「波符『かめはめ波』!!!」
ここは山の上にある小さな神社、博麗神社。
博麗の巫女が管理している、幻想郷の要となる場所だ。
今日はここで宴会が行われていたのだが…
今現在、何故か人間と巨人の戦いが繰り広げられている。
「的がでかくなったから当てやすい…
そんな考え、私には当てはまらないよ!」
巨人はそう言い放つと、文字通り「霧」と化して攻撃を回避する。
再び現れた巨人を見て、人間は溜め息をつく。
「…チート…」
「その言葉、今や誉め言葉だねぇ!ハハハ…」
オッス!オラ紀流!
…萃香が巨大化しました。原因・俺の挑発。
つまりまあ俺の自業自得ってわけだが…いくらなんでも…
「喰らいな!萃符『戸隠山投げ』!」
「…大きすぎるんだよ!ぐはっ!!」
萃香がスペルを発動すると、彼女に合わせて相似拡大された巨石がぶっ飛んできた。
俺はあまりにも馬鹿でかい岩を避けきれず、まともに喰らってしまう。
そのまま岩は俺ごと飛び続け、ふと後ろを見ると…
「…神社!?おい萃香!このままだと当たるから止めろ!!」
「それがどうしたのさ!建物ごとぶっ潰してやるよ!!」
「…ふざけんな!壊れると後で俺が苦労するんだ!!
おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なっ!?」
俺は気を一気に爆発させ、その勢いで岩を萃香の方に跳ね返す。
萃香にとっては不意討ち以外の何物でも無く、驚愕しながらも受け止める体勢に入る。
「ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ…たあっ!!!」
萃香は岩を左手で受け止め、空いている右手を振るって岩を粉砕した。
岩の破片(漬物石レベル)が飛び散り、俺の横を通り過ぎて神社に迫っていく。
「ヤバいっ!『瞬間移動』!!
からの…散弾『トラップシューター』!!」
俺は神社の目の前まで瞬間移動し、緑色の気弾を大量に放って破片を打ち消す。
「はぁ…はぁ…」
「…お前…どれだけ神社を壊されたく無いんだい?」
「少なくともお前が思っている百倍は壊されたく無い。」
「…そうかい。」
萃香は紀流の理由に呆れると同時に、一瞬尊敬すらしてしまった。
そして、呆れている者達がここにも四人…
「「「「…。」」」」
宴会会場で目覚めた、四人の少女達だ。
「…そこまでして守るって…霊夢、祠弥に何吹き込んだんだ?」
「え?魔理沙、どういう事?」
「…どんな下らない約束でも、絶対に守ろうとするあの人間の事です。
さしずめ、貴方と何か約束したのでしょう?」
「そうねぇ…最初の異変を解決した後に簡単な約束はしたけど…」
「…どんな約束ですか?」
妖夢が首を傾げたのを見て、霊夢は説明する。
「いや、神社壊れたら修理(自費)してって…」
「「「成る程、そういう事か。」ですか。」なんですか…」
「?」
納得した三人を前に、霊夢は頭に?マークを浮かべる事しか出来なかった。
「…とにかく霊夢!その約束、早く無効にしてやるんだ!」
「そうしたいのは山々なんだけどね…」
「…おま…!」
魔理沙は霊夢の無神経さに呆れ、同時に怒りすら覚える。
「何でだ!祠弥より神社の方が大切なのかよ!!」
「…そんなわけ無いでしょ…ああでも言わないと祠弥は…
遠慮無しに滅茶苦茶な戦いを始めちゃうからね…」
霊夢はそう言うと、戦っている紀流を見て苦い顔をする。
咲夜は「ああ、成る程。」と言いたげな表情をしたが、魔理沙には真意が分からず…
「…霊夢、お前がそんな奴だとは思って無かったぜ…!!
…祠弥!!!」
「ちょ、止めなさい魔理沙!!」
霊夢が止めるのも構わず、魔理沙は大声で紀流を呼ぶ。
その時の紀流の状態はと言うと…
「これで落ちな!鬼符『大江山悉皆殺し』!!!」
「何なんだその物騒な名前のスペルは!
そして離せぇぇぇぇぇぇ!!」
「やーだよ!!!」
「やだよじゃねぇ!うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
巨大萃香に掴まれ、地面に叩きつけられそうになっていた。
そんな状態の紀流に魔理沙は懸命に呼び掛け続ける。
「祠弥ー!!私の声が聞こえるかー!?」
「聞こえてるよ!何だよ!!
こんなヤバい状況に陥っている俺によく話しかけようと思ったな!?」
「…すまん…」
「ええい!用件は何だ!!手短に話せ…がぁぁぁ!!!」
「…ハハハ、よくこの状況で呑気に喋ってられるねぇ!
今にも自分が潰されそうになってるってのによ!!」
「…人の話は聞いておいて損は無い!
特に…自分が切羽詰まっている時はな!!!」
「祠弥…!じゃあ、話すぞ!
神社が壊れる事なんて気にせずに、思いっきり戦え!!
…霊夢からの伝言だ!」
「…何だって!?本当かよそれ!?」
「…そんな事言ってn「祠弥!『超サイヤ人』の力を見せてやるんだぜ!!!」
「あの馬鹿…!」
魔理沙がそう叫ぶのを聞いて、霊夢は頭を抱えてしゃがみこんでしまった。
妖夢は霊夢の態度を不審に思い、質問する。
「あの…なぜそこまであの『祠弥』とかいう人間を戦わせたく無いのですか?」
「…アイツは強いんだけど…」
霊夢はため息を一つつき、その先を続ける。
「凄く『調子』に乗りやすくてね…
そうなっちゃうと、周りを顧みなくなるのよ…」
「…へ?」
妖夢は霊夢の言っている事の意味が分からないまま、戦っている紀流の方を見る。
その瞬間妖夢は『何か』を感じ、全身に鳥肌が立った。
「…っ!?」
「…貴方にも感じられた様ですね。
博麗の巫女、そろそろ始まりますよ。」
「…。」
霊夢は咲夜の言葉を聞き、がっくりと項垂れた。
「何なんですか、今一瞬感じられた凄まじい『何か』は…」
「見ていれば分かりますよ。」
「は、はあ…」
四人の少女達は、それぞれ別の思いを胸に抱きながら紀流の方を見る。
「…魔理沙の馬鹿…」
霊夢は絶望を。
「そんな奴、さっさとぶっ倒してやるんだぜ!!」
魔理沙は期待を。
「一体、何が始まるんです…?」
妖夢は疑問を。
「…。」
…咲夜は分からん。
まあ、とにもかくにも紀流は魔理沙の声を聞いて…
「…じゃあ、遠慮なく…」
「…!?」
そう呟いた。
「へぇ、まだ喋る余裕が残ってるのかい…やるね…
じゃあ、そろそろ終わらせてやるよ!!!」
萃香は遥か上空に一瞬で飛び上がり、掴んでいる紀流を下にして叩きつけようとする。
紀流にとっては絶体絶命の大ピンチの筈だが…
…彼は小さく笑い、萃香に話しかける。
「…フフフ…萃香、残念だったな…
俺はまだ倒れないよ。」
「…何だ、気でも違ったのか?お前は私に体を掴まれて身動きが取れず、
今まさに地面に叩きつけられそうになってるんだよ?もう誰が見ても…」
「そうかな?幸いな事に、後五秒位あるからね。
そこからいくらでも逆転出来るさ。」
「…チッ!その減らず口を黙らせてやる!!」
萃香は更に紀流を強く握りしめ、腕を伸ばして少しでも早く地面と接触させようとする。
だが、紀流は再び笑って口を開き…
「…減らず口、ねぇ…もっと早くから封じとけば良かったのに…
魔口『超魔口砲』!!!」
「なっ…がはっ!?」
…凄まじい威力の波動が、萃香の顔に向かって放たれた。
あまりにも突然な事に萃香は反応出来ず、まともに喰らってしまう。
「あぐぐ…!」
「ほら、十分逆転可能だっただろ?」
萃香は思わず紀流を離し、顔を押さえながら墜落した。
その隙に紀流は楽々と脱出し、手を叩きながら萃香を挑発する。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ~♪」
「この…っ!私を馬鹿にしようってのかい!!
全く、大した度胸の持ち主だよお前は!!!どりゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」
萃香は紀流の態度にぶち切れ、彼に向かって殴りかかる。
巨大な拳が迫ってくるというのに、紀流は何故か余裕の表情だ。
「「祠弥っ!!!」」
「危な…!」
「…!」
萃香の一撃が紀流に迫り、四人の少女達が思わず声をあげた時。
紀流が動いた。
「…俺の攻撃のチャンスはお前の攻撃時…確実に実体化している時のみ!!
そしてそのチャンスは…今だ!!!」
紀流は前進しながら体を思いっきり捻り、萃香の攻撃を紙一重で回避する。
そのまま紀流は加速し、両手を後ろに引いて気を溜め始める。
「!?」
萃香は慌ててもう一方の腕で攻撃するが、紀流はあっさりとそれをかわし…
「今度は外さん!!波符『かめはめ波』!!!」
がら空きになった萃香の胴めがけて、青い光線を撃ち込んだ。
「…で?何か申し開きはあるのかしらねぇ?」
「…影も形も無いです…」
「…あんたは?」
「無いよ…」
…え?状況が理解出来ない?じゃあ説明しよう…
かめはめ波撃って萃香を吹っ飛ばしたらその方向が神社だった。
しかも余波で本殿所か倉庫まで瓦礫になった。後悔しかしていない。
…霊夢が鬼より怖い。
本物の鬼が俺の横で縮こまって正座してるんだから間違いないな、うん。
「…じ、神社を直すんなら任せな!何せ私は鬼だからね、
木材とかは楽々と運べるさ!!!」
「…ふ~ん…じゃあ良いわ。
…祠弥は?」
「…背一杯協力しますです…」
「…分かったわ。」
霊夢は俺達二人を睨み付け、再び口を開く。
「…そこの鬼は神社の建物本体。
祠弥は家具とか服とか食べ物とか…とりあえず神社本体以外の調達。
分かったわね!?」
「「は、はいっ!?」」
霊夢の大声にビビり、俺と萃香は同時に反応して返事をする。
「ところで霊夢…お前はどうすんだ?」
「どういう意味?」
「いや、神社が直るまで何処で寝泊まりすんのかな~って…」
「そうね。」
霊夢は一瞬だけ考え、直ぐに答える。
「魔理沙の家に泊めてもらうわ。」
「ちょ、霊夢!?何で私の…」
「紀流に思いっきり戦えって言ったのは誰だったかしらね~ぇ?」
「うっ…分かったぜ。」
魔理沙は反論するが、霊夢に痛いところを突かれて渋々納得する。
「…これにて、一件落着…なんですかね?」
紀流と萃香に詳しい説明をする霊夢を見ながら、妖夢は隣にいる咲夜に話しかける。
彼女の答えは、至極単純な物だった。
「貴方にはそう見えますか?」
「…いえ…」
それっきり彼女達は口を閉じ、四人の会話(言い争い)を聞いていた。
「「「「「…!?」」」」」
神社の裏の宴会会場。ようやく、人々が起き始めた。
いつの間にか神社が消えている事について、みんな一言。
「「「「「何があったんだ…」」」」」