東方有無録   作:印鑑

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前回が第五十四話だと言ったな…あれは嘘だ。
というわけで本当の第五十四話目。
ゆっくり読んでいってね!


疑いを抱かせぬ者〜永夜異変、更に複雑化

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ…」

 

「幽々子様、こちらもどうぞ。」

 

「悪いわねぇ…もぐ…もぐ…」

 

「「「「…。」」」」

 

 

…オッス!オラ紀流!

今現在、慧音の家(?)で幽々子単独の大食い大会を開催中だ!

みるみるとテーブルに乗った食べ物が消えていくぜ!

 

 

「…あ、それも欲しいわね。妖夢、取ってくれる?」

 

「かしこまりました。」

 

「相変わらず食べるわねぇ、幽々子は。」

 

「『腹が減っては異変は解決出来ぬ』って言うでしょ♪」

 

 

呆れた顔で見守っている紫に、幽々子は笑顔で答える。

…それを言うなら『腹が減っては戦は出来ぬ』じゃ無いのか?

 

 

「…確かにそうね。」

 

「でしょ?」

 

「おい。」

 

 

霊夢が共感しました。

確かに霊夢ってよく食べるからな…たまに何で太らないのか不思議に思うんだよなぁ…

…もしかしたら俺の知らない所で特訓とかしてるんだろうか…

 

 

「祠弥、私の服に何か付いてるの?」

 

 

俺が凝視している事にどうやら霊夢は気づいたらしく、俺の方を向いてきた。

 

 

「いや…ちょっと埃が…」

 

 

俺は咄嗟に思いついた事を言った後、霊夢から目をそらす。

おぉ、危ない危ない…

 

 

「あ、そう。

さっき地面に伏せた時に付いたのかしら…もう…」

 

 

霊夢は怪訝そうな顔をしながら、手で服をぱんぱんとはたく。

上半身をはたき終わると、続けてスカートをはたき始めた。念入りだな…

 

 

「どう、祠弥。取れた?」

 

「…ばっちりです。」

 

「祠弥が言うなら安心ね♪」

 

 

…い…言えない…

今目の前で笑っている霊夢に「誤魔化す為に言いました」なんて言えん!

 

 

「♪」

 

「…。」

 

 

…久々に途方もない罪悪感が押し寄せてきたぜ…!

 

 

     ~紀流反省中&霊嬢食事中~

 

 

「…ふぅ…」

 

「何てこったい…」

 

 

数分後。テーブルに山ほどあった食べ物は

残らず幽々子の胃袋(幽霊に胃袋があるのかは不明だが)に吸収された。

…恐ろしい…

 

 

「…何だ?」

 

「おかわりあるかしら?」

 

「「まだ食べるの!?」かよ!?」

 

 

幽々子の底無しの胃袋に、俺と霊夢のシンクロツッコミが炸裂。

だが、ゆゆこには こうかが ない みたいだ…予想はしていたが。

 

 

「すまないな…残り物はそれしか…」

 

「そう…」

 

 

幽々子は真顔で慧音を見つめる。

「なん…だと…」と心の中で言っているのが聞こえてくる様だ。

 

 

「幽々子様、私が作りますので…

慧音さん、お台所を借りても良いでしょうか?」

 

 

…Huh?

Excuse me youmu,what are you saying about?

 

 

「何を寝言言ってるんだ!?」

 

 

妖夢の失言(迷言?)!ツッコまずにはいられないッ!!!

俺は周りも気にせず、思わず手で妖夢の肩をひっぱたいてしまった。

 

 

「痛っ!?何するんですかぁ!

私の言葉に何か不自然な内容でも!?」

 

「いやいやいやいやいや!

あまりにも厚かましい言葉が聞こえた気がするんですがねぇ!?」

 

「厚かましいとは何ですか紀流さん!

材料も自分で用意してありm…」

 

「(ブチッ)」

 

「ひっ!?」

 

 

 紀流、覚

    醒。

 

 

「人様の家に上がらせてもらっておきながら飯を作るとは何事d(ry」

 

 

     ~紀流説教中~

 

 

「…人里と冥界じゃ天と地程の違いg…」

 

「…祠弥、その辺で止めときなさい。

いくらなんでも言い過ぎよ。」

 

「あ…。」

 

 

俺が我に帰った時には、妖夢はorz状態でへたりこみ、

幽々子は箸を両手に持った状態で固まっていた。

…と言うか、幽々子は両利きだったのか…両利きの人(幽霊)って初めて見たな…

 

 

「…おい、妖夢?」

 

「…本当にすみませんでした…うぅ…」

 

 

ま た や っ ち ま っ た(前回・フラン)。

自分勝手な説教で人泣かせるとか最低じゃないか…

 

 

「…全く、紅魔館のメイドの説教癖が移ったんじゃないの?」

 

「流石に咲夜みたいに何時間も説教は出来んよ…」

 

 

咲夜は凄いぞ。言葉がマシンガンの如く延々と飛んでくるからな…

五分だけで(精神的に)蜂の巣なのに、それが数時間にも渡って続くんだぞ…

 

 

「…貴方位の年齢で説教する人間、私は見た事無いけど…」

 

「そうなのか!?」

 

「え、えぇ…」

 

 

紫にも言われたぜ…これから説教は控えるとしようか。

…出来るだけ、な。

 

 

「紀流~。」

 

「?」

 

 

不意に誰かに名前を呼ばれたので、俺は振り返った。

この声は…

 

 

「…幽香さん?」

 

「その位分かるでしょ?」

 

 

そう言えば幽香さん、玄関に立ったまま何故か家に上がり込まなかったんだよな…

俺が行ってみると、幽香さんは腕を組んで扉の側に立っていた。

 

 

「…。」

 

 

…全身から「退屈だ」という波動を目一杯出しながら。

 

 

「…あの、どうかしたんですか?」

 

 

俺が訊ねると幽香さんはあからさまに溜め息をつき、口を開いた。

 

 

「別にあなたは食事しないんでしょう?」

 

「ええ、まあ…」

 

「ならさっさと来なさい♪出発するから♪」

 

 

…ああ、とっとと先に進みたいんですね。流石幽香さんと褒めてやりたい。

しかし、今一番疲れてるのは幽香さんだと思うんだが…なんせ戦った直後だし。

 

 

「幽香さんは休まないんですか?」

 

「別に私はお腹空いて無いもの。

ほら、早く♪」

 

 

幽香さんはそう言うと、腕を伸ばして俺の手を掴もうとする。

その腕を俺は逆に掴んだ。

 

 

「!?」

 

 

予想外の事態に面食らったのか、幽香さんは腕を伸ばした姿勢のままで硬直する。

 

 

「まあまあ、何か食べるまでとは言わなくてもお茶ぐらいは…」

 

「いらないんだけど。」

 

「じゃあ、せめて家にあがったらどうですか?

今の所、一番休息が必要なのは幽香さんだろうし…」

 

「いらない。」

 

 

…幽香さん、何でそこまで拒否するんですかね?

 

 

「紀流、あんまりしつこい人は嫌われるわよ?」

 

「どわぁぁぁっ!?」

 

 

俺と幽香さんの間に割り込む様にしてスキマが開き、そこから紫が顔を出す。

紫の急な出現に驚いた俺は、思わず幽香さんの腕を離してしまった。

 

 

「「あ…!?」」

 

 

俺と紫は思わず同時に声を上げる。

いくら幽香さんと言えどもバランスを取るのは難しいだろうと思ったのだが…

 

 

「…はぁ。それ。」

 

「え…?」

 

 

そこは幽香さん。たまたま手の届く所にあった紫の腕を掴み、即座に体を引き戻した。

…ボキッって不吉な音が聞こえた気がするけど気のせいだよね、そうだよね。

 

 

「…い"っ…」

 

 

…紫が肩押さえて悶絶してる事については…ノーコメントで。

 

 

「全く…掴むなら最後まで掴んでて欲しいんだけど…」

 

「…すみません…」

 

「じゃ、行きましょ♪」

 

 

有無を言わせず、今度こそ幽香さんが俺の腕を掴んだ。

単純なパワーでは圧倒的な彼女に、完璧に油断しきっていた俺が敵う筈も無く。

 

 

「じゃあね♪」

 

「行ってらっしゃい♪」

 

「ちょっと待て!靴!!靴履いてない!!!」

 

 

…強・制・退・去させられました。

 

 

 

 

 

「…あれ…?」

 

「くそっ、出てっちゃったな…。

あの二人の力を是非とも借りたかったのに…」

 

 

慧音の家の屋根の上。

そこにしゃがみこみ、何やらひそひそと話し合っている二人がいた。

一人は背が小さく、ピンクのワンピースを着たショートカットの少女。

もう一人は片方よりも背が高く、女性用の学生服とミニスカートを身に付けている少女。

月明かりの中、長い髪の毛が薄紫色に光っている。

そして、この二人の少女に共通しているのは…

 

 

「…どうする?一度作戦を立て直す?」

 

「いや、作戦を変える気はさらさら無い。

このチャンスを逃すと後は無いからな!」

 

「はいはい…」

 

 

…大きな兎耳が、頭から二本生えている事だった。

 

 

「よし、早速次の行動に移るっ!後に続け!!」

 

 

小さい方の影はそう言い放って軽やかな身のこなしで玄関前に飛び降りると、

しゃがんだ状態から直ぐに立ち上がり上を向いてもう一方に早く降りてくるようにと呼んだ。

 

 

「ほら、早く早く!!!」

 

「…ちょっと、そんな大声出したら…わっ!?」

 

 

下を覗きこんでしまった事で上の影は大きくバランスを崩し、そのまま落下してしまう。

その瞬間、静寂に包まれていた人里に重い物が落ちたかの様な大音量が響き渡った。

 

 

「いててててててぇ…」

 

「この程度の高さでこけるなんて…君もまだまだだな。」

 

「あんたのせいでしょう!」

 

「むっ…上官に向かってその台詞は無いんじゃないかな?」

 

「上官って…

いや、今はそんな事よりも作戦を遂行しないt…」

 

 

玄関前で言い争っている二人の会話を、すぐ近くからの冷たい声が引き裂いた。

 

 

「…貴方達、何?」

 

「「!?」」

 

 

二人の顔の先にいたのは、幻想の賢者にして二人の作戦の最重要人物である「八雲 紫」。

その眼に宿っている光は普段の彼女からは想像出来ない程に鋭い物だ。

人間、いや妖怪ですらその場に繋ぎ止めてしまうような眼光にも、小さい方の影は臆さない。

 

 

「幻想の賢者、八雲 紫様…でございますよね?」

 

「あら、随分と礼儀正しい『兎』ね。」

 

 

紫が感心したような態度をとったので、更に言葉を続ける。

 

 

「恐縮です。

私は『因幡(いなば) てゐ』と申します。」

 

 

まず、小さい方の少女が名前を名乗った。

少し遅れて、制服を着た少女も自分の名を名乗る。

 

 

「…あ、えっと…

私は『鈴仙(れいせん)優曇華院(うどんげいん)・イナバ』です。」

 

「覚えにくいと思いますので、うどんげで良いと本人も言っております。」

 

「言ってないっ!」

 

「ふふ…」

 

 

てゐの言葉に膨れっ面になった鈴仙を見て紫は小さく笑った後、

誰もが抱くであろう疑問を口にした。

 

 

「で、そんな兎二匹が私に何の用?」

 

「…実はですね…」

 

「(流石はてゐ、態度でかいなぁ…

大妖怪が目の前にいるって言うのに、全然気遅れしてない…)」

 

 

     ~白兎説明中~

 

 

「…な!?それは本当なのっ!?」

 

「えぇ、ほぼ確実かと思われます。

現にここに来るまでに目撃しましたからね…」

 

「…っ!」

 

 

さっきまでの冷静さをかなぐり捨て、紫は血相を変えて家の中に戻っていった。

その後ろ姿を見送った後、てゐは踵を返して歩き始める。

 

 

「え!?もう帰るの!?

また出てくるまで待っていた方が良いんじゃ…」

 

「作戦は終了した。後は帰還するのみ。

いつまでも居座ってると怪しまれるだろうからね。」

 

「…ほんと、あんたはせっかちね。」

 

「君に言われたくは無いな。行くぞ!」

 

 

地面を蹴って走り出した二人の影は、瞬く間に闇夜の中へと消えていった。

ていが果たして、何を紫に伝えたのか。それは直ぐに明らかになる事だろう。

そう、今にも。

 

 

「…どうしたの、紫。血相変えて…」

 

「今回の異変の原因が分かったのよ。」

 

「「「「!?」」」」

 

 

紫の言葉に、その場にいた者全員が強く反応した。

 

 

「え!?」

 

「それは本当ですかっ!?」

 

 

軽いパニック状態になった霊夢と妖夢を制し、幽々子はゆっくりと訊ねる。

 

 

「紫、それは誰なの?」

 

 

もし、紫が冷静であったなら。

あるいは周りが指摘していたら、こんな間違いは無かったかもしれない。

しかし、その間違いはその時点では最も利にかなっている物であった。

いや、かなってはいなかった。だが、最もすんなりと受け入れられる説だった。

 

 

「今回の異変の黒幕は…」

 

 

そして、紫の口は開かれる。

 

 

「…かつて『紅霧異変』を起こした吸血鬼、『レミリア・スカーレット』よ。」

 

「「えっ!?」」

 

 

霊夢と幽々子はその聞き覚えのある名前に驚いたが、妖夢は頭に?マークを浮かべている。

 

 

「…幽々子様、レミリア・スカーレットとは何者なのですか?」

 

「あら、妖夢は会った事無かったかしら?

水色の髪をした、ちっちゃくて可愛い吸血鬼さんよ。」

 

「?」

 

 

何とかして妖夢にレミリアの事を説明しようと悪戦苦闘している幽々子。

その様子を横目で見ながら、霊夢は紫に話しかける。

 

 

「…紫。本当にあいつなの?

確かにあいつならやりかねないけど…ちょっと突飛すぎない?」

 

「普段屋敷に籠りっぱなしの吸血鬼がついさっき目撃された。

これだけでも私は十分な証拠だと思うけど?」

 

「そうねえ…」

 

「それにたとえ黒幕で無かったとしても、

あの吸血鬼がこの異変に関わっている可能性は大いにあるわ。」

 

「…結果、探した方が良い、と。」

 

「そう言う事よ♪」

 

 

霊夢は小さくため息をつき、ゆっくりと腰を上げる。

何故かは分からないが、紫の言っている事に一理ある気がするのだ。

勿論、確証は無い。巫女の勘だ。

 

 

「で、霊夢。どうしましょうか?」

 

「どうするも何も、行くに決まってるじゃない。

そもそもあてなんて無いし、駄目で元々当たればラッキーよ。」

 

「そうと決まれば…出発ね。

感謝するわ、上白沢…いや、ハクタク。」

 

「…知っていたのか。」

 

 

自分の正体をピタリと言い当てられても、慧音は微動だにしない。

特にする意味が無いからだ。

 

 

「これでも私は大妖怪だからね。

貴方の正体ぐらい、簡単に分かるわよ。」

 

「慧音さん、ご馳走さまでした。」

 

 

丁寧にお礼をのべた幽々子に、慧音は気さくに返答する。

 

 

「ああ、気にするなって。

どうせ残り物だったのだし。また何時でも来ると良いさ。」

 

「え、良いの!?」

 

「幽々子様…」

 

「ふふ、冗談よ♪」

 

「ははは…」

 

 

四人は慧音に別れを告げ、再び月明かりの下を歩き始める。

レミリア・スカーレットを目指し、今二つのチームが一つになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ところで幽香さん?」

 

「何?」

 

「今は何処に向かって歩いているんですか?」

 

「特に考えて無いけど?」

 

「…。」

 

 

…此方のチームは、果たして大丈夫なのだろうか?




てゐのキャラは「うざいけど結構頼れる上官」です。そしてボーイッシュ。
あいも変わらずgdgdですが、次回は話が進む…はず。
感想、意見、アドバイス等々募集中。
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