沙花叉クロヱと管理人 作:主義
あれからあんまり話に行けていない。別に管理人さんが沙花叉を避けている訳じゃなくて沙花叉が管理人さんを避けちゃっている。
なんか…あのお墓を見ている、管理人さんの姿を見るとあんまり触れちゃいけない感じがした。あの二人には多分、沙花叉に分からないようなものがあるんだと思う。沙花叉はまだ本気で誰かを好きになったことがないから分からないだけでいつかは分かるようになるのかもしれないけど、少なくても今は分からない。いつか自分もそんなに愛せる人と会えたらいいなぁと思ったりもする。
でも、沙花叉としては前のように話に行きたい。それなのにいざ、管理人さんを前にすると何も言えなくなっちゃう。もしかしたら沙花叉は管理人さんに迷惑を掛けちゃっているんじゃないかと。考えちゃうと今まで考えなかったことまで考えちゃう。そしてそれは嫌な方向にばっかり。
それなのに管理人さんから声を掛けられないと…嫌なんだ。本当に面倒くさい女みたいになっちゃったな。
「おはようございます」
「あ…お、おはよう」
沙花叉が通り過ぎようとすると…管理人さんに呼び止められた。
「最近なにかありました?」
「な、なんで!?」
「前の沙花叉さんだったらもっと元気な感じがしたんですけど、今の沙花叉さんからはそれが感じられなかったので」
「な、なんでもないよ!!沙花叉は沙花叉だもん!」
「そうですか。それならいいんですけど」
「じ、じゃあ、沙花叉は行くから!」
そして今度こそ沙花叉が行こうと駆けていくと後ろから管理人さんの声が聞こえて来る。
「今日は沙花叉さんが好きなハンバーガーを作るので元気に頑張ってきてください!」
やっぱり…管理人さんってすごいな。管理人さんが沙花叉に声を掛けてくれるだけで嬉しいし。振り返らなくても管理人さんが笑顔で手を振ってくれているのが分かっちゃう。ちょっと恥ずかしいけど、やっぱり嬉しい。
そして今日の沙花叉は絶好調でどんな収録でもいつも以上の力が出た気がする。全てが順調で…こんな調子の良い日なんてあるんだと思っちゃうほどで。だけど…今日は収録がかなり遅くまで入っていることを忘れていた。
「はぁ……待っててくれるかなぁ」
時計を見ると針は午後9時を指していた。これからあと…ちょっと掛かりそうだし、ここからいくら飛ばしても家まで30分は掛かるし。
「…折角、管理人さんが沙花叉のために作ってくれているのにぃ」
「沙花叉さん、出番です!」
「あ、はい」
沙花叉は重い腰を上げて収録に戻る。
全ての収録が終わったのは…それから1時間経った後だった。帰り路は疲労を感じながらもなるべく早く帰るために走った。もう待っていないかもしれないけど、それでも…もしかしたら。
そして管理人さんの家には…明かりが付いていた。
「よ、よかったぁ…」
沙花叉はインターホンを鳴らそうと思った瞬間、なにか変な感じがした。電機は付いているのに中から何も物事が聞こえない。
ドアノブに手を掛けて引くと簡単に開いた。ドアの鍵が開けられていない。そこで変な胸騒ぎがして沙花叉は急いでリビングまで掛けた。そこには…リビングで横たわっている管理人さんの姿があった。心配になってすぐに駆け寄って脈を確認すると正常だった。
「な、なんだぁ…ただ寝ているだけか」
張りつめていた糸がほどけて…急に力が抜けた。
「変な心配掛けないでよ」
そして…管理人さんからテーブルに視線を向けるとそこにはラップで包まれている、ハンバーガーがあった。
沙花叉は管理人さんを起こさないように…音を立てないようにしながらハンバーガーを取って食べる。噛んだ瞬間に肉と…ケチャップが上手くあっている。そして普通のハンバーガーかと思ったらチーズバーガー…。チーズと肉がマッチし過ぎているよ。管理人さんの料理はどれも美味しいけど…このハンバーガーは今まで食べた中でもTOP3に入る美味しさ。
冷めてはいるけど…それでもこの美味しさ。出来立てならもっと美味しかったのかな。それに管理人さんとお話しながら食べたらいつも何倍も美味しいと感じるんだよね。
「それにしても管理人さんには何でもお見通したのかな。沙花叉はハンバーガーは大好きだと言ったけど、チーズバーガーとは言ってなかったと思うんだよね。それなのに今回のハンバーガーはチーズバーガーだったし、ただの偶然かなぁ…」
こんな美味しいハンバーガーを完食するのに時間は掛からなかった。そしてそれから沙花叉は管理人さんの横に寝転がった。
「管理人さんの寝顔って可愛いなぁ~~」
いつまでも飽きる気がしない。やっぱり管理人さんはすごいな。
そして30分くらい、見つめて沙花叉も眠る事にする。
「おやすみなさい……あ、あと、ハンバーガー、美味しかったよ!」
感想があれば