「蛍符『地上の彗星』!」
「散弾『トラップシューター』!」
オッス!オラ紀流!
今現在俺は幽香さんと二人で蛍の妖怪、リグルと戦っている所だ!
幽香さんが横にいるだけで何故だか負ける気がしないぜ!
「紀流、弾幕が飛んできてるわよ。」
「承知している!そらそらそらぁっ!!」
リグルを中心として六方向に発射される緑と青の弾幕を、俺は無数の気弾を放って相殺していく。
…だが俺のスペルの性質上、どうしても気弾が途切れてしまう瞬間が生まれる。
相手はそこを好機とばかりに弾数を増やしてきた。
「このまま押しきってやる!」
「…残念だったな、こちらは二人だ!
幽香さん、頼んだ!」
俺は期待を込めた目で幽香さんの方を見るが…
「…あれ?」
いない。ついさっきまで横を飛んでいたのに。
慌てて辺りを見回すと…
「紀流、弾幕が飛んできてるわよ。」
「何で地上にいるんだ、幽香さん!?」
地面からこちらを見上げている幽香さんを発見した。共闘は何処にいったんだ!?
彼女は微笑みながら俺を見つめている。その表情は、俺を傘で刺している時の顔と同じだ。
「だって私、『自分勝手』で『サディスト』な妖怪だもの♪」
「そこは『素直』で『滅茶苦茶強い』妖怪になってくれ!!」
「…あ、後『世間知らず』♪」
「話を聞けい!!!」
…あ、完全に怒ってるな、あれは…やっぱり率直すぎたか…
自分勝手で世間知らずでサディストで花が好きな素直で滅茶苦茶強い妖k…
「…無視するなぁぁぁぁぁぁ!!!」
「やべっ!」
リグルの憤慨した声が聞こえ、俺は戦っていた事を思い出した。
視線を戻すと、弾幕が目と鼻の先までに迫っている。
「私の勝ちだ!」
「…そいつはどうかな?
超…サイヤ人!!!」
「なっ!?」
俺は気を高め、超サイヤ人に変身した。
いきなり俺の髪の毛が青くなったのを見てリグルは酷く驚いたらしく、
一瞬だけ彼女の弾幕が途切れた。今だ!!!
「喰らえ…」
俺の左手を中心として緑色の気が収縮していき、やがてそれは一つの気弾となる。
その輝きが最高潮に達した瞬間、俺は左腕を大きく振り上げ…
「消砲『イレイザーキャノン』!!!」
スペル名を高らかに宣言しながら、そのまま左腕を降り下ろした。
巨大なエネルギーが込められた気弾は、真っ直ぐにリグルへと向かっていく。
「ふん!どんなスペルかと思えば、小さな弾一発だけか!
その程度じゃ私は倒せないよ!!」
「そうかどうか、試してみれば?」
「何だと…そう言った事を後悔させてあげるよ!」
リグルはそう言い放ち、再び弾幕を撃ち始める。
漂っている光の球からの攻撃も合わせ、数百発の弾幕が紀流の気弾に襲いかかった。
弾幕は次々と命中し、煙が巻き起こって互いの姿を隠す。
「髪の毛が青くなっただけで、何も変わらないじゃないかっ!
口ほどにもない…」
リグルが言い終わらない内に、煙の中から一発の気弾が高速で飛んできた。
その色は緑。間違いなく、紀流が放ったスペルだ。
「えぇぇっ!?」
彼女が気づいた時にはもう遅く、あっという間に距離は一メートル。
回避は間に合わないと考えたリグルは、咄嗟に両腕を交差させて防御の構えをとった。
「くっ!」
来る衝撃に備え、目を閉じて歯をくいしばる。
…だが、いつまでたっても来る筈の衝撃は来ない。
「…え…?」
「フフフフ…」
相手の笑い声が聞こえたので、リグルは思いきって目を開く。
…その目に飛び込んで来たのは、自分の顔先十センチに浮かんでいる気弾。
「…!」
リグルの感覚は麻痺し、凍りついたように動けなくなってしまう。
何しろ、今にも爆発しそうな気弾が目の前に浮いているのだ。
「ハハハ!さっきまでの威勢はどうした、虫の妖怪さんよ!」
「…ちっ!」
リグルは思わず舌打ちをする。妖怪である自分が人間ごときの攻撃に怯んでいるのだから。
…ここは素早く後退し、距離をとってスペルを発動するのが得策だろう。
「…っ…」
「フフン…」
リグルは気弾から目を離さないまま、ジリジリと後退していく。
その姿を、紀流はニヤニヤしながら観察している。
今に見てろ…その間抜け顔を驚きの表情に変えてやるっ!!!
「…もう、良いか。」
「え?」
紀流がそう言った後、突然今までリグルの目の前を浮かんでいた気弾が縮んでいき…
…消滅した。
「…な…何のつもりだ!?」
彼女はさっきとは別の意味で驚愕し、同時に考えを巡らせる。
あの人間は、攻撃する絶好のチャンスだったにも関わらず攻撃を中断したのだ。
何かしらの考えがあるのは確実。だが、一体どんな?
…一瞬でも思考したのが悪かった。
「…?」
不意にリグルは後頭部に何か尖った物が当たるのを感じた。
何が当たったのだろうと思い、振り向くと。
「…!?」
「うふふ…」
月をバックに太陽の用な笑みを浮かべた幽香が、彼女に傘を向けていた。
彼女に本能的な恐怖を感じたリグルは咄嗟に後退するが…
「それそれそれそれ♪」
…一センチも下がらない内に、幽香の傘の先端から無数の紫色の光弾が撃ち出された。
光弾はリグルの顔、腕、胴、足…とにかく全身に当たりまくる。
「痛だだだだだだだっ!?」
「それそれそれそれそれ!!!」
リグルは体を捩って逃れようとするが、それを面白がるように幽香は弾幕を撃ち続ける。
彼女の容赦ない連続攻撃に、次第にリグルの意識は薄れ始めた。
それを見計らったのか、幽香は距離を一気に詰め…
「そ~…れっ!」
「ゲホッ!」
…無防備になったリグルの鳩尾に左足で飛び膝蹴りを喰らわせ、
相手が悶絶したのも構わずに右足で背中に踵落としを叩き込んだ。
「…。」
「♪」
彼女の攻撃は終わらず、リグルが墜落するよりも速く飛んで落下地点に回り込んだ後、
まるでリフティングをするかのように足を上げ、落ちてくるリグルを「受け止め」る。
「あが…っ…」
最早リグルに抵抗する力は残っておらず、そのまま幽香の足から転げ落ちた。
力無く地面に大の字に寝転んだ彼女の顔を、幽香は無情にも踏みつける。
「どうしたの?何で動かないの?ねえ?」
「…うぐ…」
「幽香さん、ちょっとやり過ぎなんじゃ…」
「大丈夫よ、紀流。直ぐに終わるわ♪」
幽香はパートナーである紀流の声を軽く聞き流し、死にかけのリグルに傘を向ける。
やがて、その先端は光り輝き…
「…じゃあね♪」
…紫色のレーザーが、零距離から放たれた。
「…!」
幽香の放ったレーザーは、瞬く間にリグルを飲み込み。
…幻想郷の空に、光の柱を立ち上らせた。
「…。」
大きく抉れた地面。その光景を前にして、幽香は苛ついていた。
止めの一撃を妖怪に向けて放った、そこまでは良い。だが…
「…紀流、何で邪魔したの?」
「何でって…あれが当たってたらこの子死んでたぞ…」
幽香が不満丸出しの声で振り向くと、消し炭にした筈の妖怪を肩に担いだ紀流と目があった。
…この人間は、たまに理解不能な行動をとる事がある。今がまさにその時だ。
「良いじゃない、死んだって。
私達に戦いを挑んできたんだから、それだけの覚悟があったんでしょうし。」
「…だとしても…」
「さあ紀流、それを離しなさい。
あなたの考えがどうであろうと、私は飛んで火に入る夏の虫を逃す気は無いわ。」
「…俺は逃す。」
「あ、そう。」
幽香はそうとだけ言うと、再び傘の先端をリグルに向ける。
…紀流はさっさとその妖怪を置いて離れれば良いのに、何故動かないんだろうか。
「…紀流、長生きをしたいならどいた方が良いわよ?」
言った後、幽香は自分で自分の言った事に驚いた。
…たった今、自分は「警告」したのだ。紀流に。たかが人間に。
長い時を生きてきて、今まで一度もそんな事はしなかったにも関わらずだ。
「…。」
そして、初めてであろうその警告も紀流は無視した。
…面倒だ。この際、妖怪ごと紀流も消し去ってやろうか。そうすればせいせいする。
自分の警告を聞いても動かなかったのだ。消されても文句は言えないだろう。
「…。」
「…。」
しばらくの間、無言の睨み合いが続く。
傘の先端にエネルギーが溜まって光り始めても紀流は動かず、妖怪を離しもしない。
やがて輝きが最高潮に達したとき、幽香は一言だけ言った。
「…そこから、絶対に動かないでね?」
「…ああ。」
紀流が答えた瞬間、彼女の傘からレーザーが発射された。
そのレーザーは紀流の腕の隙間を「潜り抜けて」…
「…え、ちょっと…きゃぁぁぁぁぁぁ!?」
…後ろの茂みに潜んでいた「何か」に当たり、大爆発を起こした。
「さっきから鬱陶しいのよ、スキマ妖怪。」
「だからっていきなりレーザーを撃ってこないでっ!」
「やられてもしょうがないわよ、紫…」
爆発のあった場所から出てきたのは、涙目になっている幻想の賢者さんと
それを呆れた目つきで見ている博麗の巫女だった。
「え!?紫と霊夢…!?
さっき幽香さんと喧嘩してどっか行ったばかりじゃないか!?」
「…喧嘩したのは紫だけでしょ…
あの後直ぐに紫は引き返してきて、『様子を見よう』とか言って今まで…」
「へ~ぇ。」
「「「!?」」」
後ろから聞こえてきた幽香さんの声。俺はその声質にただならぬ物を感じ、振り返った。
どうやら紫と霊夢も同じような物を感じたらしく、二人同時に振り返る。
「あれ?」
…だが、幽香さんはそこにはいない。
おかしい。つい一秒前まではそこにいた筈なのに。
幾ら幽香と言えども、口が無いのに喋る事は不可能…
「…今までずーっと傍観してたわけ?」
「ひっ!?」
また幽香さんの声が聞こえた。同時に紫の悲鳴?も聞こえたが。
何故悲鳴が聞こえたのだろうと訝りながら、俺は振り向く。
「それはさぞかし楽しかったでしょうね♪」
「…うぅ…」
百八十度回転し終わった俺の目に最初に入ってきたのは、
真っ青になった紫の後ろで完璧な笑顔の幽香さんが話している光景だった。
「ごめんなさいね、私『世間知らず』な妖怪だから…
こういう時にどんな表情でいれば良いか分からないの♪」
「…笑えばいい…うっ!?」
「笑ってるわよ♪」
…幽香さんの拳が紫の後頭部を捉え、紫はそのまま地面に倒れた。
ゆかりは しんでしまった!(嘘)
「…あんた…これでも私のパートナーなんだけど…」
「殺しちゃいないわよ♪」
「「いや、問題はそこじゃない。」」
…相変わらず笑ったままの幽香さんに、俺と霊夢のダブルツッコミが発動した。
ちょうどその時気絶していたリグルが目を覚ましたのだが、直ぐには気づかず…
「…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
…彼女は、俺の耳元で大声をあげた。
「わぁ!?
あ、起きたのか。大丈夫か?」
「五月蝿い!早く私を下ろせぇ!!」
「分かったからそんなに暴れるなよ…」
俺がリグルを支えていた手を離すと、リグルは転げ落ちる様に俺から離れた。
彼女の顔が真っ赤になっている気がするが、気のせいだろう。
「…こ…この人間め…
何で私を助けたんだ!あの時私は死を覚悟していたというのにっ!!」
「だって殺されそうだったから。」
「なっ!?」
「死にたい妖怪なんていないだろ?」
「そういう…意味じゃ…な…!?」
リグルは怒って紀流に蹴りを喰らわせようとするが、何者かに首を掴まれて引き戻される。
「何するんだお前…」
彼女は掴んできた手を振り払い、直ぐ様振り向いて怒ろうとしたのだが…
…相手が誰かを確認した瞬間、酷く後悔した。
「その覚悟、当然今でもあるわよね♪」
「…あ…あぁ…」
目の前に立っていたのは、まさに自分を殺しかけた妖怪だった。
「「…はぁ。」」
同時に溜め息をついた二人の人間。
今、二人のパートナーは色々とアレな事になっている。
一人は妖怪を(わざとゆっくり)追い回し、もう一人は気絶中だ。
「…お互い、頑張ろうな…」
「そうね…」
二人はもう一度会話を交わした後、先程よりも大きな溜め息をついた。