東方有無録   作:印鑑

53 / 84
第…五十四話目?(おい)
やっと書けたぜ…ゆっくり読んでいってね!


「矯正」それすなわち「戦闘」なり〜by慧音

「行くぞ、風見 幽香!

お前の常識、私が矯正してやるっ!!」

 

「ふふ…♪」

 

 

…オッス!オラ紀流!

今ちょうど、俺達の目の前で『上白沢 慧音』と幽香さんの戦いが始まった所だ!

慧音の撃っている赤と青の二重八方向弾幕を涼しい顔で避けている幽香さんの気が知れないぜ!

 

 

「…流石は幽香さんだな…

何であんな量の弾幕を避けられるんだ…」

 

「そう?あの弾幕は直線的だから、

一ヶ所でじっとしていれば避けるのは難しくないと思うわよ?」

 

「あら霊夢、随分と上から目線ね。」

 

「あんたには言われたくないわよ…」

 

 

…うーむ、霊夢や紫にとって「難しい弾幕」って何なんだろうか…

俺がそんな下らない事を考えている最中にも、戦闘は続行している。

 

 

「それそれっ♪」

 

 

慧音の弾幕に対し、幽香は時々傘からレーザーを放って弾を打ち消していく。

今の所、最初の場所から一歩も動いていない。

 

 

「…こんな物なの?」

 

「今のはほんのご挨拶さ。

始符『エフェメラリティ137』!」

 

 

慧音はスペルを発動すると、幽香の左右に向かって数発の弾幕を放り投げた。

弾はしばらく空中を漂った後に奥から連鎖する様に爆発し、そこから飛び出た大量の弾幕が幽香に襲いかかる。

 

 

「~♪」

 

 

左右から大量の弾幕が迫ってくるという状況に陥っても、幽香は余裕の表情を崩さない。

まるで、慧音の撃つ弾幕など目に入っていないかの様に。

 

 

「お…おいっ!?避けないのか!?」

 

 

攻撃した慧音さえも思わず声を出す程に弾幕が接近した時、やっと幽香が動いた。

 

 

「五月蝿いわねぇ…ふんっ!」

 

 

幽香は右手に構えた傘を高速で地面に突き刺す。

すると一瞬で大地に亀裂が入り、そこを基点とした衝撃波が発生して慧音の弾幕を吹き飛ばした。

その爆風によって、慧音の長い髪とスカートが同時に月明かりになびく。

 

 

「むっ…」

 

「ほら、私の常識を矯正してくれるんじゃないの?」

 

「わざわざ言われなくともそのつもりだ!

野符『将門クライシス』!」

 

 

慧音は続けてスペルを発動し、召喚した三個の光球を回転させながら米粒弾幕を発射する。

本体(慧音)は弾幕を避ける幽香に標準を合わせ、比較的大きい弾を連続で撃っていく。

傍らから見ると凄まじい密度のスペルだが、幽香は僅かな隙間を見つけて紙一重で避けていき…

 

 

「…あなたに目はあるの?」

 

「っ!?」

 

 

…慧音が弾を撃った後の一瞬の隙をつき、彼女の後ろまで瞬時に移動した。

幽香はすかさず右手に持った傘を構え、慧音に向かって鋭い突きを放つ。

 

 

「…はぁっ!」

 

「あら♪」

 

 

だが、慧音も負けてはいない。

直ぐ様全身を捻って張り手を放ち、傘の軌道をずらして突きを回避する。

その動きが幽香の闘争(かぎゃく)本能を少し揺り動かしたのか、彼女は連続した突きを繰り出し始めた。

 

 

「それそれそれそれそれそれそれ…♪」

 

「…。」

 

 

幽香の放つ目にも止まらぬ連続突き。それを右へ左へと正確にいなしていく慧音。

…常人が見ても、何が行われているのかさっぱり分からないだろう。

 

 

「…このままいなし続けても、形勢は変わらないな…だったら!」

 

「何?何か思いついたの?」

 

「あぁ、思いついたさ!ふんっ!」

 

 

慧音は幽香の傘を右手で捕らえて彼女ごと自分の方に引き寄せ、

そのままがら空きになった胴目掛けて空いている左手で拳を力一杯打ち込む。

途端に幽香は体勢を崩し、苦しそうに息を吐き出した。

 

 

「がっ…!?」

 

「まだまだぁ!」

 

 

慧音は猛攻を止めず、ひたすら幽香の胴に向かって拳を打ち込み続ける。

流石の幽香もこれには堪えたのか、次第に後ろに下がり始めた。

これを好機と見た慧音、どんどん前へ前へと踏み込んでいく。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ…」

 

 

幽香の胴だけを視野に入れ、拳をねじ込む。

一発一発の手応えは十分、ダメージは確実に入っているだろう。

 

 

「…んっ…」

 

 

一方的な戦い。慧音が優勢、幽香が劣勢。

戦いを傍観している者達の見解も「ほぼ」一致していた。

 

 

「駄目ね、あいつは。

いくら花妖怪といっても、あのざまじゃねぇ…」

 

「そうかな…

幽香さんの事だし、何か策があるんだと俺は思うんだが。」

 

「そうだといいのだけれどね…」

 

「…そんな事よりも、人里は何処なのよっ!!!

紀流!一体何処にあるの!?」

 

「えぇ~…前にあるだろ…」

 

「私には見・え・な・い・の!!!」

 

「そんな事知るか!」

 

 

冷静な判断を下した紫。その横で言い争っている紀流と霊夢。

そして…

 

 

「…幽々子様…私はもう限界ですっ!

今ここで私が斬らねば…」

 

「…駄目…よ…妖…夢…

邪魔しちゃ…駄目…」

 

 

刀の柄に手をかけ、今にも斬りかかろうとしている妖夢。

何故か妖夢の足を掴み、それを止める幽々子。

 

 

「幽々子様、何故止めるのですか!

このままではいつまで経っても食事には…」

 

「だとしても、勝負に水を差しては駄目っ!!!」

 

 

最後の方には幽々子も立ち上がり、頭ごなしに妖夢を叱っていた。

妖夢は何で怒られているのか分からない様だったが。

 

 

「…全く、五月蝿いわねぇ…」

 

「私と戦ってるっていうのに、随分と余裕じゃないか!」

 

「余裕…何寝ぼけた事言ってるの?」

 

 

ちなみに、今は近接戦は終了して弾幕勝負に戻っている。

散々殴られたというのに、幽香は相変わらずの速度で弾幕を避けていく。

慧音もこれには少し驚いたのか、一気に勝負を決しようとスペルを発動する。

 

 

「行くぞ…終符『幻想天皇』!!!」

 

 

スペルを発動した慧音が光に包まれ、見ていた人達が思わず目をすぼめた直後。

無数の青い槍が慧音の周りから放たれ、拡散・集束を繰り返しながら幽香に襲いかかった。

 

 

「…。」

 

 

幽香は面倒臭そうに避け始めたが、今回は慧音が一枚上手の状況。

彼女は幽香が攻撃を避ける為に移動するであろう場所に、あらかじめ槍を撃ち込んでおいたのだ。

 

 

「ちっ…面倒臭い事を…」

 

「好きなだけ面倒臭がれば良い。」

 

 

その横のせいで幽香はその場から動く事が出来ず、槍を傘で直接受け止める羽目になった。

 

 

「その傘は結構頑丈な様だが、いつまで私の弾幕を受け止めていられるかな!」

 

「…。」

 

 

光輝く槍の連撃に、少しずつ、だが確実に傘にダメージが蓄積されていく。

先程まで慧音を挑発していた幽香は、次第に言葉を発しなくなった。

 

 

「よし…っ!」

 

「…。」

 

 

突然何の前触れもなく、バキッと言う音と共に幽香の傘にヒビが入った。

 

 

「…?」

 

「ははは!油断したなっ!」

 

 

勝ち誇った声を上げる慧音に、ゆっくりと顔を向ける幽香。

その顔に浮かんだ感情は、「諦め」でも「苦痛」でもなく…

 

 

「…はぁ。」

 

「むっ?」

 

 

…「退屈」のみ。

 

 

「ねぇ、()()に本気でやってるの?」

 

「…何だと?」

 

「こんな事をわざわざ言うのは面倒だけど…

あなた、『全然』面白くない。」

 

 

ため息と共に不満を語る幽香。

その顔を見た慧音は、呆れて物も言えないかの様に首を振った。

 

 

「…ああ、そうか。それはすまなかったな。

だけど、私は別に『面白さ』をこの戦いに追及してはいないんだ。」

 

「へぇ…何で?」

 

「何故か?最初に言った通り、お前の『常識』を矯正する為だっ!

常識の矯正に面白さは必要ない!!!」

 

 

慧音の感情の高ぶりに呼応し、彼女のスペルもパワーアップする。

縦横無尽に槍を降り注がせる中、慧音は新たなスペルカードを手に握った。

 

 

「虚史『幻想郷伝説』!!!」

 

 

慧音が高らかにスペル名を宣言した瞬間、雨あられと降り注いでいた槍は一旦止み…

その量を更に増やし、再び幽香に襲いかかった。

 

 

「そうこなくっちゃね…♪」

 

 

幽香は傘をくるくると回しながら、軽やかに弾いていく。

だが、更に強化された無数の槍の前に傘のヒビはどんどん大きくなっていくばかりだ。

 

 

「さあ、いつまで持つかなっ!?」

 

「…さ・あ・ね♪」

 

 

幽香は戦いの快感に顔を歪ませ、傘を足元に「()()()」。

盾に等しい物を自ら手放した幽香に慧音は驚き、思わずその理由を訊ねる。

 

 

「ほう…武器を置いたということは、私に降参するんだな?」

 

「そんなわけ無いでしょ、馬鹿ねえ♪

そろそろこの退屈な遊びを終わらせようと思っただけよ♪」

 

「…何だと?一体どういう事だ?」

 

「♪」

 

 

幽香は慧音の質問には答えず、思いっきり地面を蹴って上昇しながら後ろに飛ぶ。

そしてある程度距離が離れた時、慧音に向かって両手を突き出した。

 

 

「…あははははは…♪」

 

「くっ…!?」

 

 

幽香を追い、同じ高度まで飛んできて彼女と向き合った慧音。

だがその瞬間、慧音はまるで全身を無数の槍に貫かれた様な感情を覚えた。

 

 

「…おい、一体何をするつもりなんだ?」

 

「そうねぇ…うーん…」

 

 

…次第に、幽香の両手の間が光り始めた。

その光は決して蛍火などという生易しい物では無く、例えるならば闇夜にいきなり現れた太陽の様。

輝きが増していくに連れ、辺りの大気も一緒になって震え始めた。

 

 

「…いや、待て待て待て待て待て!

まさか幽香さんはあんなのを人里でぶっぱなすつもりなのか!?」

 

「うるさいわねぇ。黙って見てなさいよ。」

 

「…まずい!

霊夢!紀流!直ぐに伏せなさいっ!!」

 

「「!?」」

 

 

突然叫んだ紫の言葉のまま、紀流と霊夢は咄嗟に地面に伏せた。

 

 

「ひ…人里が…人里その物がぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!」

 

 

紀流が叫んだのとほぼ同時のタイミングで、幽香の手の輝きは最高潮に達した。

そしてそれは慧音に向かって、無慈悲にも解き放たれる。

 

 

「くそっ…!!」

 

 

慧音は幽香の動きを制限する為に地面に刺していた槍を必死で呼び戻そうとするが、

幽香にはそんな悪足掻きなど眼中に無く、清々しい笑顔でこう言い放った。

 

 

「『BITE THE DUST(負 け て 死 ね)』♪」

 

「な…!」

 

 

猛スピードで慧音に叩きつけられた、死刑宣告に等しい「言葉」と激しい「閃光」。

彼女には、それに抗う暇さえ与えられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ぐっ…」

 

「あ、意識が戻ったぞ!」

 

「何この程度で喜んでるのよ。

気絶していたのは精々五分程度じゃない。」

 

「…?」

 

 

幽香の手から放たれた極太レーザーに呑み込まれ、暫くの意識が暗転していた慧音。

頭上から聞こえてきた声に反応するかの様に、彼女の意識は現実に戻ってきた。

 

 

「う…うぅ…む?」

 

 

全身を駆け巡る痛みを堪えながら、慧音は何とか上半身を起こす。

そうした彼女が最初に見たものは…

 

 

「…何だ、生きてたのね。」

 

「お前…!」

 

 

ぼろぼろになった傘を手に持ち、人を見下した目で自分を見下ろしている幽香だった。

 

 

「徹底的に潰してやろうかと思ったのに、案外脆いのね。

あんな程度の攻撃で戦闘不能なんて…」

 

「あんな程度って…まさかあれで手加減してたのか!?」

 

「当然、ちゃんと計算して範囲を小さくしぼったわよ。

別に人里に恨みはないからね♪」

 

「「…。」」

 

 

淡々と恐ろしい事を話す幽香に、紀流と慧音はただただ唖然とするばかりだった。

 

 

「…まぁ、思ったよりm「何で私に頼るのよっ!?」…?」

 

 

幽香の話を遮るかの如く、霊夢の大声がこだまする。

 

 

「そこを何とか!幽々子様はもう限界なんです!!」

 

「…ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯(ry」

 

 

声の方向に目を向ければ、又もや不思議(?)な光景が。

霊夢の腰に泣きながらしがみついている妖夢と、その横でどす黒いオーラを出している幽々子。

…幽々子が怖い…まるで呪いでもかけてるみたいだな…

 

 

「そう言った問題は自分で解決しなさいよ!

私達はさっさと異変を解決しなきゃいけないんだから!!」

 

「今は狂った月よりも幽々子様のお腹ですっ!」

 

「優先順位がおかしいd…え?」

 

「「「!?」」」

 

 

妖夢の発した「狂った月」というワードに、俺と霊夢と紫は瞬時に反応した。

…え、幽香さん?無反応でしたが何か?

 

 

「…まさか、あんた達も『異変』を追っているわけ?」

 

「…えぇ、一応は…

でも今はそれよりも幽々子様が…」

 

「ご飯ご飯ご飯ご飯ご飯ごh(ry」

 

 

再び場を沈黙(幽々子は除く)が支配する。

その状態のまま数秒が経った時、慧音がゆっくりと立ち上がって口を開いた。

 

 

「お、おい…私にも事情が良く呑み込めないが…

取り敢えず、そこのお嬢さんの食欲を満たしてあげたらどうだい?」

 

「それが出来れば苦労しないんですよっ!」

 

「…一応、私の夕食の残りならあるz…」

 

 

慧音がそこまで言った瞬間、今まで地面に寝っ転がっていた幽々子がいきなり飛び起き、

超高速で慧音の首筋に思いっきり抱きついた。

 

 

「わわわぁっ!?」

 

「…あぁ…遂にそうなってしまいましたか…

幽々子様はそうなると、口に食べ物を入れるまで決して離れませんよ?」

 

「ごーはーんー!!!」

 

「…分かった、私の家に案内しよう。

そこの四人も一緒にどうだ?」

 

「私達?

生憎、そんな時間は無いのよ。」

 

「そうか、それは残n…おっとっとっと!?」

 

 

幽々子がいくら幽霊で軽いと言っても、ある程度の重量はあるのだ。

普段なら気にする事の無い重さでも、幽香との戦いで疲れきった慧音にとってはキツイ。

バランスを崩してこけそうになった慧音を支えたのは…

 

 

「…大丈夫か?」

 

「お、ありがとう。」

 

 

…咄嗟に飛び出した紀流だった。

 

 

「無理はしない方が良いですよ?」

 

「はは、すまないね。

でも、もう大丈夫だ。行こう!」

 

 

まだ少しよろけながらも、着実に前へと歩いていく慧音。

その後に紀流と妖夢が続く。

 

 

「…全く、祠弥はお節介焼きねぇ…」

 

 

ぶつぶつ文句を言いながらも、三人を追って歩き出す霊夢。

 

 

「じゃ、私達も行きましょうか。」

 

「はいはい♪」

 

「…あ、そうそう。貴方に忠告しておくわ。」

 

「…は?」

 

 

首を傾げる幽香に、紫は「忠告」をする。

 

 

「私は貴方を心配してはいないし、それは霊夢も同様よ。

でも…」

 

「…でも?」

 

「紀流は別、って事を忘れない様にしなさい。

彼なら、たとえ貴方でも自分よりも優先して心配するから。」

 

「…。」

 

「…ま、簡単に要約すると

『さっきの戦闘でのダメージによる疲れ』を見せないようにしなさいって事。

…紀流に心配してもらう貴方もちょっと見てみたいけどね…」

 

「…。」

 

 

幽香は何の反応も示さないまま、四人の方に向かって歩いていった。

 

 

「紫~、幽香さ~ん。早く早く~。」

 

「…ふふっ…」

 

 

楽しそうな笑みを浮かべながら、紫もその後に続いていく。

手を振って自分達が来るのを待っている、普通の人間の元へと。

 

 

 

 

 

「…アイツかぁ…

ぱっと見、というかどう見ても男だよな…」

 

「しっ、静かに!

気づかれたらヤバイでしょ!」

 

「確かに…博麗の巫女に幻想の賢者、亡霊嬢に半妖と来たもんだ…

ミッション達成には骨が折れそうだなぁ…」

 

「…。」

 

「私の頭脳を持ってすれば、何の問題もないけどね!

さあ行動開始だ、後に続けっ!!!」

 

「あ、待ってよ~…」

 

 

…この異変、まだまだ一波乱も二波乱もありそうだ。




…バイツァ(ryは幽香さんに言わせたかっただけです。
いやだって雰囲気似てるじゃないか…キラークイーン(殺しの女王)的な意味で…
次回は急転直下の大騒動になる予定。
感想、意見、アドバイス等々募集中です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。