さんばか×シチュエーション   作:主義

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さんばかが姉だったら

僕には三人の姉がいる。それぞれ個性の塊のような人たち。そんな人たちと一緒に暮らしているとやっぱり苦労が絶えない。

 

そしてそれは今日も同じで…

 

 

「あの…リゼ姉さん」

 

 

「なに?」

 

 

「…ちょっと抱き締めないでくれませんか?」

 

今、僕は自室のベッドで寝転がっている。でも、なぜかベッドにはリゼ姉さんもいて、抱き締めて来る。

 

 

「なんで、お姉ちゃんが抱きしめちゃダメなの?」

 

 

「いや、そういう訳じゃなくて…」

 

 

「いつでも私はお姉ちゃんだよ。お姉ちゃんにはキミを自由に抱きしめる権利が生まれる限りにあるのです!」

 

 

「そんなことはないんじゃないと」

 

 

「も~~お姉ちゃんの言うことを従わないとだめなんだよ」

 

姉という立場はこれでもかと言うほどに行使してくる、リゼ姉さん。それにうちの姉弟はそれなりに仲のいい部類に入る方だと思うんだけど、友達とかに聞いたらうちっておかしいのかもと思ったりしている。

 

 

「…あの…ここで寝たいんだったら僕がリビングで寝るので」

 

 

「だめだよ。私は絶対に離さないもん!弟は私のもの」

 

まるで離してくれる気配がなくて…まじでどうすればいいんだろう。さすがに年が離れていると言っても男子と女性の力の差がある。無理矢理剥がそうとすればどうにかなるだろうけど、そんなことをしたらリゼ姉さんのことだから泣いてしまうと思うし。

 

 

「本当に離してくれないんですか?」

 

 

「ぜったいにいやだもん~~」

 

さっきよりも抱きしめる力が強くなったと感じるのは僕の勘違いじゃない…ですよね。

 

 

 

 

本当にどうしようかなぁと悩んでいると勢いよく僕の部屋の扉が開けられた。

 

「あの…」

 

 

「…アンジュ姉さん…」

 

 

「あ、おとう…って…リゼ…」

 

 

「アンジュ…」

 

するとリゼ姉さんは僕を抱きしめるの止めて…アンジュ姉さんのところに行った。

 

 

「弟は私のものだよ。それは例え、アンジュであっても絶対に渡さないよ」

 

 

「弟くんはアンジュのことが大好きなんです!」

 

「違うし、弟は私のだし」

 

何か変な言い合いが始まってしまった。

 

 

 

元々、うちの姉さんたちはとっても仲良い。この人たちって本当に仲いいなぁって弟なのに遠目に思ってしまうほどに。

 

「アンちゃんは弟くんのことが大好きだもん!」

 

 

「私の方が絶対にアンジュよりも大好きだし!」

 

 

「いや、絶対にアンジュのが好きだし!いつも弟くんのことを想ってるし!」

 

 

「いやいや、私の方が好きに決まってるじゃん!」

 

 

「い~や、絶対にアンちゃんの方が大好きだもん!」

 

 

「いや、わたし!」

 

言い争う価値もないようなことに言い争っている。

 

 

 

さすがにそろそろ止めようかなぁと思っていると――――――――――

 

 

 

「はいはい、やめい」

 

 

「い、いぬい…」

 

 

「とこちゃん…」

 

 

「弟くんの前でそないな喧嘩せんといて」

 

 

「…で、でも…」

 

 

「もう、ウチらは弟のことが大切に決まってるよ。もちろん、大好きやろ。それに順位は付けられんよ。だって、それぞれがほんまに弟のことが大好きだなんだし」

 

よくそんなことを本人を目の前にして言うなぁ。

 

 

「た、たしかに…」

 

 

「そうだよね」

 

 

「分かればよろしい。それよりもなんでリゼはんとアンジュはんは弟の部屋にいるん?」

 

 

「…わ、わたしは…毛布に潜り込んで弟を抱きしめてた」

 

「あんじゅは…寝込みを襲いに」

 

 

「前にも言うた気がするんそやけども、あんまり弟にやくたいを掛けるのは止めな。気持ちは分かるし、理解も出来なくもないけど」

 

 

「う、うん…」

 

 

「はい……って戌亥はなんでこの部屋に来たん?」

 

そう言えば…そうだ。とこ姉さんは明日早いと言っていた気がする。

 

 

「あ、そう言えば、なんでこんな時間に」

 

 

「リゼはんとアンジュはんの声がうるさいから。あんな言い争いをこんな夜中にしとったらなんぼ部屋が離れてても聞こえてくるし」

 

 

「そ、そうですか…」

 

 

「…たしかに…」

 

うちの家はそこまで大きくない。一応、一軒家。姉さんたちが配信業をしているので、一軒家だと音漏れに関しても心配がなくなっていいんだろうと思う。

 

 

「…じゃあ…戌亥はなんで枕を持ってるん?」

 

 

「これは…別に…なんでもない」

 

 

「…も、もしかして…戌亥も同じこと考えてたんじゃ!」

 

 

「…どういうこと?」

 

 

「戌亥は普段から、私やリゼ、弟くんのことを見守ってくれるけど。戌亥やって普通の姉だし。弟くんのことは大切に想っとる。ってことは私と同じ趣向になったとしてもおかしくないんじゃないかなって」

 

 

「そ、そないなんではおまへんし!アンジュはんと同じにせいで欲しい」

 

 

「い、いや、絶対にそうでしょ!自分の気持ちに正直になってなって。弟くんはそれぐらいじゃ幻滅せんって」

 

 

「…ホンマに…ちがうし」

 

 

「リゼからも言うてやんなよ」

 

 

「…とこちゃん…正直になっていいと思うよ」

 

 

「ちゃうし!アンジュはんやリゼはんとはちゃうし」

 

 

「いやいや、あたしたちは同じ穴の狢でしょ」

 

 

「ち、ちがうし…」

 

僕は一体なにを見せられているんだろうか。

 

 

 

 

そしてそれからリゼ姉さんとアンジュ姉さんからずっと「素直になっていい」ととこ姉さんに言い続ける。

 

さすがにとこ姉さんも我慢ならなくなったのか大きな声を出した。ここは防音室じゃないのであんまり大きな声だと近所に迷惑がとは思ったものの、今はそれを言えるような雰囲気じゃない。

 

 

「な、なにが悪いん!あたしはリゼはんやアンジュはんと違って…初めてだし。ちょい眠れへんから弟に添い寝してもらおうとしただけだし…」

 

 

「やっぱ…戌亥も…」

 

「と、とこちゃん…」

 

 

 

僕は本当になんでこんな姉さんたちの喧嘩みたいなものを見せられているんだろうか…。姉さんたちはまだ何か言い合っているけど、さすがに見ているのも疲れる。なので僕は姉さんたちに悟られないよう静かに眠りに落ちた。




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