「まさかあの猫だらけの家から抜け出すなんて…
あんた達、只者じゃないわね?」
「只者ですが。」
「そこは否定しないでよ…テンション下がるなあ…」
どうも、咲夜です。
休息をとっていた小屋が猫だらけになったので一旦外に出ました。
外も中と大して変わりはしませんでしたが。
そして小さな猫の耳がついた人間が出てきました。
「…どうしますか、人間?」
「猫怖い猫怖い猫怖い猫怖い猫怖い猫怖い猫k(ry
「情けないですねぇ。ただの四足歩行する獣じゃないですか。」
咲夜がそう言った瞬間、それまで静かだった周りの猫が一斉に鳴き始める。
…まるで、咲夜を非難しているかのような鳴き声だ。
「にゃーん!」
「にゃーん!」
「にゃーん!」
「にゃーん!」
「…鬱陶しいですね…」
今や猫達全員が咲夜を見上げ、威嚇するような鳴き声を上げまくっている。
その目は、完全に「敵」を見る目だ。
「…はいはい、皆の気持ちはよーく分かったから。一旦ストップ。」
猫耳の人間が手を叩く。すると、猫達は一斉に鳴くのを止めた。
ただ、一体一体それぞれが咲夜に対しての敵意に満ち溢れている。
…敵意を通り越して、最早殺意の域だ。
「…人間、今の発言はちょっと酷かったんじゃない?皆滅茶苦茶怒ってるよ?」
「どんな風に怒ってたんですか?」
「えーっと…『調子に乗るなよ…くそやろう!』とか、
『そこまで性根が腐っていたとは…』とか、『お前はもう謝っても許さないぞ…』とか
色々ぶちまけてたよ。」
「猫風情にそこまで言われる筋合いは無いのですが。」
「…口が悪いなぁ…謝ればすむことなのに…。」
「大体先に襲ってきたのはそちらのほうでしょう?
なのに何故偉そうに説教をたれているんですか?」
「襲って来たとは人聞き…いや、猫聞きが悪いなぁ。
人の住みかに押し入って来たんだから、これくらいされてもしょうがないよ。」
「…あなたの住みか?」
「そう、ここはマヨヒガっていう場所。
通称、猫の里だよ。」
「…成る程、通りで猫ばっかりなわけだ…」
「あ、人間。正気に戻りましたか。」
「何とかな。で?君がここの猫達のリーダーってわけ?」
「まあ、そういう事だよ。」
猫耳の少女はすらすらと喋っていく。
それに聞き入るようにして、猫達は頭をゆらゆらと揺らしている。
まるで…
「…猫ウェーブ…」
「「?」」
「…何でもない。」
「…まあとりあえず、謝れば猫達も許してくれるよ。」
そういって彼女は咲夜の方を見る。
俺も咲夜の顔を見てみたが、相変わらずの無表情だった。
…暫くして。
「…分かりました。」
「やっとその気になってくれたんだね…」
「誠にすみませんでした。では。」
そうとだけ言うと、咲夜はUターンした。
「…おい、咲夜?」
咲夜は俺の呼び掛けに答えず、もといた小屋へと戻ってしまった。
ま…まさかあれだけなのか、「謝る」って…
猫耳の少女はもの凄く怪訝そうな顔をしている。代わりに謝っとこう…
「…あの…なんかすいません。」
「…あ、いいよいいよ!ちゃんと謝ってくれたし!」
謝ったとはいえないぞ、あの態度は…
けど、納得してくれたみたいだし、よしとするか。
俺がそう強引に決めつけると、
「…そういえば人間さん?さっき猫達から聞いたんだけど…」
「はい?」
「…猫、苦手なの?」
「…お恥ずかしながらそうです。」
「どこが?」
「全部です。目とか爪とか歩き方とか…」
「…うーむ…そこまで否定されてるとはねぇ…
何でそんなに嫌いなの?」
「…知りたいですか?」
「…いや、あなたの顔見たら知りたい気持ちが吹っ飛んだからいいや。」
その時の俺の顔は相当酷かったらしく、まるで世界の終わりみたいな表情だったとの事だ。
それっきり喋る内容が無くなって黙りこくっていると。
「人間ー。二人を運ぶので手伝ってくださーい。」
「はいはい、承知した。」
「あ、私も手伝うよ。猫達が迷惑かけちゃったし。」
「いや、いいですよ。多分咲夜なら一人で…」
そう言うか言わない内に、既に咲夜は俺の横に現れていた。
両肩に霊夢と魔理沙を軽々と担いで。
「!?」
「人間、早く片っ方持ってください。」
「分かりましたよっと…」
俺は咲夜から霊夢を受け取り、背中に担ぐ。
「…zzz…」
「…寝てやがる…」
「…全く、二人とものんきなものですね。」
「全くもって同感だ。」
「…あなた達、一体全体何者なの?」
「「普通の人間だ。」です。」
「…あ、そうなんだ…」
猫耳の子はそういって無理矢理自分を納得させたようだ。
そして俺達は地獄(俺にとって)の里から飛び立ち、再び吹雪の中を突き進み始めたのだった。
「…飛ぶのに邪魔ですね、この人間を抱えていると。」
「まあまあ、いいじゃないか。その内起きるだろうし…」
「そうですね。それよりも…」
「?」
「なぜあなたは猫が嫌いなんですか?」
「…聞きたい?」
「はい。まだまだ道程は長そうですからね。
暇潰しにはなるだろうと思いまして。」
「…酷い理由だな…
まあ、退屈しのぎになるんならいいか。
じゃあ話すぞ…」
そう言って、俺は話し始める。
咲夜は珍しくちゃんと聞いてくれている。
雪でもふるんじゃ…あ、もう降ってるか。
「俺な、ちっちゃい時に『ふれあい動物園』なるものに行ったわけよ。
そこに猫のコーナーがあってだな、もう猫がうじゃうじゃいたんだ。」
「そうですか。それで?」
「で、猫とふれあってたわけだ。親からちょっと離れた所で。
そしたらな、ふれあってた猫がいきなり飛びかかってきたんだよ。」
「随分と礼儀知らずな猫ですね。」
「いや、猫だからね?でだ、俺はなすすべもなく倒されたんだ。」
「…それだけですか?」
「いや、まだある。そいつだけならまだよかったんだが、
コーナーにいた殆どの猫が俺にのしかかって来たんだ…今までふれあってた人そっちのけで。
気がついたら視界には猫しか映らない状態にまでなってたんだよ…」
「ほうほう。で、どうなったんですか?」
「結局親が気づいて助けてくれたんだが、俺には十分トラウマになったんだよ…
…以上だ。」
「へえ、そんな理由があったんですか。
と言うかそれはむしろ猫に好かれているということなのでは?」
「だとしてもねぇ…猫がこっちを気に入ってくれてたとしても
俺にとっては悪夢なんだよ…」
「はあ。」
「…話したのがお前で良かったよ、咲夜。
霊夢とか魔理沙に話したら笑われる事間違いなしだからな…」
「確かに。」
咲夜は「成る程」と言いそうな表情でこちらを見て、大きく頷いた。
そんなたわいもない話をしながら、俺達は雪降る空の中を進んでいく。
あては全く無いけどな。