東方有無録   作:印鑑

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一ヶ月間に色々ありました。以上。
というわけで第六十話目です。今までで最長の話となっています。
ゆっくり読んでいってね!


状況、誠に複雑怪奇〜異変の謎は深まるばかり?

ここは幻想郷の、二つの激戦が繰り広げられている事を除けば普通の森。

その一方で戦っていた『風見 幽香』と『霧雨 魔理沙』のスペルが激しくぶつかり合った。

数十本の木々を薙ぎ倒し、深い森に円形のさら地を生み出したそのエネルギーは…

 

 

「…っ!?」

 

「ぐっ…!?」

 

「うわっ!?」

 

「…?」

 

 

当然の様にもう一方の戦士達、霊夢達の元へも到達した。

四人の少女(?)達は衝撃波を受けて空中でよろけるが、四人とも直ぐに体勢を立て直す。

最初に口を開いたのは、少し慌てた表情をしたレミリアだった。

 

 

「…全く…一体何だって言うのよ…」

 

「私にも理解しかねます。」

 

 

レミリアと咲夜は首を傾げたが、霊夢と紫は何となく今の衝撃波の原因の見当をつけていた。

 

 

「今の爆発の原因は多分、祠弥達ね。」

 

「確かに、あれだけのエネルギーを放つ事が出来る奴なんて紀流とあいつ位…

…いや、そうとも言い切れないわ。」

 

「え、どういう事?」

 

 

紫の放った意外な言葉に、霊夢は首を傾げて聞き返した。

その不思議そうな顔を見て紫は少し微笑んだ後、再び顔を引き締めて答える。

 

 

「ほら、幽々子の可能性だってあるじゃない。」

 

「…幽々子って言うと…ああ、さっき別れたあの幽霊ね。

じゃ、今爆発があった方向に飛んで行けば合流出来るってわけ?」

 

「そうねぇ…幽々子であろうと紀流であろうと、そうする価値はあるかもしれないわね。

ちょっと行ってみましょうか。」

 

「そうと決まれば、さっさと行きましょ。」

 

 

霊夢は爆発があった方向に体を向け、その方向を見据えた後に飛び始める。

その後に紫が続き、二人は瞬く間にレミリアと咲夜の視界から消えてしまった。

 

 

「…え?」

 

「お嬢様、あの二人が飛んでいってしまいましたが。」

 

 

霊夢と紫が飛び立ってから数秒後。

レミリアは何が起こったのか分からずに暫くぼーっと浮いていたが、咲夜の冷静な声で我に返り、辺りを見回す。

 

 

「…あいつらは私達との戦いを放棄したってわけ?」

 

「其の様ですね。」

 

「あぁっ!?冗談じゃ無いわよ!!!こっちは真剣にやってたっていうのに…」

 

「お嬢様、下品な言葉使いは謹まれた方が良いかと思われます。」

 

 

レミリアは頭を激しく左右に振って意識をはっきりさせた後、

最早点にしか見えない程の距離まで離れてしまった霊夢達に向かって怒鳴った。

 

 

「そこの二人!ちょっと…待ちなさい!!止まれぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 

その小さい体から何故そこまで大きな声が出てくるのかと言いたくなる程の、

レミリアの怒号が夜の森に響き渡っていく。

…が、遥か前方を行く二つの点が止まろうとする様子は無い。

 

 

「お嬢様、今現在の時刻は丁度深夜です。

そこまで大きな声を出されますと、就寝中の近辺住民の皆様方に迷惑ですよ。

そもそも距離からしてお嬢様の声はあの二人に届いていないと思われます。」

 

「げほっ…ごほっ……はぁ…っ…。」

 

 

レミリアは荒い息をしながら咲夜の無表情な顔を一瞥し、がっくりと項垂れる。

そのまま暫くレミリアは落ち込んでいたが、突然顔を上げて狂った様に笑いだした。

 

 

「…フフフフ…アーッハッハッハッハァ!!

全く、初めてよ…ここまで私の事をこけにした…大馬鹿野郎共は…!!!」

 

「お嬢様、言葉使いが…」

 

「五月蝿いっ!!

咲夜、あいつらを全速力で追うわよっ!!!」

 

「はい、承知致しました。」

 

「じゃあ早速…

おーいあんた達、何か重要な事を忘れてないかしらぁ!?」

 

 

レミリアは全身に紅い気を纏い、空気を切り裂きながら霊夢達を追い始めた。

それを見た咲夜は軽く溜め息をついた後、時を連続して止めながらレミリアに付いていく。

 

 

「夜を統べる女王である私から…逃げられると思わない事ねっ!!!」

 

「お嬢様、言b(ry

 

「分かってるわよ!!!子供に言い聞かせてるんじゃあるまいし、何度も繰り返さなくて良いわ!!!」

 

「申し訳ございません。」

 

「全くもう…加速っ!!!」

 

 

レミリアは咲夜に向かって怒鳴り散らしながら、夜空の中を進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん?」

 

「どうしたんだ、祠弥?急に空を見上げたりして…」

 

「いや、何か大きな気を持った奴が近づいて来てる様な気がしたんだg…痛い!」

 

「♪」

 

 

オッス!オラ紀流!

今現在、俺と幽香さんは魔理沙とアリスにそれぞれ勝利した所だ!

…それにしても何で幽香さんは俺の腹を延々と傘で突き刺してくるんですかn…痛い…

 

 

「…ねえ、一つ訊ねても良いかしら?」

 

「何?」

 

 

突然、今まで黙っていたアリスが幽香さんに話しかけた。

幽香さんは一瞬意外そうな顔をしたが、直ぐに表情を戻してアリスの方へと顔を向ける。

…傘は俺の腹に突き刺したままだが。

 

 

「あなた、随分とあれこれして紀流を虐めまくってるけど…

紀流を虐めて、あなたは何か楽しいの?」

 

「それは私も気になってたぜ。

首は絞めるわ、腹を傘で突くわ…そんな事して面白いのか?」

 

「…別に面白く無いけど。」

 

「じゃあ幽香さん、この傘を退けて下s…ぐえっ!?」

 

「ま、何もしないよりはマシね♪」

 

 

そう言って幽香さんはにこっと微笑む。

…傘がドリルの如く腹を抉ってくるのはどう考えても気のせいじゃ無いよねー。

ええい、このままだと本当に腹が破れる!

 

 

「…幽香さん、そろそろ良いですか?」

 

「あ、傘の事?それ♪」

 

「…え?」

 

 

…あれ、何かえらく親切だな…どうしたんだ?

俺がそんな失礼な事を考えている間に、幽香さんは魔理沙とアリスの方に向き直っていた。

そして、一言。

 

 

「じゃあ、続けましょうか♪」

 

「「「え?」」」

 

 

…ちょっと待て幽香さん、あなたは何を言ってるんだ…

 

 

「いや幽香さん、もう勝負はついたんじゃ…」

 

「ふふふ…祠弥、何時から私が負けを認めたと錯覚してたんだ?」

 

「おい!?」

 

 

…魔理沙、そこまで負けず嫌いだと命が幾つあっても足りないぞ…

アリスも俺と同じ様な事を思ったのだろう、大きなため息をついた後に的確なツッコミを入れる。

 

 

「魔理沙、あなたはもう既に負けたわよね?

しかも紀流が庇ってなかったら、最悪の場合死んでたかもしれないのよ?」

 

「ああ、そうさ!

祠弥に私は生かされたんだ、その命を無駄にする気は無いっ!」

 

「あら、分かってr「今度は死なない様に頑張るぜ!!!」…全然分かってなーいっ!!!」

 

「えぇ…じゃあ、何だってんだよ…」

 

 

アリスが大声で怒鳴ると、魔理沙はむっつり顔になって自分の髪の毛をくるくると弄くる。

その態度がどうやらアリスの神経を逆撫でしたらしく…

 

 

「…魔~理~沙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ひぃっ!?」

 

 

アリスは、怒りました。それはもう、魔理沙が尻餅をつくレベルの勢いで。

 

 

  ~少女激怒中~

 

 

「…じゃ、魔理沙。もう一度復習しましょう。

はい、せーの…」

 

「…い、『命は粗末にしない』…。」

 

「はい、良く出来ました。

幾ら魔法が使えて弾幕が撃てたとしても、やっぱりあなたは『人間』。

…その命は妖怪や妖精達よりも遥かに脆く、そして短いのよ。

これからは、その事を常に頭の片隅に置いておきなさい。」

 

 

その言葉を最後に、アリスは話(説教)を締めくくった。

…話し終わった彼女の顔が、何処と無く悲しげな雰囲気だったのは…

 

 

「さあ、これから何をすべきなのかしら、魔理沙!?」

 

「…分かってるよ、謝れば良いんだろ…」

 

 

…気のせいだな、うん。

魔理沙は尻餅をついた時にずれた帽子をしっかりと被り直し、ばつの悪そうな顔で頭を下げる。

 

 

「…ごめん、アリス…」

 

「私に謝るよりも、まず最初に紀流に謝るべきじゃないの?」

 

「あ、そうか…すまん、祠弥…」

 

 

魔理沙は一度顔を上げて俺の方に向き直り、再び頭を下げた。

…うーむ、何で俺は謝られると罪悪感が湧いてくるのかねぇ…。

 

 

「…いや、俺は別に気にしちゃいないからな。良いって事だ。

ちゃんとアリスが言った事を覚えといて、死なない程度に無茶しろよ。」

 

「紀流、その言い方はおかしいでしょ…」

 

「ん、そうか?」

 

「そうだぜ…死なない程度に無茶しろって、私に遠回しに死ねって言ってる様なもんだぞ?」

 

「え"ぇ"っ!?」

 

 

どうやら俺は、自分で考えていた以上に酷い事を言ってしまった様だ。

…くそう、どうして俺は自分本意でしか喋れないのか…これじゃただの嫌な奴じゃねーか!

 

 

「…ま、アドバイスには感謝するぜ。

改めてありがとな、祠弥。私を助けてくれて。」

 

「あ、あぁ…うん。」

 

「どうしたんだよ~、私以上に暗い顔しやがってー♪

ほら、元気だせっ!!」

 

 

魔理沙はけらけらと笑いながら俺に近づき、右手で背中を何度もバンバンと叩いてきた。

元気がでるけど痛い!幽香さんの刺突には敵わないけど痛い!!

止めてほしいけど元気づけてくれてる手前そうも言い出せない!!!

 

 

「…魔理沙、もう止めたら?

紀流、凄く痛そうな顔してるわよ?」

 

「あ、すまんすまん!つい…」

 

「大丈夫だ、問題ない。」

 

 

実際あまり大丈夫じゃないけどな!

さて、後残ってる問題は…

 

 

「…ねえ、早く始めましょうよ。」

 

 

今にも不満を爆発させてレーザーをぶっぱなしそうな幽香さんを如何にして宥めるかだな。

さて、どうしたもんかね。話題を逸らす…っていうのは通用しないだろうし。

少し身の危険が伴うが、やはり単刀直入に言った方が良いかn…

 

 

「…ごめんな、一旦その話は保留にしてくれないか?」

 

「…。」

 

「喧嘩売っときながら生意気な事言ってる事は分かる。

だけど…えーっと…その…何だ…」

 

 

魔理沙はどうやらそこまでしか言葉を考えていなかったらしく、目を泳がせておろおろしている。

幽香さんはその仕草を暫く眺めていたが、軈て呆れた様な顔で魔理沙の言葉を引き取った。

 

 

「…つまりあなたはそいつと紀流の言葉に影響されて、

弱気になっちゃったってわけ?」

 

「ははは…そういう事だぜ。」

 

 

魔理沙は照れくさそうに笑い、それを誤魔化すかの様に頭をくしゃくしゃっとかいた。

 

 

「ふん…紀流、行くわよ。」

 

 

幽香さんは俺の腕を引っ掴み、再び森の奥へと進んでいこうとする。

しかし、俺はその場から動かない。少し気になる事があるのだ。

 

 

「…紀流。」

 

 

幽香さんは顔をしかめ、腕が危うく抜けそうになるレベルにまで力を強めてきた。

…全く、本当に容赦無いなぁ…俺はため息混じりに言葉を続ける。

 

 

「…幽香さんは強い奴と戦いたいんでしょう?

だったら、ここでこのまま待った方が良いと思いますよ?」

 

「?」

 

「祠弥、それってどういう事だ?」

 

 

幽香さんが首を傾げ、魔理沙が質問してきた正にその瞬間、周りの木々がざわめき始めた。

 

 

「「「!?」」」

 

「やっと来たか…誰かまでは分からないけど。」

 

 

俺が夜空を見上げると丁度二つの影が停止し、地上に下り立とうとしている所だった。

当然というか何と言うか、俺はその影に見覚えがある。さっきまで一緒にいたし。

 

 

「お、霊夢に紫じゃないか。」

 

「祠弥に幽香…やっぱりあんた達だったか…。」

 

「あら、霊夢の予想通りだったわね。」

 

 

霊夢は「やはりそうだったか」とでも言いたげな顔。

そして紫は、霊夢の予想?が当たった事に対して驚いた様な顔をしていた。

 

 

「紫、霊夢の予想って何の事だ?」

 

「ああ、さっきの大爆発の原因の事よ。

けど、まさかここまで分かりやすい目印があるなんてね。」

 

 

そう言って、紫は辺りを見回す。

…確かにこんだけ木々が薙ぎ倒されてれば、上空からは良い目印になるだろうな…

 

 

「お、霊夢じゃないか!」

 

「魔理沙…あんたもいたのね。」

 

「当然だぜ!

何せ、私達の仕事は『異変』を解決する事だからな!!」

 

「…異変…あ、そうか。

俺達は異変解決の為に森の中を探索してたんだった…。」

 

 

色んな奴と戦いまくったから、すっかりその事を失念してたぜ…

セルに似た子とか歌で鳥目にする子とか…あ、幽香さんは慧音って人とも戦ってたな。

 

 

「けどなぁ…

幽香さん、確か今回の異変の原因は月が欠けているって事でしたよね?」

 

「そうよ。まだ理解してなかったの?」

 

「してますよ…」

 

 

…幽香さん、ゴミを見る様な目で見つめてこないでください。

本人は普通の目つきをしているつもりなんだろうが、何せ俺よりも身長が10cm位高い+細目だ。

両者の相乗効果で俺の精神がストレスでマッハである。

 

 

「じゃあ何が気になるの?」

 

「…いや、今まで色々な人と戦ってきましたけど、

まだ今回の異変の異変に直接関係ありそうな人と会って無いじゃないですか。

そろそろ黒幕が出てきても良いんじゃないかな~なんて…」

 

 

そこまで言った所で、誰かが俺の両肩を叩いてきた。

 

 

「祠弥、その考えは甘すぎるわ。」

 

「砂糖が限界まで溶けた百度の紅茶よりも、もっと遥かに甘いぜ…」

 

「…。」

 

 

何だろうね。分かってたんだよね。

ドラゴンボールじゃあるまいし、黒幕がそんなに早く出てくるわけ無いだろうってね。

…実際まだ精々数時間しか探索してないからな。やはり俺も、まだまだ甘いn…

 

 

「…れ~い~む~っ!!!」

 

 

上空からのいきなりの大声が、夜の静寂と俺の思考を見事に砕き割ってくれやがりました。

俺と幽香さん、そして紫以外の三人は思わず両手で耳を塞く。

 

 

「一体何だって言うのよーっ!?」

 

 

上空からの声に掻き消されない様に、霊夢は大声で怒鳴る。

それに負けじと、上空からの声は益々大きくなった。非常に五月蝿い。

 

 

「何だって言うのよーじゃ無いわよ!!!

戦闘を一方的に放棄しておいて、この私が許すとでも思ってたわけぇ!?」

 

「お嬢様、少々お声が大きすぎるかと思われます。」

 

 

再び響き渡る怒号の中、凛と響いてくる冷静な声。

…冷静と言うよりは、むしろどうでも良い様な声だが。

 

 

「…お嬢様って事は…レミリアと…咲夜かな?」

 

「あ、人間ですか。どうも。」

 

「…霊夢を追ってきたと思ったら、結構人数いるじゃない…」

 

 

レミリアは呆れ果てた目で俺達を見渡す。

ちなみに、何故か霊夢と紫も呆れ果てた目でレミリアを見つめている。

 

 

「あんた…ここまでわざわざ追ってきたの?」

 

「私達と戦ったっていうのに、まだそんな元気が残ってるなんてね。」

 

「ふん、吸血鬼を甘く見るなy…

って、そんな事が言いたかったんじゃないわよ!!!」

 

 

レミリアは相変わらずの超大声である。

一体どうやったら喉を破かないでそこまで大きな声を出せるのか。

吸血鬼の喉は特別だったりするんだろうか。まあ少なくとも人間よりは遥かに頑丈なんだろうn(ry

 

 

「紀流、何ぼーっとしてるんだぜ?」

 

「考え事してたんだy…おうふっ!?」

 

「…あら、痛いって言わないの?ほらほら♪」

 

「楽しそうね、あなた…」

 

 

…何だろう、このカオス空間は。

一応ここにいる皆には『異変を解決する』っていう共通の目的があるんだけどなぁ…

 

 

「…あら~?随分と賑やかね~。」

 

 

突如、この場の雰囲気に全くそぐわないのんびりとした声が聞こえてきた。

レミリアはその声にいち早く反応し、またまた大声で怒鳴る。

 

 

「あぁっ!?一体あなたは何様のつもりよ!?

全く、どいつもこいつも夜の王女である私を…」

 

「…レミリア、今のは私じゃ無いわよ。」

 

「え、じゃあ誰が…」

 

 

レミリアはてっきり霊夢が話しているのかと思っていたようで、

声の主が霊夢でないと分かると不思議そうな顔をした。

その声の主は、レミリアに向かって頭を下げて礼儀正しく謝る。

 

 

「ごめんなさいね、吸血鬼さん。

あなたの声が聞こえてきたから、その声を頼りにここまで来たのだけれど…」

 

「幽々子?」

 

「あ、紫~。

どうやら、吸血鬼さんと会えたみたいね~。」

 

「久し振りです、咲夜さん。」

 

「どうも。」

 

 

どうやら、今来た二人も俺が知っている人達の様だ。

俺は一旦幽香さん達の元から離れ、その二人に軽く挨拶をする。

 

 

「よっ、幽々子に妖夢。さっきぶりだな。」

 

「あ、紀流さんじゃ無いですか!

こんな森の奥で何やってるんですか?」

 

「お前が言うな。」

 

「うっ…」

 

「あらあら、一本取られちゃったわね~♪」

 

 

…この二人は変わらず、我が道を突っ走ってるな。

 

 

「…で、幽々子。何か異変解決に繋がりそうな手がかりは見つかった?」

 

「そうねえ…あ、そうそう。不思議な兎さんに会ったわよ?」

 

「…兎?」

 

 

幽々子の口から「兎」という言葉が出た瞬間、紫の表情が変わった。

その変化が気になったので、俺は紫に問いかける。

 

 

「紫、兎がどうかしたのか?」

 

「…さっきハクタクの家にいたとき、私が席を外した事を…

いや、その時貴方達二人はいなかったわね。」

 

「つまりあなたが今から話そうとしている事は、私と紀流が出発した後の出来事ってわけね。」

 

 

いつの間にか、俺の隣に幽香さんが立っていた。

更にその後ろには魔理沙とアリス、レミリアと咲夜が立っている。

 

 

「…で、紫。何があったの?」

 

 

最後に霊夢が一歩紫に歩み寄り、この場の誰もがしたがっているであろう質問をした。

皆の注目が、一斉に紫へと集まる。

 

 

「紀流達が出ていった少し後に、二匹の兎が訪ねてきたのよ。

確か、『因幡 てゐ」って奴と…」

 

「…『鈴仙・優曇華院・イナバ』さん?」

 

「なっ!?」

 

「私達が会った兎さんも、その人だったわよ。

…ね、妖夢。」

 

「…はい。」

 

 

…お、お、おぉっ!?やっと異変に関係ありそうな話題が出てきたっ!!!

一気にテンションが上がった俺は、そのノリのままで幽々子に気になった事を問う。

 

 

「で、そいつはどんな事を企んでたんだ?」

 

 

俺の質問に答えたのは、幽々子ではなく妖夢だった。

 

 

「私達に『協力してほしい』と頼んできましたよ。

まあ、どうやら虚無だったようですがね…」

 

「…何だ、その鈴仙って奴と何かあったのか?」

 

「『さっさと帰って』って言われちゃったのよね〜。」

 

 

そう言って幽々子は微笑む。だが、目は全く笑っていない。

無言になった幽々子を見かねた紫が、状況を整理する為に再び口を開く。

 

 

「どうやら、まだまだ分からない事だらけみたいね。

私が会った兎の一方は、幽々子が今話した奴で間違いないと思うわ。だけど…」

 

「問題は、『もう一方が何処に潜んでるか』って事なんでしょ?」

 

「その通りよ、霊夢。

そして、そいつは私に『レミリア・スカーレットが今宵の異変を起こした張本人』と伝えてきた。

良く考えてみれば、その時点で疑ってかかるべきだったわね…」

 

 

…レミリアの名前を知っていた?

そんなにレミリアって有名なのか?いや、異変を起こした事があるんだから当然か。

 

 

「私の名前をそうも軽々しく使うとは、どうやら今回の相手は相当な愚か者らしいじゃない。」

 

「無礼な事この上ないですね。」

 

「そう。あの二人はレミリアが強大な力を持っている事を知っていた。

それを知った上で、敢えてその『名前』を使った。

つまり、今回の異変の黒幕は非常に強大な力を持っていると考えられる。」

 

「あんたが会った二人が黒幕っていう可能性は?」

 

「それは無いと思うわよ〜。

私と妖夢が会ったうどんげさんは、『師匠』って言う人からの命を受けていたようだから。」

 

「じゃあその師匠って奴が、今回の黒幕ってわけ?」

 

「ええ、恐らくね…」

 

 

霊夢と紫、幽々子と妖夢、そしてレミリアと咲夜は真剣に話し込んでいる。

え、残りは何やってるのかって?ちゃんと話し合ってるよ?

 

 

「…えーっと、つまりどういう事なんだぜ?」

 

「まだ何も分かってない、って事よ。」

 

「えぇ〜…」

 

 

…魔理沙とアリスはね。

一応俺は自分で思考してるんだけど、幾ら考えてもこの異変について何の見当もつかん。

異変解決のスペシャリストの霊夢が首捻ってる位だから、仕方ないと言えば仕方ないのかもな…

 

 

「…幽香さんはどう思います、今回の異変?」

 

「何で私に訊くの?」

 

「お取り込み中じゃない人が幽香さんしかいなかったっていうのが一つ。

後、妖怪的視点からの意見が聞けるかなーって思ったんですよ。」

 

「…。」

 

 

喋り終わってから、凄く上から目線の言い方になっていた事に気づいた。

だが、幽香さんはそんな事を気にかける様子も無い。

 

 

「私にもさっぱり分からないわ。」

 

「そうですか…」

 

「全く、面倒くさい異変ね。

こんなにも不明事項が多すぎるんじゃどうしようもないわよ。

大妖怪のあいつですらあんな感じなんだから、普通の妖怪達にとって今晩は地獄でしょうね…」

 

「…え、どういう事ですか?」

 

 

思わず俺の口を突いて出て来た質問に、幽香さんは間髪入れずに質問を返した。

 

 

「紀流、普通玉が欠けていたらどんな印象を受ける?」

 

「…はい?」

 

「完璧を保っていた筈の玉が、割れたり欠けたりしていたらって事よ。」

 

 

…幽香さん、いきなり何を言い出すんですか…玉が欠けたらどう思うって事かな?

 

 

「そうですね…不完全…とか?」

 

「その通りよ、紀流。

本来月からは一定の魔力が放たれていて、その力は満月の日に最大になる。」

 

 

成る程、魔力ね。だから今夜は妖怪が活性化したりしたのk…

…いや、待てよ?それっておかしく無いか?

 

 

「幽香さん、確か今夜の月って…」

 

「そう、欠けている。本来ならば月が欠けた事によって魔力は弱まる筈なのよ。

けど、今夜は全くの逆。魔力はむしろ、普段の満月の日よりも強くなっている。

…あいつの顔を見た?」

 

「え?」

 

 

幽香さんに促され、俺は数メートル先で喋っている紫の顔を見る。

最初は緊張で表情が変わったのかと思っていたが、こうして見ると…

 

 

「…何か、具合悪そうだな…」

 

「あいつも、段々と月の魔力に参ってきてるのよ。

そこの吸血鬼も博麗の巫女も。この場にいる全員が月の魔力の影響を受けている。

じわじわと、さながら毒の様にね。」

 

 

マジか…じゃあさっさと手がかり掴んで異変解決しないとヤバいんじゃないか?

いや、ヤバい。早く何とかしないと…

 

 

「…幽香さんは大丈夫なんですか?」

 

「平気よ。」

 

 

…嘘つけ。今まで汗の一粒すら流さなかった幽香さんの頬に汗が垂れてるんだ。平気なわけ無い。

だがどうする?闇雲に行動したって無駄だろうし、かといって情報は殆ど無いし…

くそっ、どうすればいいんだよ!!!

 

 

「…待てよ…今の月は『少しだけ』欠けている…

それにも関わらず魔力は通常よりも多い…その状態から魔力を減らすには…

少々どころか滅茶苦茶強引だが、もうこれしかないっ!!!」

 

 

実際には滅茶苦茶強引どころではなく、下手したら幻想郷崩壊の危機である。

しかし、今の俺の頭には『皆にかかる負担を軽くする』という考えしか存在していなかった。

 

 

「紀流?いきなりどうし…」

 

 

幽香さんの問いに答えず、俺は気を一気に高める。

俺を中心として激しい暴風が吹き荒れ始めたのを感じ、その場にいた全員が俺の方に振り向いた。

 

 

「…祠弥?」

 

「人間、一体何をなさるおつもりなのですか?」

 

「そんなに気を高めて…」

 

「スペルカードでも使うつもりなの?」

 

 

皆が口々に声をかけてくるが、俺の耳には何も入ってこない。

ただこんな声が、繰り返し聞こえてくるだけだ。

 

 

「月をぶっ壊せ」

 

 

と。

 

 

「…祠弥!?一体何をしようって言うの…」

 

 

霊夢の叫びも、紀流には届かない。

彼は声に従う様にして両手を体の後ろに引き、手のひらを合わせて膨大なエネルギーを溜め始めた。

それは紀流にとっても、幻想郷にとってすらも未だかつて無い程のエネルギーだ。

 

 

「波符…」

 

「…な!?貴方、まさか『月』に向かってそれを撃つつもりなの!?」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

 

紫は、今から紀流がしようとしている事を理解し、驚愕した。

それは他の者達も同じ様なものだった。

そんな彼女達にはおかまい無しに、紀流はスペルカード名をゆっくりと宣言していく。

 

 

「か…」

 

 

風が、紀流の手のひらに吸い込まれていく。

 

 

「め…」

 

 

青い光が、収縮していく。

 

 

「は…」

 

 

限界まで収縮した青い光が、紀流の手のひらから漏れ出していく。

 

 

「め…」

 

 

風が、止む。

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!」

 

 

天地を揺るがす大声と共に、紀流は両手を夜空の月に向かって突き出す。

その刹那、光輝く青い波動が月に向かって放たれた。




紀流って強引だね(白目)
次回からいよいよ本筋の戦いに入っていける筈です。
後、六十話突破記念と言う事で紀流の立ち絵を描きました。
紀流に対するイメージが壊れる恐れがありますが、自分の中での紀流はこんな感じです。
…というかこれが自分の画力の限k(ry


【挿絵表示】


如何でしたか?イメージ通りである事を願います。
感想、意見、アドバイス等々募集中です。
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