東方有無録   作:印鑑

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危険な吸血鬼!紀流 祠弥は休めない

オッス!オラ紀流!

界王拳(2倍)でどうにか門番さんを倒した、そこまではいい。

だけど体(主に足)が猛烈に痛く、思ったように動けない状況だ。

…さて、門番さんが起きる前にさっさと入るか。

俺は無理矢理足を動かし、館の入り口に向かって進む。

 

 

「どっこいしょおおおっ!」

 

 

やたらでかい扉を開け、俺は館の中に入った。

 

 

「……………。」

 

「!」

 

「!」

 

「!」

 

「!」

 

「!」

 

 

…えーっと、今の状況を説明する。

館に入ったらチルノみたいなのがいっぱいいた。目測百人程。

そして。

 

 

「侵入者だ!全軍総攻撃っ!」

 

「「「「おーっ!!!」」」」

 

 

一斉に襲いかかって来ました。

ふざけんな、人数が馬鹿げてるじゃねーか!このままじゃ袋叩きにされるぞ!

 

 

「邪魔だ!散弾『トラップシューター』!」

 

 

俺はスペルを発動し、手当たり次第に妖精を吹っ飛ばしていく。

量だけだったのがせめてもの救いだぜ…

 

 

「これで…最後だぁぁぁ!」

 

「ごふあっ!レ、レミリア様ぁぁぁっ!!」

 

 

…は?レミリア?誰の事だよ…

最後の一体を何とか倒し、俺はその場に倒れこんだ。

 

 

「もーダメだ。体が動かん。」

 

 

何せ門番さんとの戦いで既に体はボロボロ、更に大量の妖精との戦闘があったのだ。

俺の意識は次第に遠のいて行き、やがて何も分からなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれー?何でみんな動かないのー?」

 

 

紀流が倒れてから暫くして、奥の廊下から誰かがやって来た。

血のように真っ赤なスカート。それと同じ色のブラウスを着ている、不思議な帽子を被った少女。

その背中には、「人間ならば本来付いているはずの無いもの」が付いていた。

少女は暫く倒れている妖精達を見回していたが、やがてある一点を見たまま動かなくなる。

何故なら、そこに少女にとって見慣れない「物」が落ちていたからだ。

 

 

「んー?」

 

 

少女はその「物」に近づき、じろじろと無遠慮に眺め回す。

疲れきった顔をしているそれは、背中に何も付いていない事を除けば少女と似た様な形をしていた。

ここまで見たとき、少女の頭にある「考え」が浮かぶ。

少女はこう思ったのだ。

 

 

「これをオモチャにしたら楽しそうだ」と。

 

 

そう考え、少女は嬉しくなる。

その気持ちは丁度、小さい子供がオモチャを新しく買って貰った感情に近い物だった。

 

 

「簡単に『()()』ないでね…」

 

 

少女は、そう言って笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うーむ…。」

 

 

…何か変だ。俺は床の上で気絶したはずなのに、気がついたら毛布の中にいる。

また、体の痛みもきれいさっぱり消えていた。

誰かが運んで手当してくれたのか?だとしたら礼を言わないとな…

俺は起き上がって寝ていたベッドから降り、首を動かして辺りを見回す。

 

 

「…?」

 

 

…真っ先に頭に浮かんだのは、「子供部屋」だった。直ぐに少しおかしいと気づいたが。

散乱した人形。所々破け、原型を留めていない物もある。

無意味に積み重ねられた無数の本。もう随分と長い間読まれていないようだ。

そして何よりも。

 

 

「このベッド、でかいな…。」

 

 

そうだ。俺の寝ていたベッドはやたらでかかったのだ。

比較するのは失礼かもしれないが、博麗神社で使っている布団の二倍はでかい。

しかも天蓋付きときたもんだ。この部屋の持ち主は相当偉いんだろう。

俺がそんなことを考えていると。

 

 

「あ、起きた。」

 

「…っ!?」

 

 

不意に後ろから声がし、俺はすぐさま振り向く。

そこには魔理沙と同じ、いや少し濃い色の金髪をした少女が立っていた。

服装も気になるが、一番気になるのは少女の背中から生えている「何か」だ。

二対の黒い針金(?)に果実のようにぶら下がった無数の宝石。

その宝石は七色に光っており、とても綺麗に輝いている。

 

 

「…何を見てるの?」

 

 

俺がその「何か」に見とれていると、不審がった少女がそう聞いてきた。

 

 

「背中に付いてるやつ、綺麗だなーって思ってね。」

 

 

嘘をつくことになんの利点も感じなかった俺は、正直にそう答えた。

 

 

「…。」

 

 

少女は何も言わないが、頬に少し赤みがさした。嬉しかったのか?

 

 

「羽根。」

 

「えっ?」

 

「羽根だよ、これ。」

 

 

驚いた。まさか羽根だったとは…飛べるのか?

すると、また少女が俺に質問してきた。

 

 

「あなた…人間?」

 

「…は?」

 

 

一瞬質問の意味が分からなかったが、直ぐに答えた。

 

 

「れっきとした人間だぞ。」

 

「ふーん…。」

 

「…何だ、疑ってるのか?」

 

 

少女はそれに答えず、俺に近づいて顔を覗き込んできた。思わず顔を引く。

 

 

「咲夜意外の人間…初めて見たわ…。

私はフラン。吸血鬼のフランドール・スカーレット。」

 

「…あ、どうも。俺は紀流 祠弥。

…って吸血鬼!?」

 

「そうよ。」

 

 

妖精、妖怪ときて次は吸血鬼かよ…改めて凄いな、幻想郷。

すると少女、もといフランはまだ喋りかけてきた。

 

 

「ねえ、お兄ちゃん。フランと遊ぼうよ。」

 

「…遊ぶ?」

 

「うん。」

 

 

遊ぶ?どういう事だろうか?

まあ、助けてくれたんだ。遊ぶ位ならいいだろう。俺はそう思い、こう返した。

 

 

「良いぞ、何して遊ぶ?」

 

 

俺がそう答えると、フランは笑いながらこう言った。

 

 

「弾幕ごっこ。」

 

「…………え?」

 

「フフフ…」

 

「ちょっと、それってどういう…」

 

 

俺は不審に思い、聞き返そうとしたが。

いきなり、俺に向かって数発の弾が飛んできた。

 

 

「うわっと!?」

 

 

俺は咄嗟に避ける。弾は後ろにあったベッドに当たったかと思うと、

次の瞬間ベッドを粉々にしてしまった。背筋に悪寒が走る。もしも当たってたら…

フランはそんな俺を、「よく避けたね」と言っているような目で見ている。

 

 

「おいおい、いきなり不意打ちは無いだろ…」

 

 

俺はぼやく。内心はガクブル状態だが。

 

 

「私、ずっと退屈だったの。何百年もの間、ずーっと独りぼっちだった。」

 

 

…な…何百年…!?こいつ、一体何歳なんだ!?

 

 

「もちろん、オモチャもたくさんあった。けど…」

 

 

フランは、足元にあったぬいぐるみを拾い上げ、抱き締める。

やがて、ぬいぐるみからギシギシと音がし始めた。そして…

 

 

「…直ぐに壊れちゃって、ちゃんと遊べないの。」

 

 

…ぬいぐるみが、綿も残さず砕け散った。

 

 

「けどね、今日あなたが来てくれた。」

 

 

フランは顔をゆっくりとこちらに向ける。その顔は、笑顔。

果てしなく純粋で、狂気に満ちた笑顔だ。

その笑顔のまま、フランは叫ぶ。

 

 

「私、紀流で遊ぶ!!!」

 

 

その声は、俺にとっては死の宣告に等しかった。

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