沙花叉クロヱと管理人   作:主義

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掃除屋と侍

沙花叉さんが家に来るのはもう慣れているし、驚くこともない。そんも状態が正常というわけでもないのは分かっているけど、今更、沙花叉さんと距離を置くことでもできない。だって離れてくれないですし。前まではたまに家に来るぐらいの頻度だったのに最近は毎日来る。

 

 

 

今、僕の家には僕と沙花叉さんとその友達の……風真さんがいる。風真さんは沙花叉さんと同じ『vtuver』として活動しているらしい。そしてそんな風真さんは沙花叉さんと楽しそうに話している。

 

 

「いろはちゃん…今日のコラボどうする?」

 

 

「そうでござるなぁ…トークテーマに沿ってお話するとか?」

 

 

「あ、それもいいかも。あとはゲームとかになってくるもんね」

 

なぜか、僕の部屋で二人の女性が話をしている。これは当たり前ではなくて…おかしい光景。

 

 

「…なんで僕の部屋に?」

 

 

「え?」

 

 

「いや、風真さんって沙花叉さんのお友達ですよね?」

 

 

「うん!」

 

 

「それなら、沙花叉さんのお部屋でお話をするもんじゃないんですか?」

 

 

「…え、いいじゃん!沙花叉の部屋は汚いし、管理人さんのところの方が」

 

僕は沙花叉さんと同じようにVtuberのお仕事をしている訳でもないですし、聞いちゃいけない話とかも普通にあるだろう。それにまず、女性が男性の服に上がり込んでいるというだけでも…と言おうしたが、口から出なかった。ここで何を言ったとしても沙花叉さんは僕の部屋を出ていってくれる感じもしなければ、お客さんも入れちゃってるし。

 

 

なるべく邪魔をしないように俺は寝室に移動した。二人は今で相談をしているし、夕飯の準備をするにしては早すぎるし。やることがなさすぎる。

 

僕はベッドに寝転んで…これからのことについて考える。さすがにこのままずっとはまずいですよね。僕のためにも沙花叉さんのためにも。特に沙花叉さんが自立してくれなくなってしまうんじゃないかと個人的には心配なんですよね。そんな親みたいな心配を僕がするのもお門違いだとは分かっているんですが、やっぱり心配が頭をよぎる。

 

 

「どうにかしないといけないですよね」

 

それにそろそろ……ってこれはいいかな。今は全然関係ないですしね。

 

 

 

「あれ、管理人さん」

 

 

「もう沙花叉さんはノックもせずに入って来るのが当たり前になってきましたね」

 

ここって僕の家のはずなんですけどね。

 

 

「え~別にいいじゃん。管理人さんって開けられて困るようなことってないでしょ?」

 

 

「分からないですよ。僕も男性ですし、何かをしている最中かもしれないじゃないですか」

 

 

「管理人さんって男性じゃないですか?」

 

 

「いや、男ですよ」

 

 

「だってこんな可愛い子が近くにいるんだよ。普通の男性だったらとっくに沙花叉のことを襲って、今時は授かり婚になっているはずなのになってないし、まるで興味がないみたいだし。そんな管理人さんが男性なわけないじゃないですか!」

 

 

「それはさすがにまずいですよ。女性を襲ったりしたら」

 

 

「それはそうだけど…どう考えても管理人さんは男性として備わっていておかしくない『性欲』というものが枯渇しているんですよ」

 

さすがにそこまで言われると…僕も男だと思うものの、沙花叉さんの言っていることも間違っていないんですよね。確かに沙花叉さんは魅力的な人ですし、普通の男性ならその魅力にやられてしまうものかもしれない。だけど、僕の心を射止めたのはあの人だけ。あの人以外を好きになる事はないんですよね。これだけはどうしても断言出来てしまう。

 

 

「そうですね…」

 

 

「…そうですよ……ってそんなことじゃなくて管理人さん、来てください!」

 

僕はなぜか、体を無理矢理起こされて沙花叉さんに連れられてリビングにまできた。

 

 

「いろはちゃん~連れてきたよ」

 

 

「え…これって風真さんが沙花叉さんにお願いしたことなの」

 

 

「はい…すいません。どうしてもお願いしたいことがありまして」

 

風真さんが僕を呼んだというだけでも驚きなんですが、そこにお願いがあるなんて。風真さんとの接点はほとんどないですし、今日初対面。初対面の相手にお願いをするなんてかなり勇気がいることだと思いますし、余程のことなのかも。

 

 

「そうなんですか。早速、お願いしたい内容について聞かせてもらいたいです。僕に出来る範囲のことであればなるべく協力してあげたいですし」

 

 

「お願いというのは…………ってこれはやっぱり沙花叉がいって!」

 

 

「え、ここで沙花叉に丸投げ!」

 

 

「…おねがい」

 

 

「し、仕方ないなぁ……」

 

沙花叉さんは深呼吸をしてから話し始めた。

 

 

「配信に出て欲しいんですけど……だめですか?」

 

僕が沙花叉さんの言っていることを理解するのには…十秒以上の時間を有した。だって自分が予想していた、どんなものでもなくてそれを軽く飛び越えていった。

 

 

「…だめに決まっていますよ!なに言ってるんですか?」

 

 

「いいじゃん。減るもんじゃないしさ」

 

 

「いや、だめですよ。どんな形であっても僕が出るのは」

 

 

「大丈夫だって。皆にはホロライブの関係者みたいに紹介するしさ」

 

 

「だめだよ。そんな嘘を言ってもバレますし、運営さんから後で怒られると思いますよ」

 

僕はただ沙花叉さんが住んでいるところの管理人なだけでそれ以上でもそれ以下でもない。勝手に運営さんの名前で配信に出ていたなんて知れたら……沙花叉さんと風真さんはもちろんだけど、僕にも実害でそう。

 

 

「ちぇ~いいじゃんね。管理人さんが出てくれれば配信も盛り上がるよ!」

 

 

「炎上ですよ。確実に」

 

 

逆に炎上しない理由というものがないですよ。そして下手したら、ヤバいことにもなりかねない。

 

 

 

それからも風真さんと沙花叉さんがすごく誘ってきたけど、ずっと断り続けた。




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