第一幕〜とびっきりの酒豪対酒豪
「…じゃあ、異変解決から一週間を祝って…」
「「「「「カンパーイ!!!」」」」」
「…ちょ…」
…オッス!オラ紀流!
まず、俺の愚痴を聞いてくれ。宴会が多すぎて笑えない。
一週間ぶっ続けで宴会っておかしいだろ…名目は変わってるけど。
「紅霧異変から大体三分の二年経った記念」とか「俺が幻想入りしてから(ry」とか…
…まあ、言えることは一つ。
「…霊夢?今回は何を記念した宴会だっけ?」
「…えぇぇぇっとぉぉぉ~…あ、そうそう!
あなたが紫との戦いで『超サイヤ人』になった記念よ~!」
「…それ、昨日の宴会の名目だよな?」
「そうだっけ~?」
とりあえず宴会したいだけだろ、お前ら…
酒に酔うスピードが日に日に早くなってるぞ…
「祠弥も飲みなさいよぉぉぉ~!」
「…嫌です…」
「なぁぁぁんですってぇぇぇ…zzz…」
…あ、寝た。いくらなんでも早すぎるだろ…
呆れて辺りを見回すと、霊夢だけではなく殆どの人が寝ている。
…宴会の意味無くね?
「…全く…」
「おい、そこの人間~!」
「?」
突然、誰かに子供っぽい声で呼ばれた。聞き慣れない声だな…
不思議に思いながら俺が声のした方を向くと…
「そこのお前だよそこのお前~!一杯どうだい?」
赤い顔をした少女が俺を手招きしていた。
襟元に赤いリボンのついた袖無しシャツに、紫を基調として白いギザギザが入ったスカート。
腰には三本の鎖が引っかけてあり、先っぽに丸・三角・四角の形をした何かが繋いである。
服装も特異だが、何よりも気になるのは…
「…!?」
「どうしたんだい?私の頭に何かついてるのか?」
少女は俺にそう訊ねると、手で頭を払う。
その頭には、大きく伸びた二本の棒…
「…どうだ、取れてるかい?」
「…取れてない…」
「え、まだ!?参ったな…どれだけしつこいんだ…」
「いや、ゴミじゃなくて…その『棒』。」
「棒?ハハハハハハ!これは棒じゃ無くて『角』さ!」
一対の角がついていた。
…え?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?ホーン!?
「…何で角が頭に?」
「そりゃあ私は『鬼』だからねぇ…何でって言われてもなぁ…」
「…O・N・I?」
「もしかして、実物を見るのは初めてかい?
だとしたら驚かせて悪かったね。」
「あ…いえ…」
「ハハハ!まあそんな顔をするな!
とりあえず飲みなって!」
そう言うと彼女は大きな紫色の瓢箪を出し、
その辺に置いてあった盃に酒を注いで俺に渡してくれた。
「…」
「別に毒なんて入って無いぞ?安心して飲みな!」
「じゃあ、遠慮無く。」
俺は盃を傾け、中身を一気に飲み干す。
瞬間、喉が焼け落ちたかと思った。
「…ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
「なっ!?」
鬼さんが酷く驚いたのも構わず、俺は声にならない声を上げて地面を転がり回る。
…喉がぁぁぁ!喉そのものがぁぁぁ!!
「はぁ…はぁ…」
「…大丈夫かい?」
ひとしきり暴れた後、俺の喉はようやく落ち着いた。
…全身桜の花びらだらけだぜ…
「すまないね…てっきり酒には強いのかと…」
「実際強いですよ。いくら飲んでも酔いませんからね。」
「そいつは凄いな!?」
「ただ今のは少しアルコール度が…」
「あるこおる?なんだそりゃ、新種の酒かい?
まさに、
「…。」
「…すまん。」
それっきり鬼さんは黙ってしまい、俺達はしばらくの間無言で酒を飲んでいた。
…き…気まずい…!何か話題をふらないと!!
「あの…お名前は?」
「…唐突だねぇ…まあ、教えてやるよ。
私の名前は『
お前は?」
「俺は紀流 祠弥。普通の人間です。」
「普通、ねぇ…」
「…疑ってます?」
「まあね。お前、強そうだからね…」
そう萃香は言うと、俺の方を見てくる。
その目はまるで、俺を品定めしているかのようだ。
「…ちょっと試してみたいんだが…?」
「俺の強さをですか?良いですよ。
ちょうど俺も、退屈していた所ですし。」
「ハハハ!じゃあ軽く運動でもするか!」
萃香は元気よく立ち上がり、数メートル離れた場所まで移動する。
その姿を見て、俺はある提案をした。
「ここで戦うと宴会会場が無茶苦茶になっちまうからさ…
場所を変えてもいいか?」
「確かにそうだね。賛成だ。」
俺達は神社の前まで移動し、改めて向き合う。
…凄い威圧感だな…気だけで押し潰されそうだ…
「「…。」」
両者共に戦闘態勢に入り、相手の出方を待つ。
そんな時間が何秒間続いただろうか。とにかく、次の行動は速かった。
「紅拳『界王拳(十倍)』!!」
俺はいきなりスペルを発動し、萃香との距離を一瞬で詰めて殴りかかる。
それを彼女はのんびりとした目で見つめ…
「はっ!」
「な!?」
…俺の拳を、あっさりと受け止めた。
「ぐっ…!」
「…。」
俺は腕に力を込めるが全く動かず、萃香の表情も変わらない。
…くそっ、ここまで差があるとは…なら!
「千刃『サウザーブレード』!」
「…!」
俺が気の刃をもう片方の手に形成すると、初めて萃香の顔が変わった。
動揺したな!今だ!
「そらそらそらぁ!!!」
「おっと!」
俺は腕を振るって萃香を切ろうとするが、萃香は全てを紙一重で避けていく。
焦って両手で切りかかってみるが、結果は変わらず…
「何でだ?何で当たらない!?」
「…そんな事も分かってないのかい?がっかりだねぇ…酔神『鬼縛りの術』!」
見かねた萃香がスペルを発動すると、俺の腕にたちまち鎖が巻きつき強く引っ張られる。
そのまま俺は鎖ごと空に投げ出されたが、何とか舞空術で体勢を立て直して萃香を睨み付ける。
「…へぇ、空も飛べるのかい?」
「攻撃はまだまだ終わったわけじゃ無いぞ?
喰らえ!紅拳波『十倍界王拳かめはめ波』!!!」
俺は両手を後ろに引いて気を溜め、界王拳のエネルギーをかめはめ波にプラスして放出する。
それを見た萃香は身構え…
…かめはめ波に突っ込み、中を通り抜けてきた。
「なぁ…がっ!?」
驚く間もあればこそ、萃香はあっという間に俺の所まで飛んできてこちらの顔を掴む。
「どうした?その程度じゃ私には敵わないよ?」
そう萃香が言った直後、彼女の拳が俺の鳩尾に突き刺さった。
「…!」
「フンッ!!」
思わず全身の力が抜けた所に、萃香は無情にも続けて蹴りを入れる。
俺はなすすべも無く数十メートル下の地面に叩きつけられ、クレーターの中心で悶絶する。
そんな俺に対し、萃香は二枚目のスペルを発動した。
「鬼火『超高密度燐禍術』!」
萃香は巨大な火球を作り出し、それを躊躇無く俺に向かって落とす。
俺の方からしてみれば、やっと初撃の痛みが回復した時に続けざまに攻撃が飛んできたわけで…
「わぁぁぁぁぁぁっ!?」
…対処なんぞ出来る筈もなくあっさりと火球に呑み込まれた。
凄まじい大爆発が起こり、萃香のいる数十メートル上空にまで爆風が吹き抜ける。
その爆風が止んだ後、萃香は口を開く。
「鬼の私にも移動するのが見えなかった…
お前、何をしたんだい?」
そう話す彼女の後ろには、火球に呑み込まれた筈の紀流が飛んでいた。
…危ねぇ…こんがり焼き上がる所だったぜ…
「…いわゆる、『瞬間移動』って奴さ。」
「瞬間移動!?これまたえらい技をもってるんだねえ…
てっきり、私の能力みたいな物かと思ったよ。」
「…『能力』?」
俺が萃香の発言を疑問に感じる暇もなく、彼女は次の行動に移っていた。
彼女の体が次第に「薄くなって」消えたかと思うと…
「がっ!?」
次の瞬間、俺は大きく横に殴り飛ばされる。
痛みを堪えて横を見ると、萃香が笑いながら飛んでいた。
「私は『密と疎を操る程度の能力』って能力を持ってるのさ。
体の密度を自由に変えられるから、今みたいに霧になって移動したり出来るんだ。
お前のように『瞬間移動』までとはいわないけどな。」
「…さいですか…」
霧になって消えたり現れたりって…某幻魔人か、お前は…炎吐いたりしないよな?
そんな下らない事を考えていると、萃香の体が再び消えた。
「…!」
何処だ?何処から来る!?前か、後ろか、横か!?
…いや…
「上かっ!?」
「その通り!萃符『戸隠山投げ』!!」
俺が空を見上げると、いきなり馬鹿でかい岩が俺めがけて降ってきた。
おそらく、と言うか絶対に萃香が投げた物だろう。
…当たってたまるか!死ぬわ!
「『瞬間移動』!」
「おや…」
俺は瞬間移動で攻撃を回避すると同時に、萃香の後ろに移動してスペルを発動する。
「瞬動波『瞬間移動かめはめ波』!!」
「フッ、面白い!霧符『雲集霧散』!!」
俺が光線を放ったのに対し、萃香は瓢箪の酒を飲んだ後にそれを吹いて撒き散らす。
かめはめ波はその霧を通り抜ける事が出来ずに跡形もなく消滅してしまった。どうなってんだ…
そんな事を考えてしまったせいだろうか、一瞬だけ萃香への集中が途切れてしまう。
「しまっ…!」
「油断したね!はあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
俺は萃香に足を掴まれ、再び地面に叩きつけられる。
彼女の攻撃はそれで終わらず、俺を上空に投げ上げ、さらに追撃しようと飛んでくる。
…飛び膝蹴りは止めて!くっそう…こうなったら…
「…何っ!?」
「…ふう、何とか止められたか…。」
そう言ってほっとする紀流の目は、透き通るような水色へと変わっていた。
髪の毛も同じように水色に変色している。
そう、これこそが紀流の新しい力…
…「超サイヤ人」だ。
「…成る程、それが噂の『超サイヤ人』かい。」
「そういう事だ。こうなったら前ほど優しくは無いぞ?」
「フフ、そうでなくちゃつまらないね!!!」
紀流と萃香は再び睨み合い、気を高めていく。
そんな中、萃香はふと呟く。
「これで分かる。
…お前の『本当の強さ』がね。」