「だりゃあっ!!!」
「…くっ!」
オッス!オラ紀流!
今現在俺は宴会場にいた鬼、萃香と戦っている所だ!
危うくボコボコにされそうになったので、「超サイヤ人」になる羽目になったぜ…
「…やるね。それがお前の本気かい?」
「いや、本来ならもっと強くなれる筈なんだが…
俺の実力不足のせいで、超サイヤ人もまだ不完全なんだよ。」
「…それで『不完全』かい。末恐ろしい発言だねえ…
はあっ!!」
「おっと!」
俺は萃香が殴りかかってくるのを冷静に見極め、彼女の拳を受け流す。
攻撃を受け流されて無防備になった萃香の胴に、俺はすかさず拳をねじ込んで攻撃する。
「あぐっ…!!」
「そこだ!宇撃『ビッグバンアタック』!!」
萃香が怯んだ所で俺はスペルを発動し、ほぼゼロ距離から青い気弾を撃ち込む。
俺はそれが当たって大爆発を起こすかと思ったが、萃香は気弾をギリギリまでひきつけた後に…
…自らの体を「霧」にして回避する。
「…またか…何処から来るんだ…?」
俺は精神を集中させ、周りの様子を伺う。
次に萃香が出てきた時に直ぐ対応出来るようにするためだ。
…一瞬の静寂の後、空気が乱れる。分かった…
「…後ろか!波符『かめはめ波』!!」
「おっと、反応出来るのかい!萃符『戸隠山投げ』!」
俺は振り向くと同時に光線を放ち、萃香が飛ばしてきた巨大な岩に対抗する。
かめはめ波は容易く岩を砕き、そのまま萃香へと向かっていく。
「くっ!」
これは回避が間に合わないと感じた萃香は、咄嗟に腕を交差させてかめはめ波を受け止める。
…だが、彼女はそこで違和感に気づく。威力がそこまで高くないのだ。
「…何でだ?あいつの力ならもっと威力の高いのが撃てる筈…
はっ、まさか…!?」
「下から失礼!散弾『トラップシューター』!!」
萃香が紀流の攻撃の真意に気づいた時には既に遅し。
下に移動した紀流は腕を振るい、無数の緑色の気弾を彼女に向けて放っていた。
「中々やるね!だが、数が多けりゃ当たるってもんじゃないよ!!」
彼女はそう宣言すると、自身の腕力を生かして気弾を弾き飛ばしていく。
それも全てではなく、放っておくと自分に当たるであろう弾だけだ。
やがて気弾は飛んでこなくなり、萃香は流れを自分に向ける為に攻撃を仕掛けようとするが…
「…いない!?」
「だっはーっ!!!」
「!?」
突然横から勝ち誇ったような声が聞こえたかと思うと、紀流が両足で蹴りを入れてきた。
萃香は顔に手酷い一撃を喰らい、そのまま地面に叩きつけられる。
「大成功!」
紀流は得意気な表情を浮かべ、萃香を叩きつけた辺りの地面を見下ろす。
煙が舞い上がる中、不意にガラガラという音がする。
「フフ、結構効いたよ…」
「…あれ?あんま応えて無いな…」
煙が晴れて瓦礫が軽々と持ち上がったかと思うと、
服が少し破れた程度のダメージしか受けていない萃香が現れた。
「私もウォーミングアップはこれ位にして、そろそろその気になろうかな…」
「まだなって無かったのかよ…」
「…始める前に、一つ謝っておくよ。」
「え?何を?」
「戦う前、私はお前を甘く見ていた。
どれだけ強そうだといっても所詮人間、恐れるに足らないってね。
けど、お前の強さは本物だった…」
「鬼に認めてもらえれば、俺の修行も報われたかな…大した事してないけど…」
「だから私も全力を出す!!覚悟はいいかい?」
「いいぜ…来な!」
…何で俺は調子に乗ってしまうんだぁ…本気の鬼に勝てっこ無いのに…!
だが、言ってしまったもんはしょうがない!!駄目で元々だ!!!
「じゃあ…行くぞ…!はぁぁぁぁぁぁ…!!」
萃香はそう宣言すると、気を高め始める。
…さて、何を仕掛けてくるんだ?
「はっ!!!」
暫くした後、萃香の周りに霧が発生し…
その霧が収縮して、小さい萃香が出てきた。
「…え?」
俺が驚いている間にも、萃香はどんどん量産されていく。
ふと我に帰った時には…
「「「「「待たせたね!」」」」」
…目測百体程のちび萃香が、俺を見て笑っていた。
「…!?」
「開いた口が塞がらないみたいだね…説明してあげるよ!
私が能力で体の密度を自由に操れる事は知ってるな?」
「…ああー。」
「…余程驚いてるんだね…
で、その能力を使って自分を量産したってわけさ!どうだい?」
「チートだな…」
「…ちいと?」
「反則、って意味です。」
「参ったね…まさかそんな風に言われるなんて、私は悲しいよ…」
萃香が俯くと、ちび萃香達も一斉に俯く。
…あれ?俺のせい?
「…冗談だよ、冗談!ごめんな!」
「そうですか…良かった。」
俺は安心して、ほっと溜め息をつく。
やっぱり他人が落ち込んでいるってのは辛いからな…うん。
「…今言った事は冗談だけど、強さは本物だぞ?」
「まじかよ…」
強さが大した事なければいいのだが、現実はそんなに甘くないよな…鬼だし。
まあいい!勝てばよかろうなのだ!!
「いけーっ!!!」
「「「「「おーっ!!!」」」」」
…前言撤回!勝てるかこんなもん!!逃げろぉぉぉ!!!
俺は咄嗟に舞空術で飛び上がり、ちび萃香達の突進を回避する。
そうしてしまってから俺は自分の重大なミスに気がついたが、既に後の祭りで…
「かかったね!!」
「なっ!?」
次の瞬間、俺は飛んできた無数の岩に体を捕らえられてしまっていた。
岩は一つ一つ尖っており、少し動くだけで体に喰い込んでくる。
「う…動けな…!」
「下手したら死ぬかもね!萃鬼『天手力男投げ』!!」
萃香は俺の胴を掴み、周りについている岩ごと俺を地面に向かって投げつける。
…待て待て待て!決まったら確実に死ぬぞ!!こうなったら…
「んぐぐぐぐ…だあっ!!!」
「!」
俺は気合いで無理矢理岩を吹き飛ばし、体を自由にした後地面を滑って着陸する。
萃香は意外そうな表情をしたまま固まっていた。
「まさかあそこから抜け出すなんてね…やるじゃないか。」
「だって避けなきゃ死ぬからね…」
「ふふ。ところで何か忘れてないかい?」
「…え!?」
「お前達!思い出させてやれ!!」
「「「「「萃夢『施餓鬼縛りの術』!!!」」」」」
萃香の号令と共に、ちび萃香達が一斉に鎖を投げてきた。
鎖は俺の腕や足や胴体、さらには首にまで巻き付いて俺の身動きを不可能にする。
「エネルギーを吸い尽くしてやりな!」
「「「「「おーっ!!!」」」」」
「…がぁぁぁぁぁぁっ!?」
突如体に電撃が走り、俺は思わず声を上げる。
いや、それだけでは無い…この感覚は…
「力が…吸いとられる…!?」
「気づいたようだけど、もう遅いよ!
小さな私に力を吸いとられ尽くしちまいな!!」
「…ぐぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…!?」
ちび萃香達は鎖を引っ張り、エネルギーを吸いとると共に俺の体を締め上げていく。
ヤバい、意識が遠のいていく…死ぬ…
…何てね!スペル発動!!
「完防壁『パーフェクトバリヤー』!!!」
「なっ!?その体勢からスペルだと!?」
俺は紫色の衝撃波を全方位に放ち、油断しきっていたちび萃香達を巻き込んでいく。
その勢いは凄まじく、離れた所で見ていた本物の萃香すら巻き込みそうな勢いだ。
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁっ!」」」」」
ちび萃香達はどんどん呑み込まれて消滅していく。
一体一体消えていくと同時に、俺の体を捕らえていた鎖が消えていった。
やがてちび萃香達は全て消え、再び俺と萃香だけになる。
「…まさか…全員を撃ち消すなんて…!」
「驚いたか?俺も驚いたよ。
ここまで簡単にあいつらを消せるなんてね…」
「…簡単だと?」
萃香の目が険しくなり、放っている気も怒りを含んだものになった。
…ああ…また俺は挑発的な発言を…
「もう、手加減はしないよ…紀流!
光栄に思いな!私をここまでさせた奴は…久しぶりだ!!!」
「初めてじゃ無いのか…」
「残念ながらね…っ!!!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…!!!」
俺がぼやいている間にも、萃香はどんどん気を高めていく。
やがて彼女の体は再び霧となって周りに広がり始める。
そして…
「な…っ!?」
「鬼の四天王の真価を、お前に見せてやるよ!!」
…十数メートルはあろうかという、超巨大萃香が俺の前に現れた。
「…うーん…うるさいわね…」
ここは宴会会場。殆どの人が寝ている中、霊夢だけは目を開けた。
…いや、霊夢だけでは無い。あと三人…
「霊夢~?どうしたんだぜ~?」
「…私としたことが…地べたに寝てしまうとは…はしたない。」
「少々飲み過ぎましたね…」
魔理沙、咲夜、そして妖夢も起きていた。
「…あ、魔理沙。さっきからドンドンやってるのってあんた?」
「いや、私も今起きたばっかりなんだが…」
「じゃあ、あんた達?」
「いえ、私もたった今起きたばかりですので。」
「同様です。」
「じゃあ誰よ?」
霊夢がそこまで言ったとき、凄まじい地鳴りが彼女達を襲った。
思わずよろけて転びそうになるが、お互いを支えあって何とか持ちこたえる。
「ちょ…一体何だって言うのよ…」
「今の地鳴り、神社の表の方からしなかったか?」
「確かにそうでしたね…」
「おそらく、例の人間が関わっているのではないでしょうか?
何処にも寝ていませんし。」
「…また祠弥…あんた達、行くわよ!」
霊夢はそう言い、神社の前に歩いていく。
三人も後からついていき、地鳴りの原因を確かめようとする。
神社の影からその「原因」を見た瞬間…
「「「「!?」」」」
四人は絶句した。
何しろそこに広がっていた光景は、自分達のよく知っている「普通の人間」と…
「どうした!逃げているだけじゃ私には勝てないよ!!」
「お前の一撃は大きすぎるんだよ!喰らったら潰れるわ!!」
…おおよそ十数メートルはあろうかという巨人が戦っている光景だったからだ。