オレは今年から高校に通うことになった。その高校は高度育成高等学校。政府が作り上げた未来を担う者たちを育てる場所。ここは外部からの介入が出来ないことがあってここに入学することになった。学校と呼べるような施設に行ったことがない。この年の人間は普通、小学校、中学校と通っているのだろう。
だがオレにはそういう経験がない。だから学校というシステムは知っているが通うのは初めてなのだ。
オレは三年間の間この学校で目立たなく平穏に暮らせればそれでいい。それ以上は望まない。
そんな感じで今日からオレの高校生活が始まる。
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バスから降りてすぐに見える大きな建物が高度育成高等学校。敷地は町一つ分にも匹敵するほど。他の高校に関しての知識はないから何とも言えないがこれほどまでに広い敷地を持つ、高校も珍しいのではないんじゃないだろうか。
目の前を歩いていた金髪の女子生徒が落としたであろうハンカチが地面に落ちていた。拾わないという選択肢もあるがここで見逃そうが拾おうとメリットもなければデメリットもない。なら拾っておくか。
「おい」
「あ、はい、何でしょう?」
呼びかけると前の女子生徒は振り返り、何で呼び止められたのか分からないというような顔をしていた。だがオレの右手に自分のハンカチがのっているのを見ると…分かったようでこちらに歩み寄って来た。
「落としたぞ」
「あ、ありがとうございます!」
彼女はオレの差し出したハンカチを受け取ると小さな笑みを浮かべながらこちらにお礼を口にして去って行った。オレも彼女の後を追って学内の敷地へと足を踏み入れていくことにした。
入学式は理事長の挨拶や教師陣の紹介、生徒会長の挨拶なども二時間足らずで終わり教室に移動する事になった。この学年は四クラスで構成され一クラスの生徒の人数は約三十人程度。だからこの学年の合計人数は百二十人程度。一斉にその人数が移動する事になればそれなりに込み合う事になる。
だから少し落ち着いてから帰ろうと考えて今は端末をいじりながら時間を潰している。だが急に体育館の中の騒がしい雰囲気が消えた。逆に静まり返った。
それを巻き起こした人物は…白髪の女子生徒。さっきまで混雑していた体育館の入り口が今では静まり返っている。いや、正しく言えば一年生が道を空けていると言うべきだな。白髪の生徒の近くにいる者たちが彼女に道を開けている。ASPのようだな。
そして少しずつこちらに向かって歩みを進めて来る。白髪の女子生徒が付いている杖の音が体育館中に響いている。
その人物はオレの目の前で歩みを止めた。
「あなた」
「…なんだ?」
「私は二年Aクラスの坂柳有栖と言います。あなたは綾小路清隆くんで会っていますね」
目の前の人物はオレの名前を普通に口にしている。名前が分かるような物を身に付けてはいない。少なくともこいつはオレの事を知っていたということだ。
「………」
「そんなに怪しまないでください。私はあなたと良い関係を築いていきたいんです。だから今日はその挨拶に来たんです」
見た目だけならとても普通な女子生徒だが…不気味な人間だ。そして何よりもこんな奴に目を付けられている時点で俺の高校生活が普通に過ごせるのか疑問だ。
「そうですか。オレの名前は綾小路清隆です。よろしくお願いします」
それから少し話して坂柳たちは体育館を去って行った。だが坂柳が去った後の体育館は微妙な雰囲気だったがな。急に上級生が会いに来たのだからこんな雰囲気になるのは必然なのかもしれない。だが坂柳たちのお陰で体育館にはさっきの騒がしさが無く、今なら簡単に体育館から出られそうだし出るか。
そしてオレは校内を歩いて回り、自分が割り当てられた教室…1年Dクラスを見つけた。教室の中からは騒がしいとは言えないが誰かがもういるようで声は聞こえてくる。教室の外で立ち尽くしていても始まらないからオレは1年Dクラスに足を踏みいれることにした。
するとなぜかクラスの中央にいた金髪の生徒がこちらに向かってかけてきた。
「同じクラスなんですね、私の名前は七瀬翼と言います。一年間よろしくお願いしますね」
目の前まで来ると自然な笑顔を浮かべて彼女はオレに挨拶をした。最初は誰だか分からなかったがこの金髪の女子生徒は今朝ハンカチを拾った生徒か。
「オレは綾小路清隆だ。別にそんな畏まったような口調じゃなくて良いと思うが…よろしくな」
オレの方は正直な事を言うと忘れかけていたんだがよく覚えていたな。そんな特徴的な顔をしている方ではないと思うがな。
そしてこの日から高度育成高等学校での生活が始まった。
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