オッス!オラ紀流!
咲夜に言われた通りに進んでたら広い場所に出た。
俺が何気なく天井を見上げると、大きな天窓に満月が映っているのが目に入った。真っ赤だが。
その不思議な月に思わず見とれていると、フランが俺の服の袖を小さく引っ張った。
「…何だ、フラン?」
俺がそう訊ねると、何も言わずに前を指差す。
フランの指差した方向を見ると。
「…。」
…誰かがいた。逆光で顔は見えないが…誰だ?
「…お姉様…。」
フランがそう呟いたので、俺はそいつが誰だか分かった。
多分、間違ってはいないだろう。
「お前がレミリアか?」
「…。」
レミリアは俺の質問には答えず、横にいたフランに話しかける。
「…フラン。部屋で大人しくしてなさいって言ったでしょう。何故ここにいるの?
それと、あなたのとなりにいるそれは何?」
…人間でもなく「それ」扱いかよ。酷い酷い。
「紀流。紀流お兄ちゃんだよ。私と遊んでくれたの。」
「…へえ、あなたの新しい『
新しくて丈夫なオモチャが欲しいなら、言ってくれればいいのに。」
本当に俺の扱いが酷いな…
まあ、相手は今回の異変の原因にしてフランの「お姉様」、しかも吸血鬼ときたもんだ。
俺みたいなただの人間なんてゴミみたいな物なんだろう。
…だが、そんな言い方をされて黙っている俺では無い。俺はフランに代わって答える。
「生憎、こう見えて結構頑丈なんでね。ちょっとやそっとじゃあ、俺は壊れませんよ。
それこそ、あなたみたいな奴の攻撃でもね。」
「…フン、人間…それも博麗の巫女でもない癖に、よくそんな口がきけたものね…。」
「おっ、やっと俺に対して返答してくれたな。」
「…つくづく勘に触る人間ね、あなたは。」
「自覚してるさ。」
そんな会話をしていると、向こうからこちらに歩み寄ってきた。フランが思わずたじろぐ。
「…つくづく、ね。」
そして俺は遂に、レミリアお嬢様と対面した。
服装はフランと大体同じ。ただ、妹の服が赤を主としているのに対し、こちらはピンクが主だ。
帽子も色以外は妹とほぼ同じだ。更に背中に付いている蝙蝠のような一対の翼。
正に「吸血鬼」と呼ぶべき姿なのだが…
「…ちっちゃくて、どうにも迫力に欠けるな…」
そう、彼女の背は凄く低かったのだ。フランとほとんど変わらない。
勝手に容姿(大人のお嬢様的な)を想像していた俺は、その姿に少し面食らってしまった。
「…失礼ね…。」
レミリアが赤くなる。怒るのは当然の事だろう。俺のせいだが。
だが勿論こちらも油断はしない。何せフランの姉さんだからな…弱いわけがないだろう。
人(吸血鬼だが)を見た目で判断するなといういい例だ。
そんな事を考えていると、不意にフランが口を開いた。
「…お姉様、お願いがあるの。」
「何、フラン?」
「…私、外に出たい。」
そう言ったフランの声は震えていた。ありったけの勇気を振り絞って言ったのだろう。
レミリアはそんな妹を、じっと見つめている。
「…駄目って言ったら?」
…うわー、意地悪な質問だな。ああいう系の質問って答えにくいんだよな…
だが、俺の予想に反してフランはしっかりと答えた。
「お姉様を倒す。倒して、外に出る。」
「私を倒す…ね。フフ…」
自分のお姉様を倒すって…天晴れだな、フラン。流石だよ。
だけどな…
俺はフランよりも前に歩き出て、レミリアと向き合う。
「…紀流お兄ちゃん?」
「何?人間。」
姉妹が同時に不思議そうな表情をする。
「いや、ちょっとね。姉妹喧嘩をおっ始める前に、今空を覆ってる霧を消して欲しいんだが…」
「…!」
「…?」
俺がそう言った途端、レミリアの表情が険しくなる。
フランはというと。
「霧?何それ?」
「…知らないのか?今幻想郷は赤い霧で…」
いいかけてふと気づいた。フランは外を知らないのだ。自分の姉が、何をしているのかも。
俺は言葉を濁らせ、本題に入る。
「…まあとにかくだ。霧を消せ。そしたら帰る。」
「…駄目って言ったら?」
「勿論、
「お前が?この私と?…全く、無知であることは幸せね…ククッ…ハーッハッハッハ!」
レミリアが笑い出す。威圧感が全く無い。可愛い。まあ、何時までそう思えるかな…
「今のうちにそうやってニヤニヤ笑ってろ…」
「ハハハ…ハ?」
「ここにいるのはお前達の最も恐れていた『博麗の巫k(ry」
「…え!?紀流ってお兄ちゃんじゃなくて『お姉ちゃん』だったの!?」
「え!?何ですって!?」
「…のお墨付きの人間だ。本人じゃあねえよ。」
「そ、そうよね…」
危ない、危うく女にされる所だったぜ。
っていうか普通に考えて俺は女に見えないだろう…
「…ごほん。じゃあ…」
レミリアが仕切り直そうとする。確かに雰囲気ぶち壊しだ。
「…お、おう…」
俺も曖昧な返事をして、何とか雰囲気をそれっぽくしようとする。
「いいわ…今夜はこんなにも月が赤いから…」
「赤いから?」
「…本気で殺すわよ。」
「出来るものならやってみろ。」
レミリアの体が赤く光りはじめる。大気も気のせいかはりつめているように感じた。
…こいつ、絶対強い。先手を取らなきゃ勝率下がるぞ!スペル発動!
「…楽しい夜になりそうn(紅拳『界王拳(二倍)』!!!」
俺は突進し、レミリアの顔に全力で拳を叩き込む。
…何か喋ろうとしてたような…まあいいか。
「きゃああっ!?」
レミリアは吹っ飛ばされるが、数メートル滑った所ですぐさま体勢を立て直す。
流石吸血鬼だなと俺が思っていたら。
「…貴様ァァァァァァァァッ!!!!」
レミリアがブチ切れました。…あれ?何かブチ切れるような事したっけ?攻撃以外に。