アクアが子供を拾う   作:主義

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アクアが子供を拾う

 

苺プロの事務所の一角のソファーに赤ん坊が寝ている。その顔はとても安らかで幸せな夢を見ているのだろうと思わせてくれるほど。

 

 

「お前は…幸せそうな顔をしているな」

 

 

なんでこの事務所に赤ん坊がいるのかを説明するには昨日まで時間は遡る。

 

 

 

監督のところで作業をした帰りに苺プロに寄ると…玄関のところにゆりかごが置かれていた。そこでおかしいとは思ったが、覗き込んでみるとそこには生後間もない子供が寝ていた。

 

 

「誰かがここに捨てたのか」

 

それぐらいしか考えられない。どうせ育てるのが面倒になってこんなことをしたんだろうが、無責任だな。子供を作っておいて自分たちじゃ育てられないっていう理由で一つの命を危険に晒す。

 

 

 

そして俺は悩んだ末にそのゆりかごを事務所の中に入れることにした。さすがに事務所の外に置いておくのも酷だ。

 

 

「こんばんは~ってお兄ちゃん」

 

 

「ルビーか」

 

 

「珍しいね、お兄ちゃんが苺プロに来ているなんて」

 

 

「まあな」

 

確かにルビーが来るときに苺プロにいることはあんまりない。ルビーの人生にそこまで関わるつもりはないから干渉もしたくないが、アイドルになることだけはそうもいかない。ルビーは純粋過ぎる。ルビーのような人間はアイドルに向かないからな。

 

 

「お兄ちゃん、さっきから何見てるの?」

 

 

「これだ」

 

 

「なにぃ~~って…赤ちゃん!!!」

 

 

「まあ、その反応になるだろうな」

 

 

「え、え……お兄ちゃん、子供作ったの!?」

 

 

「そんなわけないだろ。事務所の前に置いてあったんだよ」

 

この妹の思考回路は少しおかしいんじゃないだろうか。

 

 

「…そ、そうなんだぁ…それにしてもこの子、可愛いね」

 

 

「…………」

 

俺たちのことを親だと勘違いしているのか、赤ん坊は俺たちの顔を見て笑っている。

 

 

「ねぇ…抱っこしていいかな?」

 

 

「やめとけ、お前が抱いて何かあったら赤ん坊の方が可哀そうだ」

 

 

「いいじゃん!この子だって私に抱っこされたいと思ってるよ!」

 

 

「いや、まず赤ん坊がそんなことを思うはずないだろ」

 

そんなやり取りをしていると苺プロの社長こと斉藤ミヤコがやってきた。

 

 

「それにしてもこの子、どうするのよ」

 

 

「施設に預けるのが一つだろう。この赤ん坊の親がどんな目的で苺プロの前に赤ん坊を置き去りにしたのかは知らんが、今の現状であれば施設に預けるのが一番安全だろう」

 

 

「え~~この子可愛いよ!」

 

 

「それがなんだ?育てるなんて言う気か?」

 

 

「だって…私、この子のこと好きになっちゃったんだもん!」

 

 

「おい、赤ん坊はそんな軽い気持ちで育てていいものじゃないぞ。赤ん坊を一から育てるとなればお金も掛かるし、時間も掛かる。何よりも…うちに赤ん坊をずっと見てられるような奴はいないだろう」

 

社長はもちろん、業務がある。そしてルビーや俺も保育園に通っている。これぐらいの子供を一人でほっとくなんて言語道断だ。それにそんなことをするならまだ施設の方がしっかりとお世話もしてくれる。

 

 

 

「そ、それでも…」

 

 

「だから、俺たちに育てられないだろう。只でさえも色々と忙しいんだ…これ以上、色々と抱え込めない」

 

まだ…『アイ』が亡くなってから1年も経っていない。アイが亡くなったことでこの会社も色々と大変な状況に陥っている。ネットの方に手を伸ばしてどうにかやっているらしいが、安泰じゃないだろうしな。

 

 

「でも、この子だって」

 

 

「だ・か・ら!」

 

俺が言おうとした瞬間に社長がそれを止めた。

 

 

「はいはい…静かに!」

 

 

 

 

 

 

「ルビーはこの子を育てたいの?」

 

 

「うん…」

 

 

「アクアは私たちにそんな余裕ないし、まだ施設の方がこの子にとってもいいと思ってるんだよね」

 

 

「ああ」

 

 

 

「どっちも間違ってないよ。ルビーのこの子を育てたいと思うことも別に悪いわけじゃないし、アクアの現実的に難しいのも間違いじゃない」

 

そんなことを言いながら、社長は赤ん坊のところまで抱き寄せた。

 

 

「昔を思い出すわね。よくルビーとアクアのお守りをさせられていた時をね」

 

子供を抱きかかえている時の社長はとても愛おしそうに赤ん坊のことを見ていた。その瞬間から結果は分かっていた。

 

 

それにさっきも言ったが、『アイ』を失ってそんなに時間が経っていない。時間で苦しみが癒えるなんてことがなくて…今もずっと苦しい。そんな時にこの『赤ん坊』が来た。絶対にこの赤ん坊を育てるとしたらこれから忙しくなる。

 

 

だけど、それがこの二人にとっては良いのかもしれない。忙しければ悲しんでいる暇なんてない。

 

 

 

「育てましょう!!」

 

 

「やった~」

 

 

「…はぁ…好きにしろ」

 

そしてその日から…赤ん坊を育てることになった。

 

 




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