ゆっくり読んでいってね!
「行くぜ大妖怪…いや、幽香!!!」
「ふふふ…」
…オッス!オラ紀r…いや、流暢に話している場合じゃない!
今現在、魔理沙&アリスのチームと遭遇したと思ったら二人が幽香さんに喧嘩売っt…危なっ!?
「おっとぉっ!?」
死角から突然飛んできた無数の星形弾に俺は当たる直前で気づき、咄嗟に地面を蹴って飛翔する。
無数の星形弾は俺の爪先を掠め、進行方向に立っていた樹木に当たって次々と弾けた。
「…ちっ、弾幕を弾ける傘なんて反則だろ…」
不満げな声がしたのでそちらを向くと、箒に乗った魔理沙と幽香さんが空中で向き合っていた。
俺の位置からは魔理沙の悔しげな顔しか見えないが、多分幽香さんは笑っているんだろう。
「あら、あなたは自分が不利になると『ルール』を持ち出すの?
全く、弱者が使う典型的で古い手をこうも堂々と使ってくるなんて…ね♪」
「この…っ!」
傘を広げた幽香さんの浮かべている余裕の笑みに、魔理沙は物凄く苛ついている様だ。
まあ、魔理沙は熱くなりやすいからな…いや、幽香さんの喋り方が駄目なのか?
「で、何もしてこないの?」
「五月蝿い!魔符『スターダストレヴァリエ』!!」
幽香さんの挑発らしき言葉へのお返しをするかの様に、魔理沙は大声でスペルを発動する。
すると魔理沙の周りに複数の魔法陣が出現し、数珠状に連なった星形弾が発射され始めた。
星形弾はプロペラの様に回転して幽香さんに襲いかかるが、幽香さんは笑いながら傘を構え…
「…♪」
そのまま空間を切るかの様に傘を薙ぎ払い、自分に向かって来ていた弾幕を掻き消した。
…あの技、何か見た事あるんだよなぁ…確かチルドが使ってた様n…
「…紀流、何他人面してるの?
人形達、ぼーっとしてる紀流に総攻撃をかけなさい!!」
「「「「「ホウラーイ!」」」」」
「…えっ?」
戦闘中の二人の声ではない声が聞こえたので振り返ってみると、そこにはアリスが。
浮遊している彼女の周りには五体程の人形が飛び回っており、弾幕を放つ構えをしている。
彼女達(?)の標的は、もしかしなくても俺だろう…幽香さんじゃ無く。
「…あの、アリス?」
無駄だとは分かっているが、俺は一応アリスに気になった事を訊ねる。
「何?」
「何で俺に攻撃しようt「咒符『蓬莱人形』!」…おい…」
…うん、こうなるのは分かってたよ、分かってたけど…
「…何で俺まで巻き込まれなきゃいけないんだよ!?」
「あなたとあいつはチームなんでしょ?だったらニ対ニが妥当じゃない!
蓬莱達、紀流を狙って撃ちまくれーっ!!!」
「「「「ホウラーイ!!!」」」」
「理不尽すぎr…危ねっ!」
俺のぼやきを完全に無視し、アリスの人形達は俺に向かって無数のビームを撃ってきた。
俺は出来るだけ最小限の動きで避けようとするが、人形達は容赦なく俺を狙い撃ってくる。
「…ちっくしょう…散弾『トラップシューター』!」
俺はスペルを宣言し、右手にエネルギーを溜めて振り抜いて無数の弾を発射する。
「そらそらそらそらぁっ!!!」
「反撃してきたわね…蓬莱達、負けちゃ駄目よー!」
「「「「ホウラァァァイッ!!!」」」」
相手も負けじと人形の数を増やし、更に激しい攻撃を繰り出してきた。
それらは空中で激しくぶつかり合い、小規模な爆発が次々と発生していく。
それによって生じる激しい閃光と爆風。隙があるとしたら…ここだ!!!
「そらぁぁぁっ!」
俺は気弾をばらまきつつ爆風に突っ込み、中を一気に突き抜けてアリスに突進する。
「なっ!?」
「どうやら、俺を甘く見た様だな!」
アリスは今人形を操って両手が塞がっている!俺のスペルには対応出来まいっ!
「もらった!千刃『サウザーブレード』!!」
俺は右手に紫色の刃を形成し、アリスと人形の間に向かって降り下ろす。
人形はアリスの指についた糸によって動いているのだから、糸を切れば人形は動かなくなる筈だ!
相手の攻撃が強いのなら…
「最初に攻撃手段を奪えばいいっ!」
「くっ…!」
アリスの焦った表情を見て俺が勝利を確信した次の瞬間、何かが俺の視界を横切ったかと思うと…
…俺の右手の進行が急に止まった。
「!?」
違和感を感じた俺が瞬時に右手を見下ろすと…
「…シャンハーイ。」
見慣れた人形が槍を構え、俺の刃の進行を食い止めていた。
その光景に驚き、俺のアリスへの集中が薄くなった瞬間を彼女は見逃さず…
「人形『未来文楽』!」
新たなスペルを宣言した後、俺が何も反応出来ない内に後退して距離をとった。
「あ、まt…」
「シャンハーイッ!!!」
「うわっと!?」
俺はアリスを追おうとしたが、上海の巧みな槍さばきによって防がれた。
それでも何とかアリスに接近しようとする俺を、上海はひたすら妨害し続ける。
「この…っ!」
「シャンハーイ!」
俺が右に行けば右、左に行けば左と、上海は俺にぴったりくっついて離れようとしない。
小さくて素早い上海に俺が翻弄されている隙に、アリスは大量の人形を召喚し…
「人形『レミングスパレード』!!!」
最後の人形を出すと同時に、三枚目のスペルを発動した。
彼女のスペル宣言の声と共に、大量の人形達が空を飛んで爆進してくる。
「しまっ…!?」
上海を倒す事に夢中になっていた俺は、人形達の接近に気づくのが大幅に遅れた。
俺は慌てて迫りくる人形達の方に体を向けるが、時すでに遅く…
「ホウラーイ!」
「…ぐっ!?」
「ホウラーイ!」
「…がっ…!」
「ホウラーイ!」
「ホウラーイ!」
…突進してきては爆発する人形達の前に、なすすべも無くなっていた。
俺は何とかその場から動こうと努力するが、何しろ間隔を開けずに爆発が起こり続けているのだ。
今の俺には、腕を交差させ続ける事しか出来る事が無い。
「…はぁ…はぁ…」
十数秒後にようやく猛攻撃が止んだ時には、既に体にかなりのダメージが蓄積していた。
ぱっと見服が破れたりはしていないものの、全身が殴られたかの様に痛い。
「紀流、何時までも目を瞑ってないでこっちを見たらどう?」
「…何だと…」
アリスの小馬鹿にした様な声に怒りを覚え、俺が目を開けると…
「…っ!?」
「ホウラーイ♪」
…一体の人形と『眼』が合った。
俺から一メートル弱の場所を、ふわふわと漂って…こっちに『向かって』きている。
「…どうやらあなたは、私と人形を繋いでいる糸を切れば勝てると思っていたみたいだけれど…
そんな分かりやすい弱点を、私が放っておくとでも思ったの?」
「ホーウラーイ♪」
「…!」
ゆっくりと近づいてくる人形から目をそらせなくなった俺を見つつ、アリスは静かに語り始めた。
人形との距離、残り約三十センチ。
「糸で操れて細かい作業が可能な人形と、最初に出した命令に従って自動で動く人形…」
…残り、二十センチ。
「この二種類の人形達に…」
…残り、十センチ。
「…『弱点』は無い!」
アリスの言葉と同時に、人形は俺の顔の前で大爆発を起こす。
それによって発生した轟音と爆風によって、アリスの髪の毛とスカートは激しく靡いた。
「…アリスか…」
「よそ見している余裕があるの?それっ!」
「勿論無いぜ!はぁぁぁぁぁぁっ!!」
アリスの人形が大爆発を起こしたまさにその時、幽香と魔理沙も激しい戦いを繰り広げていた。
幽香の傘から放たれる光弾に対し、魔理沙も負けじと星形弾を連射して対抗する。
今の所、勝負は「拮抗」していると言えるだろう。
「…ふう…参ったな…
今の所、私も幽香も弾が服を掠めた程度の被害しか受けていない…だが…」
魔理沙は勝負相手を睨み付ける。
彼女が睨み付けているのに気づいた幽香は、にっこりと笑顔を返してきた。
「あの顔から見る限り、幽香にはまだまだ余裕がある。
前は霊夢と二人がかりでやっと倒せたからな…私一人で倒せるのか?」
「…ほら、どうしたの?私を睨んで倒す事は出来ないわよ?
それとも今のあなたは『蛇に睨まれた蛙』なのかしら?」
そう言って笑う幽香の声を聞き、魔理沙の心は急に奮い立つ。
「…えぇい、何を私は弱気になってるんだ!
相手がどんな奴だろうと全力で戦う、これが私の信念だぜっ!!」
魔理沙は頬をぱんぱんと叩き、集中力を高めると同時に自分の気持ちを鼓舞する。
そして、気持ちを落ち着かせ頭を冷静にする為に深呼吸を一回。
「すー…はー…よしっ!」
「さっ、来なさい♪」
「言われなくてもやってやるぜ!儀符『オーレリーズサン』!!」
魔理沙がスペルを発動すると、彼女の周りに四色の球が現れる。
「行くぞ、避けられるもんなら避けてみろ!!」
その言葉と同時に、魔理沙は腕を幽香に向かって突きだす。
四つの球は彼女の腕の周りを高速回転し、ガトリングガンの様に連続して弾幕を撃ち出していく。
「そ~れっ♪」
対する幽香も負けてはいない。傘を回転させて弾幕の軌道をずらしつつ、
その先端部から光弾を放って魔理沙の弾幕を相殺していく。
「どららららららららららっ!!!」
「…ふん…」
幽香は傘を使って完全に弾幕を防ぎきっているが、
魔理沙は撃ち続けるのみで防御を行っていない為、服に所々弾幕が掠って綻びている。
だが彼女はそんな事は気にもかけず、生き生きとした表情で攻撃を続けた。
「…ちっ…」
…幽香にしてみれば、魔理沙のそれは全く気に食わない。
彼女にとって、戦う相手は圧倒して絶望させて葬らなければいけないものなのだ。
現に幽香が今回の異変解決に乗り出したのも、自分の嗜虐本能を満たす為である。
「…流石は幽香、生半可な弾幕は通用しないな…恋符『ノンディレクショナルレーザー』!!!」
「…はぁ…」
先程までの弾幕に、更に六本のレーザーを加えた魔理沙のスペルが幽香に襲いかかる。
それを傘からのレーザーで相殺しながら、幽香はゆっくりとイライラを募らせていった。
「…つまらない…前と同じ様に、中途半端…」
数年前に戦った時も、結局最後に勝負を決したのは『博麗の巫女』だった。
魔理沙も積極的に攻めてきたが所詮はパワーだけのごり押し戦法、大した相手では無かった。
「そこだ!彗星『ブレイジングスター』!!」
「…ふんっ!!!」
星を纏って突進してくる魔理沙に対し、幽香も全身にバリアを張って対抗する。
二つの巨大な力が激突しあい、その反動で発生した爆風が周りの木々をざわめかせた。
「…くっそう…こっちはスペルを発動してるっていうのに…」
魔理沙は箒にしっかりと掴まり、吹き飛ばされない様に踏ん張る。
その姿を見て、幽香は愚痴をこぼす為に口を開いた。
「…ねえ、あなたの力はこんなものなの?
やはりあなたは前戦った時と同じ様に、全くの期待外れね…」
「な…!?」
「今夜あなたと会った時、久し振りに楽しめると思ったのに。
これじゃあ紀流と喋ってた方がましよ…」
「そうかぁ…じゃあ、私もお前を満足させる為に…
『本気』でやらせてもらうぜっ!」
魔理沙はそう言いながら帽子に手を突っ込み、ごそごそと探った後に何かを取り出した。
その八角形の物体を魔理沙は右手に持ち、幽香に向けて構える。
「…何、それ?」
「私のとっておきのスペルを使う為の道具だ。
今から放つスペルなら、お前を満足させる事が出来ると思ってる。」
「ふうん…」
幽香は興味の無さそうな態度をとりながらも、内心では少しわくわくしていた。
何しろ、自分を満足させられる攻撃が出来ると宣言されたのだ。
「…期待しても、良いのかしら?」
「ああ、存分に期待してくれだぜ。」
…誰よりも戦闘を好む彼女が、その言葉に反応しないわけがない。
「じゃあ行くぜ…恋符『マスター…」
魔理沙はいきなり箒の上で飛び上がり、両足で箒の柄にバランス良く乗っかった。
そして両腕を後ろに引きつつ、八角形の道具『八卦炉』を両手で包み込み…
「…スパァァァァァァク』!!!」
…両腕を力一杯前に突き出した。
八卦炉の穴が幽香の方向に向いた瞬間、八卦炉からは虹色の光が溢れ出し…
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
…八卦炉の穴に再び集束した後、極太の虹色レーザーとなって幽香を襲う。
「ふうん、私が前の戦いで出した技にそっくりじゃない…」
幽香は魔理沙のスペルに驚きつつもさっきと同じ様に傘を体の前に構え、攻撃をそらそうとする。
だが、今回の攻撃は今までの攻撃とは威力が違う。魔理沙の全身全霊をかけた最強の一撃なのだ。
…その時は、直ぐにやってきた。虹色の閃光が幽香の傘と触れあった瞬間。
「…っ!?」
その攻撃の予想以上の重さに、油断していた幽香は危うく傘をもぎ取られそうになった。
驚いた幽香は傘を強く握り直して傘の向きを修正し、レーザー光を真っ向から受け止める。
「…どうだっ!」
「…?」
不意に、虹色のレーザー光が飛んでこなくなった。
幽香はその事を不思議に思ったのと同時に、少しイラッとする。
「…何で攻撃を止めたの?
私はまだ、全然満足してないんだけど。」
「別に今の攻撃は、お前にダメージを与えようとして放ったんじゃ無いぜ?
ちょっとお前の傘を見てみろよ。」
「…?」
魔理沙の言葉に誘導される様に、幽香は自分の傘を見下ろす。
…傘は所々焼け焦げており、骨組みの方が目立つような状態になっていた。
「…!?」
「もうその傘は使えないだろ?
これで私もお前も、自分を守る道具は何も無くなったってわけだ。
ま、私は元から無いけどな♪」
魔理沙は箒に乗り、得意気に笑う。
しかし、幽香はその笑みを見てはいない。彼女が見ている物、それは…
「…っ!!!」
自分の手の内で、次第に灰になっていく傘だった。
傘は彼女にとっての武器でもあり日用品でもあるが、それと同時に『壁』の役割も果たしている。
幽香と相手との間にそびえ立ち、彼女と相手とのレベルの違いを象徴する、巨大な壁。
傘を灰にされたという事は、その壁をぶち破られた事を意味する。
相手を圧倒する事を戦いの常とする彼女にとって、これ以上の屈辱は…ない。
「…フフフ…」
幽香は完全に灰となった傘から目を離すと、笑いながら魔理沙の方を睨み付けた。
だが、その笑いは今までと同じような相手を見下した物ではない。
「…ぐっ!?」
その笑みには『殺意』が含まれていた。
魔理沙もそれを感じとったらしく、笑うのを止めて幽香を見据える。
「…あなたは私の傘を灰にして「してやったり」って思ってるんでしょうけど、残念だったわね。
この傘は私の力で作り出している物だから、何度でも修復できるのよ。」
「えぇっ!?そんなのズルいぜ~…」
魔理沙は地団駄(箒の上だが)を踏んで悔しがる。
「あら、あなたもそう思う?」
「え?」
「実は私も、少し卑怯かなと思ってたのよ。
今回は修復しないから安心しなさい♪」
無論、幽香は卑怯等とはこれっぽっちも考えていない。
ただ単に、傘を使わずに魔理沙を倒したくなっただけである。
「お、そうか!
じゃあ後は、『本気』でぶつかりあうだけだな!!」
「…ふふ…」
「じゃあ、もう一発とっておきをお見舞いしてやるぜ!」
魔理沙は再び両腕を後ろに引き、エネルギーを溜める構えをとった。
それを見て幽香はにやっと笑って両腕を前に突き出した後、
両手を開いて付け根同時を合わせ、両手のひらを魔理沙に向ける。
「…何だ、その構え?一体何をするつもりなんだ?」
「あら、覚えてないの?
前もこの技を一度だけ使ったのだけれどね…♪」
思わせ振りな幽香の答えに魔理沙は一瞬だけ首を傾げるが、直ぐに幽香へと集中を戻す。
「…まあ、何だって良いぜ。お前が何をしてこようが、私は全力でこいつを撃つだけだ!」
「その言葉、そっくりそのまま返してあげるわ♪」
やがて、幽香の両手のひらが青く発光し始める。
その光は凄まじく、先程の魔理沙のスペルに匹敵…いや、それ以上の輝きを放っていた。
魔理沙の方はというと、こちらも八卦炉から既に虹色の光が漏れだしている。
「…。」
「…。」
『嵐の前の静けさ』を表しているかの様な静寂の時間は…
唐突に、劇的に、終わりを告げた。
「恋符『マスタースパーク』!!!」
「
次の瞬間、両者の手元から同時に凄まじい威力の光線が放たれる。
両者の意地とプライドが限界まで込められた虹色と青色の閃光は、幻想郷上空で激突した。
次回は戦いの後編です。
感想、意見、アドバイス等々募集中。