東方有無録   作:印鑑

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冥界の守護剣士~巡りあった二人の戦士

「…大人の階段のーぼる…」

 

「この階段を上りきっただけで大人になれたら苦労しませんよ。」

 

「…うん、知ってる。」

 

 

オッス!オラ紀流!

プリズムリバー達が教えてくれた結界の中に入ったら滅茶苦茶長い階段があった。

今現在、上に何かしらあるっぽいので階段を一段一段上っている所だ…

死にそうだ…

 

 

「…。」

 

「どうしたの祠弥?無口になったわね。

まあ私もここまで階段が長いとは思ってなかったけど…」

 

「…最初に二段飛ばしなんてしたからじゃないのか?」

 

「その無駄な行動が体力消耗の原因でしょうね。」

 

 

わーい、ボロクソだーい(泣)。

けど、実際まだ道程の半分もいってないんだよな…そうだ!

俺は気を高め、スペルを発動する。

 

 

「紅拳『界王拳(四倍)』!」

 

「…ちょ、祠弥!?」

 

 

歩くのが疲れるなら飛んでいけば良いじゃないか(ゲス顔)!特訓にもなって一石二鳥だぜ!

…何で最初からこの発想に行き着かなかったんだろう…まあいい。

早速空を飛んで終点まで一気に到達してやるz…

 

 

「何一人で楽しようとしてんのよ。」

 

「へぇあっ!?」

 

 

霊夢に足を掴まれました。前に進めません。

ってか四倍界王拳発動してるのに何で止められるんだよ…

すると、魔理沙も同じように足を掴んできた。why?

 

 

「…えーと、何をしてるんだ?離してくれないか?」

 

「祠弥だけに楽はさせないぜ!」

 

「飛べるだろ、お前ら…」

 

 

二人は全く離そうとしない。

面倒くさいな…よし、出力増加だ!

 

 

「界王拳…五倍!!」

 

「「なっ!?」」

 

 

…まさかこんな事の為に界王拳を五倍にまで強化するはめになるとは。

だが、これで脱出出来るぞ!行くぜっ!

 

 

「お先に失礼するぞ!じゃあな!」

 

 

俺はそう言った後、二人の手を引き剥がして一気に加速する。

 

 

「このまま逃がすと思ってるの!二人とも、追うわよっ!」

 

「言われなくとも!」

 

「…別に無理をして追う必要は無いと思いますが。」

 

「…何でよ?」

 

 

首を傾げる霊夢に、咲夜は簡単に説明する。

 

 

「よく考えてみてください。私達の『異変を解決する』という行為は、

まず間違いなく元凶にとっては邪魔な動きであるはずです。

しかも私達は今、元凶のいる場所に極めて近づいている。

普通なら、何としてでも私達を排除しようとするでしょう。」

 

「…確かにそうね。」

 

「しかし、まだ私達は何の妨害も受けていません。

この事から考えるに、元凶の一歩手前にその『妨害』が仕掛けられている可能性が高い。

その妨害を、あの人間に倒させればいいかと。」

 

「成る程、それなら楽ね。」

 

「…それじゃあ祠弥が不憫じゃないか?」

 

「私達を置いてったんだもの、それなりの事は…ね?」

 

 

霊夢はにっこりと微笑む。だが、魔理沙は全身に鳥肌が立った。

その目は全く笑っておらず、紀流が飛んで行った方向をずっと睨み続けているからだ。

 

 

「じゃあ、ゆっくり上っていくことにしましょ♪」

 

「(祠弥…頑張れよ…。)」

 

 

魔理沙は、ただ祠弥の無事を願うことしか出来なかった。

 

 

 

 

「…!?」

 

 

何か寒気がしたな…気のせいだな、うん。

さて、もう少しで終点だろう!ラストスパートをかけるぜ!

 

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

俺は気を解放し、衝撃波が発生するほどの速度で飛び続ける。

やがて、待ちに待った階段の終わりが見えてきた。やっとだ…

後五十メートル……四十……三十……二十……十…!?

 

 

「なっ!?」

 

 

階段の終点まで残り五メートルという所で、俺はヤバイことに気づいた。

一番上の段に人が立ってるじゃねーか!しかも後ろ向いてるし!

このままだと衝突する!どうする!?

 

 

「…ここは悟空にあやかって…」

 

 

俺は両手を前に突きだし、一瞬だけ気を放出する。

 

 

「はあっ!!」

 

 

目論見は成功し、俺は何とかその場に急停止する事が出来た。

だが…

 

 

「んなっ!?」

 

「あっ…」

 

 

…立ってた人を衝撃でぶっ飛ばしてしまった…。

しかし、飛ばされた後のその人の動きは俺の想像を遥かに越えていた。

その人は何と空中で一回転し、綺麗な放物線を描いて数メートル先に着地したのだ。

 

 

「何奴!?」

 

 

その人は直ぐに振り向き、こちらを睨み付けてきた。

…え、女の子?

緑色のスカートをはき、同じく緑色の(肩だけが白い)服を着た、

前髪ぱっつんの銀髪おかっぱ頭に大きな黒い布?のような物がついている少女。

見た目はこちらより少し若く見える。

 

 

「…?」

 

「成る程、あなたが幽々子様の仰っていた『侵入者』ですね。

…今すぐ引き返した方が身のためですよ。」

 

「…もしも引き返さなかったら?」

 

「あなたを切って刻んですりつぶすだけです。」

 

 

そう言うと彼女は、体に差していた二本の刀の内の背中にある方を抜き放った。

そして、それをそのまま俺に向けて構えた。

…え?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?

 

 

「…何を言ってるんだお前はぁぁぁぁぁっ!?」

 

「あなたの春は、全て『西行妖』(さいぎょうあやかし)に吸収されます。

感謝するんですね。あなたのような普通の人間が、幽々子様のお役にたてるのですから。」

 

 

ヤバい!こいつ真顔で凄い事言ってる!怖い!

 

 

「馬鹿な事言ってんじゃねぇ!切り刻まれてたまるか!

っていうか初対面の人をいきなり切るとか言うな!」

 

「…まあ、そんな事はどうでもいいんです。

最近全く刀をふるっていなかったからでしょうかね、うずうずしてきましたよ…」

 

 

そう言うと彼女は、自身の身長ほどもあろうかという刀を軽々と振り回し始めた。

…あんなんと戦うの?マジかよ…

 

 

「一応戦う前に聞いておきましょう。

どうですか?今から引き下がって退却する気はありませんか?」

 

「…そうしたいのは山々なんだが…

俺はここに『異変』を解決しに来たんだからな。生憎そんな気は無い。」

 

「そう言うとは思ってましたよ。

ここの凄まじく長い階段を上ってきて、はいそうですかで帰る人なんていませんからね。」

 

「じゃあ何で聞いたんだよ…」

 

 

俺はそうぼやきつつも、気を高めて相手がいつ襲って来てもいいようにする。

少女も刀を振り回すのを止め、両手で刀の柄を握って構えた。

…あ、そうだ。聞いておきたいことがあった。

 

 

「…お前、名前は?」

 

 

相手は俺の唐突な質問に少し戸惑ったようだが、直ぐに言葉を返してきた。

 

 

「私の名は『魂魄(こんぱく) 妖夢(ようむ)』。

白玉楼の主、『西行寺(さいぎょうじ) 幽々子(ゆゆこ)』様に仕えている庭師です。あなたは?」

 

「俺は紀流 祠弥。見て分かる通り、普通の人間だ。」

 

「…あなたが発している気からして、その言葉はいささか信じがたいんですけど。」

 

「似たような事をよく言われるよ。」

 

 

しばらくの間、沈黙が続く。

お互いに力量を測っているのだろう、両者の目は相手を捉えたままだ。

…やがて、その沈黙は双方からの声で破られる。

 

 

「鬼をも切り裂くこの楼観(ろうかん)剣に、

切れぬ物など、あんまり無い!」

 

「ハハハ!その刀で切れぬものを、俺が一つ増やしてやろう!!」

 

 

そして、二人の戦士による戦いが始まったのだった。

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