俺にアイドルというものは向いていない。『アイ』のことを推してはいるが、それはドルオタとして。アイドルに自分がなろうなんて思ったこともないし、慣れると思っていない。アイドルというのは煌びやかに見えるが、現実はそうでもない。アイドルになるよりもなった後の方が大変だ。そんな中だけで俺は生き残れるとも思っていない。
だが…そんな俺がアイドルとなった。
そしてそのアイドルとして…いや…多くの人間の夢でもある…ドームライブ。ついにこの日を迎えた。
普段は目見えての緊張はあまりしないが、今日に限ってはそうもいかない。自然と貧乏ゆすりも出てしまうし。
「だが…まずは成功させることを考えないとか」
この日までに色々と…打ち合わせを重ねてリハーサルだってしてきた。これだけはどうしても失敗できない。これは俺だけじゃなくてスタッフや…このライブに関わってくれた全ての人のために。
そんな時に誰かが楽屋をノックする音は聞こえたので、開けるとそこには――
「あくあ~~」
「お兄ちゃん!」
そこには…俺の母親のアイと妹のルビーが立っていた。そしてアイは急に俺に抱き着いてきた。
「抱き着くのはやめてくれ…アイ」
「え~いいじゃん~私はアクアのママなんだしさ」
「…ま、まずは楽屋の中に」
さすがにこのまましていると…スタッフとかから変な目で見られそうだし。
そして楽屋の中に入ってもらって二人にはソファに座ってもらった。
「それにしてもお兄ちゃんが本当にアイドルになるなんて私は今でも驚きだよ!」
「いや、俺も驚きだよ。俺がアイドルをやっているなんて…そしてこんなところでライブを出来るぐらいにまでなったことがな」
自分にアイドルは絶対に向かないと思っていたからな。
「いや、私は別に驚かないよ。だって私の子供だもん!アクアもルビーも」
それから他愛のないような話をして、その後になぜか写真をたくさん取られた。アイに聞くと「だってアクアの成長記録に入れないといけないし」って言っていた。いや、俺はもう二十歳だ。そろそろいいんじゃないかと言おうと思ったが、アイが笑顔だったのでそんなこと言えなかった。
そしてそれから間もなくしてアイとルビーは控室を出ていった。たぶん、俺の緊張を解くために他愛のないような話をしてくれたんだろう。
それに一緒に暮らしている、二人なら余計に俺の変化に瓶かだろうから分かったんだろうな。俺がすごく緊張しているのが…。
そろそろライブの時間だ。もう数分もすればスタッフかマネージャーが俺のことを呼びに来る。だから最後に深呼吸をしてから頬を叩く。
「大丈夫だ。必ず成功させる」
そして意気込みを口にすると同時に…僕の携帯の通知音が鳴った。こんな時に誰だと思って確認するとそこには…「がんばって…アクアくん」「頑張りなさいよ、アクア」とほぼ同時刻に二人の人物からメッセージが送られてきていた。
「……頑張ろう」
「アクアさん、そろそろ準備をお願いします!」
「はい、わかりました。今、いきます」
そして俺は舞台へと歩み始めた。
このお話はアクアがアイドルになってドームに至るまでの物語。
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