

人間は己の匂いを気づきにくいにも関わらず、自分でそこまで思ってしまうのだ。

いわんや、他人であるなら猶更という物だ。

 

だからこそ、汗を流して石鹸で身体を洗わないとなのだ。

 

にしても、サムライに興味があるって....こんな地方の固有職に興味があるなんて変わった人だ。

どんな人なんだろうか....?

 

「タノモぉ!タノモぉ~~~~!!」

 

そう物思いに耽っていると、急に外から大きな声が聞こえる。

動物でもなければ魔物でもない。

なんなら人間の...それも明るい女性の声。

 

な、なんだ....?

何事かと思って、外に出る。

すると、そこには一人の少女が立っていた。

 

仄かに日焼けしているが元々の白さが伺える肌。

ここらではあまりお目にかからない金髪と碧眼。

白いタンクトップ越しからでも分かる大きな胸はパッと見で思わず目が行ってしまう程で、スタイルも良い。

そして腕と腰にはなんか日本風な感じの意匠の赤い籠手と腰当を着けていた。

....恰好からしてみても、転生前にSNSとかで見るようなエッチな外人コスプレイヤーみたいな感じの子だ。

 

その子は僕と手元の紙を交互に見やる。

そして真っ直ぐに僕に目線を向けて問うてきた。

 

「人相書きとおんなじデス!...ということは、アナタが“フドースタイル”のマスターってことでダイジョブデスか!?」

 

「あっ、あっ...ハイ、父上から継いで今はぼ、僕が当主です....。」

 

人相書きって、なんか指名手配されてるみたいだな。

ウォンテッドって感じ。

そんな風に呆れながらも、やっぱりこんな美人と顔を突き合わせて喋るとやっぱりドモってしまう。

生前も今も童貞、そして人はそう簡単に変われないと言われるようにデブでオタク。

そんな人種からすれば目の前にいる女の子のような人種は本来言葉を交わすどころか関わることすらない人種。

こんな可愛い女の子とスムーズに話せるわけないだろっ!いい加減にしろっ!!!

 

「オーゥ!やっぱりデース!ワタシの名前はシンディー・パティストンと申しマス!単刀直入に言わせてイタダキマース!」

 

「ちょ、何やって......!?」

 

「ワタシを、フドースタイルの...アナタの弟子にしてくだサーイッッ!!!!」

 

シンディーさんは目を輝かせると、急に地面に腰を下ろして三つ指を付き始める。

目の前の女の子の急な行動に戸惑っていると、そのまま地面に額を擦りつけた。

...要するに、初対面の金髪美少女に土下座をされたのだ僕は。

 

え、えぇ......?

 

 

 

 

 

 

あのまま家の前で地面に額をこすりつけさせるわけにもいかないので、取り敢えずシンディーさんを家の中に入れることにした。

風呂に入ってから会いたかったものだが、このまま人を待たせるのもどうかと思ったので取り敢えず予定を変えて朝食を作ることにした。

一応要るか聞いてみたら、凄い勢いで首を縦に振ったので二人分である。

 

「えーと、ということはシンディー...さん?キミがギルドがここを紹介した人...ってことでま、間違いないかな?」

 

「シンディーで構いマセーン!師匠デスから!」

 

「いや、まだ弟子とかそういうのは決めてもないから。早いから...ねっ、一旦落ち着こうか?お茶...飲むかな?」

 

「ニッポのティー!大好きデース!!」

 

もう弟子面なんだけどこの子....。

気が早いことこの上ない。

まぁでも、正直金髪碧眼の時点でロッパ―ナから来たってことはよくよく考えれば分かることである。

ニッポ地方で生まれ育った人にはあまり見られない外見的特徴だからな。

 

「ズズズ....うん、おいしいデス!ワタシ、ニッポの文化がダイスキで故郷の村に居たトキから本とかでベンキョーしてたデス!それでサムライに一番興味を持ッテ、ビギナスに出てきたデスけどサムライになれないって言われテ!ここを紹介してもらいマシタ!!」

 

「あ、そうだったんだ....遠路はるばるご苦労だったね。」

 

確かに、サムライはニッポ地方固有の戦士職。

それもその土地ごとに居るサムライからの指導を受けたことをギルドに示すことで初めてなることの出来る仕事だ。

まぁそんな七面倒な戦士職になる為だけにこんな所に来る人なんか今日まで居なかったんだけど。

 

....それにしても。

 

「なんだか変わったイントネーションだね。」

 

「ア、アウゥ...気になったならスイマセン....。ワタシ、ロッパ―ナをかなり西に行ったトコロにあるアメリア地方のはじっこの村で生まれマシタ....だから共通交易語、あまり得意じゃないデス....。」

 

「あぁ、いや大丈夫!なんとなく気になっただけだから!気にしないで。」

 

やたらカタコトだなって思ったけどそういうことか。

共通交易語というのは元々は各地で交易を行ってきた行商人が不便ないように統一した言語のことだ。

どこの地方の人間とも話が出来るという点で各地を行き来することの多い冒険者にも用いられるようになって、今では完全に定着して主要言語となっている。

とはいえ、ロッパ―ナから離れればそりゃ段々と言語にもその地方特有の味が見られてくるという物。

そんな地方のさらに田舎の村生まれであるのならば共通交易語が苦手であっても不思議ではない。

 

にしてもアメリアか....。

荒野が多くて結構環境が厳しいらしくて、固有の職業としてカウボーイだったりが居るって聞いたな。

やっぱり名前的にもアメリカっぽい感じなんだろうな。

 

「よかったデス....。ただ今はまだ師匠と呼べナイならアナタのことなんと呼べば良いんデショウ....?オジサマ....?」

 

「...キミ、何歳?」

 

「エイティ......18才デス!」

 

「...僕、二十歳だから。あんまり変わんないからね?歳。」

 

「す、スイマセン!カンロクあるからつい....ワタシ、無礼者デシタ.....!!」

 

「いや、べ、別に僕慣れてるし....そんな謝らなくても良いよ。」

 

なんならオークとか仇名付けてくるより100倍マシだし。

太ると老けてみられるのは生前から味わってることだしな。

なんなら流派の為だったりするので、今の僕は自分のデブを悩みではあるものの誇りにも思ってはいるのだ。

向き合うさ、そりゃあね。

 

「でもぼ、僕の自己紹介がまだだったね。僕の名前はオオヤマ・トーシロー。姓がオオヤマで名前がトーシローだよ。」

 

「ニッポネーム!やっぱりカッコいいデス....!ヨロシクお願いしマス、トーシローサン!」

 

「う、うん....よろしく....?」

 

何をよろしくなんだろう....?

まぁ、そんなことは重要じゃないか。

今は....取り敢えず御飯だよね!

 

取り敢えず焼き上がった魚の干物を皿に載せて、お茶碗にご飯をよそう。

...僕用のお茶碗しかないから、シンディさんの分が凄く少なく見える。

で、でもしょうがないよね!

寧ろ転生してからデブが食う量しかよそってないのに、普通の人が食べる量を覚えてる方を褒めて欲しい物である。

そう思いながら味噌汁をお椀に注ぐ。

 

そのままそれぞれを居間のちゃぶ台に運ぶと、僕も座布団に座ろうとする。

...いや、先に食べてもらうか。

自分が風呂にまだ入ってないことを思い出した。

流石に僕の汗臭さで一緒の食卓に座るのは不味いだろう。

せっかくニッポが好きで来てくれたんだ。

ニッポ食を食べるのに、その味を損なう真似をするのはなぁ....。

 

「シンディーさ...し、しし、シンディー、先に食べてくれてい、いいよ。」

 

「ハイ!...アレ?トーシローサンは一緒に食べないデスか?ニッポでもおんなじテーブルを囲ンデ親交を深めるって聞いたデスけど....もしかして、またワタシ無礼者デシタか...?仲良くなりたくないデスか....?」

 

“さん”と付けようとすると頬を膨らませてジト目で見つめてくるので、折れる形で名前呼びする。

....正直、初対面の女の子を呼び捨てするなんてしたことないので慣れない。

慣れないことをやっているので滅茶苦茶どもってしまった。

 

それになんというか、僕が一緒に食卓に着かないことに対してなんだかすごく悲しそうな顔をするシンディー。

凄い、悪いことしちゃってる気分だ。

ただ僕が臭いから御飯一緒に食べるのはどうかと思ってと言うのもそれはそれで自分にダメージあるな。

 

...いや、女の子が今目の前で悲しんでるんだ。

自分が傷つくからなんだ、ちゃんと理由を説明してやるべきだろ。

デブでオタクで、その上思いやりもないと来たらもう終わりだぞ?

そこだけはなくしちゃダメだと思う。

 

「そ、そうだね....ほら、僕さっきまで鍛錬してて汗...凄く搔いたんだ。体質的に体臭がね....一緒に食卓を囲むのは気分を害するんじゃないかって思って。」

 

「スメルデスカ....?ふふっ、なーんだそんなことデスか!全然ダイジョブデス!」

 

「いや別に気を遣わなくても.....。」

 

そう言おうとした瞬間、シンディーが立ちあがる。

急に歩み寄られてドギマギしていると、いきなり僕の身体に顔を近づけると鼻を鳴らした。

 

「んっ...❤お”っ”っ”❤オ...オゥ....❤ねちっこくてキョーレツなスメルです....すごっ❤すぅぅぅ...はぁ~~~、くっっさ❤」

 

「ほ、ほら...臭いから...。」

 

「待ってクダサイ!動かないデ....すぅぅぅ..❤お”ほ”っ”❤コレ....頑張った人のスメルデス...❤ワタシ、頑張った人のスメル...大好きデス...❤ヤッッバ....コレ、全然気になりマセン...一緒にご飯食べマショ...?ワタシ、トーシローサンと仲良くなりたいデス....ダメ....?」

 

「わ、分かった...分かったから....た、たた、食べるよ、一緒に....。」

 

女の子に臭いと言われて少し傷つきながらも距離を開けようとすると、急に手を取られる。

両手で手を包み込まれながら、こちらに対して上目遣いで見つめながら首を傾げるシンディーさん。

僕は思わず目を背けて、言われるがままに首を縦に振っていた。

 

び、ビックリした....こんなん僕が前の世界から酸いも甘いも噛分けた人生を送ってなかったら好きになっちゃってたくらいの破壊力だよ。

手を取って上目遣いで見つめる....童貞を殺す服とは比べ物にならない程に凶悪な行動だ。

鼻の上らへんにそばかすがあるものの、元気な印象を受ける整った顔立ち。

そんな顔をした少女が碧眼をこちらに向けて熱い視線を送っているのだ。

そりゃ目ぇ合わせらんないよ。

 

アメリカっぽい土地から来たっぽいし、人との距離感が近いフレンドリーな子なのかもしれない。

いや、偏見っていうかイメージでしかないんだけど。

それか弟子になりたいから少しでもよく思われようとした行動だろうか?

だとしたら抜け目のない行動である。

 

僕が了承すると、うきうきとした様子で食卓へと戻っていくシンディー。

そして食卓に着くと直ぐに、こちらに目を向けた。

 

「そーだ!ヨロシければ、“ナットー”いただけマスか?近くの村に寄ったトキに食べたラ、すごくおいしかったデース!」

 

「え、納豆....!?良いけど....変わってるね...?臭いってロッパ―ナの人から結構嫌われてる食べ物なんだけど。」

 

「ワタシ、くっっさい食べ物ダイスキデース!クサイ飯、サイコーデース!」

 

「へ、へー....ほんとに変わってるね。」

 

臭い飯最高ってパワーワード初めて聞いた....。

というか僕の臭いもそうだけど、単純にこの子の嗜好がねじ曲がっているっていうか....変わってるって説ないか?

...ありそう。

そもそもこんな東の辺境地域にただサムライになりたいってだけで来るような子だ。

しかもビギナスのギルドで一度ロッパ―ナではサムライにはなれないって知っても折れずに。

そりゃこんな可愛くても相応に変人だよなぁ.....。

 

そう思いながらも、床下を開ける。

するとそこには冷室で冷やされた食材たち。

そんな食材たちの下で布に包まれた氷結石が今も尚冷気を放っていた。

 

この世界に当たり前だが冷蔵庫はない。

けれど、こんな風に魔法やアイテムを駆使してそれに近しい物が発明されていたりするのは不幸中の幸いという奴だろう。

そこから納豆の入った藁を取り出すと、皿に映して醤油をぶっ掛けた。

 

「はい、納豆。」

 

「オゥ、アリガトウございマース!すぅぅ...おぉっ❤くっさ...❤イタダキマース!」

 

「いただきます....。」

 

納豆を少し嗅ぐとうっとりしながら、箸で混ぜ始める。

...やっぱ変わってんなぁ。

勝手な感想だが、見ていてちょっとした変態性みたいなのを感じるよ。

 

僕もちゃぶ台に着くと、手を合わせる。

そして魚の身を解しながら御飯で掻き込んだ。

...まぁ御飯も作ったことだし、本題に入るとしようかな。

飯を食べる場であれば、大事な話し合いも円滑に進みやすい。

前の世界からの僕の生きる知恵だ。

 

「...僕も単刀直入に言わせてもらうけど、今の不動流では門下生とかは取ってないんだ。弟子も同じでね。」

 

「ホワイ!?な、なんでデスか....?わ、ワタシ、確かにダメなトコロありマスけど、パッションなら誰にも負けない自信がありマス!」

 

「いや、その...キミの問題って言うか寧ろ僕の方の問題でね。僕の父上が年取ってから死ぬ前の遊行として旅に出る為に僕が技を修めたと見るや否やさっさと家督を譲ってしまったんだ。だから、ほら....僕の年齢は今二十歳と言ったでしょ?まだまだ若造だし....そんな僕が誰かを指導できる立場とも思えない。何を教えてやれるのかって話なんだよ。そんな無責任な真似は出来ないから、本当に申し訳ないけど帰ってもらうしか....。」

 

そうだ、僕はまだ人に何かを教えてやれる立場に居ない。

形的には意図せず転がり込んできた当主の座。

そんな人間が弟子を取るというのは如何な物だろうか。

 

「そんな!ソレならまず家事手伝いからでもイイので置いてクダサイ!ワタシ、掃除に料理に何でもデキマス!お願いしマス!なんでもしマスから!!!」

 

「なんでもしますってキミねぇ...。」

 

年頃の、それも彼女のような女の子が言うには軽率すぎる言葉をさらっと言う物である。

必死な様子で頼みこみ、僕に縋るような視線を向けてくる。

 

なんでもするって言葉を聞いて、思わず僕の頭の中のキモオタが『ん?今なんでもするって言ったよね?』とほざきやがる。

おまけに僕を拝み倒すことで合わせた腕によって左右から潰されてタンクトップ越しにたわんだ胸につい目が行ってしまった。

でっっっか....谷間なっっっが....!?

そんな不意に生まれた下心が僕の胸の中で彼女の言葉を正当化しようする。

『熱意は確かに本物のようだから、一度置いてやるくらい良いのではないか?』と。

 

「....分かった。そこまで言うのならまずはキミが言う通り雑務から。...でも、ここで学べることなんてないって思ったらさっさと見切りをつけて他所へと行った方がキミの時間的にも良いってことは忘れないでほしい。」

 

...あぁ、つい押し負けて了承しちゃった。

ひょっこりと顔を出した下心、そして童貞ゆえの女性免疫のなさから可愛い女の子に必死に頼み込まれてしまってつい首を縦に振ってしまったのだ。

そんな自分の判断に言い訳をするように、僕はここで学べることがないと思ったら去った方が良いということを言葉に付け加えていた。

 

我ながら....己の我欲でわきが甘くなるなんて、未熟者だ。

“動かざることを山の如し”とは程遠い。

やっぱり僕に流派を教える資格なんてないんじゃないかなぁ....。

 

心中後悔する僕を後目に、目の前のシンディーは鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべたかと思えば目を輝かせる。

そして箸を手放すと、急に僕の手を両手で取った。

 

「ほ、ホントデスカ!?や、ヤッター!ヤリマシター!!これから頑張りマスッ!ヨロシクお願い致しマース師匠!!」

 

「あぁ、うん。よ、よろしく...いや、ちょっと気が早いけどね。まずはキミの言う家事手伝いとやらをやってもらって、それで教えるかどうかを決め.....。」

 

「ハイ!アイノゥ!分かってマス師匠!!」

 

「ほ、ホントに分かってる....?」

 

二度目とはいえ、急に手を握られてついドギマギして視線をそらしてしまう。

そんな僕とは対照的にシンディーはまっすぐこちらに嬉しそうな笑みを見せていた。

 

弟子候補?...みたいなのが出来ちゃった。

これからどうしよう.....。

僕に突っ込まれてもニコニコと笑っているシンディー。

今後のことを思う、自然と出る溜息。

それを飲み込むように味噌汁を口にした。

 

 

 

 

 

 

ワタシがニッポに興味を持ったきっかけは二つありマス。

 

一つは依頼でニッポから来たサムライさんを一目見マシタ。

女性の方だったケド、片目に眼帯を付けていてとてもクールデシタ!

 

ソコから色々と行商の人からニッポについての本を買っテ、色々とニッポについて....特にサムライについて調べました。

けれど、サムライになるのに訪れたビギナスではサムライになれないって言われテ...。

オーマイガ...ドウシヨ...って悩んでたワタシに受付の人がヘルプしてくれマシタ!

 

ナンデモ、交流があるニッポのサムライの家系が何個かあるカラと。

そこで何人カその家のリーダーの人相書きを受け付けの人が書いてクレテ、その上デ当主が女性の武家を紹介してもらいマシタ。

ただ、この人はインドアでロッパ―ナやここのギルドとの交流が薄いのがナンテンだって。

 

けどワタシの目はその人ではなく、別の人に向いてマシタ。

無骨でワイルド、それでいてファットな男の人。

その見た目がワタシのハートをキャッチしたのデス。

 

ニッポの本を行商人から買うと言ってモ、アカデミックな本がいつも入るワケではアリマセン。

田舎のアメリアに入るトキには古本もほとんど売れてシマッテ、コミックなどの娯楽の本しかないトキアリマシタ。

そこで、ワタシはサムライだけでなくニッポの文化にハマったのデス。

特にスキなのは、『くっ!殺せ!』という文化デース!

ニッポから見た女騎士のイメージがワカッテ、すごく興味深いデス!

それに読んでいてドキドキするし、身体がホットになりマス。

 

そしてその人はそんな読んでいてドキドキするようなコミックの女性の相手をスル男性やオスの魔物の挿絵にソックリでした!

ワタシ、知ってマス!ニッポの本では意地っぱりな女の子や家柄に縛らレタ女の子を解きほぐしテ、ハッピーにしてくれる...そんなロッパ―ナの童話におけるプリンスにあたるのがそういうビッグだったりファットだったりする男性やオスの魔物なんデス!

オゥ...すごい、この人...会ってみたいデース....❤

気づけばハァハァと息を荒げながら、この人の事を聞いてマシタ。

 

ギルドの人はすごく驚いテ、とても強い知り合いダカラ言わなかったケドちょっと顔から女性のウケが悪いだろうカラ紹介しようか迷っタとも語ってマシタ。

その言葉でニッポの本では常に女の人と絡んでるのはこういう男性なのデ、やっぱりこちらとは文化が違うんダナと改めて思ったモノデスね...!

 

そして今日、ワタシはその人と対面してマス。

道中買ったサムライテイストのアーマーを身に纏ッテ、学んだサムライの来訪のアイサツをシマス。

気分はドージョーヤブリデスね...!

 

そして、その人はゲートからのっそりと出てきマシタ!

人相書きの通りのフェイス...凄い、挿絵の通りデス!

ビッグでファット...それでいてフーッフーッと吐息荒くする様はワイルドで狂暴なグリズリーのよう....。

カンロクもあって、サムライってカンジデス...下手な事したら頭掴まれちゃいマス....❤

 

とても強そうデ...怖いデス....❤

なにもかもが物語の通り、生意気な女の子をボコって分からせてアゲル男の人ってカンジ....❤

 

そ、そうだ...ワタシ、弟子にしてもらいにきたんデシタ....❤

で、でもどうしたら....そうだ!

ワタシ、こういうトキの作法勉強しマシタ!

 

このようなオス様に立ってオネガイなんて無礼者すぎマス...!

ワタシは下、下の立場デスから....ニッポドゲザ....ニッポドゲザが相応しいデス...❤

 

「ワタシを、フドースタイルの...アナタの弟子にしてくだサーイッッ❤❤❤❤」

 

地面に頭、コスりつけて頼みこみマス。

お”っ”❤この姿勢、ヤッッベェ.....❤❤

身体ゾクゾクして....頭ハピハッピーデース❤

この姿勢正解ッ❤ワタシみたいな田舎から来た女がオス様に頼むトキはジャパニーズドゲザしかアリエマセーン❤❤❤

 

サムライになりたくてここに来マシタけど、早くも新しい自分見つけちゃってマス....❤

ココならきっともっとグロウアップできる気がシマース❤

ニッポサイコー❤

ここに来てよかったデース❤❤




金髪カタコト美少女サムライ良いよね。
まぁまともな本も読んでるけど、同人誌も読んでニッポ文化を勘違いして勝手に盛り上がってるマゾメスなんですけど。
コイツ、ナチュラルに土下座して興奮してやがる....っ(戦慄)

主人公がデブでオタクで強いと癖が強いので、ヒロインはそれ以上の癖がないとなって思って書いたらこうなりました。
今後続くとしたらこういうヒロインが何人か出てきます、覚悟しといて下さい(犯行予告)
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