「こっちですよー!」
「…はいはい…」
オッス!オラ紀流!
人里に買い物に来たら何故か女の子の作家さんに目をつけられたぜ!
今現在、(無理矢理)案内されて彼女の家に向かっている所だ!
「早く早く!もたもたしてるんじゃ無いですよ!」
今俺の事を先に先へと引っ張っているのが、謎の作家少女・
…この子、見た目によらず超強引なんだよな…
「後数十歩で着きますから!頑張って下さい!」
「…分かった、分かったからそんなに引っ張るなよ…」
そのまま阿求に引きずられるようにして道を歩いていると、阿求が足を止めた。
「ここです!」
「…随分とでけぇ家だなおい!?」
俺の目の前に現れたのは、博麗神社の数倍はあろうかという和風のお屋敷だった。
…そういえば、神社どうなったんだろ…直ったかな?
「…残念ながら、まだまだだよ…」
「…どうしたの、いきなり喋り出して!?」
「…いや何でも無いよ、博麗の巫女。
これはどこに設置するんだい?」
…いくらなんでもこんな短時間で直るわけ無いか、うん。
「紀流さん、何ぼーっとしてるんですか!玄関はこっちですよ!!」
「…あー。」
「…むむむむむっ…」
あまりにも俺が阿求の話に対してろくに答えなかった為か、遂に彼女は怒った。
「…何で私の話を真面目に聞いてくれないんですかっ!?」
「いや、ちゃんと聞いてるよ。玄関どっちだっけ?」
「やっぱり真剣に聞いてくれてないじゃ無いですか!
こっちですよって言いましたよね!?」
「耳で聞いただけじゃ方向までは分からんよ…」
俺がそう答えると、阿求は溜め息をついた後に話し始めた。
「はぁ…あのですね、紀流さん…
『人の話を聞く』という行為は耳だけで出来る物ではありませんっ!
耳で聞きながら『目で見る』事で、相手がどんな気持ちで喋っているのかという事を知ったり、
相手に対して誠意を伝えたりする事が出来るんです!!」
「…成るほd(「「「「「おぉー!」」」」」
「…へ?」
阿求が話し終えた瞬間、四方八方から感嘆の声が沸き起こった。
彼女が慌てて顔をあげると…
「…いやー、ためになったねぇ。」
「流石は阿求先生だな!」
「同じ人間として誇り高いねぇ、うんうん。」
…沢山の人達が、俺達二人を取り囲んでいた。
声がでかすぎるんだよ、阿求さん…
「…ななななななっ…!?」
阿求の顔はみるみる真っ赤になっていく。
そんな彼女に対して俺は一言。
「…相手を見て話すのも良いけどさ…周りもちゃんと見て、
声量にも気をつけろ、な?」
「…はい…」
「で、玄関どこ?」
「…こっちです…」
阿求はとぼとぼと歩き、家に入った。
…完璧に意気消沈してるな、あれは…
~阿求の家~
おいおい、中も豪華だぜこの家は…
まさに「古き良き日本家屋」って感じだな。障子があるなんて…
そう思いながら阿求の後ろを歩いていると、ある一室の前で彼女は止まった。
「…ここです。」
「…お前は倉庫で暮らす癖でもあるのか?」
え、失礼だって?しょうがないだろ…
だって巻物みたいなのが足の踏み場も無いぐらいに散乱してるんだぞ…
「倉庫とはなんですか!普通の部屋ですよ!!
…確かに書物だらけですけどね。片付けますか…よいしょっ…と!」
阿求は床にあった巻物を一気に数十個程腕に抱えて…
…俺に渡してきた。
「…は?」
「片付けを手伝って下さい!
この部屋の汚さを指摘したのは紀流さんですからね♪」
「…いや、汚いとは一言m「♪」…分かった。」
有無を言わせずに手伝わされる事になったぜ…
…阿求さん、笑顔が完璧過ぎます。
「どこに運べば良いんだ?」
「表の倉庫に運んでおいて下さい!
鍵は開いているので!よっこいしょ…!」
「…承知した。」
「助かります~♪」
…あれ?俺って何でここにいるんだっけ?
まあ、いいか…片付けだ、片付け!
紀流&少女片付中…
「…こんなもんかな…」
「ありがとうございます、助かりました~♪」
数十分後、やっと全ての巻物みたいなのを倉庫に移動させた。
…ああ、疲れた…帰ろう。
「…じゃあ、俺はこれで。」
「はい、お疲れ様でした…ってちょっと!?」
「さらばd「勝手に帰ろうとしないで下さいよっ!」…。」
…いや、早く解放してくれよ…俺は買い物に来てるんだぞ…
酒とか野菜とか米とか買わないといけないんだがな…
「これからあなたの事を『幻想郷縁起』に書き記すために、
いくつか質問をしようと思ってるんですからね!」
「…おい、いい加減に…」
「お手数はかけませんよー!」
「…。」
阿求はそう言って家の中に入っていく。
…よし、今が逃げ出すチャンスだっ!!瞬間移d…
「…流石に可哀想か…」
ああ、優柔不断の極み…まあいいか、さっさと終わらせて帰ろう…
~阿求の家(居間)~
「…ささ、どうぞこちらへ!」
「…おう。」
俺は阿求に勧められ、座布団の上に座る。
阿求は正座で俺の前に座った。うん、パーフェクトだ。
「お茶をどうぞ…」
「どうも。」
…何か、阿求の顔が真剣なんだが…俺も正座しようかな…
「では…始めますよ…」
…何だ、何なんだこの空気は!!!尋問でも始めるつもりかぁ!?
こういう重っ苦しいやつは苦手なんだよ…
「…」
「最初の質問です…」
…駄目だ!限界だっ!!!
「ちょっと待て!あまりにも堅苦しすぎる!!!」
「ふぇっ!?」
重すぎる空気に耐えかねて俺が思わず声を出すと、それに合わせて阿求も飛び上がった。
「な、何なんですかいきなりぃ…」
「あのだな、今の調子で行くと空気が重すぎるからさ…
もうちょっと軽いノリで質問出来ないか?」
「…それでは紀流さんに失礼でしょう…」
「丁寧とか失礼とかはどうでも良いから!
この空気のままだと、喋る口も動かなくなっちまうよ…」
「…分かりました。では改めて。」
「何時でも良いぞ。」
阿求は一回深呼吸をした後に、最初の質問をする。
「まず最初に、あなたはこの幻想郷の人間ですか?
それとも、『外来人』ですか?」
「…『外来人』?」
「外の世界から幻想郷にやって来た人間の事を総称して、外来人と呼ぶんですよ。」
成る程、そういう呼び方があるのか。
「じゃあ俺は『外来人』だな。」
「やはりそうでしたか…」
「何となく予想はしてたのか。
どこでだ?やっぱり服装?」
「服装の事も一理ありますが、
人間であるわりにはあまり人里に慣れていないように見えたので…」
「人里に来るのは今日が初めてだったからね…」
俺がそうぼやいている間に、阿求は筆を使って何やら紙に書き始めた。
…達筆だなぁおい…羨ましいな。
「…種族…外来人…っと。
次の質問良いですかー?」
「いきなり砕けたな!?」
「…やっぱり最初の方が…」
「いやいやいや!堅苦しいよりはよっぽどましだから!
そのまま続けて!」
「はい。では…
幻想郷の何処で暮らしているんですか?」
「そうだな。博麗神社に居候してるぞ(今は無いけど…)。」
「え!?博麗神社に住んでいるんですか!
だとしたら、人里まで来るのも一苦労だったでしょう?」
「飛んできたからそうでもないさ。」
「あ、そういえば飛べましたね。出現場所…主に博麗神社…っ。
よし、次の質問です!」
少女質問中…
「…質問は以上です!」
「ふう、終わったか。はぁ…」
質問が終わったことで緊張が一気にほぐれ、俺は大きな溜め息をつく。
「ご協力ありがとうございました!
今回聞いたあなたに関しての情報を『幻想郷縁起』に書かせてもらいますが、大丈夫ですか?」
「問題無いさ。
自分でそう言ってたじゃないか。」
「助かります!
いやー、しかし外来人ですか…珍しいですね~。」
「そうなのか?」
「いることにはいるんですが、大抵が直ぐに帰ってしまいますからね。
紀流さんも、いずれは元の世界に帰るんですか?」
…俺が元々いた世界…か。
まあ、俺の答えは決まっているがな!
「…いや、この幻想郷で天寿を全うするつもりだ。
外の世界では俺はもう『死人』だからね。」
「あ…」
俺がそう言った途端、阿求は気まずそうな顔をした。
「…すみません、失礼な事を…」
「気にすんな。わざと言ったんじゃ無いんだから。
…そういえば俺って一応『転生』したんだったな…」
「…転生…興味深いですね…
もう紀流さんを題材にして本を一冊書いてみたいですよ…」
「それは止めて!?」
「良いアイディアだと思うんですけどね…」
阿求はそう言いながら、新しい紙の上で筆を動かし始めた。
…やばい、こいつ本気で考えてやがる!話題を変えないと…
「…あの、阿求さん?」
「…何ですか…?」
阿求は紙に目を落としたまま、俺の質問に言葉を返す。
話は目で聞けって言ったのは誰だっけな~?
「お前が書いてる『幻想郷縁起』をちょっと見せてほしいんだが…」
「あ、良いですよ。ちょっと待ってて下さいね…」
阿求は立ち上がって部屋を出ていき、暫くして分厚い本を抱えて戻ってきた。
「随分とでかいな…」
「これは原版ですからね…結構読みにくいと思いますよ。」
「構わんさ。どれどれ…」
俺はページを開き、読み始める。
幻想郷の事が色々と書いており、読んでいて全く飽きない。
夢中でページをパラパラとめくっていると、ある項目に目が止まった。
「何々、『危険度・人間友好度』…?」
どうやら、妖怪等の危険度と人間に対しての友好度が表になって表記されている項目のようだ。
「…あ、幽々子と妖夢が載ってる。
幽々子の危険度高いな…人間友好度も高いけど。」
そんな感じで読み進めていくと(チルノやレミリアとかもいた)、見知らぬ名前を発見した。
幽々子の危険度と同じ項目に載っている。
「…ゆう…か?知らない名前だな…
なあ、阿求さん。」
「何ですか?」
紙から顔を上げた阿求に、俺はページを見せる。
「この人って、誰?」
「ああ、『
ここから少し離れた所にある『太陽の畑』に住んでいる妖怪です。」
「へぇ、太陽の畑ねぇ…
どこにあるの?」
「そうですね…人里を出た所に看板が立っていますから、それを見れば…
…って、まさか行くつもりなんですか!?」
「うん。幽々子と同じレベルの強さなんだろ?
俺としては、どんな奴か気になるからな!」
「ああ、ちょっと!?」
「お茶、ご馳走さまでしたー!!!」
俺は玄関から外に出た後、人里の入口に向かって飛び立つ。
風見 幽香…どんな奴か、楽しみだ!
「…ああ、行っちゃった…大丈夫でしょうか…」
紀流が飛び立っていった空を眺めながら、阿求は心配をつのらせた。
その手には、『幻想郷縁起』がさっきのページのまま開かれている。
「…確かに『危険度』こそ亡霊の姫と同じですが…」
そう言って、彼女は幽香の項目に目を落とす。
…『危険度』が書かれている場所の一つ横のスペース。
そこには、こう記されていた。
…「人間友好度・