アクアが子供を拾う   作:主義

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覚悟と目的

俺達は赤ん坊を育てるようになって忙しくなった。昼間の間は社長が面倒を見て、保育園から帰ってきたら俺やルビーが面倒するようにしている。保育園児が赤ん坊の面倒を見ているんだから…端から見たらちょっと異質な光景かもしれないな。

 

 

やはり幸か不幸か、俺達は『アイ』の悲しみにくれる時間もあんまりない。だけどそれでも、寝る時や保育園で一人の時とかは『アイ』のことを考える。あの時、もっとこうしていれば未来は変わったかもしれない。そう考えてしまうと…やはり暗い方向に考えはいく。

 

 

だけどいつまでも悲しみに浸ってもいられない。何よりも俺の目的は…アイを殺した奴を見つける。そしてそいつのことを殺すこと。

 

 

 

俺はリビングのソファに座っているが、ルビーは赤ん坊の事をずっと飽きずに見ている。

 

「エメくん~~」

 

これだけで分かった奴もいるかもしれないが、赤ん坊の名前は星野絵目羅瑠土エメラルド。俺も同じ境遇だったからどうしてもこういう名前だけは避けたかった。まじで…絶対にこいつが物心が付いた頃に命名したルビーのことを恨むことになるだろうな。命名した理由は…瞳が緑色だから。

 

 

そしてその絵目羅瑠土エメラルドから…最初の二文字を取って『エメくん』と呼ばれている。くん付けというだけでも分かるかもしれないが、男だ。

 

 

「お前は飽きないのか?」

 

 

「はぁ?なに言ってるの?お兄ちゃん。飽きる訳ないじゃん」

 

 

「そうか…」

 

 

「お兄ちゃんもこっちに来なよ」

 

 

「俺はいい」

 

 

「え~~エメくん、とっても可愛いのに!」

 

ルビーにとっては初めて自分よりも下の子ができた。だから姉としての自覚というものが芽生え始めているんだろう。かなり率先してエメラルドの世話をしている。

 

 

 

そしてそれから俺は小説を読み始めた。何かをしてないと『アイ』のことばっか考えちゃいそうだからな。アイのために…内通者は殺すが、そればっかり考え過ぎると俺という人間が復讐を遂げる前に壊れそうだしな。

 

「ほら、お兄ちゃん」

 

視線を本から上げていくとそこには…エメラルドを抱きかかえた、ルビーがいた。

 

 

「なんだ?」

 

 

「ほら、エメくんもお兄ちゃんのこと好きみたいだよ」

 

エメラルドは俺の顔を見て…なぜか笑っている。

 

 

「なんで笑っているんだ?」

 

 

「お兄ちゃんのことが面白いんじゃない」

 

 

「俺の顔って面白いのか……なぁ、ルビー」

 

 

「なに?」

 

 

「触ってもいいか?」

 

 

「別にいいんじゃない。むしろ…エメくんはお兄ちゃんのこともかなり大好きみたいだし」

 

そこで俺は好奇心で…人差し指でエメラルドの頬を突っついた。頬は餅のようで…弾力がある。若い奴の特権だが、特に子供は本当にもっちりしている。触っている、こっちの方が楽しくなるぐらいに。あんまり突き過ぎると普通は泣いたりするものだが、エメラルドはずっと俺に笑いかけている。

 

 

「……かわいいな…」

 

自然と漏れてしまった。いつも発言はしっかりと考えて言うようにしているが、今さっきは本当に考え無しで口から出てしまった。

 

 

「お!エメくん、お兄ちゃんが可愛いだって!!!こんなこと滅諦に言わないよ!私には一度も言ってくれたことないし」

 

 

「お前はそれを言うと付け上がるからな」

 

 

「え~~ひどい」

 

 

 

 

「それにしても本当にエメラルドは人懐っこいな」

 

 

「うん、本当に。最初に会った時から私やアクアとかにも懐いてたよね」

 

これぐらいの年だったら母親や父親以外に抱っこされたりすると嫌がったりするもんだが。エメラルドにはそれがまったくない。まあ、捨てるぐらいの母親だから子供のことを可愛がってなくて抱っことかも全然してなかった可能性の全然あるがな。

 

 

すると急にルビーは何かを覚悟したような目をして俺に覚悟を口にした。

 

「私、決めているんだ。この子は絶対に私が守るって。ママのことは守れなかったけど、この子のことは守ってあげたいって」

 

本当にルビーの中には…母性本能というものが目覚め始めているのかもな。

 

 

「そうか…。まあ、お前だけが頑張らなくても大丈夫だ。俺もいるし、社長もいるからな。皆でエメラルドを育てていこうって話だったろ」

 

子供を育てるのは難しいのは元々分かっていた事。誰か一人が頑張るんじゃなくて全員でそれぞれ力を合わせて頑張っていこうという話になった。

 

 

「まあね…でも、エメくんには寂しい思いをさせたくないの。私が『育てる』って決めたんだもん!]

 

やはりルビーはエメラルドを育てることに関しての責任感というものが一番あるかもしれない。絶対にエメラルドのことを…ちゃんと育てるという意思がそこにある。

 

 

 

もしかしたら…それはアイを失ったことが大きいのかもしれない。大切な人を失ったことでエメラルドに対しての想いが余計に強くなっているのかもしれない。エメラルドは絶対に危険な目に合わせないという。

まあ、それについては俺も同じだけどな。

 

「大丈夫だ。俺もエメラルドのことに関してであればなるべく手を貸す」

 

 

「ありがとう、お兄ちゃん!」

 

 

改めて俺の目的はアイを殺した奴を突き止めて殺すことと、エメラルドのことをしっかりと育て上げることだ。この二つの目標は俺の命が朽ち果てたとしても……必ず成し遂げる。




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