東方有無録   作:印鑑

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第・六十五話目。前話よりも少々短い。
ゆっくり読んでいってね!


炎と狂気の弾幕〜普通の人間の普通なプライド

ここは、森の奥の竹林の中心に位置する日本屋敷『永遠亭』。

時刻は草木も眠る丑三つ時であるが、永遠亭は上空と地上での戦闘により騒然としていた。

 

 

「たぁっ!」

 

「そらそらっ!」

 

「おっとぉっ!!」

 

 

…オッス!オラ紀流!

今現在、俺は『藤原 妹紅』と『鈴仙・優曇華院・イナバ』って奴と戦い始めた所だ!

炎弾が飛んでくるわ白い銃弾みたいなのが飛んでくるわで全く気が休まらないぜ!

 

 

「随分と息のあった連携じゃないか!」

 

「当然です!私達は本気でやっているんですからね!

ましてやこの勝負は二対一、負けるわけには行きません!!」

 

「さっさと決めさせてもらうぞ!時効『月のいはかさの呪い』!」

 

 

俺に休む暇を与えず、妹紅はスペルを発動する。

その声と同時に妹紅の背から巨大な火柱が立ち上り、それは大きな一対の炎翼となった。

俺は翼から発せられている熱と光に怯み、思わず両目をすぼめる。

 

 

「…まるで、不死鳥だな…」

 

「その表現、当たらずとも遠からずって所だ!喰らえっ!!!」

 

 

妹紅は手を振りかざし、米粒の様な形をした弾幕を回転させながら放ってくる。

俺は後ろに下がりながら弾と弾が離れて密度が薄くなるのを待ったが、

いくら進んでも弾と弾の間のスペースは狭いままであり、とても通り抜けられそうにない。

 

 

「腰が引けてる奴に、私のスペルは避けられないよ!」

 

「フン、誰が腰抜けだって?」

 

 

俺は妹紅の挑発を冷静に返し、

弾幕の軌道を見極めて上下に素早く避けながら妹紅に接近していく。

 

 

「フッ、迂闊に近づくと痛い目見るぞ!はぁっ!!!」

 

 

妹紅は接近してくる俺に気づいて笑みを浮かべ、

翼から赤色と青色をした羽根形弾幕を発射して俺を撃ち落とそうとしてきた。

羽根は真っ直ぐ俺に向かってはこずに、一度横を通り過ぎた後に反転して俺に迫ってくる。

 

 

「…おっと!

…こいつは参った…流石の俺でも後ろに目はついてないからな…

だが避けられないとは言っていない!!!」

 

 

俺は心を落ち着かせ、後ろからの弾幕が放出しているエネルギーを感じ取る。

そしてそのエネルギーの僅かな隙間を安全地帯と判断し、

上下・左右・前後への移動をフル活用して避けていく。

 

 

「フン、結構頑張るじゃないか…

だがお前も知っての通り、此方は『二人』なんだよ!!」

 

「なっ!?」

 

「その通りです!

私のスペルも見せてあげましょう!幻波『赤眼催眠(マインドブローイング)』!!!」

 

 

鈴仙は俺の真上でスペルを宣言し、白い銃弾形の弾幕を使って輪を作り出し投げてきた。

しかも一個だけではなく、複数個同時に作り出して投げてくるのだからたちが悪い。

そこに妹紅のスペルも合わさり、今や地上は月明かりが霞む程の弾幕がひしめき合っている。

 

 

「多すぎるにも程があるだろっ!

少しは遠慮とか言うもんをだn…危なっ!!」

 

「誰が敵に遠慮なんてするもんですか!

さあ、私の目を見て狂うが良い!!!」

 

「え、目が何だっt…」

 

 

俺が言葉を言い終わらない内に、鈴仙は更に複数の輪を投げてきた。

しかし不思議な事に、その輪の軌道は先程に比べて全く変化がない。

 

 

「おい、いくら弾幕の密度が高いって言っても変化の無い技は効かな…」

 

「変化『させる』のはこれからです!!!

『狂気の瞳』!!!」

 

 

鈴仙がそう大声で宣言すると、突如彼女の両目が赤く輝いた。

その光はそこまで強くは無かったが、それでも急に光った為に俺は一瞬だけ目を瞑る。

その一瞬で輪の軌道が横にずれたのを感じ、俺は大きく後退して輪の進行上から離れた。

 

 

「…目眩ましの後に軌道を変えて不意をつく攻撃か…

それにしては、少々目の光が弱すぎやしないかい?」

 

「な…っ!?」

 

 

どうやら鈴仙は避けられると思っていなかった様で、動きが少しだけ鈍った。

この絶好のチャンスを見逃す俺では無い!!

 

 

「輪には輪、というわけで喰らえ殺輪『キルドライバー』!!」

 

 

俺は手と手の間に気を溜め、輪っか状の気弾を形成する。

輪がある程度の大きさになったのを確認すると、

両手を頭上に掲げて直ぐに降り下ろし、気弾を鈴仙に向けて発射した。

 

 

「ぐっ…!」

 

 

鈴仙は俺のスペルを撃ち落とそうと弾幕を撃つが、キルドライバーの前に全て爆散していく。

追い詰められた表情になった鈴仙を見て、俺は思わずほくそ笑む。

 

 

「どうした、早くも一人脱落か?」

 

「何度同じ事を言わせるつもりだ!私達は『二人』なんだ!!!」

 

 

不意に後ろから何かが飛んでくる気配を感じ、俺はくるりとバク転しながら上昇する。

正体は妹紅が翼から発射した無数の羽根形弾幕であり、俺自身が当たるのは避けられたが、

キルドライバーはそれによって軌道をずらされ、目標を大きく逸れて空中で爆発してしまった。

…ったく、妹紅って奴の弾幕は素早さも中々のもんだな…分断を狙ったんだが…

 

 

「…なあ、どういう事だ?

まさかこんな重要な場面において能力の調子が悪いとかじゃ無いよな?」

 

「いや、それは絶対に無いと思います…

彼は目を瞑っていた様ですから、多分それが理由ですよ!」

 

「…ん?」

 

 

二人が小声で何かを喋っているが、良く聞こえないので気にしない事にする。

…あーあ、こんな時にピッコロor幽香さんばりの聴覚があればな…

だが無いものを望んでもしょうがないので、取り敢えず会話を中断させよう!

 

 

「何をこそこそ喋ってんだぁ?

そら、良いもんやるぞっ!散弾『トラップシューター』!!」

 

 

俺は右手に気を溜めて大きく横に振り抜き、緑色の気弾を大量にばらまく。

当然二人は気づき、白い弾幕と羽根形弾幕を同時に放って此方のスペルを相殺してきた。

 

 

「…私があいつの動きを止めてやるから、今度は成功させろよ!」

 

「…分かりました、頼みます!」

 

「行くぞっ!!!」

 

 

妹紅は体に力を込めて背についた炎翼を巨大化させ、そのまま戦闘機の如く突っ込んできた。

あんなに燃えてて熱くないんだろうか…何て愚問はさておき、此方も対抗せねば!

 

 

「暗魂『ダークスピリッツ』!」

 

 

俺は空中であぐらをかき、緑色のバリアを展開して妹紅に真っ向から突進する。

 

 

「おらぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ただ突っ込んでくるだけで勝てると思うなぁぁぁっ!!!」

 

 

叫びながらも俺は集中を高め、気を溜めておく。

そして妹紅がバリアに接触するかしないかの一瞬で気を解放してバリアを拡大させ、

妹紅を斜め上に勢い良く弾き飛ばした。

 

 

「うわっ!?」

 

 

妹紅は大きく体勢を崩し、空中で見事にひっくり返る。

その隙を狙い、俺はバリアを纏ったまま再び妹紅に向かって突進した。

しかし妹紅は俺が思ったよりも早く体勢を立て直し、突進してくる俺を見て口角を上げる。

 

 

「さっきお前が言った言葉、そっくり返してやるよ!

ただ突っ込んでくるだけで勝てると思うな!!不死『火の鳥 -鳳翼天翔-』!!!」

 

 

妹紅はスペルを宣言すると、自分自身を燃え盛る炎で包み込んで大きな火炎の球となる。

そして妹紅はその球の中で気を高め、翼を広げると同時に数発の炎弾を撃ち出した。

 

 

「…さっきまでは涼しかったのに、

今や陽炎が出来てるよ…あっつ…」

 

 

俺が呑気にぼやいていると、真っ直ぐ飛んできていた炎弾が急上昇し、拡散する。

炎弾はある程度飛んだ所で急に形を変え、勇ましい火の鳥となって俺に襲いかかってきた。

俺は一瞬見とれたが、直ぐ様頭を振って頭から雑念を振り払う。

 

 

「火の鳥ってのは伊達じゃないみたいだな…ふんっ!」

 

 

回避よりも相殺を選んだ俺は気を高めてバリアをより強固にし、火の鳥達に突っ込んでいく。

一羽一羽にぶつかって消していく度に、凄まじい熱がバリアを通り抜けて体に直撃する。

…バリア越しの熱だけでゆで上がりそうだ…

 

 

「…くっそ…!

だが、これでラストだ!!」

 

 

最後の一羽を通り抜けると同時に、俺のバリアに大きなヒビが入った。

流石にこれ以上は持ちそうに無いので、俺は直ぐ様バリアを解除して辺りを見回す。

妹紅が変化した炎の球は、まだ先程の場所に変わらず浮いていた。

 

 

「宇撃『ビッグバンアタック』!!!」

 

 

動かない炎の球を狙って俺はスペルを発動し、素早く青い気弾を右手に形成して撃ち出す。

気弾は半径一メートルまで妹紅に接近したが、突然の横からの弾幕に当たって爆発してしまった。

俺は驚いたが、そのわけを考えて直ぐに納得する。

 

 

「…そうか、そちらは二人がかりだったな…

だけど今の距離なら爆風のダメージもある程度あるだろうし、まあ良いか…」

 

「…今度こそ…っ!」

 

 

不意に、俺の目の前に鈴仙が飛び出てきた。

俺が咄嗟にそちらを向くと、既に此方を睨み付けていたであろう鈴仙と目が合った。

その目は先程と同じく、優しい月明かりに反して赤く光り輝いている。

 

 

「今度こそ、あなたは避けられない!短視『超短脳波(エックスウェイブ)』!!」

 

 

鈴仙はスペルを宣言すると、眉間に指を当てて力を込める。

溢れだした力はピンク色の稲妻となって空中を走り、瞬く間に俺に迫った。

 

 

「うおっ!?」

 

 

稲妻は俺の眉間にクリーンヒットし、俺は思わずガクンと後ろに仰け反る。

…急な仰け反りは腰と首に悪いよ…

 

 

「…いって…え?」

 

「もらったぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

俺が顔を持ち上げて前を見ると、鈴仙が左足を後ろに引きながら突っ込んでくる所だった。

いや待て、何でこの状況下でわざわざ蹴りを!?弾幕かスペル撃った方が良い気がするんだが…

…何だか良く分からんが、判断ミスで俺にダメージは入らんぞ!!!

 

 

「…。」

 

 

俺は気持ちを落ち着かせて鈴仙の蹴りを左手で受け止め、足を腕の上で滑らせて衝撃を受け流す。

そして更にその足を掴んで左に引きつつ、自由な右手で無防備な脇腹に張り手を叩き込んだ。

 

 

「がは…っ…!?」

 

「わっ…と!」

 

 

脇腹に凄まじい衝撃を喰らった鈴仙はたまらず横向きに吹っ飛び、

ちょうどその方向にいた妹紅に受け止められる。

 

 

「大丈夫か?あばら骨が折れたりしてないか?」

 

「はい、何とか…つっ…」

 

 

鈴仙は脇腹を押さえながらも、何とか体勢を立て直した。

その様子を見て妹紅は少し不安ながらも、取り敢えずほっとした表情を浮かべた。

 

 

「ま、動ければ問題ないな。」

 

「その通りです…

しかし、困りましたね…どうやらあの紀流という少年は、私の目を見ても狂わない様です。」

 

「え、本当か!?」

 

「はい。先程の攻撃時に確信しました。

明らかに目が合い、更にスペルも眉間に直撃していた。その筈なのに…」

 

「…あいつは狂うどころか見事に反撃してきた。

そこまできたら、流石に『狂わない』と認めざるを得ないな…。」

 

 

妹紅はそう呟き、紀流の方を盗み見る。

紀流は先程の仰け反りが余程堪えた様で、左右に首を曲げて音を鳴らしていた。

 

 

「…けど、ダメージは受けてるみたいだぞ。

私達は二人なんだから、ずっと攻め続けていれば勝てるって!!」

 

「はい!

…ところで、さっきの爆発のダメージは…」

 

「ん?ああ、大した傷は負って無いから気にするな。

あの程度なら私の能力を使うまでも無いさ。」

 

「そうですか…っ!」

 

 

鈴仙は突然右腕を横に伸ばすと、指先から白い銃弾形弾幕を放った。

弾幕が飛んでいく方向には一つの気弾が浮かんでおり、鈴仙の弾幕はこれを相殺した。

爆発した気弾の先に見えたのは、どこかつまらなそうな顔をした人間の顔。

 

 

「お二人さん、今は戦闘中なんだぞ…

作戦会議ってもんは、普通戦う前に済ませておく物だろ?」

 

「ああ、悪い悪い。

お前みたいな隙だらけの奴が相手なら、戦闘中に作戦会議しても大丈夫そうだったからな。」

 

「え、妹紅さん!?何言って…」

 

「…ハッ…」

 

 

紀流は妹紅の自分に対する挑戦とも言える言葉を嘲笑し、呆れ顔で口を開く。

 

 

「隙だらけ、ねぇ…

確かにそうみえるのかもしれないし、実際そうなのかもしれない。

…じゃあ、何で君らは攻めて来ないんだい?」

 

「え…?」

 

「だって、俺は君達から見たら『隙だらけ』なんだろ?

攻撃するには絶好の相手じゃないか。」

 

「…物言いに気をつけろ。

私達が今まで攻撃していなかったとでも言いたいのか!?」

 

 

妹紅は紀流の言葉に憤り、背の炎翼を一層強く燃え上がらせる。

しかし、紀流は至って冷静そのものだった。

 

 

「無論、そうじゃ無いさ。

俺が言いたいのは『何故こんなにも隙だらけの俺を攻撃してこないのか』って事。

今俺は、君の話を集中して聞いている。その隙に…鈴仙さんが攻撃してきても文句は言えない。

油断してた俺が悪いんだからね。」

 

「…あなた、一体何を…」

 

 

鈴仙は首を傾げるが、妹紅は紀流の言葉に込められている皮肉を理解して拳を握り締めた。

その間にも、紀流は声のトーンを変えずに淡々と喋り続ける。

 

 

「ま、敵である俺が目の前にいるって言うのに喋ってる君達も十分隙だらけだけど。

今攻撃したのだって、隙を狙ったのさ。」

 

「…何だよ…なんだってんだよ!?

お前が私達を馬鹿にしているのは分かった!けどそんなの、お前だって同じだろ!?

隙を狙って攻撃したんなら、何でもっと本気で攻撃して来なかったんd…」

 

 

妹紅が怒りに任せ、乱暴な言葉を紀流にぶつけた瞬間。

 

 

「は?君が言えた事じゃ無いだろう?」

 

「「っ!?」」

 

 

紀流から発せられている気が、一気に怒りを含む物へと変わった。

顔こそ平静だが、その目の奥では先程までの彼とは違う『紀流』が此方を睨んでいる。

そして、声にも彼の感情がそのまま込められていた。

 

 

「何をぽっかーんとしてるんだい?

君達が真面目に戦っていない事に、俺が気づいてないと思った?

いや、真面目というよりは『俺を退けるつもりで』かな…」

 

「な、何を…私達は、師匠の妨げにならない様に…」

 

「俺が不満なのはそこだ。

君達が戦ってる目的は『俺を倒す為』じゃない。

あくまでも『師匠の妨げになる奴を足止めする為』でしょう?」

 

「何わけの分からない事を言ってんだ!

それが私達にとって『当然』の事なんだよ!」

 

「だったら何でもっと本気で俺を足止めしようとしないわけ?

はっきり言わせてもらうけど、今までの攻撃なんかじゃ到底俺の事は倒せないよ?」

 

「な…何だと!?

お前、私達の攻撃が弱かったとでm…」

 

「だって俺を倒そうとして無いからね。

せいぜい追っ払おう程度にしか考えて無いんでしょ?

一応言っておくけどさぁ…」

 

 

紀流はそう言うと、急に妹紅と鈴仙の方に突っ込んでいく。

咄嗟に二人は防御の構えをとり、迫り来る紀流の攻撃にそなえるが。

 

 

「…その気になれば、いつだって後ろに回り込めたんだよ?

 

 

 

 

 

…こんな風に。」

 

 

次に紀流の声が聞こえてきたのは、二人の後ろからだった。

 

 

「なっ!?」

 

 

妹紅が振り向いて目にしたのは、自分と鈴仙の丁度首筋に当たる場所に手を構えている紀流の姿。

そこから後一センチ降り下ろせば首筋に当たるという所に、紀流は平静な顔で手を構えていた。

 

 

「え?え?あの人間はどこに…ってうわぁっ!?」

 

 

妹紅よりも少し遅れて鈴仙は振り向き、見事に紀流と目が合って危うくひっくり返りかける。

二人が振り向いたのを確認すると、紀流は腕を組んで少し後ろに下がった。

 

 

「今のを当てていれば、まず間違いなく『隙だらけ』だった君達は倒れていただろうね。」

 

「…じゃあ、何で当てなかったんだ?」

 

「不意討ちで勝利するのはあんまり好きじゃないんだよ。ほぼ卑怯者扱いされるから…

現に今だって俺が攻撃してたら、君達はそう思っただろう?」

 

「…。」

 

「話を戻すけど、俺は君達に『俺を倒すつもりで』戦ってほしいんだ。

自分を舐めきっている相手に本気を出させないまま倒すのは嫌だし、後味が良くない。

そして何よりも、俺のプライドが許さない。」

 

「お前の…プライド?」

 

「自分と戦う相手には『本気』で戦ってもらいたい、って事さ。身勝手この上ないけどね。

君だってそう思うだろ、『藤原 妹紅』?」

 

「…。」

 

 

紀流はここで妹紅の様子を伺う様に、一旦言葉を切る。

妹紅は顔を下に向けて暫く押し黙っていたが、急に顔を上げて笑い始めた。

 

 

「…ふ…ははは…あはは…あーっはっはっはっはっは!!!

全くもってその通り!お前の言っている事は実に正しい事だ!!

私だって、手加減してる奴なんかに勝ったってこれっぽっちも嬉しくないからな!!!」

 

「ちょっと、妹紅さん!?」

 

「全く、大した奴だよお前は…

私達二人に臆するどころか、文句を言ってくるなんてな!」

 

「あ…」

 

 

妹紅が楽しそうにそう言ったのを聞き、鈴仙はようやく気づいた。

今自分達が戦っている者は、決して『風見 幽香』の付属品では無いのだと。

 

 

「良いだろう、分かった…

ここからは私達も『本気』で行く!」

 

「その言葉を待ってましたよ…はぁっ!!!」

 

 

紀流は腕組みを解き、腕を後ろに下げると同時に気を高めて解放する。

それと同時に彼の髪の毛は逆立ち、瞬時に青色に染まった。

妹紅は紀流の変化を見て、思わず目を見開いて感心する。

 

 

「…驚いたね。

お前、気が高まると髪の毛の色が変わるのかい?」

 

「合ってると言えば合ってるかな。これは『超サイヤ人』だよ。

一応さっきよりは強いから、油断しない方が良いよ?」

 

「…は?超野菜人だって?」

 

「超『サイヤ』人ですよ、妹紅さん。」

 

「そ、そうか…超サイヤ人か…

うーむ、何かしっくり来ないな…ま、良いか。」

 

 

妹紅は二言三言呟いた後、顔を引き締めて紀流の方に向き直る。

鈴仙も妹紅の動きに合わせ、紀流の方を向く。

暫しの沈黙が場を支配した後、最初に鈴仙、次に妹紅が口を開いた。

 

 

「私の瞳を見ても、あなたは狂わない。

それは、私の強みが封じられた事を意味しています。

ですが、封じられたのはあくまでも私の『狂気』。狂気そのものが封じられたわけではない。

正気の世界にも狂気は潜む…あなたは私達が織り成す弾幕を見て、狂わずにいられますか?」

 

「お前は自分のプライドを守る為に、戦う相手が強くある事を願う。

その考えには同調するが、お前が言うのと私が言うのとじゃ言葉の重みが全く違うのさ。

お前の人生は一度だけ、死んだらそこでゲームオーバー。

最早どちらも後には退けない、どうなるか分からない一方通行の戦い。

私はお前の望み通り…プライドを尊重して、全身全霊、この身を燃やし尽くして戦ってやる!」

 

 

二人が気を高めていく間、紀流は密かにため息をついていた。

 

 

「…狂ってゲームオーバーする前に、ダブルKOする…か。

何て分かりやすくて大変なクリア方法なんだ…」

 

 

紀流のため息が終わるのをスタートとして、再びゲームは再開された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…。」

 

 

障子から漏れてくる月明かりの他には、何一つ明かりが無いとある一室。

そこには正座で座り、退屈そうな顔をしながら障子に映る薄の影を眺めている人物がいた。

不意に、後ろで襖が床を滑る音がし、部屋の中に誰かが入ってくる。

 

 

「…姫様、就寝の準備が整いました。どうぞこちらへ…」

 

「…貴方は誰?私の話し相手?」

 

 

『姫様』と呼ばれた人物は、入ってきた少女の姿を見て首を傾げる。

 

 

「因幡 ていと申します。

今宵師匠より、姫様をお守りする役目を承りました。」

 

「師匠…あぁ、永琳の事ね。

ふふ、鈴仙に呼ばれる時はいつもこそばゆそうな顔をしてるのに…」

 

「…姫様?」

 

 

喋っている間に何かを思い出したのか、『姫様』は袖で口を押さえてくすくすと笑う。

ていがその笑いについて何も聞けない内に、『姫様』はすっくと立ち上がった。

 

 

「分かったわ、貴方に案内してもらうわよ。

但し、寝室へでは無くて…」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お客様の元へ、ね。」

 

 

ー現在の時刻ー

 ー 丑三つ時 ー 2:00 ー




…時刻からもお分かりいただける様に、もうちっとだけ続きます。
紀流の超サイヤ人時の髪型は、超サイヤ人のブロリーと同じ髪型となっております。
紀流の髪型は悟空だろと思うかもしれませんが、一応設定上ブロリー+悟空の髪型なんです。
後ろの髪も長いんです。だからフランに女だと勘違いされt(ry
次回は永琳vs幽香。天才対天災(殴)
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