「…困った。実に困った。」
オッス!オラ紀流!
…買い物しようと阿求の家を出たらとんでも無い事に気づいたぜ!
「ここはどこだぁぁぁ!?」
「「「「「!?」」」」」
「…あ、すいません…」
…というわけで俺は今現在、人ごみの中で絶賛迷い中だ!
結局、阿求に何にも聞かなかったな…ミスった。
「さて、どうする…」
…いや、本当にどうしよう…手がかりが何にも無いんだが…
八百屋どこだ…米屋は?酒屋は?最初に入った服屋は!?
「仕方無い、一旦阿求の家に戻るk…」
そう考えながら後ろを振り向いた時、気づいた。
「…阿求の家、どこだ?」
はい、迷子確定~。
…あれ、もしかして俺って方向音痴なの…か…?
いや、そんな筈は…え?
「…。」
俺はすっかり弱りはて、頭を抱えてしまった。
「…あれ?あそこにいるのは…」
「あの服装、間違い無いでしょうね。」
「…。」
途方に暮れている紀流の少し後ろ。周りと比べて服装の浮いた三人が、彼の後ろ姿を確認していた。
一人は銀髪にメイド姿の女性、十六夜咲夜。もう一人は緑色のスカートの少女、魂魄妖夢。
最後の一人は金色の尻尾が九本生えた女性、八雲藍だ。
「…何してるんでしょう?」
「頭を抱えているが…」
「…あの人間の事です。どうせ何の準備も計画も立てず、
無計画に人里にやって来てその結果迷っているんでしょう。」
「…成る程…流石咲夜さん。」
「観察力、洞察力
「…「
咲夜は頭に?マークを浮かべて首を傾げる。
その姿を見て、妖夢と藍は顔を見合わせて溜め息をついた。
「…人の気持ちがいまいち分かっていないような…」
「遠慮が無い、と言った方が良くないか?」
「?」
「「いや、何でもない…」ありません…」
「あ、そうですか。
…で、どうします?声かけますか?」
「そうだな。どうやら困っているようだし…」
そう藍は言うと、紀流の後ろ姿に声をかけようとする。
だが、その肩を掴む者がいた。
「…どうしたんだ、妖夢?」
藍がそう訊ねると、妖夢は少し黒い笑みを浮かべた後に言った。
「…藍さん、咲夜さん。少し様子を見てみませんか?」
「何故です?何の意味もありませんよ?」
「私もそう思うが。」
「…ところがどっこい、それがあるんですよ…」
「顔が黒いぞ、妖夢…」
藍は薄ら笑いを浮かべている妖夢に対して突っ込む。
その突っ込みに返答する様に、妖夢は話し出す。
「…前、博麗神社で宴会をした事を覚えていますか?」
「…何時の話だ?」
「異変解決の翌日です。」
「その宴会がどうかしたんですか?」
「あの時、私達三人で話していたらいきなりあの人間が話しかけてきて、
その直後に幽々子様が出てきましたよね?」
話しながら、妖夢の顔はどんどん青くなっていく。
おそらく、その時の事を思い出したのだろう。
「…そう言えば、私も紫様に…
咲夜は大丈夫だったのか?」
「特に何のおとがめもありませんでしたが。」
「良かったな…ああ、思い出しただけで寒気が…」
喋りながら、藍も妖夢と同じように顔をひきつらせる。
それだけ、あの時の幽々子と紫は恐ろしかったのだろう…。
「私、あれ以来まともに寝れませんよ…」
「私もだ…」
「…まさか貴方は、私的な恨みであの人間を困らせようとしているのですか?」
咲夜が何気無くそう聞くと、妖夢は我が意を得たりと喋りだした。
「その通りです!流石は咲夜さんですねっ!!
あの時の仕返しをしてやるんです!」
「…いや、妖夢…それはいくら何でも幼稚過ぎないか…?」
「幼稚で結構!とにかく、このまま放って置くんです!
あいつ、困りますよ…ふふふ…」
「こらこら…」
「あ!動き始めましたよ!さあさ、追いましょう!」
「「…。」」
うきうきしながら紀流を追い始めた妖夢を、藍と咲夜は呆然と眺めていた。
「…さて、我々はこれからあの人間『紀流 祠弥』を追うわけですが…
何か質問はあります?」
「何故ゆえ追う必要g「この間の仕返しの為です!」そうですか。」
「…流石にばれr「ばれなければいいんです!」…。」
二人は妖夢を止めようとするが、当の本人は全く聞いていない。
彼女には、最早紀流を困らせる事しか頭に無いのだ。
「お!彼が道行く人に話しかけようとしていますね…
しかし皆さん、中々足を止めません。」
「あの人間、ああ見えて人見知りですからね。」
「…酷い言い様だな…
だが、どうやらもう心配無さそうだ。」
「村人と話していますね。」
「お辞儀をした…村人が離れていった…
あ、彼も動きました!追いますよっ!!」
「…おい、妖夢…一つ良いか?」
「何です、藍さん?」
「…いくら何でも、恥ずかしいんだが…」
ちなみに、今の三人の格好。
帽子に長コートに黒サングラスにマスクと、「怪しい人」としか言い様がない。
藍は元の服で良いと言ったのだが、妖夢がこれが良いと聞かなかったのだ。
「…さっきから周りの視線に殺されそうなんだが…」
「無心になるんです!」
「お前も結局恥ずかしいんじゃないか…」
「…お二人共、人間が足を止めましたよ。」
「「…(冷静だな…)。」」
「…いらっしゃい!何にする?」
「えーと、人参と玉ねぎとジャガイモと…」
…やっとこさ八百屋を見つけたぜ…名も無き人に感謝!
しかし、霊夢に頼まれた野菜をそのまま買っているんだが…何を作る気なんだろう?
「…後、グリーンピースで。」
「はい、少々お待ちを!!」
威勢のいい売り子のおじさんが、手際よく野菜を袋に詰めていく。
やがて、合計金額が出た。
「全部で合計…510円です!」
「何っ!?」
五百…十…円…だと…?ふざけるな!!
霊夢はワンコインで済むって言ってたじゃないか!これは罠だ!!
神社をぶっ壊した事に対する当てつけd…
「…どうかしたのかい、あんちゃん?」
「…?」
声がしたので振り返ってみると、後ろにいた男性が俺の事を不安そうに見ていた。
「…いやー、実は十円足りなくてですね…」
「何だ、そんな事かい。ほら。」
「え!?」
驚く暇もなく、男性は俺の手に十円をぽんと置いた。
え?えぇぇぇぇっ!?親切すぎんだろっ!?
「いやいやいやいや!もらえませんって!!」
「良いからさっさと払っちまいな!後ろがつかえてるんだ!」
「あ、すいません…」
男性の迫力に気圧され、俺はさっさと会計を済ませた。
「毎度あり~!」
「…はぁ…あの、ありがとうございました。」
「礼には及ばないさ!ところで…」
「はい?」
男性がある一点を指差したので、俺もそちらを見る。
その指の先にあったのは…
「…あの三人、あんたの知り合いかい?
さっきからずっとあんたの動きを観察してるんだよ…」
「…は?」
俺は絶句する。何せそこに立っていたのは、
十人に聞いたら十人が「怪しい人」と答えそうな三人組だったからだ。
しかも悲しい事に…
「サアー、シリマセンネー…」
「そうかい。悪いね、変な事言っちまって。」
「イイデスヨー…はぁ…」
…お兄さん、すみません。多分あれ俺の知ってる人です。
いや、だって尻尾が丸見えなんだぞ…金色の立派な尻尾が…九本。
「…。」
「…っ!」
俺がしばらく凝視していると、視線に気づいたのか相手は咄嗟に目を逸らした。
…もうこれ、確定で良くね?だとすると後の二人は…
「…あわわっ…」
「どうしましたっ!?」
「…今、紀流と目が合った…疑われてるよ…!
妖夢、もう止めよう…」
「ここまで来て、止める事は出来ませんっ!」
「そ、そんな…っ…」
「…お二人とも、あの人間がこちらに来ましたよ。」
「「!」」
二人は会話を中断し、息を飲む。
「…。」
「…距離、残り三十メートル…二十五…二十…」
「…言われずとも分かっているっ!」
「バレたらおしまいですよ…っ!」
そうこうしている内にも、紀流と三人の距離はどんどん縮まっていく。
無言で歩いてくる紀流の姿に、藍は戦慄に近い何かを覚えた。
「…もう逃げよう…!」
「いや!今逃げたら余計に怪しまれますっ!
あいつが通りすぎるまでの辛抱ですよ!!」
「…うぅ…」
「…五メートル…四…三…」
…遂に、両者間の距離が一メートルを切った。もう手を伸ばせば届くだろう。
紀流の目はこちらに向いてはいない。だが…
「…に…逃げっ…」
「何を怯えてるんですかっ!」
紀流はのんびりと歩いてくる。
「(は…早く行ってくれ…っ!)」
藍の思いが通じたのか、紀流はそのまま三人の横を通りすぎていった…
「よう、藍。従者三人で買い物か?」
「え?ああ、そうだ…!?」
…あれ?今「藍」って呼ばれたような…!?
わけが分からないまま、彼女がゆっくりと紀流の方を向くと…
「…その格好、暑くないのか?」
「…!?」
「何で返答しちゃったんですかぁっ!!!」
結果・盛大にバレました。
「…そんな理由でか…」
「そんなとは何ですかっ!
私と藍さんにとっては生きるか死ぬかの瀬戸際だったんですよ!!」
「そう言われてもなぁ…」
…やっぱり知り合いだったよ…しかも従者三人組。
話を聞いてみたところ、どうやら俺を困らせたかったらしいが…
「…そんな格好する必要あったのか?」
「…全くn「気合いを入れるためですっ!!!」…。」
…藍の顔が真っ赤なんだが…やる気だったのはお前だけだろ…
咲夜はどうでもいいような顔してるし。
「…おい、藍…」
「…もうこの服、脱いでもいいか?」
「計画は失敗しましたからね…良いですよ。」
「じゃあ遠慮無k「藍様ーっ!!おつかい終わりましたよーっ!!!」…ち…橙!?」
藍が服を脱ごうとしていると、突然元気な声が聞こえ…
…何かが藍に突っ込んだ。
「…ごふっ!?」
「藍様!私、ちゃんと一人でおつかい出来ましたよ?
頼まれたものを買ってきましたー!」
「…お、おぉ…よく頑張ったな、橙…」
「ごろごろ~♪」
藍が橙の頭を撫でると、橙は喉を嬉しそうに鳴らす。
…あはは…やっぱり…猫…だ…な…(失神寸前)
「しょうがないですね…肩貸しますよ。」
「…面目無い…」
「しっかりしてください、人間。
こんな所で倒れては、往来の人々に迷惑ですから。」
「…そうだな、すまん。」
妖夢と咲夜に励ま(指摘)され、俺は何とかバランスを保って立ち上がる。
「…ごろごろ…あれ、藍様?どうして顔が赤いんですか?」
「い…いや…」
「?…あ!分かりましたっ!
またあの『紀流 祠弥』って奴に何かされたんですね!?
…あの人間め…何度も何度も藍様を~っ!!」
「…橙、違う…」
「今日という今日は許しませんよーっ!!!」
橙は怒り狂い、紀流に飛びかかる。
…当然…
「止めろ!俺のそばに近寄るナァーッ!!!」
…カオスになりました。