東方有無録   作:印鑑

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飛ぶ弾幕・舞う霊嬢~乱れ散れ、桜の花弁

「…。」

 

「あら~、妖夢の言ってた不思議な人間だけじゃなかったのね~。」

 

「…あんたが、今回の黒幕ってわけ?」

 

「そうよ~。」

 

 

…オッス!オラ紀流!

遂に俺達は今回の異変の黒幕、「西行寺(さいぎょうじ) 幽々子(ゆゆこ)」と対面した。

ふわっとしたピンクの髪に、青い帯がついた白と水色の着物。

そして着物と同じような水色の帽子を被った女性が、高さ十数メートル辺りに浮かんでいる。

 

 

「よくあの長~い階段を上ってこれたわね~。」

 

「あの位余裕よ。」

 

「…え!?余裕だったのかよ!?」

 

「当然じゃない。年寄りの婆さんじゃあるまいし、

あれでへばってちゃ博麗の巫女の名が泣くわよ。」

 

「よく言うぜ…不満たらたらだったくせに…」

 

「何か言った魔理沙?」

 

「…いや、何でもない。」

 

 

霊夢の笑顔(威圧)に押され、魔理沙は黙りこむ。

階段キツかったんだな、霊夢。よーく分かるよ…

 

 

「祠弥、顔に出てるわよ。」

 

「ナニィ!?」

 

 

止めろ!あからさまな怒りの目でこっちを見るな!

 

 

「あなた達、仲良いわね~。羨ましいわ~。」

 

「そりゃあどうも。さて、黒幕…じゃなくて幽々子さん。」

 

 

俺が幽々子の名を言うと、彼女は少し驚いたようだ。

 

 

「…あら、何であなたが私の名前を知ってるの?」

 

「さっき戦った妖夢が言ってたんだよ。そういえばお前の名前の他にも、

俺の『春』を『西行妖(さいぎょうあやかし)』に吸収させる、とか言ってたな…」

 

「そこまで知ってるなら、説明は簡単で済みそうね~。」

 

「…説明?」

 

 

魔理沙が首を傾げると、幽々子は微笑む。

 

 

「知りたいでしょう?何故私が今回の異変を起こしたのか。」

 

「…別にあんたの考えなんてどうでもいいわ。

私にとってそれより重要なのは…」

 

 

霊夢はそう言いつつ、お祓い棒とお札を構える。

 

 

「あんたを倒せば、異変は解決するって事よ。」

 

「あらあら、随分と荒っぽいわね~。」

 

 

…流石霊夢、理由なんてどうでもいい、取り敢えず迷惑だから倒すってか。

改めて恐るべし、博麗の巫女理論。

 

 

「ほら魔理沙に咲夜、何ボーッと突っ立ってんのよ。

折角今回の異変の黒幕が目の前にいるってのに。」

 

「…お、おう。そうだな…」

 

「そういえばそうですね。失念していました。」

 

 

魔理沙は戸惑いながらも「ミニ八卦炉」を取り出し、咲夜はナイフを指の間に挟んだ。

三人ともバッチリ戦闘態勢に入ってるな。よし、俺も…

俺が気を高めて戦いに備えようとすると、何故か霊夢に制された。

 

 

「祠弥、今回は後ろで見てなさい。」

 

「え!?何でだよ!?」

 

「貴方がいても、私達の足手まといになるだけです。

…その腕の怪我では。」

 

「腕…?」

 

 

俺は自分の左腕を見る。そこには、妖夢との戦いで最初に負った傷があった。

傷は思った以上に深く、滲み出た血が服の袖を赤く染めていた。

…この傷、見ている方が痛いな…痛みはそんなでも無いのに。

 

 

「大丈夫だって、この位…」

 

「あんたがいくら大丈夫っていっても、

怪我人が戦ってると気が散るのよ。」

 

「…霊夢、ちょっと言い過ぎなんじゃあ…」

 

「それに…」

 

「…?」

 

 

霊夢は一呼吸置くと、その先を続ける。

 

 

「祠弥ばかりに、良い所を持ってかれるわけにもいかないしね。」

 

「…確かに前の異変の時も私と霊夢が戦ってる間に、黒幕を倒して異変を解決したんだもんな。

ここで私達が頑張らなきゃ、異変解決者の名が泣くぜ!」

 

「…私は異変を解決した事は無いのですが。」

 

「これからするのよ。」

 

「成る程。」

 

 

咲夜はぽんと手を叩き、納得したような表情をする。

…ナイフ持った手でやる事じゃ無いだろ。指が切れるぞ。

 

 

「…ってわけだから祠弥。ここは私達に任せなさい。」

 

「…分かった。」

 

 

俺は後ろに下がり、三人と距離を取る。

三人は俺がそうしたのを見届けると、幽々子に向き直った。

 

 

「…さてと。こっちから仕掛けてもいい?」

 

「良いわよ~。」

 

「では行きますよ。奇術『ミスディレクション』!」

 

 

咲夜がスペルを発動すると、辺りが灰色になる。時を止めたのだ。

幽々子に大量のナイフを投げつけた後(ナイフは空中で止まった)、咲夜は時を動かす。

空間に静止していたナイフが動き始め、一斉に幽々子に対して襲いかかる。

 

 

「あら、いつの間に。いつ投げたのか全く分からなかったわ~。」

 

 

幽々子はそう言って笑いながら、右手を向かってくるナイフに向ける。

その手には折り畳んだ扇子の様なものが握られていた。

次の瞬間。

 

 

「危ない危ない♪」

 

 

幽々子が持つ扇子の先が一瞬光ったかと思うと、

咲夜の投げたナイフ全てがまるで見えない壁にでも当たったかのように弾かれ、地面に落ちる。

…幽々子は扇子の先から超高速のビームを放ち、ナイフを全て打ち落としたのだ。何て奴だ…

 

 

「…どうやら、こけおどしが効くような相手では無いようですね。」

 

「残念ながらね~。」

 

「ならば…」

 

 

彼女はナイフを構え直し、幽々子に向かって突進する。

 

 

「直接行かせてもらいましょう!」

 

 

咲夜は相手との間合いを一気に詰め、ナイフを使って切りかかる。

幽々子はそれをふわっとした動きで避けるが、避けた先には。

 

 

「そこっ!」

 

「!」

 

 

霊夢がスタンバっており、すかさずお祓い棒を幽々子に向かって降り下ろす。

幽々子は慌てず、扇子を使って霊夢の一撃を受け止めた。

止められたと見るや霊夢は直ぐに離れ、スペルを発動する。

 

 

「霊符『夢想封印 散』!」

 

 

無数の虹色の弾幕が霊夢の周りに発生し、何度か霊夢の周りを回った後に幽々子に向かっていく。

それを見た幽々子は対抗するようにスペルを発動した。

 

 

「亡郷『さまよえる魂-自尽-』!」

 

 

水色・黄緑・黄色の三色の弾幕が扇子の先から飛び、霊夢の放ったスペルを相殺する。

小さい爆発が続けて数回起こり、爆風によってお互いの姿が一瞬隠れ、

その煙に隠れるようにして魔理沙はスペルを発動し、突進する勢いで煙がたちまち晴れる。

 

 

「喰らえ!彗星『ブレイジングスター』!」

 

 

魔理沙は体に光を纏い、正に流れ星となって幽々子に突進する。

幽々子は慌てずに飛んでくる魔理沙に向かい、ビームを発射した。

 

 

「うわっと!?」

 

 

魔理沙は咄嗟にビームを避け、上昇して体勢を立て直す。

霊夢はそんな魔理沙に文句を並べ立てる。

 

 

「何でそこで避けるのよ!」

 

「いや、避けなきゃ死んでたぜ!完全に私の顔面狙って…」

 

「私があんたに言いたいのは、避けるぶんには

最小限の動きで避けなさいって事よ!!」

 

「努力してるぜ!お前の方こそ、スペルの威力が弱まったんじゃないか?」

 

「いえ、スペルの威力は変わっていません。

問題は貴方にあると思われますが。」

 

「う、うるさい!とにもかくにも避けたんだからいいだろ!?」

 

「無駄な動きが多すぎるのよ。」

 

「「…。」」

 

 

幽々子を気にせずに喧嘩を始めた三人。

その姿を、俺と幽々子は呆れながら暫く見ていたが、やがて幽々子が動く。

 

 

「再迷『幻想郷の黄泉巡り』!」

 

 

彼女がスペルを宣言すると、三人の少し下の空間が歪み始めた。

三人はそれに気づき、口喧嘩を中断して上昇する。

 

 

「ばっ!!!」

 

 

幽々子が掛け声と共に扇子を大きく振り上げると、

先程の空間の歪みが開き、人魂の様な弾幕が大量に湧き出てきた。

咲夜は待ってましたとばかりにスペルを発動する。

 

 

「傷魂『ソウルスカルプチュア』!」

 

 

ナイフから発生する無数の空気の刃は、瞬く間に全ての弾幕を切り刻んだ。

 

 

「…思っていたよりずっと強いみたいね~。驚いたわ~。」

 

「私達三人をなめてもらっちゃ困るぜ!」

 

「…まさか、これで終わりじゃ無いわよね?」

 

「勿論、違うわよ~。」

 

 

…す、凄い。これが本当の戦いなのか…

桜の花弁が舞う中繰り広げられる虹色の戦いを、俺は固唾を呑んで見守っていた。

 

 

「…(ゆかり)様、西行寺 幽々子が博麗の巫女達と戦い始めました。

例の人間は、どうやら戦闘には参加していないようです。」

 

「…そう。じゃあ、そろそろ出発しましょうか。

(らん)(ちぇん)を呼びに行くわよ。」

 

「承知しました。」

 

「…紀流 祠弥。霊夢は貴方を受け入れた。

だけど…

 

 

 

 

 

 

私は、貴方を受け入れる事は出来ない。」

 

 

…裏で何が起こっているのか、知るよしも無いままに。

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