東方有無録   作:印鑑

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第三幕〜不意をつかねば勝利無し〜by紀流

「波符『かめはめ波』!!!」

 

 

ここは山の上にある小さな神社、博麗神社。

博麗の巫女が管理している、幻想郷の要となる場所だ。

今日はここで宴会が行われていたのだが…

今現在、何故か人間と巨人の戦いが繰り広げられている。

 

 

「的がでかくなったから当てやすい…

そんな考え、私には当てはまらないよ!」

 

 

巨人はそう言い放つと、文字通り「霧」と化して攻撃を回避する。

再び現れた巨人を見て、人間は溜め息をつく。

 

 

「…チート…」

 

「その言葉、今や誉め言葉だねぇ!ハハハ…」

 

 

オッス!オラ紀流!

…萃香が巨大化しました。原因・俺の挑発。

つまりまあ俺の自業自得ってわけだが…いくらなんでも…

 

 

「喰らいな!萃符『戸隠山投げ』!」

 

「…大きすぎるんだよ!ぐはっ!!」

 

 

萃香がスペルを発動すると、彼女に合わせて相似拡大された巨石がぶっ飛んできた。

俺はあまりにも馬鹿でかい岩を避けきれず、まともに喰らってしまう。

そのまま岩は俺ごと飛び続け、ふと後ろを見ると…

 

 

「…神社!?おい萃香!このままだと当たるから止めろ!!」

 

「それがどうしたのさ!建物ごとぶっ潰してやるよ!!」

 

「…ふざけんな!壊れると後で俺が苦労するんだ!!

おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「なっ!?」

 

 

俺は気を一気に爆発させ、その勢いで岩を萃香の方に跳ね返す。

萃香にとっては不意討ち以外の何物でも無く、驚愕しながらも受け止める体勢に入る。

 

 

「ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ…たあっ!!!」

 

 

萃香は岩を左手で受け止め、空いている右手を振るって岩を粉砕した。

岩の破片(漬物石レベル)が飛び散り、俺の横を通り過ぎて神社に迫っていく。

 

 

「ヤバいっ!『瞬間移動』!!

からの…散弾『トラップシューター』!!」

 

 

俺は神社の目の前まで瞬間移動し、緑色の気弾を大量に放って破片を打ち消す。

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「…お前…どれだけ神社を壊されたく無いんだい?」

 

「少なくともお前が思っている百倍は壊されたく無い。」

 

「…そうかい。」

 

 

萃香は紀流の理由に呆れると同時に、一瞬尊敬すらしてしまった。

そして、呆れている者達がここにも四人…

 

 

「「「「…。」」」」

 

 

宴会会場で目覚めた、四人の少女達だ。

 

 

「…そこまでして守るって…霊夢、祠弥に何吹き込んだんだ?」

 

「え?魔理沙、どういう事?」

 

「…どんな下らない約束でも、絶対に守ろうとするあの人間の事です。

さしずめ、貴方と何か約束したのでしょう?」

 

「そうねぇ…最初の異変を解決した後に簡単な約束はしたけど…」

 

「…どんな約束ですか?」

 

 

妖夢が首を傾げたのを見て、霊夢は説明する。

 

 

「いや、神社壊れたら修理(自費)してって…」

 

「「「成る程、そういう事か。」ですか。」なんですか…」

 

「?」

 

 

納得した三人を前に、霊夢は頭に?マークを浮かべる事しか出来なかった。

 

 

「…とにかく霊夢!その約束、早く無効にしてやるんだ!」

 

「そうしたいのは山々なんだけどね…」

 

「…おま…!」

 

 

魔理沙は霊夢の無神経さに呆れ、同時に怒りすら覚える。

 

 

「何でだ!祠弥より神社の方が大切なのかよ!!」

 

「…そんなわけ無いでしょ…ああでも言わないと祠弥は…

遠慮無しに滅茶苦茶な戦いを始めちゃうからね…」

 

 

霊夢はそう言うと、戦っている紀流を見て苦い顔をする。

咲夜は「ああ、成る程。」と言いたげな表情をしたが、魔理沙には真意が分からず…

 

 

「…霊夢、お前がそんな奴だとは思って無かったぜ…!!

…祠弥!!!」

 

「ちょ、止めなさい魔理沙!!」

 

 

霊夢が止めるのも構わず、魔理沙は大声で紀流を呼ぶ。

その時の紀流の状態はと言うと…

 

 

「これで落ちな!鬼符『大江山悉皆殺し』!!!」

 

「何なんだその物騒な名前のスペルは!

そして離せぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「やーだよ!!!」

 

「やだよじゃねぇ!うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

巨大萃香に掴まれ、地面に叩きつけられそうになっていた。

そんな状態の紀流に魔理沙は懸命に呼び掛け続ける。

 

 

「祠弥ー!!私の声が聞こえるかー!?」

 

「聞こえてるよ!何だよ!!

こんなヤバい状況に陥っている俺によく話しかけようと思ったな!?」

 

「…すまん…」

 

「ええい!用件は何だ!!手短に話せ…がぁぁぁ!!!」

 

「…ハハハ、よくこの状況で呑気に喋ってられるねぇ!

今にも自分が潰されそうになってるってのによ!!」

 

「…人の話は聞いておいて損は無い!

特に…自分が切羽詰まっている時はな!!!」

 

「祠弥…!じゃあ、話すぞ!

神社が壊れる事なんて気にせずに、思いっきり戦え!!

…霊夢からの伝言だ!」

 

「…何だって!?本当かよそれ!?」

 

「…そんな事言ってn「祠弥!『超サイヤ人』の力を見せてやるんだぜ!!!」

 

「あの馬鹿…!」

 

 

魔理沙がそう叫ぶのを聞いて、霊夢は頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

妖夢は霊夢の態度を不審に思い、質問する。

 

 

「あの…なぜそこまであの『祠弥』とかいう人間を戦わせたく無いのですか?」

 

「…アイツは強いんだけど…」

 

 

霊夢はため息を一つつき、その先を続ける。

 

 

「凄く『調子』に乗りやすくてね…

そうなっちゃうと、周りを顧みなくなるのよ…」

 

「…へ?」

 

 

妖夢は霊夢の言っている事の意味が分からないまま、戦っている紀流の方を見る。

その瞬間妖夢は『何か』を感じ、全身に鳥肌が立った。

 

 

「…っ!?」

 

「…貴方にも感じられた様ですね。

博麗の巫女、そろそろ始まりますよ。」

 

「…。」

 

 

霊夢は咲夜の言葉を聞き、がっくりと項垂れた。

 

 

 

「何なんですか、今一瞬感じられた凄まじい『何か』は…」

 

「見ていれば分かりますよ。」

 

「は、はあ…」

 

 

四人の少女達は、それぞれ別の思いを胸に抱きながら紀流の方を見る。

 

 

「…魔理沙の馬鹿…」

 

 

霊夢は絶望を。

 

 

「そんな奴、さっさとぶっ倒してやるんだぜ!!」

 

 

魔理沙は期待を。

 

 

「一体、何が始まるんです…?」

 

 

妖夢は疑問を。

 

 

「…。」

 

 

…咲夜は分からん。

まあ、とにもかくにも紀流は魔理沙の声を聞いて…

 

 

「…じゃあ、遠慮なく…」

 

「…!?」

 

 

そう呟いた。

 

 

「へぇ、まだ喋る余裕が残ってるのかい…やるね…

じゃあ、そろそろ終わらせてやるよ!!!」

 

 

萃香は遥か上空に一瞬で飛び上がり、掴んでいる紀流を下にして叩きつけようとする。

紀流にとっては絶体絶命の大ピンチの筈だが…

…彼は小さく笑い、萃香に話しかける。

 

 

「…フフフ…萃香、残念だったな…

俺はまだ倒れないよ。」

 

「…何だ、気でも違ったのか?お前は私に体を掴まれて身動きが取れず、

今まさに地面に叩きつけられそうになってるんだよ?もう誰が見ても…」

 

「そうかな?幸いな事に、後五秒位あるからね。

そこからいくらでも逆転出来るさ。」

 

「…チッ!その減らず口を黙らせてやる!!」

 

 

萃香は更に紀流を強く握りしめ、腕を伸ばして少しでも早く地面と接触させようとする。

だが、紀流は再び笑って口を開き…

 

 

「…減らず口、ねぇ…もっと早くから封じとけば良かったのに…

魔口『超魔口砲』!!!」

 

「なっ…がはっ!?」

 

 

…凄まじい威力の波動が、萃香の顔に向かって放たれた。

あまりにも突然な事に萃香は反応出来ず、まともに喰らってしまう。

 

 

「あぐぐ…!」

 

「ほら、十分逆転可能だっただろ?」

 

 

萃香は思わず紀流を離し、顔を押さえながら墜落した。

その隙に紀流は楽々と脱出し、手を叩きながら萃香を挑発する。

 

 

「鬼さんこちら、手の鳴る方へ~♪」

 

「この…っ!私を馬鹿にしようってのかい!!

全く、大した度胸の持ち主だよお前は!!!どりゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

萃香は紀流の態度にぶち切れ、彼に向かって殴りかかる。

巨大な拳が迫ってくるというのに、紀流は何故か余裕の表情だ。

 

 

「「祠弥っ!!!」」

 

「危な…!」

 

「…!」

 

 

萃香の一撃が紀流に迫り、四人の少女達が思わず声をあげた時。

紀流が動いた。

 

 

「…俺の攻撃のチャンスはお前の攻撃時…確実に実体化している時のみ!!

そしてそのチャンスは…今だ!!!」

 

 

紀流は前進しながら体を思いっきり捻り、萃香の攻撃を紙一重で回避する。

そのまま紀流は加速し、両手を後ろに引いて気を溜め始める。

 

 

「!?」

 

 

萃香は慌ててもう一方の腕で攻撃するが、紀流はあっさりとそれをかわし…

 

 

「今度は外さん!!波符『かめはめ波』!!!」

 

 

がら空きになった萃香の胴めがけて、青い光線を撃ち込んだ。

 

 

 

 

 

「…で?何か申し開きはあるのかしらねぇ?」

 

「…影も形も無いです…」

 

「…あんたは?」

 

「無いよ…」

 

 

…え?状況が理解出来ない?じゃあ説明しよう…

かめはめ波撃って萃香を吹っ飛ばしたらその方向が神社だった。

しかも余波で本殿所か倉庫まで瓦礫になった。後悔しかしていない。

…霊夢が鬼より怖い。

本物の鬼が俺の横で縮こまって正座してるんだから間違いないな、うん。

 

 

「…じ、神社を直すんなら任せな!何せ私は鬼だからね、

木材とかは楽々と運べるさ!!!」

 

「…ふ~ん…じゃあ良いわ。

…祠弥は?」

 

「…背一杯協力しますです…」

 

「…分かったわ。」

 

 

霊夢は俺達二人を睨み付け、再び口を開く。

 

 

「…そこの鬼は神社の建物本体。

祠弥は家具とか服とか食べ物とか…とりあえず神社本体以外の調達。

分かったわね!?」

 

「「は、はいっ!?」」

 

 

霊夢の大声にビビり、俺と萃香は同時に反応して返事をする。

 

 

「ところで霊夢…お前はどうすんだ?」

 

「どういう意味?」

 

「いや、神社が直るまで何処で寝泊まりすんのかな~って…」

 

「そうね。」

 

 

霊夢は一瞬だけ考え、直ぐに答える。

 

 

「魔理沙の家に泊めてもらうわ。」

 

「ちょ、霊夢!?何で私の…」

 

「紀流に思いっきり戦えって言ったのは誰だったかしらね~ぇ?」

 

「うっ…分かったぜ。」

 

 

魔理沙は反論するが、霊夢に痛いところを突かれて渋々納得する。

 

 

「…これにて、一件落着…なんですかね?」

 

 

紀流と萃香に詳しい説明をする霊夢を見ながら、妖夢は隣にいる咲夜に話しかける。

彼女の答えは、至極単純な物だった。

 

 

「貴方にはそう見えますか?」

 

「…いえ…」

 

 

それっきり彼女達は口を閉じ、四人の会話(言い争い)を聞いていた。

 

 

 

 

 

「「「「「…!?」」」」」

 

 

神社の裏の宴会会場。ようやく、人々が起き始めた。

いつの間にか神社が消えている事について、みんな一言。

 

 

「「「「「何があったんだ…」」」」」

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