「おぉ…凄いな…」
オッス!オラ紀流!
今現在、俺は目の前に現れた巨大な向日葵畑に感激している所だ!
「太陽の畑」って名前の由来はこれか…
「さて、あの本に載っていた人はどこにいるかなっと…」
俺は空から向日葵畑を眺め、その人らしき影を探す。
…阿求は妖怪って言ってたから、人間の形をしているとは限らないけどな…
そんな事を考えながら目を動かしていると、畑の中心に何かが建っているのを見つけた。
「…お、あれが住んでいる家かな?
ちょっと行ってみますか!」
俺は加速し、向日葵畑の中心にあるその家へと向かった。
~太陽の畑・中心部~
「…すみませーん、誰かいませんかー?」
家の前に着いた俺は、誰かがいないか大声で呼んでみた。
しかし返事が無かったので、今度は呼び鈴を鳴らしてみる事に。
…最初から鳴らせとか言わないで下さい。
「…うーむ。」
鳴らして暫く待ったが、誰かが答える気配は無い。
…会う気満々で来たけど、どうやら留守みたいだな…残念。
俺が諦めて帰ろうとすると、家の壁に紙が留められていたのが目に入った。
「何々…『今現在畑に出ています。
ご用件のある方は、向日葵でも見て待っていて下さい。』…か。
いることにはいるみたいだな。」
…畑仕事、ねぇ…
まさか、この向日葵を一人で全部世話するのか!?流石妖怪…
「しょうがない、待つか…」
俺は家を取り囲むように生えている無数の向日葵を眺める。
…でかいな…数メートル以上はあるんじゃないか?種どれくらい採れるんだろ…
「…ふぁ…暇だし、ちょっと寝るか…」
ここで俺は持ち前の図々しさを発動し、向日葵の側に寝っ転がる。
日陰になっていて結構涼しい事もあった為か、暫くして俺は眠ってしまった。
「♪~♪~」
紀流が向日葵の下で寝てしまってから数十分後、一人の女性が上機嫌で家に向かって歩いて来た。
首もとに黄色いリボンがついた真っ白いシャツに、赤地に縞模様のベストとスカート。
ピンク色の日傘と麦わら帽子で隠れてしまっているが、緑髪紅眼の綺麗な人だ。
「♪~♪~♪…ん?」
家の近くまで来た彼女は早速異変に気づく。
漠然としたものだったが、景色に少しだけ違和感があるのだ。
「……?」
彼女は首を動かし、辺りを見回す。
やがて、彼女は自分の感じた違和感の原因を発見した。
「…zzz…」
「…。」
…一本の向日葵の下で寝ている人間が、違和感の原因だった。
この人間、何で私の畑で堂々と寝ているのかしらね…
それが最初に彼女が思った事だった。
「zzz…」
「…!」
彼女は暫くの間寝ている紀流の顔を見ていたが、突然何かを思いついたように日傘を閉じる。
…そして、その先端で紀流の顔を突っついた。
「…っ…zzz…」
「…。」
紀流は少しだけ反応したが、また直ぐに静かになってしまった。
それを見て、彼女は再度日傘の先端で顔をつつく。
…つつくというよりは、むしろ「刺す」に近いものだが。
「ん…」
「…!」
紀流がまた少し反応したのを見て、彼女は日傘を引っ込める。
だが、精々口をもごもごさせただけであり、やはり眠ったままだ。
「…zzz…。」
「………」
紀流が全く起きないのを確認すると、彼女はみたび日傘を構え…
「…それ。」
…人間の鳩尾にあたる部分に、正確に日傘を突き刺した。
「げ(ry」
紀流が踏み潰された蛙のような声をあげたのを聞き、彼女は嬉しくなる。
痛がっているんだ、この人間は♪
「それそれそれそれ…♪」
「…痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
彼女は日傘を何度も何度も紀流の鳩尾に突き刺し続ける。
遂に紀流は耐えられなくなり、がばと飛び起きた。
「何だ、一体どうした…って痛い!?」
「それそれそれそれ♪」
「止めて滅茶苦茶いt…あだだだだだだだっ!?」
…こいつ、面白い。
彼女はそう思いながら、日傘を突き刺し続けた。
…今まで生きてきた中で、最悪の目覚めだぜ…
「…痛い…滅茶苦茶痛い…
流石に酷いって…」
「…え?何を言ってるの?
私の家の庭で寝たって事は、それなりの覚悟があったんでしょう?」
「何の覚悟だよ…」
彼女は一呼吸置いた後、また直ぐに喋った。
「
「そんなもんあるかっ!」
「あ、そう…」
彼女はそう言いながらも、相変わらず日傘で俺の腹を突き刺し続ける。
…このままだと腹に穴が空くよ…
「…で、私に遊ばれに来たんじゃ無い人間?
名前は何て言うの?」
「…紀流 祠弥。」
「へぇ…私は『
ここまで来たって事は、私の事も知ってるんでしょう?」
「…ああ、知ってるよ。
危険度MAXの妖怪なんだろ?」
「フフ、危険度MAX…ね。
あの子も中々洒落た書き方をするじゃない。
いつかお礼しに行かなくちゃね…」
彼女改め幽香さんは、にこにこしながら喋り続ける。
…すっごく美人なのに、何か怖いです。
「…あなた、あの子の本を読んでそれを元にここに来たなら…
私の人間友好度も分かってるでしょ?」
…人間友好度…?ああ、そういえばそんな項目あったな…
「いや、幽香さんのは見てないです。」
「幽香『さん』ね…幽香で良いわよ。」
幽香さんはそう言った後に、俺の頭を鷲掴みにして持ち上げる。
…痛い!頭皮が破ける!!離して!!!
「…私の人間友好度はね、『最悪』なのよ。」
「『最悪』…ですか…」
「そうよ。運が悪かったわね。
私にとっても、今日は最悪の日よ。
折角一仕事終えて休もうかと思ったらあなたみたいなのが庭にいて、
しかも全く起きようとしないし。全くいい迷惑よ。」
「…すみません。」
「だからね…♪」
幽香さんは一旦言葉を切った後、最高の笑顔で俺の顔を覗きこんできた。
…ああ、まるで太陽…
「…少し、
「…もう十分虐めてるでしょう…」
「まだまだ序の口よ♪」
「…。」
…今も頭を鷲掴みにされている状態なんですけど…凄く痛いんですけど…
これで序の口って、本気はどれくらいなんだよ…
「うーん…とりあえずお茶でも出しましょうか。
来なさい、紀流。」
「はいはi…痛い!」
幽香さんは俺を引きずるようにして家の中に入る。
このくらいの道程なら一人d…痛い!!!
「体が持たん…」
「このままボロボロにしてあげるわ♪」
「…。」
「~♪」
もう嫌だ、この人…死ぬ…
ある意味、レミリアや紫以上の強敵だよ…
~幽香の家~
「…どうぞ。」
家に入った後、俺は幽香さんに勧められて椅子に座った。
暫くして、お茶の入ったカップが出てきたが…
「…。」
「…流石の私もお茶に毒入れたりはしないから、
安心して飲みなさい。」
「…。」
「あら、信用出来ない?しょうがないわね…」
幽香さんはくすくす笑いながら俺のカップを手に取り、中身を少し飲んだ後にまた戻した。
「ほら、飲んでも大丈夫よ?」
「…もう水で良いです。」
「これ以外にあなたが飲んでいいものは無いわよ。」
「…蛇口捻れば水ぐらい出るでしょう…」
「だから?」
…こいつ…楽しんでやがる…
良いだろう…そっちがその気なら…!
「…よっと。」
「…な!?」
俺は隙をついて幽香さんの手からカップを引ったくり、中身を一気に飲み干す。
そして一言。
「ああ、確かに毒は入って無いですねー。」
「…人間ごときに、見事に一本取られたわ…」
幽香さんは悔しそうな顔をして、俺の(飲んでないが)お茶を一気に飲み干した。
うん、満足。
そのまましばらく黙っていると、幽香さんが大きな伸びを一つ。
「…はぁ…ぁ…疲れた。」
「こっちの方が疲れましたよ…」
「結果、お互い様…ってわけね。」
「そうですね…」
…何か、最初より意志疎通出来てるような…気のせいか。
すると幽香さんがいきなり立ち上がり、俺の腕を掴んで玄関まで引きずり始めた。
俺は少し驚いたが、幽香さんの口から出た言葉で納得する。
「私もう寝るから、さっさと帰ってくれる?」
「…あ、はい。分かりました。」
…内心少し寂しい気もしたが、
そんな事を考える間もなく、幽香さんは俺を外にほっぽりだす。
そのままドアを閉めようとしたが、何かを思いついたらしくまた顔を覗かせた。
「…あ。そうだ。ちょっと待ってなさい…」
「?」
俺が?マークを頭に浮かべていると、幽香さんは家の裏に回り込んで…
…大きな向日葵を一輪、植木ばちごと抱えてきた。
「これ、神社に植えたら綺麗なんじゃない?
あの巫女に言っておきなさい、『信仰はまず見た目から』ってね。」
「ああはい、伝えておきます…
…あれ?俺って神社の事…」
「これでも私は大妖怪よ?人に気づかれ無いようにする事だって出来るわ。」
…凄いな、妖怪。いや、幽香さんが凄いのか?
「…じゃあね、紀流。また来なさいよ♪」
「丁重にお断りしたいところだ…」
「拒否権があると思う?」
「…無いだろうな…」
「正解。フフフ…」
幽香さんは最後に少しだけ笑い、扉を閉めた。
…さて、俺も一旦戻るか…
「どっこい…しょっ!!!」
俺は巨大な植木ばちを抱え、バランスをとりながら飛び立つ。
「さーて、買い物の続きでもするか!」
俺はそう言って自分を鼓舞し、人里へと戻っていった。
~人里・阿求の家~
「よいしょーっ!!!」
「…き、紀流さん!?無事だったんですか!?」
「お陰さまでな。結構いい人だったぜ、幽香さん。
お土産に向日葵までくれた。」
「…!?」
阿求は肝を潰してしまった。
無理もないだろう。何せ、彼女が一番危険と判断した妖怪の所へ行き、
帰りにお土産まで貰ってきたのだから。
「あのさ阿求。俺ちょっと買い物したいから、
向日葵を少しの間だけここに置かせてくれないか?」
「…構いませんよ。」
「助かる!
じゃあ、行ってくるぜ!!」
紀流はまた直ぐに飛び出していき、やがて人ごみの中に見えなくなってしまう。
そんな紀流の後ろ姿を見て、阿求はこう思った。
「…一体、彼は何者なんだろう」と。