沙花叉クロヱと管理人 作:主義
今の沙花叉はHoloxのメンバーに取り囲まれている。
「クロたん!」
「な、なんすか?」
「昨日、吾輩たちが集まろうって連絡したのを覚えてるか?」
「あ、ああ、うん」
「それで沙花叉は私たちに『ちょっと忙しいから無理かな』って返事してきたよね」
「うん」
「それは本当でござるか?」
「本当だよ」
「神に誓えるござるか?」
「誓えるかな」
「だったらこれはなにかな?」
そう言いながらこんこよはポケットから一つの写真を取り出して、沙花叉に見せてくる。
「え…」
写真を見て、沙花叉は開いていた口が固まってしまった。だってそこには沙花叉が管理人さんの腕に抱き着いているところが写真に収められていた。
「これはどういうことかな?クロたん」
「…い、いやぁ…そ、それよりなんでこんな写真を!?」
「それはね、昨日こよりが撮ったんです。クロたんは来れないと言ってたけど、皆の予定が合うようなタイミングはしばらくなさそうだからクロたん抜きでも集まろうみたいな話になったんだよ。それで集合場所にこよりが向かっている途中で…クロたんを見つけたの。そこで後を付けて見たら管理人さんと一緒に待ち合わせしてショッピングしてたから証拠写真をしっかりと取っておいたんだよ」
まさか付けられているなんて思いもしなかった。あの時は管理人さんと一緒にショッピングできることが楽し過ぎてそれ以上のことを考える余裕はなかったし、あの日はまず楽しみたかった。
だって沙花叉の想いを寄せている人が隣にいた。一緒にいると楽しくないなぁとか絶対に思われたくないし、もちろん目的は管理人さんの好みを知るためであってもお出掛けする以上は楽しんで欲しい。正直付けられていたとしても気付けない。
「…ご、ごめん」
「いや…私たちは別にクロヱのことを責めているわけじゃないんだよ」
「でも、皆の誘いを断って他の人と会っていたことは事実だから」
「吾輩たちはそんなことを気にしない。いや気にはするし…苛立ちはするが、それ以上に今は聞かなければいけないことがある」
「聞かなければいけないこと?」
「そうだよ!どこまで進んだの!?」
「どこまでって…」
「だ・か・ら…管理人さんとどこまで進んだんでござるか!?」
「え……す、すすむって…」
「も~まどろっこしいから単刀直入に聞くわ!吾輩たちはお前とその管理人とやらの関係が気になっているのだ!」
「な、なに言ってるの…。沙花叉と管理人さんは只の友達だし!」
自分で言っててちょっとキツイけど、これは本当のことだから仕方ない。今、沙花叉と管理人さんの関係はただの『友達』程度あることは本当だし。
「そうかな~?」
「な、なに…?」
「こよが見ている感じだと彼氏彼女みたいな感じだったけどな~」
「そ、そんなことないよ。沙花叉のお買い物に付き合ってもらっただけで管理人さんとは皆が想像するような関係じゃないもん!」
沙花叉が否定をするとルイ姉がもう一度、写真を見てから話し始める。
「私はこの写真を見て、付き合っているのかなぁって思ったけどな」
「ル、ルイ姉!」
「え~誰が見たってそう見えると思うよ」
そ、そうなのかな。もちろんあの時は少しでも管理人さんを感じたかったから腕を抱きしめることもしたけど……って今考えるとあの時の沙花叉ってかなり大胆過ぎたかな…///
「風真もこの写真を見た時は驚いたでござるが、管理人さんであれば納得でござる」
「な、なっとくって…」
「だって一度風真がお邪魔させていただいた時も管理人さんは急に来た、風真にもとても優しく接してくれたでござるよ。それに管理人さんが作るお料理はとても美味しかったでござる!」
「まあ、管理人さんが優しいのも料理が上手いのも事実だけど…」
「あんな人が近くに居たらそれは好きになっても仕方ないでござるよ」
「だ、だから…べつに沙花叉は管理人さんを好きなわけじゃ…」
「クロたん、いくら否定しても無駄だよ」
こんこよはなぜか不気味な笑みを浮かべながらそんなことを言ってきた。
「だってクロたんが管理人さんのことを好きだっていう『証拠』があるんだもん!」
「証拠!?」
「うん!」
「だってこよが管理人さんの部屋にお邪魔した時なんて睡眠薬で眠っちゃった、管理人さんに対して匂いを嗅いだり、素肌を触っていたり、素肌を舐めたりしていたぐらいだよ。あんなことを好きでもない相手にできないでしょ」
こんこよが全て言い終わった後は静寂に包まれた。誰も何も発さない。
沙花叉の体感として5分以上が経過してから静寂が破られた。そしてその静寂を破ったのはいろはちゃんとルイ姉だった。
「さ、さかまた…そんなことをするなんて」
「ルイ姉、ひかないで!!」
「風真もさすがにそれは引くでござる!」
「ひ、ひかないでって!!ただの出来心だったんだって!!」
「いや、その話が真実ならその管理人さんという奴は沙花叉に好かれてしまった、ただの可哀そうな人だな」
「なんで沙花叉に好かれると可哀そうなんだよ!」
「だって寝ている間にそんなことをするんだろ!吾輩がもし、寝ている間にそんなことをされたと知ったらもう『絶交』。いや絶交というか、もう二度と連絡もしないし、関わらない」
確かに今になって思えば、あの時はちょっとおかしかった。あんな無謀な管理人さんを近くで見たら理性を抑えることが出来なくて獣のように襲っていた。正直それ以上に行かなかったことを褒めて欲しいぐらい。もう少し先のことをしちゃってもおかしくない状況だった。
だってあの時の管理人さんは睡眠薬の影響もあって、どんなことをしても起きそうにない。そんな状況じゃないと出来ないことだってあるし。
「あの…お願いだからそのことを管理人さんに教えることだけは…」
「え~どうしようかなぁ~」
「おねがい!なんでもするから!!」
「本当になんでもする?」
「します!だから管理人さんに言うのだけは勘弁して!!」
折角、少しずつ管理人さんと距離を詰めていこうって時にそんなことを管理人さんに言われちゃったらもう確実に話してくれなくなりそう。もちろん管理人さんは優しいから笑って許してくれることもあるかもしれないけど、普通の人だったら絶対に距離を置くようなことだし。
それから沙花叉は皆に対してどうしても話さないでくださいと謝るのだった。そこで四人からそれぞれ色々な条件を突き付けられたけど、渋々沙花叉は了承するしかなかった。