東方有無録   作:印鑑

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第六十六話目、ぞろ目回(どうでもいい)
ゆっくり読んでいってね!


幻花vs黒幕隊〜遂に登場、異変の『元凶』

『夜が明けぬ異変』に包まれた幻想郷。

今現在、永遠亭・地上付近では二対一の戦いが繰り広げられていた。

そして上空でもその戦いと同程度、いやそれ以上に激しいかもしれない戦いが行われている。

 

 

「そーれっ♪」

 

 

戦っているのは、幻花の超人チームの一員『風見 幽香』と…

 

 

「せやっ!」

 

 

今回の異変の黒幕(であろう)の『八意 永琳』である。

永琳は赤と青の弾幕を大量にばらまいた後に矢尻に毒のついた矢をつがえ、

先程自分が撃った弾幕を避けている幽香を狙い、次々と目にも留まらぬ速さの矢を射っていく。

 

 

「♪」

 

 

勿論幽香も負けてはおらず、右手に持った傘を勢いよく振るいながらレーザーを放ち、

自分に迫り来る無数の矢を弾幕と一緒に纏めて吹き飛ばした。

 

 

「ぐっ!」

 

 

レーザーはそのまま永琳の元へと飛んでいき、永琳はこれをギリギリで回避する。

飛んでいくレーザーから目を離して幽香に向き直った永琳の前には、既に幽香が迫っていた。

 

 

「いくらハンデをあげたからって、少し余裕を噛ましすぎなんじゃない?」

 

「…いつの間に…天丸『壺中の天地』!」

 

 

永琳はスペルを宣言すると同時に後退し、幽香と十メートル程距離をとる。

幽香は一瞬首を傾げるが、直ぐに傘を構えて照準を合わせ、先端にエネルギーを溜め始めた。

 

 

「距離をとった所で、当たれば同じよ♪それっ!」

 

 

掛け声と共に、幽香は強力なレーザーを放つ。

しかし、レーザーは数メートルも飛ばない内に突如現れた弾幕の壁によって相殺されてしまった。

壁は幽香を取り囲む様に左右に広がっていき、やがて両端は幽香の背後で合体する。

レーザーとの接触で空いた穴は直ぐに塞がり、幽香は外の様子が全く分からない状態に陥った。

 

 

「…。」

 

 

幽香は弾幕の壁を眺め回し、不意に体を横にずらす。

コンマ数秒後には今まで幽香がいた場所を四方八方から飛んできた矢が通り過ぎていった。

幽香は暫くその場で佇んでいたが、直ぐにその地点にも矢が迫ってくる。

 

 

「…ああ、もうっ…」

 

 

幽香は面倒臭げな顔をしながら、軽く体を動かして矢を紙一重で避けていく。

矢は幽香に一本も当たらずに壁に当たって消えたが、

通り過ぎていく際に発生する衝撃波によって幽香の服に無数の切れ目が入った。

 

 

「…ちっ…それっ!!」

 

 

幽香はいらいら顔で傘を開いて構えた後、

そのまま弾幕に突進して壁を突き破り、永琳のスペルの範囲外へと脱出する。

 

 

「もう脱出されたか…ならばっ!」

 

「そんな速いだけの攻撃が利くと思うわけ?」

 

 

永琳は壁から出てきた幽香を狙い、矢を連続で射ち出して攻撃する。

それを見た幽香は傘を開いたままくるくると回し、矢を後方にいなしながら永琳に迫っていく。

 

 

「いくら迫ってきても無駄よ!」

 

 

永琳は再び後退して幽香を取り囲む様に弾幕の壁を発生させ、幽香を狙おうと矢をつがえるが…

 

 

「…いない…っ!?」

 

 

壁の中には、矢で射抜くべき対象がどこにもいなかった。

 

 

「はい、残念でした♪」

 

「っ!?」

 

 

永琳が上を向くと、右手のひらを自分に向けて今にも弾幕を撃とうとしている幽香がいた。

咄嗟に永琳も右手を突き出し、幽香が放ってきた光弾に向けて赤色の弾幕を連続して発射する。

 

 

「それそれそれそれそれそれっ!」

 

「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

両者は弾幕を撃ちつつ、次第に後ろへと後退していく。

ある程度まで距離が離れたのを確認すると、両者は同時に勢いよく後ろに飛び、

幽香は傘を構え、永琳は矢をつがえ、そして同時に相手に放つ。

 

 

「…。」

 

「…。」

 

 

矢とレーザーは互いに接触する事無く突き進み、双方に襲いかかる。

永琳は右手を素早く振り抜き、幽香の放ったレーザーを後方に弾き飛ばす。

一方の幽香は矢の軌道から体をずらし、矢が自身の横を通り過ぎていく所を捕らえて握り潰した。

 

 

「黒幕のわりには、戦法は単純な物ねぇ…」

 

 

幽香の退屈そうな声に対し、永琳は幽香の顔に焦点を合わせた後に言葉を返す。

 

 

「『ヒット&アウェイ』の事?

けど貴方はその『単純な作戦』に苦戦しているのよ?」

 

「…苦戦…ね…

貴方にそう見えるのなら、そう言う事で良いんじゃない?」

 

「月の頭脳と呼ばれている私が、今の戦況を把握出来ないと思っているの?

お次はこれよ!神符『天人の系譜』!!」

 

 

永琳はスペルを宣言した後、両手の指の間一つ一つに試験管の様な瓶を挟み、

両腕をクロスさせて直ぐに戻すと同時に瓶を全て前方に放る。

自身に向かって飛んでくる瓶を見て、幽香は永琳と瓶を見比べながら首を傾げた。

 

 

「あら、また爆発させるの?」

 

「…。」

 

 

永琳は幽香の質問を聞き流し、一気に五本もの矢を弓につがえて照準を合わせ、弦を引いて放つ。

 

 

「そのまま私を狙って射つわけ?

こんなに多く瓶を投げておいて、結局はただの撹乱用だったのかしら?」

 

「…ふっ…」

 

 

幽香の言葉を聞き、永琳は小さく微笑む。

何故なら、今回彼女が狙った標的は幽香ではなく…

 

 

「…何の考えも無く、瓶を撒き散らすと思う?」

 

「え?」

 

 

幽香の前方数メートル付近にあった、彼女自身が放った瓶の内の五本であったからだ。

矢は見事に五本同時に瓶に命中、瓶は割れて赤い光球へと変化し二方向にレーザーを放出する。

 

 

「な…」

 

 

幽香が驚いている間にもレーザーは別の瓶を捉え、その瓶も光球となってレーザーを撃ち出す。

瓶にレーザーがヒット→光球に変化→二本のレーザー発射という一連の流れは連鎖的に続き、

あっという間に幽香は網目状になったレーザーに取り囲まれてしまった。

 

 

「…さぁ、今度はどう避けるのかしら?」

 

 

永琳はそう呟き、幽香に向かって青い米粒形弾幕を撃ち始める。

 

 

「…くっ…」

 

 

幽香はレーザーの網目を通り抜けつつ、米粒弾幕を避けていく。

たまに米粒弾幕が止んだ隙を狙い、幽香は傘を構えてレーザーを撃とうとする。

だが永琳はその度に新しく瓶を放って矢で射ち抜き、例のレーザーを連鎖的に発生させてくる為、

幽香の照準はずれてしまい、レーザーは当たらない。

 

 

「…大妖怪と言っても、所詮はこんな物か…」

 

 

永琳は幽香を見てつまらなそうに呟き、再び数本の瓶を指の間に挟んで放り投げる。

そして先程と同じ様に瓶を射ち抜こうと矢をつがえたが…

 

 

「それっ!」

 

 

それよりも早く、幽香は瓶に照準を合わせてレーザーを撃っていた。

 

 

「なっ!?」

 

 

レーザーはまだ拡散していない無数の瓶に直撃し、瓶は滅茶苦茶にレーザーを放って爆発する。

 

 

「くうっ…!」

 

 

永琳は弓矢を構えていた為防御が出来ず、爆発の衝撃とレーザーをまともに喰らって吹き飛ぶ。

当然、幽香がそんな無防備な状態の永琳を見逃す筈もない。

 

 

「…ふんっ!」

 

 

幽香は気を高めて瞬間移動のごときスピードで永琳へと追いつき、拳を腹に叩き込む。

 

 

「ぐはっ…!」

 

「あはは…♪」

 

 

永琳が苦しげな声をあげるのを聞き、幽香は思わず笑う。

その笑みと共に幽香は拳を永琳ごと突き上げて彼女を宙に浮かせて自分の体を後ろに倒し、

両足を曲げた状態で永琳の体に靴底を近づけ、触れたと同時に足を伸ばして永琳を蹴り上げる。

 

 

「…っ…!!!」

 

 

声もあげることが出来ずに吹き飛ばされた永琳。

幽香は笑みを顔一杯に広げ、先程を超えるスピードで動いて自分が飛ばした永琳を追い抜く。

そして飛んでくる永琳の頭に右手を向け…

 

 

「さっさとくたばりなさい♪」

 

 

その手を光らせ、凄まじい空色のレーザーを放った。

レーザーは永琳を呑み込み、そのまま彼女を地面に叩きつけようとするが。

 

 

「…だあっ!!!」

 

 

間一髪、地表まで残り数メートルに迫った所で永琳は意識を取り戻し、

両手でレーザーを目一杯押し返して手元で爆発させるという荒業を披露、何とか激突を免れた。

幽香は爆発で発生した爆風を受け流しながら、意外そうな表情を浮かべながら口を開く。

 

 

「…腐っても黒幕、ね。

だけど流石のあなたも、今ので随分と体力を消耗したんじゃない?」

 

 

そう言いながら、幽香は煙の中にいる永琳を見下ろす。

見下ろされた永琳の衣服は目に見えて損傷しており、顔にも複数の切り傷が出来ている。

幽香が体力を消耗していると考えたのも無理はないのだが、当の本人は疲労の色すら見せず、

軽く肩の埃を払った後に幽香を毅然とした目付きで睨み付け、こう言い返した。

 

 

「それはお互い様でしょう?

貴方だって、左腕が飛んでもない有り様になってるじゃないの。

貴方の左腕はあっちこっちに揺れていたから、弾幕がかすり続けてそうなったんでしょうね。

もしも戦闘中じゃなかったら、私が直ぐにでも応急措置を施してあげたい所よ…」

 

「左腕?」

 

 

永琳に指摘され、幽香は自分の左腕を見下ろす。

そこには無残にも袖ごと皮膚を切り裂かれて血塗れになった、左腕だったものがあった。

普通の人間、いや妖怪ならまず間違い無く失神するだろうが…

 

 

「…これがどうかしたの?」

 

 

幽香はあっさりと左腕から目を反らし、再び永琳を見下ろす。

それを見た永琳は内心で酷く驚くが、それを顔に出さない様にして考えを巡らせる。

 

 

「…あれだけの傷を気にも留めていないって事は、恐らく左腕は麻痺している…

それは即ち、ゆっくりだけど確実に毒は回っているという事。

毒の巡りが遅いのは毒を吸い出されたからなのか、それとも彼女自身に異常な耐性があるのか…

まあ、どちらにせよ…」

 

 

そこまで考えた所で永琳は思考を中断し、急上昇して幽香と同じ高度に到達した。

にやっと笑って傘を構えた幽香に対し、永琳は病状を告げる医者の様に淡々と喋る。

 

 

「私の考えが正しければ、貴方は後一時間もすれば全身が麻痺して動けなくなる。

一時間後に無様な姿を晒したくなかったら、今の内に降参しておいた方が賢明よ?」

 

「…降参?それはあなたがするべきなんじゃない?」

 

「何故、そう思うの?」

 

 

永琳の質問に答える様に、幽香は右手で血塗れになった左腕を掴んで前方に掲げる。

 

 

「最初に言ったでしょ?この左腕はあなたにあげた『ハンデ』だって。

動かなくたって良いのよ、どうせ動いたって使わないんだから♪」

 

 

幽香はそうとだけ言うと、掴んでいた左腕を放す。

その余裕の態度を見て永琳は少し苛つき、語尾を強めて警告した。

 

 

「忠告しておくけど、私に同じ攻撃は二度と通用しない。

それに一時間も粘らなくても…」

 

「『…私は貴方を倒せる』ってとこかしら?

その言葉、そっくりそのまま返してあげるわよ♪」

 

「…ふん、そんな口を叩いた事を直ぐに後悔させてあげるわ!

蘇生『ライジングゲーム』!!!」

 

 

永琳はスペルを発動すると、右手を勢いよく幽香に向かって振りかざした。

その動作と同時に幽香の近くに青い球状弾幕が発生し、彼女の周りを取り囲む。

周りの弾幕を軽く見渡した後、幽香は口を開いた。

 

 

「始める前に、私からも一つ言わせて。

くれぐれも、無駄な攻撃で体力を減らしてつまらない戦いだけにはしないでね?」

 

「分かっているわよっ!!!」

 

「どうだか…♪」

 

 

幽香は小さく微笑み、傘を永琳に向けて構える。

その先端が光輝くのと、永琳が赤い大玉弾幕を撃ち始めたのはほぼ同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだかしらねえ、お客様がいる客室は…」

 

 

永遠亭内部に延びている、襖に囲まれた長い長い廊下。

無限に続いているかの様なその廊下を、『姫様』とてゐはゆっくりと歩いていた。

姫様がぼそっと呟いた言葉に反応し、てゐは少し困った顔で口を開く。

 

 

「…あの、姫様。

客人は客室にはいませんよ?」

 

「え?じゃあどこにいるの?」

 

「今現在、永遠亭の裏庭で師匠達と交戦中です。

ですからここはひとまず安全な所に…っ!」

 

 

てゐは何かに気づき、手を横に振って姫様の歩みを止めた。

姫様はびっくりした表情で止まり、同時にてゐに問いかける。

 

 

「…どうしたの?」

 

「…ここから先には、師匠が仕掛けた侵入者足止め用の罠があるんですよ。

危ない危ない、うっかり入る所だった…」

 

「成る程ね。」

 

「さあ、引き返しましょう…」

 

 

てゐは胸を撫で下ろした後に後ろを向き、姫様を連れて引き返そうとする。

しかし姫様は引き返そうとせず、暫くその廊下を見つめた後にてゐの方を向いて微笑んだ。

彼女が笑った理由が分からずにてゐが首を傾げていると…

 

 

「ここまで案内してくれてありがとう、てゐ。

ここから先は、私一人で行くわ。」

 

「え!?ちょっとお待ち下さい姫様…」

 

 

てゐへの唐突なお礼の言葉と共に、姫様の姿は掻き消えた。

てゐは数秒間その場に棒立ちになっていたが、やがて気を取り直して辺りを見回す。

最も、頭の中は激しく混乱していたが。

 

 

「え…えぇっ!?どうなってるんだ!?

とにかく、こんな所で馬鹿みたいに突っ立ってる場合じゃない!」

 

 

何が何だか分からぬまま、てゐは元来た廊下を引き返す。

もしかしたら、姫様はさっきまでいた部屋に戻っているかもしれないからだ。

…あくまでも『願望』であるが。

 

 

「…まあ、有り得ないだろうけどな…」

 

 

そう言って、てゐは走りながら大きなため息をついた。

そしててゐが引き返した廊下の奥でも、紫が何かを感じ取っていた。

 

 

「…ん?今の感じは…」

 

「どうしたの、紫~?」

 

「いや、誰かが通り過ぎていった気が…幽々子は何か感じなかった?」

 

「うーん…別に何も感じなかったけれど…

紫もやっぱり疲れてるんじゃないの?見張りは私に任せて、少し休んだら~?」

 

「そうね…そうさせてもらおうかしら…」

 

 

紫はそう言いつつも、今の違和感について思考を巡らせる。

 

 

「…幽々子はああ言っているけど、恐らく何者かが通り過ぎていったに違いない…

空間操作されたこの廊下を『通り過ぎる』事が出来るという事は、

恐らくこれを仕掛けたであろう『八意 永琳』と同等、もしくはそれ以上の力の持ち主…

という事は…」

 

「…紫?」

 

 

幽々子が不思議そうな顔をする横で紫は座って寝ている霊夢の方に歩み寄り、肩を揺さぶる。

 

 

「霊夢、起きなさい!」

 

「…むー…何よ紫…休めって言ったのはあんたでしょ…」

 

「本寝入りして良いとは言ってないわ。

面白くなってきそうだから、そろそろ私達もここから抜け出して先に進むわよ!」

 

「その言葉を待ってたぜっ!!!」

 

「ひゃあぁっ!?」

 

 

霊夢が起き上がるよりも先に魔理沙は跳ね起き、待ってましたとばかりに傍らの箒を掴む。

魔理沙に寄りかかって寝ていたアリスはびっくり仰天するが、直ぐ様状況を理解して暗い顔をした。

 

 

「…えぇ…もう出発するの?」

 

「…一応言っておくが、私じゃ無くて紫が言い始めた事だからな?」

 

「…だったらしょうがないわね…

ここに一人で取り残されるのも嫌だし。」

 

「アリス…」

 

 

魔理沙は怪訝な顔をしつつも、手を伸ばしてアリスが立ち上がるのを助ける。

魔理沙の大声に反応し(現実に引き戻され)、残りのメンバーも目を開け始めた。

 

 

「…ったく…五月蝿い人間ね…

咲夜、あなたもいつまでも寝てないで目を開けなさい。」

 

「承知致しました。」

 

「妖夢~、朝よ~。」

 

「…ほえぇっ!?寝過ごしたぁ…って幽々子様…

驚かさないで下さいよ…」

 

 

霊夢以外の全員が立ち上がったのを確認すると紫は何も無い空間に向かって腕を振り、

人一人が易々通れる大きさのスキマを開いて皆に入る様に促した。

 

 

「さっ、心の準備が出来た人から入りなさい♪」

 

「…よし、霊夢はまだ寝ている…

私が一番乗りだz「魔理沙、お先に~。」おいこら待てっ!」

 

 

魔理沙の脇を通り抜けてまず霊夢がスキマに入り、その後に出し抜かれた魔理沙が続く。

その後を追い、アリス→レミリア→咲夜→妖夢→幽々子の順で続いていった。

 

 

「さて、これで全員ね。

じゃ、しゅっぱーつ♪」

 

 

最後に紫は自分以外の全員が入った事を確認すると、自らもスキマに入って入り口を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何だったんだ、今の違和感は…」

 

「何ぼけっとしてるんだよ!

藤原『滅罪寺院傷』!」

 

「此方は本気だと言うのに、舐められたものですね!

狂視『狂視調律(イリュージョンシーカー)』!!」

 

 

少女二人はスペルを同時に発動し、

一方が赤色・青色の御札型の交差弾幕、もう一方が白い銃弾型の交差弾幕を放って攻撃する。

二人の弾幕のターゲットとなった青髪の少年は、自分に迫ってくる膨大な量の弾幕を見て一言。

 

 

「同時にスペルカードはきつい…あぶねっ!」

 

 

永遠亭の裏、幽香と永琳が戦っている場所より地上に近い空間。

そこでは本気を出した『藤原 妹紅』と『鈴仙・優曇華院・イナバ』の二人と、

超サイヤ人となった普通の人間『紀流 祠弥』がぶつかり合っていた。

 

 

「おっ…とっ…とぉっ!」

 

 

紀流は自身に迫りくる同時スペルにも怯まず、

超サイヤ人化によるパワーアップを生かして先程よりも更に機敏な動きで上下左右に飛び回り、

凄まじい密度の弾幕を見事に避けていく。

 

 

「…驚きましたね。

私と妹紅さんの同時スペルを、あそこまで簡単に避けていくとは…」

 

「成る程、さっきまでの攻撃じゃあ倒せないわけだ…

じゃ、もう少し強めに行くぞっ!」

 

 

妹紅はそう言い放つと、今までの弾幕に更にもう一波御札型の弾幕を加えて放ち始めた。

紀流は新しい弾幕が向かってくるのを視界の端で捉え、瞬時に思考を巡らせる。

 

 

「…ここまで大量だと、少々避けるのが億劫だな…

だったら一気に消し飛ばす!完防壁『パーフェクトバリヤー』!!」

 

 

紀流はスペルを宣言し、手足を思いっきり開くと同時に紫色のバリアを発生させる。

バリアは数秒の内に大きく膨張し、妹紅と鈴仙の弾幕を一気に全て掻き消した。

 

 

「一気に消し飛ばされた!?」

 

「さっきの緑色のバリアといい、今の紫色のバリアといい…

あいつの戦闘スタイルは受け身型なんだろうか?」

 

 

妹紅が考えている間に紀流はバリアを解除し、二人の方を見て薄く笑った後に口を開く。

 

 

「今のは中々危なかったよ…

パーフェクトバリヤーなんて、よっぽどの事が無い限り使わないからね。」

 

「私達は本気なんだからな。そりゃあ使うはめになるさ。

強いスペルがあるんなら、さっさと使っとかないと後悔する事になるぞ?」

 

「私達は『次で決める』つもりでいきますからねっ!」

 

「じゃあ、少しだけ…」

 

 

紀流がそう呟くと、辺り一面がぼやける様に緑一色へと染まった。

 

 

「…なっ!?」

 

 

妹紅は驚いてあっちこっちを見回すが、その視界のどこにも緑色でない所は見当たらない。

咄嗟に紀流に視線を移すと、彼は自分と鈴仙を見下ろしながら左手を少し開いて佇んでいた。

 

 

「…。」

 

 

妹紅が見ている前で紀流の左手に緑色の気が周りの風景ごと収縮していき、

やがてそれは光の塊となって手のひらに収まっていく。

風景の色が元に戻ると同時に彼は左手を軽く握り、一つの気弾を作り出した。

 

 

「行きますよ!赤眼…」

 

「待て、今のあいつは何かやばい…っ!」

 

 

紀流の気弾を見た妹紅は嫌な予感に襲われ、鈴仙のスペル発動を止めようとしたのだが…

 

 

「…『望遠円月(ルナティックブラスト)』!!!」

 

 

時既に遅く、鈴仙はその両眼から巨大な赤いレーザー光線を紀流目掛けて放った。

それとほぼ同時に、紀流も左腕を大きく振り上げ…

 

 

「消砲『イレイザーキャノン』!!!」

 

 

スペル発動を宣言し、左腕を思いっきり降り下ろして気弾を撃ち出した。

双方の距離は一瞬で縮まり、程なくして激しい衝撃波と共に激突する。

 

 

「うぐぐぐぐぐぐぐぐぐっ…!」

 

「…。」

 

 

鈴仙はスペルの出力を上げ、全力で紀流の気弾を押し戻そうとする。

紀流は暫く何もせずに、鈴仙が自身のスペルと格闘している様を眺めていた。

 

 

「…あいつ、遊んでやがるな…

鈴仙はどう見ても全力だって言うのに、あいつは最初に撃ってから全く力を込めてやしない…」

 

「…ん?」

 

 

妹紅が自分を睨み付けている事に気づき、紀流は顔を彼女の方へと向ける。

目が合った瞬間、紀流はにっと微笑んだ。

 

 

「何なんだその顔は…一体何をしようって…」

 

「アハハハ…」

 

 

妹紅が紀流の笑いの意味を理解出来ないでいると、

彼は今度は声をあげて笑い、妹紅の顔を伺いながら自分の撃った気弾に左手をかざす。

その瞬間妹紅は彼が何を考え、実行しようとしているのかを理解した。

 

 

「鈴仙っ!!!」

 

「ひゃっ!?」

 

 

妹紅は鈴仙に飛びつき、彼女を紀流の前から突き飛ばして自分も避難しようとしたが…

 

 

「ハァッ!!!」

 

 

それよりも早く、紀流は左手のひらから気を思いっきり気弾に向かって放出した。

妹紅は避けるのは間に合わないと感じ、咄嗟に両手を突き出して速度を増した気弾を受け止める。

しかし。

 

 

「うぅっ!?」

 

 

両手のひらが気弾と触れた瞬間、妹紅は全身を襲う激痛と共に悟った。

紀流には『本気で戦わないといけなかった』理由を。

 

 

「どうした、俺をゲームオーバーにするんじゃ無かったのか?

それとも…」

 

「…一時間も経たない内に降参するの?」

 

「「っ!?」」

 

 

上空から降ってきた声に、紀流は振り向き、妹紅は視線を上げる。

そこには、上を見ずにレーザーを撃ち続けている幽香の姿があった。

 

 

「幽香さん!?もう倒したんですk…ってその左腕どうしたんですか!?」

 

「五月蝿いわね…まだ終わってないわよ。

まあ、もうすぐ終わると思うけど。」

 

 

そう言う幽香の視線の先には、大きな赤い弾幕を放ってレーザーに対抗している永琳の姿がある。

永琳は顔を歪めており、全力でレーザーを押し返そうとしているのが紀流にも感じとれた。

 

 

「あなたもそろそろ終わるんでしょ?

面倒だし、同時に終わらせる事にしない?」

 

「え、これに押し勝ってもまだ一人鈴仙って子が残ってるんですけど…」

 

「じゃあ取り敢えず、今戦ってる奴を倒しなさい♪」

 

「あ、はい…」

 

 

紀流は微妙な顔を浮かべた後、妹紅の方に視線を戻した。

幽香も永琳の方に向き直り、紀流と幽香は背中合わせになる。

 

 

「じゃ、私はフルパワーで行くわ。」

 

「え!?」

 

「あなたも本気出さないと、私に押されて吹っ飛ぶわよ?」

 

「えぇぇ!?」

 

「3、2、1…」

 

「待っt「ゼロ♪」そらぁぁぁっ!!!」

 

 

幽香の合図と共に、紀流と幽香は同時に気を高めてそれぞれの相手に向けて放出した。

 

 

「「!?」」

 

 

永琳と妹紅は急激な出力増加に耐えきる事が出来ず、そのまま押しきられそうになる。

永きに渡った今宵の異変も、遂に終幕を迎えるかと思われたその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人とも、何遊んでるのよ!その程度で根をあげるわけ!?」

 

「「っ!?」」

 

「「?」」

 

 

四人の頭に直接響いてきた、少し不満そうな感情のこもった女性の声。

紀流と幽香は首を傾げるが、妹紅と永琳はその声に聞き覚えがあるようで辺りを見回した。

その間にも、謎の声は永琳と妹紅に活を入れ続けている。

 

 

「永琳、パワーが足りないわよ!遠慮しないで本気でいきなさい!

妹紅、そんな奴に怯えてるんじゃないわ!いつもの気迫は何処に行ったわけ!?」

 

「輝夜「姫様!?」!?」

 

「…かぐや…ひめさま?

…え?」

 

 

紀流は永琳と妹紅の発した言葉を聞き、何か引っ掛かる事があったのか目を閉じて思考し始める。

 

 

「…輝夜…姫…満月…竹林…そして『藤原』…って事はまさか…

…けどここは幻想郷、吸血鬼だって妖怪だって幽霊だって妖精だっている…

そして、そう考えれば全ての辻褄が合うっ!!!」

 

「…紀流、何わけの分からない事言って…ってちょっと!?」

 

 

紀流は左手で幽香の肩を掴み、数メートル上空に瞬間移動する。

瞬間移動が終わると同時に幽香は紀流の方を向き、明らかに怒った表情で口を開いた。

 

 

「一体何のつもりで…」

 

「まあ、ちょっと見ていて下さいよ。」

 

 

紀流はそう言って何とか攻撃を弾き飛ばして合流した永琳と妹紅を見下ろし、

二人と同じ高度まで下がる。

合流した二人に鈴仙を入れた合計三人に睨み付けられても紀流は怯む事なく、唐突に喋りだした。

 

 

「一つ訊きたいんだけど、さっきの声の主って『なよ竹のかぐや姫』さん?」

 

「「「!?」」」

 

「その顔を見る限り、どうやら正解っぽいな。

じゃあ次の質問だ。藤原 妹紅、君は『藤原(ふじわらの) 不比等(ふひと)』って人を知ってるかい?」

 

「…な…」

 

「うん、心当たりはあるみたいだな。

じゃあ最後の質問だ。えーっと…」

 

 

紀流は一旦言葉を切り、深呼吸の後に、

『とある本からの一文』をそのまま口に出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『いざ、かぐや姫、

きたなき所に、いかでか久しくおはせん』?」

 

 

紀流の発した、その意味不明な言葉に答えたのは。

 

 

「『かく久しくあそびきこえて、慣らひたてまつれり』

とでも答えれば満足かしら、人間さん?」

 

「「「っ!?」」」

 

「え…?」

 

「驚いたな…。

まさか、本当に出てくるとは…」

 

 

いつの間にか永琳達と紀流の間に立っていた、謎の女性だった。

 

 

ー現在の時刻ー

 ー 丑の四つ ー 2:30 ー




遂に遂に遂に姫様が出てきました。ラストスパートでございます。
次回、最終決戦〜序章〜です。
感想、意見、アドバイス等々募集中です。


※ここから余談
復活の『F』でフリーザが復活しますが、ゴールデンフリーザって何でしょうね?
あそこから更に変身するのかな?
後東方projectの最新作『東方深秘録』の『オカルトボール』っていうアイテムが
名前的にも数的にも効果的にもドラゴンボーr(ry
…遂に公式で東方×ドラゴンボールが出るのだろうか…
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