ゆっくり読んでいってね!
「…。」
「…あら、奇遇ねえ。」
…ここは人里から少しだけ離れた森の中。
妖しく煌めいている月光の下に、四つの影が浮いている。
今現在、「幻想の結界チーム」である霊夢と紫は、今回の異変に関わっていると思われる吸血鬼…
「レミリア・スカーレット」と遭遇した所である。
「…紫が『分かれて探そう』なんて言わなければ、二チーム揃ってたのに…」
「幻想の賢者である私も、流石に未来は読めないのよ。」
「…あ、そう…」
霊夢の不満そうな顔を見た後、対峙しているレミリアは口を開く。
「…やっぱり霊夢も、今夜の月が可笑しいと思ったわけね?」
「私個人としては、あんたが館の外に出てきてる方がおかしいと思うんだけど。」
霊夢の言葉に、レミリアは答えるのが馬鹿馬鹿しいとでも言いたげな顔で首を横に振る。
二、三回振った後、彼女は口を開いた。
「それは当然の事。
私は吸血鬼だもの、夜に活発に活動するに決まってるじゃない。」
「じゃあ、何で昼間っから私の神社での宴会に参加出来るわけ?
夜に活動するんなら、普通昼夜逆転で昼間は寝ているんじゃないの?」
「…。」
レミリアは一歩下がった後、横に立っている咲夜のスカートを軽く引っ張った。
それを見た咲夜はレミリアを見下ろした後、霊夢に向き直って喋り始める。
「宴会等の催し物がある時には、お嬢様は一日中起きておられるのですよ。
私がお休みになってくださいと申しても、その日はどこ吹く風の如く無視されます。」
「…そう!咲夜の言う通りよ!!
折角の宴会で私が寝ちゃあ、皆が退屈しちゃうでしょう!ね、霊夢!!!」
「え、えぇ…」
レミリアの気迫に押される様にして、無理矢理頷く霊夢。
その間にも咲夜の話は続く。
「宴会の後はそのまま一日中ぐっすりと眠られるんですけどね。
帰ってきなさった瞬間、お召し物も代えずにベッドに直行されてそれっきりです。
恐らく今宵も…はぁぁぁっ…」
喋っている間に考えが先行したのだろう、咲夜は特大のため息を一つする。
まるでこの世の、全てが嫌になってしまったかの様な声で。
「…ねえ咲夜、今の仕事が不満なら…
辞めても、良いのよ?」
「でh「冗談よ。」承知しました。今度とも、宜しくお願い致します。」
…絶妙である。
「…あんた達、漫才でもしてるつもり…?」
「私とお嬢様は至って真面目ですが。」
「そうは見えないけどねぇ…紫
…紫?」
霊夢が横を向くと、そこにいる筈の紫がいない。
「紫~?どこいったの…」
「…ここよ。」
紫はいた。レミリアの直ぐ後ろに背中合わせで、腕を組んで静かに浮いている。
「…確か…ずーっと前に会った事があったわよね、吸血鬼さん♪」
「え、そうだったかしら?
あ、咲夜から聞いたわよ。前の異変の時、随分と馬鹿にしてくれたみたいじゃない。」
「ふふふ…やはり話したの。」
「自らの主を侮辱されたのですから当然です。」
「従者の鏡ねぇ。」
まるで親友であるかの様に会話を交わす二人。
だが、お互いに警戒を全く緩めようとはしない。
「…で、紫。肝心な事を訊かなくていいの?」
「そういえば、訊いてなかったわね。」
「何?」
レミリアの目が鋭くなり、紅く光輝く。紫の次の言葉に全神経を集中させているのだ。
「…貴方、この異変に関係している?」
レミリアの眉がピクリと跳ねる。しかし、それ以外の反応はしない。
紫は、レミリアの言葉を待っている。
「フ、そんな事?そうねぇ…」
レミリアは口元に手を置き、小さく微笑む。
そして、口と手を同時に開いた。
「もしも、していたとしたら?」
「ありきたりな答えね。そんなの当然…」
今まで背中合わせに会話していた二人が、遂に向き合った。
その瞬間、両者の腕が素早く動き…
「…お話を聞かせてもらうわよ♪」
「そう来るだろうと思ってたわ!」
振り向いたレミリアと紫の手には、それぞれスペルカードがが握られている。
互いのスペルが何かを確認する事もなく、二人のスペルは真っ向からぶつかり合う。
発生した衝撃波により二人の髪が靡き、周りの木々がざわめいた。
「…それが、『結界』なのね。受け止めただけで腕が痺れるなんて…」
「…『神の槍』。どうやら名前だけ立派ってわけじゃないみたいねぇ。」
レミリアが発動したスペルは「神槍『スピア・ザ・グングニル』」。
そして紫のスペルは「境符『四重結界』」。
淡い月明かりの中、今宵二体の妖怪は初めて対面した。
「「…。」」
二人はスペルを撃ち合わせたまま数秒間睨み合いを続ける。
その静寂を先に破ったのは、紫の方だ。
「…スペルを出してきたって事は、
出来れば平和的解決が望ましかったのだけれど…」
「フン、白々しい事を。お前だって元からそんな簡単に済ませる気は無かったんだろう?」
「あら、バレてた?じゃあ話は早いわ。
私には霊夢、貴方にはそこのメイドがいるから…二対二の戦いね。」
「上等よ。まぁお前達ごとき、私一人で十分だがな。」
「では私は下がらせt「冗談よ。」またですか。」
「…ちっ…」
端から見れば漫才にしか見えないレミリアと咲夜の会話に、紫はイライラを募らせる。
「おふざけ吸血鬼が…直ぐに降参させてあげるわよ…」
「…ちょっと紫、何私をちゃっかり戦わせようとしてるわけ?
あんたが自分で喧嘩を吹っ掛けたんだから、戦うんなら一人でやって。」
「もう…つれないわねぇ…私達はチームなのよ?お互いに協力しなくちゃ…ね?」
「…あ~あ、やっぱり祠弥と組めば良かった…」
「何か言ったかしら?」
「別に。」
「…(とか何とか言っても、結局一緒に戦ってくれるのよね♪)」
紫の小さな笑いなど露知らず、霊夢はレミリアに話しかける。
「で、レミリア。この戦いに何か制約はあるの?」
「ルールは特に無いわ。只戦って相手を倒すだけ。」
「成る程…とことんやりたいって事ね?」
…このルールが提示された時点で、この戦いは最早「弾幕ごっこ」等と言う生易しい物では無い。
最強クラスの妖怪+人間×2が織り成す意地と意地のぶつかり合い、つまりガチンコ勝負である。
「…それじゃあ行くぞ、咲夜。」
「お嬢様の仰せのままに。」
「『異変発生時には、怪しい奴を倒していけば道は開ける』
私の理論が今回も通用すると良いわね…」
「きっと通用するわよ♪」
…やがて、両チームは共に黙り込む。
戦いと言う名の嵐の前の、ほんの僅かな静けさだ。
「「「「…。」」」」
…「それ」は誰もが予想していた通り、唐突に始まった。
何の合図も無しに、四人の手に一斉にスペルカードが握られる。
「「「「スペルカード発動!!!」」」」
四人同時のスペル発動宣言が、勝負開始の合図となった。
「霊符『夢想封印 集』!!!」
「幻符『殺人ドール』!!!」
霊夢の周りを回って襲いかかってくる虹色の弾幕に対し、咲夜は無数のナイフで対抗。
一発一発の威力こそ霊夢の方が上だが、咲夜は量で威力を補っている為結果として互角。
互いのスペルが止んだ所で、霊夢はふと思った事を口に出す。
「…前から気になってたんだけどさぁ、あんたっていつもどうやってナイフ持ち歩いてるの?」
「訊いてどうするんですか?」
咲夜は至極どうでもいいとでも言いたげな顔で霊夢を見つめる。
その顔を一目見た霊夢は、急激に関心が薄れてしまった。
「…いや、やっぱり良いわ。」
「そうですか。はっ!」
「って不意討ち!?」
会話もそこそこに、咲夜は無数のナイフを投げつける。
霊夢は驚くが、そこは歴戦の巫女。上下左右に動き回って綺麗に避けていく。
「中々の反応速度ですね。」
「ふん…はぁっ!」
「…結界『夢と現の呪』!!!」
「天罰『スターオブダビデ』!!!」
霊夢vs咲夜の戦いの横では、レミリアと紫の激戦が繰り広げられている。
レミリアが放った赤い交差レーザーに紫の大きな弾幕が激突し、細かい弾幕となって
爆発によって発生した煙の中からレーザーを上手く避け、そのままレミリアに迫っていく。
「甘い甘い、このスペルはレーザーだけでは無いのよ!!」
彼女の言う通り、レーザーの間から数珠状に連なった薄紫色の丸い弾幕が発生する。
数珠弾幕はその場で高速回転し、レミリアに迫る細かい弾幕を弾き飛ばした。
「目障りな弾幕は消え失せたから…本体に攻撃…っと!」
レミリアは腕を突き出し、数珠弾幕を紫に向かって飛ばす。
弾幕は円盤の様に高速回転しながら飛んでおり、触れでもしようものなら指が無くなるだろう。
「こんな隠し玉があったなんてね。おっと!」
真っ直ぐ飛んできた円盤の進路から紫は体を反らし、危なげなく回避する。
だがレミリアは不敵な笑みを浮かべ、得意気に話始めた。
「逃げても無駄よ。その円盤は私がコントロールしていて、何処までもあなたを追っていく。
如何なる攻撃も真っ二つにして、あなたを切り裂くまで飛び続けるわ。」
「へえ、結構考えたじゃない。けど、操るには相当な集中力が必要でしょ?
操っている間、貴方自体のガードはがら空きになるわよ?」
「それ位考えてあるわ。咲夜!」
レミリアが自らの従者の名を呼ぶと、一瞬にして彼女の横に咲夜が現れる。
「お呼びでございますか。」
「ええ、簡単な命令よ。私を守りなさい。」
「承知致しました。」
決して簡単では無い命令に、咲夜は嫌な顔一つせずに従う。
「流石は従者の鏡。
貴方みたいな従者がいて、そこの吸血鬼も幸せね。」
「私を褒める暇がおありにあるのなら、お嬢様への無礼を謝罪して下さい。」
「あら、まだ根に持っていたの?」
「当然です。」
「…ありがとう、咲夜。」
「いい結束ね。
けど、私と私の従者との絆も中々の物よ?式神『八雲藍』!」
紫が指を鳴らすと彼女のすぐ横にスキマが開き、中から誰かが出て来る。
彼女の服にそっくりな服を着た九本の見事な尻尾を持つ紫の式神、八雲 藍だ。
「紫様、お呼びでしょうか?」
「彼処にいる二人を纏めて弾幕で撃ちなさい。」
「分かりましt…って咲夜さん!?」
目の前にいる知り合いを見て、藍は少なからず驚いた様だ。
「どうも。今の私は敵ですので、遠慮なく撃って頂いて結構です。」
「彼女もああ言ってるし気にせず攻撃よ、藍。」
「…何か調子狂いますけど…行かせてもらいますよ!はぁぁぁぁぁっ!!!」
藍は気を取り直し、激しく回転しながら弾幕を撒き散らしていく。
その圧倒的な密度は、最早ごり押しを超えた何かと化している。
「咲夜、頼んだわよ。」
「はい。幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』!」
咲夜はスペルを宣言し、ナイフを数本上に放り投げる。
ナイフは空中で円形に並び、全ての切っ先が中心へと向いた後…
「…発射!」
彼女が両手を広げるのと同時に、赤い数十本の細いレーザーが切っ先から撃ち出された。
レーザーはまるでプロペラの様に回り、藍の放った弾幕を防いでいく。
そして最終的に咲夜は、藍の膨大な量の弾幕を全て打ち消して無効化した。
「お嬢様には埃一つたりとも付けさせはしません。」
「…くっ…」
「藍、お疲れ様。後は任せなさい。」
「…紫様、頑張ってください!では!!」
藍は紫を激励した後に、再びスキマの中へと消えていった。
「あら、折角の援軍を退却させちゃっていいの?
でも容赦はしないわよ!!」
レミリアは両腕をクロスさせ、戻ってきた円盤を含めて数枚の円盤を紫に向かって飛ばす。
円盤は大きな弧を描き、猛スピードで迫っていく。
「…それ!」
超回転で迫る円盤を前にしても紫は全く動じず、落ち着いてスキマを開く。
数枚の円盤は、全てスキマに呑み込まれていった。
「フン、私の後ろにその裂け目を開いて切り裂こうって言うんでしょう?
そんなつまらない手に、この私が引っ掛かると思う?」
余裕の表情で質問するレミリアに、何故か紫は楽しげに答える。
「半分正解ね♪」
「…半分?」
レミリアが首を傾げる暇も無く、紫は直ぐに次の言葉を続ける。
「じゃ、答えあわせよ♪霊夢、頼んだわ!!!」
「はいはーい。」
「!?」
レミリアの耳に入ってきたのは、間の抜けた霊夢の声。
咄嗟に頭上を見上げると、スペルカードを構えた霊夢が自分に影を落としていた。
「い…いつの間に上にっ!?」
「さっきからずっと待機してたわよ!はぁぁぁぁぁぁぁ…」
霊夢は両手を前に突き出し、エネルギーを溜めて陰陽玉を作り出す。
陰陽玉はどんどん巨大化していき、霊夢の姿が隠れる程の大きさとなった。
「…くっ!」
レミリアは本能的に危険を察知し、霊夢の真下から逃れようとする。
それを霊夢のパートナーである紫が許すわけはない。
「何処に行こうっていうの?ほら、貴方の弾幕よ!!」
紫はレミリアが放った円盤状の弾幕をスキマからスキマへと移動させ、レミリアの動きを封じる。
咲夜もナイフを当てて円盤を止めようとするが、凄まじい回転の前に全て吹き飛ばされてしまう。
彼女達二人がどうにも出来ず攻めあぐねいている内に、遂に霊夢はスペルの発射準備を整えた。
「まさか、自分のスペルに足止めされるなんておもわなかったでしょう?
…これで止めよ!宝具『陰陽鬼神玉』!!!」
霊夢のスペル宣言の声と共に、
今や直径数メートルにまで巨大化した陰陽玉がレミリアと咲夜に襲いかかった。
「…幻世『ザ・ワールd…ぐっ!?」
「ざーんねん、貴方に時は止めさせないわよ♪」
紫がスキマから出した例の円盤によって、咲夜はスペルカードを真っ二つにされてしまう。
最後の希望である時間停止を封じられた咲夜は、初めて自らの敗北を悟った。
「…すみません、お嬢様…
私が巫女を倒しておけば、お嬢様にご迷惑をかける事も無かったでしょうに…」
「良いの良いの。あなたは立派に仕事をしてくれたのだから。
…今度は、私の番よ。」
レミリアはその場に静かに佇み、目を瞑る。
霊夢の巨大陰陽玉が体にあたるギリギリまで迫った瞬間、レミリアは目を開いた。
「紅符『不夜城レッド』!!!」
発動した瞬間レミリアの体が紅く光輝き、彼女を中心として十字形の赤いレーザーが放出される。
レーザーは陰陽玉を触れただけで消滅させ、幻想郷の空に巨大な赤い十字架を作り出した。
その威圧感、そして美しさは紫を一瞬だけ感心させた。敵にも関わらずだ。
「…ちょっと!折角の渾身の一発をいとも簡単に防がないでよ!」
「まさか、防がれるなんて思ってなかったでしょう?」
理不尽な不満をぶちまける霊夢に対し、レミリアは余裕で応対する。
「それとも、まさか今のが本気なの?」
「そんなわけないでしょ♪あれしきの攻撃でやられてはつまらないじゃない。
お楽しみはこれからなんだから。ね、霊夢♪」
「はいはい…はぁ…」
霊夢はため息をつく。ある考えが頭をよぎったからだ。
その考えは直感による物だが、十割の確率で当たるだろう。
…というよりも、既に当たっている。
「…これは、早く終わりそうにはないわね…」
そして、戦いは再開された。
今回は主人公が名前でしか出なかった。
紅魔ズを書くとどうしても咲夜が目立ってしまう…まあいいか(おい)
次回は分かれた幽々子達側の話になります。あの二人も出るよ!
感想、意見、アドバイス等々募集中です。