「紀流お兄ちゃん!早く早くー!」
「…分かった、分かったから落ち着けぇ!!!」
オッス!オラ紀流!
今現在俺はフランに人里引きずり回しの刑(嘘)を受けている所だ!
嬉しいのは分かるよ?でも俺の腕が非常にヤバいんだ…
「…一旦ストォォォォォォップ!!!」
俺の腕を無視して走り続けるフランを止める為、俺はその場で急停止した。
腕がもげそうになったがここは我慢だ!
「え~?紀流お兄ちゃん、走るの遅いよ~!」
フランは振り向き、俺を非難するような目で見てきた。
…っていうか俺はそんなに遅くない!お前がはしゃぎすぎなんだ!!
全く、傘が吹っ飛んだらどうするんだか…
「そんな全速力で走ってたら、すぐさま見終わっちまうぞ?
そしたら帰るしか無くなるよな~。」
「む~…その言い方はズルいっ!」
「ズルくて結構。さあ、全速力で走ってさっさと帰るか?
それともゆっくり歩いて長くいるか?」
フランはしばらく考えていたが、やがて観念したように口を開く。
「…ゆっくり歩く。」
「宜しい。」
「…まあ良いか!行こ、紀流お兄ちゃん♪」
…ああ、凄まじい罪悪感…俺ってセコすぎるだろおい…
俺はフランの天真爛漫な笑顔を見て心が重くなりました。反省。
~紀流反省中~
「…いやー、随分と賑やかだねぇ…
宴会の時の博麗神社を遥かに超えるよ…」
「…ねえ、紀流お兄ちゃん。」
「ん、何だ?」
しばらく歩いて人里の中心部(人が多い事からそう判断)辺りにさしかかった頃。
今まで周りをキョロキョロと眺めていたフランが、俺を見上げて話しかけてきた。
「今までずーっと聞きたくて聞けなかった事なんだけど…
聞いてもいい?」
「どうした、そんなに真剣な顔をして…」
俺は思わず少し笑ってしまったが、フランの表情は真剣その物だ。
…一体何なんだ…少し怖くなってきたぞ…
「…良い?聞いても。」
「お、おう…何なりとお聞き下さい…」
「へ?」
再度の質問に俺はつい敬語で答えてしまい、フランは首を傾げる。
…今笑った人、このフランには敬語を使いたくなるぞ?
「…こほん。じゃあ、聞くよ…」
「よし、来い…」
俺とフランは睨みあったまま(そう見える)立ち止まる。
その光景は異様と言えば異様だった為、道を歩いていた人も思わず立ち止まって眺める程だ。
…俺が超サイヤ人化していたからというのもあるが。
「…なんだい、喧嘩かい?」
「…いや、そうじゃないようなんだが…
髪が青い兄ちゃんと傘をさした女の子が睨みあってるんだよ。」
「そりゃまた滑稽な話だねぇ…ちょっと見てみるか…」
そんなこんなで、あっという間に俺とフランの周りには人だかりが。
…阿求の時とかと言い、こういうの好きなんだな…まさに江戸っ子って感じだ。
いや、そもそも幻想郷に時代もなにも無いか…
「…ねえ、聞いてるの?」
「…あ、すまん。何?」
フランに現実に引き戻され、俺はハッとする。
再びフランの方を向くと、彼女は相変わらず真剣な顔でこちらを伺っている。
「…。」
「…。」
「「「「「…。」」」」」
多くの人の視線が注がれる中、遂にフランの口が動いた。
「…もう一回聞くけど…紀流お兄ちゃんて『お兄ちゃん』なんだよね?」
「…何でそんな事を聞…く?」
あれ?何か嫌な予感が…
「だって、スカート履いてるから…」
「「「「「…エ"エ"エ"エ"エ"エ"エ"エ"エ"エ"ッ!?」」」」」
俺と野次馬は全員、それも一斉にズッコケ。
「あれ?」
そんな中、フランは頭に?マークを浮かべて呆然と突っ立っていた。
「…え、スカートじゃ無いの?」
「違うっ!」
「じゃあ、何て言う服?」
「それは知らん。」
「やっぱりスカートじゃん♪」
「…。」
『人里総ズッコケ事件』から数分後。人里は元の活気を取り戻しつつあった。
…いや、だってさ。誰も何も言わないんだもの…笑いもしなかったし…
やがて皆起き上がって俺の肩を叩いた後に散っていくし…
恥ずかしいっていうよりも、むしろ虚しい。
「…とにかく、これはスカートじゃない。ズボンの上から布を巻いただけだ。」
「…な~んだ、つまんないの…
折角赤色でフランとお揃いだと思ったのに…」
「スカートであることまで一致してなくても良いだろ?」
「あ、そっか!赤いのは一緒だもんね~♪」
「そういうこった。」
そんな会話をしていると、不意に大きな音が。
「あはは、紀流お兄ちゃんのお腹がぐーって!」
「…そういえば朝から何にも食べて無いな…」
音の出所・俺の腹。
…神社を出発した時は直ぐに帰ってこれると思ってたからな…
まさかこんなに手こずるとは思って無かったんだ(泣)!
「…腹減ったなぁ…」
「…よし、じゃあお昼ご飯にしよ!
ほらほら紀流お兄ちゃん、美味しそうな物が一杯あるよ~♪」
フランはそう言いながらずらりと並んでいるお店を眺めながら走っている。
彼女は人混みの中を忙しく走り回っている為、ちょっとでも油断すると見失いそうだ。
「…しかしな…いかんせん金が…」
霊夢の事だ、俺に渡した金額は一円の狂いもないんだろう。
もしもここで金を使って、品物が買えなくなったら…!
…怒った霊夢を想像して鳥肌が立ったぜ…。
「…紀流お兄ちゃん♪どれにする~?
フランはね…」
「フラン、さっさと行くぞ。」
「…え?何で行くの?
お腹が空いてるんじゃないの?」
彼女は不思議そうな顔をして俺の目を覗きこんでくる。
…フランはお嬢様だからな…「飯が金欠で食えない」なんてことは初めてなんだろう…
すまんな、フラン。俺は居候の身だ。人様の金を私用で使うことはできん!
「ね~ね~、どうしてお腹が空いてるのに食べないの?」
「…いや、だからお金が無くてだな…」
俺が空腹を我慢しつつ、フランにその事を説明しようとすると…
「おーい、そこのお二人さーん!」
「「はい?」」
突如後ろから呼ばれ、俺とフランは同時に振り返る。
見ると、どこかの店の料理人らしき人が俺達を手招きしていた。
「おお、やっぱりそうだった!
さあお二人さん、うちの大将が呼んでるから来な!」
「え、ちょ!?」
俺が何か訊ねるより先に、その料理人はさっさと店に引っ込んだ。
「…紀流お兄ちゃん、何かしたの?」
「失礼な。とにかく行ってみるぞ。
気になってしょうがない…」
俺はそうぼやきながら、フランと一緒に料理人が入っていった店の暖簾をくぐる。
暖簾に書いてあった文字の感じからして、この店は多分…
…「蕎麦屋」だろう。短冊にざるそばって書いてあるし。
「いらっしゃい!何にする?」
「あ、大将!この二人が例の…」
「おお、よく連れてきたな!
ささ、どうぞこちらに座ってくれ!」
「は、はあ…」
この店の大将らしき人に勧められ、俺達二人は席に着く。
わけが分からないまま座っていると、いきなり蕎麦二人前が登場。
「「!?」」
「へいおまち!ざるそば二人前だよ!!」
「あの~…これってどういう…」
「ん?ああ、大将が説明してくれるさ。」
俺が状況を理解出来ずに呆然としていると、さっきの大将さんが来て説明してくれた。
どうやらさっきの騒動(人里総ズッコケ事件)が終息した後、ちょうどお昼どきだった為か
たまたま近くにあった自分の店に客が一杯入ってきたらしい。
「…うちの店は人里一の美味しさが自慢なんだがな…
最近流行りの『洋食』とやらのせいで、客が減ってたんだよ。
『ぱすた』やら『すぱげてぃ』やら…」
「つっても人里の蕎麦屋はここだけなんで、
ただ単にうちが大したことないってだけですけどね!」
「うるせぇ!仕事しろ!!」
「失礼しやした~♪」
…よく首にならないな、今の人…
フランは気まずそうにもじもじしながら、俺と大将の会話を聞いている。
蚊帳の外でごめん。
「そんな時!お前達二人がこの店に客をどっさり入れてくれた!
おかげでここ何年かぶりの大繁盛!お前達二人はうちの福の神だよ!」
「…それはどうも。で、この蕎麦は…」
「俺の感謝の気持ちだ!是非とも食ってくれ!」
「え、食べていいのっ!?」
「勿論だよお嬢ちゃん!」
「やったー♪」
フランは大喜びし、早速蕎麦を食べようとするが…
「…あれ?」
「どうした、フラン?」
「ナイフとフォークはどこ?」
…マジか…箸を知らないのか…
よし…
「フラン、蕎麦は箸を使って食べるんだ。」
「…はし?この木の棒の事?」
「そうだ。使い方としてはだな…」
~紀流説明中&少女実践中~
「…どうだ?」
「うん!美味しーい♪」
「ハハハ!そいつは良かった!」
俺が悪戦苦闘した結果、何とかフランに箸の持ち方をマスターさせることに成功した。
…割り箸が数十本程犠牲になったが…大丈夫だ、代わりは幾らでもある(多分)。
「いやー、これで当分この店も安泰だな!」
「今日だけじゃ無いですかね♪」
「お前は黙って仕事しろ!!!」
「へいへ~い♪」
…またかよ…勇気あるな~。
だって大将さん、滅茶苦茶体格良くて背が高いんだぜ…
「新聞記者にもこの店の事を取り上げてもらったからな!
明日から忙しくなるぞ~!」
「…新聞?」
へえ、幻想郷にも新聞があるのか…読んでみたいな。
「応よ!ここの店の常連でな、さっきの騒動の後に来たのさ!
…ほら、噂をすればだ!!いらっしゃい!!!」
大将が出した声につられるようにして、俺は後ろを振り返る。
そこにいたのは…
「ざるそば、大盛りで一つ!」
「相変わらず良く食べるねぇ!少々お待ちを!!」
元気な声でざるそば(大盛り)を注文した女性。
その頭には、白い毛玉のようなものがぶら下がった赤い帽子。
白い半袖シャツに黒スカート。やたら歯が高い下駄。
「?」
「…!」
俺がまじまじと観察していると、視線に気づいたのかこちらを向く。
慌てて目を逸らしたが、時すでに遅く彼女は近づいてきた。
「あの?私がどうかしましたか…って!?」
「!?」
突然彼女は驚いたような声を出し、いきなり俺の方に大股で歩いてきた。
彼女は直ぐに俺の席の横までたどり着き、品定めをするように俺の顔を凝視する。
「…。」
「え…えっと?」
「紀流お兄ちゃん、知り合いなの?」
「いや…」
そのあまりの眼光に俺が思わず固まっていると、彼女が口を開いた。
「…紀流 祠弥さんですね?」
「え!?ああ、はい…そうですが…」
「…ここで会えたのは幸運でした…
さあ、あなたの事を思う存分取材させてもらいますよ…」
…What are you saying?