最近の私がおかしいのは自分でも分かってる。トレーナーと話すとなんかおかしな気持ちが湧いてくる。前まではトレーナーと話していてもこんなことはなかった。
「はぁ…本当にどうしたんだ、私は」
トレーナーのことが頭から離れない。他のことを考えようとしても絶対にトレーナーのことが頭の片隅にある。忘れようとしても忘れられない。確かに私にとってトレーナーはとても大切な存在。私の歴史を語る上でトレーナーの存在を欠かすことは出来ない。
「……とれーなー…」
あいつはここまで来るのにたくさんの苦労をしたはずだ。私だって自分の意志が強いから意見が対立した時には意見を曲げない。そんな私のトレーナーを継続させるにはかなり忍耐力が必要だったと自分でも思う。そんなトレーナーに私は何かを返すことを出来ているのか。
いつもトレーナーに教えてもらうばかりで私がトレーナーに対して何かを与えることを出来ていないのではないか。
そう考えだすと最終的に行き着いた先は……トレーナーが私に愛想をつかしてしまうんじゃないか。よくよく考えればトレーナーには苦労しか掛けていない。
――――――――――
いつものように廊下を歩いていると駿川さんに呼び止められた。
「あのトレーナーさん」
「あ、駿川さん、どうしたんですか?そんなに慌てて」
「最近、シリウスシンボリさんとはお会いになられましたか?」
「いや、シリウスから「三日間、トレーニングを休みにしてくれ」という連絡が来ていたので会っていないですね」
シリウスに事情などを聞くべきかと最初は思ったけど、聞いてほしくないから直接言わなかったのかもしれないと思い、何も聞いてない。
「…シリウスさんが三日前から学校に来ていないんです」
僕は駿川さんが口にした内容に驚きを隠せなかった。
「え、そうなんですか!?」
トレーニングは疲れたとかで休んで授業には普通に出ていると思っていた。まさか、授業の方まで欠席しているとは思いもしなかった。
「はい、連絡も取れていないですし、学園長もかなり心配していたんです。トレーナーさんなら何か知っているかと思って聞いたのですが…」
「すみません。ちょっとシリウスと話をしてみます」
「はい、お願いします」
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僕は駿川さんと話した足でシリウスの部屋に来た。
来る前に同室のナカヤマフェスタにも話を来たけど、この三日間の間は布団に包まってしまって全く話をしてくれないらしい。
「シリウス、いるか?」
「…………」
「入るぞ…」
僕は少しずつ部屋の中に入るとベッドの上に布団に包まっている…シリウスの姿があった。
「大丈夫?」
「…………」
その後も何度か、声を掛けたが反応はなかった。だが、寝ているわけではないのはすぐにわかった。だって布団が小刻みに振るえていたから。
このままでは埒が明かないと思い、僕は勢いよくシリウスの布団を奪い去った。抵抗されるかと予想していたが、予想以上に簡単に奪うことに成功した。
そこには目の疑うような光景が広がっていた。 いつも気の強くて、カリスマ性に溢れている彼女だからこそ、誰かに弱いところを見せることをしてこなかったはず。そんな彼女が…目を腫らして頬を伝わっている涙。さっきまでに泣いていたのが分かるほど。
「ど、どうしたの?シリウス」
「と、と、とれーなー」
「あ、うん、まずは呼吸を落ち着かせてからね。僕が息を吸ったら一緒に息を吸ってね。それじゃあ、せーの。まずは吸って……少しずつ吐いて……吸って……吐いて……吸って……吐いて…」
深呼吸を何度か繰り返すとシリウスの呼吸は落ち着きを取り戻してきた。
「落ち着いたかい?」
「……ああ」
「それじゃあ、どうしたの?少しずつでいいから説明してくれるかな」
シリウスがこんな状態になるということはかなり大きなことが起こったのだろう。事と次第によっては僕も考えなくちゃいけない問題かもしれない。
「……トレーナーが私の担当を止めたらって考えたら涙が止まらなくなったんだ。いつもお前が隣に居るのが当たり前のことだから、急に居なくなったら私はどうすればいいんだ…」
「大丈夫だよ。僕はシリウスのトレーナーを止めることは絶対にしないから」
僕は彼女の頭を優しく撫でながら呟いた。いつもの彼女なら「子供扱いするな!」と言ってくるところだが、今回に関しては何も抵抗していこない。
こんなに弱っているシリウスを見るのは初めてだ。よっぽどシリウスにとってショックだったんだろう。
「ぜ、ぜったいだぞ、ぜったい」
シリウスは捨てられた犬のような目をしながら僕の方を見ている。こんな時にこんな事を思ってしまうのはダメなことかもしれないけど……シリウスがとても可愛く見てもしまった。
トレーナーとしてこんなことを思ってしまうのはいけないことだと分かっている……でも、普段の凛々しさとは全く反対の彼女を見ると可愛いと感じてしまう。
「本当に大丈夫だから」
「ずっと一緒じゃなきゃいや!」
「ずっと一緒だよ」
僕は優しくシリウスを抱き締めて何度も「大丈夫」と口にした。彼女が安心するまでずっと。
それからシリウスは僕の側を離れなくなった。学園は勿論、私生活でも。無理やりにでも離そうとすれば彼女の心は一瞬で壊れてしまう。それぐらい脆い。
感想があれば。