東方有無録   作:印鑑

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大 変 長 ら く 待 た せ た n(ry
第六十二話でございます。
ゆっくり読んでいってね!


竹林の奥の平安屋敷〜幻花の超人チーム、侵攻開始

「やっと、面白くなってきたわね…」

 

「…え?」

 

 

…オッス!オラ紀流!

今現在俺は、幽香さん曰く『偽物』の月をぶっ壊した所だ…アハハ…

幽香さんは大丈夫だって言ってるが、普通月を破壊して『大丈夫』じゃ済まないだろ…

いや、それよりも…

 

 

「…幽香さん、あやかしの夜って何だぁ?」

 

「その程度の言葉も知らないの?」

 

「いや、あやかしが幻とかそういった意味なのは分かってますけど…

あやかしの夜が『終わった』っていうのはどういう事なんですか?」

 

「…はぁ…」

 

 

俺が思った事をそのまま質問すると、幽香さんは腕を組んで長い溜め息をつく。

その溜め息は想像以上に長く、俺が計った限りでは数十秒間は続いていた。

…妖怪の 肺活量って すげー!

 

 

「…紀流、本気で言っているの?」

 

「はい。」

 

「…そう…

…全く、ここまで馬鹿だとは思ってなかったわ…」

 

 

…何か凄く呆れられてるんだが。

幽香さん、いくら馬鹿と言われても分からないものは分からんのです。

…よし、突かれる覚悟を決めてもう一度訊ねるか。

 

 

「幽香さん、あやかしの夜ってどういう事ですか?」

 

「…。」

 

 

ゴミを見る様な目で見られたけどある程度予想してたから精神的ダメージは少なくて済んだよ!

まあ、心が五メートル位抉られたけどな…

 

 

「…偽物の月をあなたが壊したから、異変を起こした奴の術が解けた…

って言えば分かるかしら?」

 

「うーむ…」

 

 

つまり、幻覚を見せられていたって事か?

その幻覚の核を成していたのが月で、それを壊したから『あやかしの』夜が終わった…

…あっ、成る程!

 

 

「即ち、バビディの宇宙船みたいな感じですね!

プイプイ倒したから景色が元に戻った的な!」

 

「…え?」

 

 

俺の言っている事が全く分かっていない幽香さんに背を向け、俺は一人で勝手に興奮する。

だって何かかっこいいじゃないか…素早すぎて姿を捉えられない敵と戦ってるみたいで!

やがて俺は居ても立っても居られなくなり、勢い良く拳を振り上げて叫んだ。

 

 

「黒幕ーっ!!!俺の声が聞こえるかぁーっ!!!」

 

「!?」

 

 

幽香が驚いて固まっているのも気にせず、紀流は引き続き大声をあげる。

その叫びは大きく、力強く、そして自信に満ち満ちていた。

 

 

「お前が仕掛けた術は、俺と幽香さんが『()()()』破ってやったぞ!!!

月を入れ替えるのには相当苦労したんだろうが、その努力も一瞬で塵に帰っちまったなぁ!!!」

 

 

紀流の大声は地上の木々の間をすり抜けていき、森の隅々にまで響いていく。

その木々の間を歩いている彼女達の耳にも、例外なく届いた。

 

 

「ぎゃあ!?

一体全体何なんだぜ、この大声はぁっ!?」

 

「…祠弥よね、この声は…」

 

「どうやら自分のスペルに殺されるのは免れたみたいねぇ、祠弥は。」

 

「…師匠の術が破られた!?

くそっ、想定外だっ!急がないと…」

 

 

その集団が進む足を速めた事など露知らず、紀流は叫び続ける。

 

 

「きっと今、お前はとんでもなく悔しい思いをしてるんだろう!!!

どうにかして俺達二人をギャフンと言わせたいだろうが、お生憎様だったな!!!

俺と幽香さんのチームに敵う奴なんざ、最早この幻想郷に一人たりとも存在しやしないんだよ!!!」

 

「…。」

 

「お前が偉そうにふんぞり返っていられるのも、今の内だけだっ!!!

覚悟しろよ、お前の企みは俺と幽香さん『二人』の手で…」

 

 

ここで紀流は一旦叫ぶのを止め、肺一杯に空気を吸い込む。

二、三秒程の間が空いた後、紀流は口を開いた。

勿論、巨大な声と共に。

 

 

「…木っ端微塵に…打ち砕いてやるぜぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

「っ…!」

 

「ふふん…」

 

 

紀流は口を閉じた後、急に真面目な顔つきになって幽香の方を向く。

 

 

「…。」

 

「?」

 

 

その顔は、まるで今まで大声で叫んでいたのが嘘であるかのように落ち着いていた。

固まってしまった幽香を見て、紀流は首を傾げて訊ねる。

 

 

「…どうしたんですか?

俺の顔に何か…いや、幽香さんの事だから俺の話にどこか気に食わない事でもありました?」

 

「ほぼ全部気に食わなかったのだけれど。

まず、何で勝手に私の名前を使っているわk…いや、今それはどうでもいいわね。」

 

「え、どうでもいいんですか?」

 

「実際はどうでも良くないけど?」

 

 

幽香さんはそう言いつつ、右腕を伸ばして俺の頭を鷲掴みにしようとしてきた。

勿論掴まれたくは無いので、俺は高度を下げてその手を避けつつ、更に質問を重ねる。

 

 

「じゃあ、何が気に食わなかったんですか?

勝手に『俺達』とか『二人』とかいう単語を使ったからですか?それとも…」

 

「…違う違う、そんな下らない事じゃ無いわ…!」

 

 

幽香さんは左手を顔に当てて目を閉じ、呆れ果てて物も言えぬかの様に首を左右に振った。

…というか『下らない』って…今まで俺はその『下らない』事で突かれてたんだぞ…

 

 

「…じゃあ、何なんですか?」

 

「面倒ねぇ…良い?

私達は一応、黒幕の存在を知っているでしょう?」

 

「あ、はい。確か『師匠』って呼ばれている奴でしたよね?」

 

 

…今更そんな分かりきった事訊いてどうすんだ?意味あるのか?

そんな俺の反応を予想していたかの様に、幽香さんは軽く首を振って頷く。

 

 

「ええ、そうよ。

けど、私達は『師匠と呼ばれている奴が黒幕であるかもしれない』という事を知っているだけ。

逆に言えば、それ以外の事は何一つ分かってないのよ。」

 

「そうですね…」

 

「…けど、彼方は多分私の事を知っている。

勿論、あなたの事もね…」

 

「え?何で黒幕が俺の事を知ってるんですか?

だって俺は…」

 

「…何処にでもいる『普通の人間』なのにって?

一体この幻想郷の何処に、異変の黒幕を倒した『転生者』がいるっていうのよ?

しかも二回も。」

 

「…。」

 

 

確かに、幽香さんの言う通りかもしれんな…

妖精だの吸血鬼だの妖怪だの鬼だのと戦って勝ってるんだもんな。

そして更に超サイヤ人だのかめはめ波だのビッグバンアタックだのを撃っているとなれば…

 

 

「…このままでは、『普通の人間』の肩書きを守り通せなくなってしまう…

化け物…いや、悪魔呼ばわりまっしぐらじゃないk…」

 

 

俺が何やかんやと思考を巡らせている間にも、幽香さんは喋り続ける。

 

 

「一部の人間や妖怪の間では、

あなたの正体が『博麗神社の神主』なんじゃないかっていう噂が流れている位だしね。」

 

 

…what?神主?

混乱した俺は思わず声を上ずらせ、敬語も忘れて幽香さんに問う。

 

 

「いや待て、どうしてそうなった!?」

 

「…誰だってそう思うわよ…博麗神社に住んでいて、

毎日博麗の巫女と一緒にお茶飲んで、掃除して、洗濯して、異変を解決するのを見ていればね…

…違うの?」

 

 

…「見ていれば」って何だぁ?

まさか、俺の知らぬ所で幽香さんは神社を訪ねて来ていたというのか…毎日の様に。

存在を全く気づかせなかった幽香さんに俺は感心したが、まず最初に誤解を否定する事にした。

 

 

「違いますよ!何信じちゃってるんですか!?

そんな話一回も霊夢としたことありませんし、俺にもそんな気は全くありませんっ!!」

 

「…将来なってくれって巫女に頼まれたら?」

 

「『なってくれなきゃ死刑』とでも言われない限りは断りますよ?

…まあ、霊夢の事だから言いそうですけど…っていうか話題ずれすぎちゃあいませんか?」

 

 

俺は空中を叩く様にしてつっこみを入れる。

幽香さんは一瞬びくっとしたが、直ぐに真剣な顔になって話を再開した。

 

 

「…えぇ、そうね…話を戻しましょうか。

で、黒幕が私達を知っている事はほぼ確実といって良いわ。

だけど、私達が何処にいて何をしているかは今の今まで分からなかった筈…」

 

 

まあ、そうだろうな。

気を探ったり出来るんならまだしも、所在不明の敵の位置なんて凡ミスでもしないかぎり…

…ちょっと待て。

 

 

「宣戦布告…大声…」

 

 

…あ、何かこんな状況下にぴったりなことわざがあった様な…

 

 

「…『雉も鳴かずば 打たれまい』…」

 

「正解。此方は黒幕の場所なんて見当もつかないのに、黒幕側には此方の位置が把握された。

正に最悪の状況よ。」

 

「…。」

 

 

…終わったな…所詮、俺は馬鹿なのだぁ…

いや、待てよ?例え此方の位置が分かるって言っても、どっちにいるか位しか判断出来ないよな。

部下に『お引き取り下さい』なんて言わせてる黒幕が直々に此方に向かってくる筈も無し…

…よし、閃いたっ!

 

 

「…紀流、こんな状況下にわざわざ自分を置いたのだから、何か良い案があるのは当然よね?」

 

「当たり前ですよ幽香さん!

俺には『飛んで火に入る 夏の虫』作戦がありますから!!」

 

「…は?」

 

「火はさっきの俺の声、そして夏の虫は黒幕の部下ですよ!!」

 

「ねえ紀流、意味不明な事を言うのは止めて、分かりやすく説明してくれない?」

 

「分っかりましたぁ!えーっとですね、まずですね…」

 

 

     ~紀流説明中~

 

 

「…という完璧な作戦です!」

 

 

約五分間に渡った俺の作戦説明の後。

幽香さんは閉じていた目を開き、溜め息混じりに俺の話を纏める。

 

 

「…黒幕が向かわせてくるであろう手下達を待って、

そいつらの話している内容を盗み聞きする…」

 

「その通りです!」

 

 

俺はどや顔でふんぞり返る。

幽香さんは腕を腰に当て、顔をずいっと突きだした後に言った。

 

 

「私が十秒で言える事を五分もかけて説明するあなたもあなただけど、

作戦自体にあまりにも無駄とか欠陥が多すぎない?」

 

「え、そうですか?例えば?」

 

「わざわざ喋るのを待たなくても、

そいつらを捕まえて黒幕の居場所を吐かせて、全部聞いたら消し飛ばせば良いじゃない♪」

 

 

背筋が凍る様な事をさらりと言ってのける幽香さん。怖い。部下達逃げて。

勿論止めます。パートナーの暴走を止めるのは大変重要な事です。

 

 

「流石は幽香さんですね…

けどここは、より安全かつ確実な方法をとる事にしましょうよ。

いつまでも部下達が戻らなかったら、黒幕にも怪しまれるでしょうし。」

 

 

…まさか黒幕がスカウターを持っているとは思わんが、

部下がやられたのを知ってより強力な奴を送り込んでくる可能性もなきにしもあらずだからな…

ま、俺と幽香さんに勝てるとは思えないけど。

 

 

「…ふーん。何も考えていない様に見えて結構考えてるのねぇ、紀流は。

私の性には合わないけど。」

 

「幽香さんの性に合わせてたら幻想郷が滅びますよ…」

 

「私は幻想郷を滅ぼしたりする気は無いわよ?

邪魔な奴は消すけどね♪」

 

「某野菜王子とか某宇宙の帝王とか某究極の人造人間とかを筆頭に、

その考えがモットーの人は大体邪魔な奴ごと星をぶっ壊そうとしますけどね…」

 

「へぇ…そいつら、随分と野蛮じゃない。」

 

「幽香さんも似たようなもんでしょう……ん?」

 

 

ふと地上付近を見下ろすと、白い影が木々の間を走り抜けて空き地に向かっていくのが見えた。

…やっとおいでなすったか…此方も行動開始と行こう!

 

 

「…紀流、どうしたの?首の骨でも折れた?」

 

「幽香さん、直ぐ様地上に降りましょう!」

 

「え!?」

 

 

幽香さんの質問を馬耳東風し、俺は地上の木々に向かって一気に急降下する。

その数秒間の間に、人間二人が身を隠せそうな木を探すのだ。

 

 

「…あれがベストかな?」

 

 

やがて(数秒間だが)、俺は一番手頃そうな木に見当をつけて飛び込む。

音を出さない様に飛び込むのって難しいな…

俺が丁度良さげな枝に体を落ち着けた時、幽香さんも慌てて飛び込んで来た。

 

 

「どうしたのよ、紀流…」

 

「来たんですよ、黒幕の手下らしき人達が!

ほら、あそこに…」

 

「へえ…」

 

 

興味無さげな声を出しながらも幽香さんは目を細め、俺の指差す先を見る。

そこにはおそらく俺の期待している人であろう、兎耳の付いた二人の少女が立っていた。

少女達は辺りの木々を見回しながら、何かを話している。

…だが…

 

 

「全然聞こえねーよ…」

 

 

…成る程、幽香さんの言ってた欠陥ってこう言う事か…

あーあ、もっと近くに来てくれないかな…

 

 

「…どうやら、黒幕は『えいりん』って奴みたいね…」

 

「…!?」

 

 

幽香さんの唐突かつ衝撃的すぎる一言。

俺は思わず大声で突っ込みそうになるが、隠れている事を思い出して気持ちを落ち着ける。

何とか気持ちを落ち着けた後、俺は今一番訊きたい事を幽香さんに問う。

 

 

「…幽香さん、何で黒幕の名前が『えいりん』だって分かったんですか?」

 

「あの二人がそう言っていたからよ?」

 

「え、あの二人の声が聞こえるんですかっ!?」

 

「あなたには聞こえないの?」

 

「…当たり前でしょう…あんなに離れているのに…」

 

 

幽香さんは意外すぎて物も言えぬ様に、両目を大きく見開いて俺を見ている。

…大妖怪の聴覚は、俺なんかとは出来が違うってか…

 

 

「偽物とは言え、月を壊せる程の強力なスペルが撃てるのに…

あの二人が喋っているのが聞こえないなんて、不思議な事もあるものね。」

 

「…パワーとテクニックが常に両立するとは限りませんよ…」

 

「あら、そんな事無いわよ?

精神を統一してみれば、きっとあなたにも聞こえると思うけど。」

 

「…えぇ…」

 

「言っておくけど、もうあの二人が何を喋っているのかは教えないわよ♪」

 

 

幽香さんはそう言いながら、悪戯っ子の様に笑う。

…全く、幽香さんらしいと言うか面倒臭いというか…やるしかないな。

俺は目を瞑り、全神経を出来るだけ耳に集中させる。

 

 

「…うーん…聞こえん…」

 

「目を瞑ってたら意味が無いでしょう、紀流…」

 

「あ、そうか。」

 

 

確かに、対象を捉えなきゃ聞こえる物も聞こえんな…

よし、目を開けて再挑戦だ!

 

 

「ぬぬぬぬぬぬぬぬぬ…」

 

 

両目を限界まで開き、対象の二人を睨みつける。

その状態を暫く保っていると、俺の周りの木の葉が静かに揺れ始めた。

…だが、二人の声は全く聞こえてこない。

 

 

「…全然…聞こえま…せん…けど!?」

 

「力み過ぎ。それじゃあ益々気が散るだけよ。

ほら、もっとリラックスして…」

 

 

幽香さんは俺の両肩に手を置き、軽く揉んでくれた。

…さて、深呼吸もして落ち着いた所で再再チャレンジだぜ!!!

 

 

「少しずつ気を高めるんじゃ駄目なのよ。一気に気を集中させて放たないと♪」

 

「あ、はい…」

 

 

幽香さんに言われるがまま、俺は再び二人に焦点を合わせる。

いつまでもあの二人が喋っているとは思えないからな…早く聞こえる様にしないと…

 

 

「はい、せーので…」

 

 

え、もうやるのか幽香さん!?まだ心の準備が出来て無いんですが!

…こうなったらぶっつけ本番で成功させるしかない!自分を信じろ!!

 

 

「どん♪」

 

「はあっ!!!」

 

 

幽香さんが手を叩くと同時に、俺は目を見開いて例の二人に向けて気を全力で放出する。

すると何故か二人の手前の地面が大爆発し、一瞬にして二人の姿が粉塵の中に消えた。

…え?

 

 

「あら、どうやら失敗しちゃったみたいね♪」

 

 

幽香さんは面白そうに笑っている。

…落ち着くんだ俺。一体何がどうなった!?

えーっと、確か俺は気を一気に高めてあの二人に向かって放っt…

 

 

「…『気合い砲』?」

 

「これでわざわざ盗み聞きしなくても良くなったわね。

さっ、あの二人が来た方向に行ってみましょう、紀流♪」

 

「…まさか幽香さん、最初っから俺にあの二人を吹っ飛ばさせようとしてたんじゃ…?」

 

 

何だろうね、この騙された感は。

自分がやろうとすると絶対に俺が止めるだろうって分かっててわざと俺にやらせたのかな?

まあ幽香さんが楽しそうだから良いか…良くないけど。

 

 

「ほら紀流、早く早く♪」

 

「…せめてあの二人を連れていってあげましょうよ…」

 

 

…幽香さんを出し抜くなんて、俺にはまだ千年早いな…

そんな事を考えて苦笑しながら、俺は目を回している二人の方へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まだ?」

 

「後少しです。」

 

「まだ?」

 

「もう近いです。」

 

「まだぁっ!?」

 

「もう目と鼻の先ですっ!!!

全く、あなたは一応病人扱いなんですから、大人しくしていてくださいよっ!!!」

 

「私は博麗の巫女よ!もう歩くどころか走る事だってできるの!!」

 

「霊夢、少し静かにしてくれよ…私はまだ頭が火照ってるんだから…」

 

 

紀流が気合い砲をぶっ放した頃、森の奥の竹林では変わった一団が歩を進めていた。

大勢の兎耳少女達と、その少女達に囲まれる様にして歩いている者達。

 

 

「ははは、私の熱気をもろに喰らってたわりには元気なもんだねえ。

博麗の巫女ってのはそんなに頑丈なのかい?」

 

「そうねえ…良く言えば『頑丈』だけど、悪く言えば『鈍い』のかしらね…」

 

「紫、何か言った?」

 

「いえ、別に。

この炎さんとちょっと喋っていただけよ♪」

 

「ふん、どうだか…」

 

「この人の言っている事に間違いは無いぞ?」

 

「ますます怪しい…」

 

 

不満たらたらの霊夢と、その様子を笑いながら見ている紫と喋る炎。

 

 

「…っ…」

 

「どうしたの、妖夢?疲れたの~?」

 

「あ、いえ…」

 

「…もしかして、竹が怖いの?

心配しないで良いのよ、私は『本物の』幽々子だから。」

 

「…すみません…」

 

 

少し不安げな顔で歩いている妖夢と、励ます様にその手をぎゅっと握っている幽々子。

 

 

「魔理沙、大丈夫?歩ける?」

 

「大丈夫だ…霊夢が黙ってくれたお陰で大分楽になったぜ…」

 

「…あなたも五月蝿いけど、霊夢も似たようなものね…

声が耳の奥でがんがん響く辺りが。」

 

「私はそんなに五月蝿くしてるつもりは…!」

 

「あー、五月蝿い五月蝿い…」

 

 

呆れ顔で片耳を押さえているアリスと、アリスに肩を支えられている魔理沙。

そして…

 

「お嬢様、今一瞬だけ前方三名の歩列が乱れました。」

 

「…もう突破する事は考えなくて良いわよ、咲夜…

後、早くナイフをしまいなさい。」

 

「承知致しました。」

 

 

周りの兎耳に油断なく目を走らせている咲夜と、それを止める様に促すレミリア。

異変解決の為に森をさまよっていた四チームは今現在、何故か黒幕の部下達と歩いていた。

 

 

「…よし、着いたっ!

全員解散!引き続き、竹林の警備にあたってくれ!」

 

「「「了解しましたーっ!!!」」」

 

 

てゐの指示に従い、兎耳の少女達が分かれ道に入っていく。

最後の一体が見えなくなった後、てゐは霊夢達の方に向き直って口を開いた。

 

 

「ご苦労様でした。ここが私達の最終目的地である『永遠亭(えいえんてい)』です!」

 

「ああ、やっと着いたのね…」

 

 

霊夢は大きなため息をつき、首を動かして奥の方を見る。

そこには二人の門番が守っている古めかしい木の門が建っており、

更にその奥にはまるで平安時代からそのまま持ってきたかの様な日本家屋が建っていた。

 

 

「へぇ~…今回の黒幕は良い所に住んでるのね。

…私の神社何個分ぐらいあるのかしら…」

 

「むっ、聞き捨てなりませんね。

幽々子様がお住まいになっている白玉楼だって負けてはいませんよ!」

 

「…何を張り合ってるんだぜ…」

 

「…さ、さあ、門を解放しますから入って下さい!」

 

 

てゐが目で合図をすると、重々しい音と共に門が開いた。

幽々子に妖夢、魔理沙とアリスは早速門を通り抜けたのだが…

 

 

「私の紅魔館に比べたら、どちらも大した事無いけれどねぇ。

第一、博麗神社と紅魔館を比べないで欲しいわよ。あんなボロ神社…」

 

「ふん、今の神社は鬼に直してもらって新築同様よ!

鬼って言っても、あんたみたいな()()()()()()じゃないけどね!」

 

「…霊夢、誇り高き吸血鬼を侮辱する気?」

 

「あんたの誇りなんて知るもんですかっ!」

 

「「ぐぎぎぎぎぎぎ…」」

 

 

後の二チーム(というよりは霊夢とレミリア)は、まだ門の前でぐずぐずしている。

 

 

「…賑やかな巫女とお嬢さんだねえ。」

 

「恐縮です。」

 

 

霊夢とレミリアは顔を突き合わせ、その場から動こうとしない。

その様子を紫はしばらく眺めていたが、不意に霊夢の足元にスキマを開いて霊夢を落とす。

そして紫は自分の横にスキマを開き、そこに手を突っ込んで霊夢を引っ張り出した。

 

 

「ひゃっ…

いきなり何すんのよ紫っ!!!」

 

「喧嘩ならこの異変が終わった後にいくらでもやって良いわ。

だから、今は前に進みましょう?」

 

「…むっ…分かったわよ。」

 

「霊夢、逃げようって言うn…」

 

「お嬢様、これ以上の挑発は何の意味も持たないと思われますが。」

 

「…。」

 

 

不満げながらも喧嘩をお互いに保留した二人を見て、炎はほっとした声をあげる。

 

 

「どうやら落ち着いたみたいだな。

さっ、着いてきなよ、案内してやるからさ♪」

 

「分かったけど…

いい加減、あんたも顔を見せてくれない?」

 

「顔も分からない奴に案内されるのは、少々不愉快だものね…」

 

「うーん…

おーい、もう顔を見せても良いかー?」

 

「見せても何しても良いから、早くその四人をお連れしろっ!!!

…あぁっ、それは警備にあたっている玉兎達の夜食ですから勝手に食べないで下さいっ!!!」

 

「…オッケーって事だよな、あれ。」

 

「私に訊かれましても返答しかねます。」

 

「じゃ、見せてやるよ…私の真の姿を…

私の素顔を…っ!」

 

「ごたくは良いからさっさと見せなさいっ!!!」

 

「…ノリが悪いな…」

 

 

ため息混じりの声と共に炎の勢いが弱まっていき、遂に中にいた人物が姿を現した。

赤い縁が入っている大きな白いリボンを頭に着けた、腰まで届く程長い白髪を持つ赤眼の少女。

白のカッターシャツに、お札の様な物が貼られたサスペンダーつきの赤いもんぺを履いている。

 

 

「私の名前は『藤原(ふじわらの) 妹紅(もこう)』。

同じ人間同士、これから宜しくな。

勿論そこにいるもう一人の人間も、吸血鬼さんも妖怪さんも宜しく。」

 

 

小さなリボンで纏めてある髪をかきあげ、妹紅は霊夢に握手を求める。

霊夢は一瞬だけ警戒したが、妹紅に敵意が無いのを感じ取って握手に応じた。

 

 

「意外と礼儀正しいじゃない。

私の名前は博麗 霊夢。で、こっちが紫。」

 

「『八雲』紫よ。」

 

「知っていると思うけど、レミリア・スカーレットよ。」

 

「紅魔館のメイド長をしている十六夜 咲夜と申します。」

 

「…メイド長?何だそれ、あの世のトップって事か?」

 

「それでは『冥土』長です。

メイドとは、仕えている主の身の世話をする従者の事ですよ。」

 

「へーぇ、初耳だなぁ…

なぁ、それについてもっと詳しく教えてくれないか?」

 

「…は~や~くっ!!!」

 

 

妹紅がいつまで経っても来ないのをもどかしく思ったのか、門の奥でてゐが叫んだ。

その左手で、門番達の夜食に手を伸ばそうとしている幽々子の袖を掴んでいる。

 

 

「五月蝿いな…はいはーい、今すぐ!!

それじゃあ改めて、永遠亭・見学ツアーと行こうか!」

 

「待ちくたびれたわ…」

 

「やっと、黒幕に会えるのね♪」

 

 

一行が門に向かい、初めの一歩を踏み出すか踏み出さない内に。

…突如、後ろの方で爆発音が響いた。

 

 

「「「「!?」」」」

 

「…何だ、どうしたんだ?」

 

 

妹紅が疑問を声に出した瞬間、第二の爆発音が聞こえてくる。

その音と同時に、兎耳の兵士が息も絶え絶えに飛び込んできた。

 

 

「…も、申し上げますっ!」

 

「何だ!?一体、何があったんだ!?」

 

 

驚き顔で駆け寄ってきたてゐに、兵士はかすれ声を振り絞って報告する。

 

 

「竹林周辺に…大妖怪の『風見 幽香』が現れました…っ!」

 

「ダニィ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ~迷いの竹林 入り口付近~

 

 

「フフフフフフフフ…それっ♪」

 

「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」

 

「…どうしてこうなるんだよ…」

 

 

同時刻。

竹林の周辺では、笑いながらレーザーを連射している大妖怪から逃げまどう兵士達と、

兵士二人を小脇に抱えてがっくりと肩を落としている人間の姿があった。

 

 

 

 

 

―現在の時刻―

 ― 子の四つ ― 0:30 ―




素直な子って扱いやすいよね(幽香さん思考)
さあ、後三・四話だ…遅くとも三月初めには永夜抄編を完結させるつもりです。
感想、意見、アドバイス等々募集中です。
…早く戦闘シーンに入りたい(白目)
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