東方有無録   作:印鑑

72 / 84
第七十二話目。花映塚編スタート。



今回から原作には登場しない、いわゆる二次創作のキャラが出てきます。
その辺りを理解した上で、ゆっくり読んでいってね!


東方花映塚編
霊夢は私の妹だ〜謎の女性、博麗神社に立つ


「…随分と久し振りだな、ここに来るのも。」

 

 

まだ太陽も出ていない早朝、博麗神社のある小高い山の麓。

作られてからかなりの年月が経っているにも関わらず、

全くと言って良いほど参拝客が訪れない為に使われていない階段の前に、ある人物が立っていた。

 

 

「…ん…っ…」

 

 

その人物は階段を前に軽く背を伸ばして大きく息を吸い込み、ゆっくりと息を吐き出す。

数回その行為を繰り返した後、その人物は一歩足を踏み出して階段の一段目に乗せ…

 

 

「…さて、霊夢は元気にしてるかな?」

 

 

一歩一歩、長い階段を登り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぁ~…あぁぁぁ…っ…」

 

 

オッス!オラ紀流!

俺は今現在、超サイヤ人になっている状態で神社の周りを箒で掃いて回っている所だ!

超サイヤ人を体に慣れさせるついでに暗い場所も照らせて一石二鳥だぜ!

 

 

「…ってか、今何時だ?」

 

 

まあ関係ないな、太陽が出たら霊夢を起こせば良いんだし。

それまでに掃除を終わらせておけば、俺の朝の仕事も終わるしな。

後は霊夢に頼まれた事をこなしていけば良いんだ。

 

 

「…ようし、こんなもんか。」

 

 

数分後、俺は集めた落ち葉を神社の前に盛った。

…やっぱり春なだけあって、結構な量の落ち葉が最近の強風で飛んで来たんだな。

さて、どう処理するか…決めた!

 

 

「よいしょ…っと。」

 

 

俺は集めた落ち葉を両腕一杯に抱え、そのまま地上から浮かび上がる。

ある程度の高さまで来たのを確認すると、俺は落ち葉を抱えていた両腕を離し…

 

 

「せいっ!」

 

 

落ち葉の塊に向かって軽く気を放ち、葉を空一杯に散らせた。

無論、もう一度掃除をする為ではない。考えあっての行動である。

 

 

「はぁっ!」

 

 

俺は掛け声と共に指先に気を溜め、舞っている落ち葉に向かって突き出す。

それと同時に指先の直線上にあった葉が一瞬発光し、直ぐに塵となって見えなくなった。

そう、俺は散らした葉が地上に落ちる前に全ての葉を撃ち抜く事にしたのだ。

一応相手の弾幕を正確に迎撃する為に毎日続けている修行である。

 

 

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ…!!!」

 

 

俺は両手を使い、次々と葉に狙いを定めて消していく。

…毎日やる度にフリーザ第三形態に近づいている気がするのは気のせいだろうか。

もうこれスペルで良いんじゃ無いかな…けど不可視だから不意討ち扱いされかねん。

そんな事を考えている内に、残っている葉は一枚になった。

 

 

「ひゃあっ!!!」

 

 

俺は両手を同時に突き出し、最後の葉を消滅させた。

明日はもっと低い位置から葉を落としてみるか…より迅速な攻撃が求められるがな。

 

 

「…さて、霊夢が起きてくる前に一眠りするか。」

 

 

俺は超サイヤ人を解除し、神社の縁側に向かって歩みを進めようとする。

その時、俺は神社の階段を登ってくる小さな足音を感じ取った。

 

 

「参拝客か?

でもまだ日も出てないし、そもそも滅多に参拝客なんてこないし…

霊夢を起こしてこようかな?」

 

 

まあとにかく、まずは自分の目で確認しなくてはな。

もしかしたら聞き間違いかもしれないし。

俺はそう考え、階段の方に目を凝らす。

 

 

「…む?」

 

 

やがてその音は階段を登りきり、それの同時に一つの影がぬっと現れた。

まだ真っ暗なので良く分からないが、どうやら訪問者は人の形をしている様だ。

こっちに向かってきたので、とにかく挨拶しとこう。

 

 

「何処の誰かは存じませんが、何かご用ですか?」

 

 

俺は拙い敬語を精一杯活用し、黒い影に向かってなるべく丁寧に挨拶する。

しかし、相手側から返されたのはぶっきらぼうな質問だった。

 

 

「…誰だ、お前は?

この博麗神社で何をしている?」

 

 

声質からして女性なのは間違いないだろう。

だが、友好的とは言い難い。むしろ此方を思いっきり警戒している様だ。

 

 

「私の名前は紀流 祠弥。

この神社に住まわせてもらっている者でs…」

 

 

とにかく相手の警戒心を解こうと俺が名を名乗った瞬間。

 

 

「っ!?」

 

 

俺は左頬に凄まじい威力の拳(らしき)一撃を喰らい、思わず体のバランスを崩してよろけた。

何とか体勢を立て直して俺は地面から一メートル付近、丁度相手よりも少し高い位置まで浮かぶ。

 

 

「…いきなり殴りかかってくるたぁ、随分と礼儀がなって無いじゃないか…」

 

「…敵に礼儀など不要!!

私はここで、博麗神社に立ち入った不届き者を倒す!!!」

 

 

相手はそう言い放って地を思いっきり蹴り、俺に突進しながら拳を突き出してきた。

…まだ顔までは見えないが、どうやら相当怒っているみたいだな…

 

 

「…ふん、さっきは不意討ちだったから喰らっちまったが…

今度は此方も反撃させてもらうぞ!!!」

 

 

俺は右手を握り締めて気を集め、僅かに視認出来る相手の拳を目掛けて突き出す。

強力な拳は真っ向からぶつかり合い、四方八方に衝撃波を撒き散らした。

その数秒間の間、俺と相手は拳を突き合わせていたが…

 

 

「…。」

 

「…っ!?」

 

 

急に俺は殺気を感じ、咄嗟に拳を引っ込めて腕を後ろに引く。

そのコンマ一秒後、身体中の毛が逆立つ程の波動が俺の横を通り過ぎていった。

相手はまさか俺が拳を引っ込めるとは思っていなかったのか、小さく舌打ちをする。

 

 

「…ちっ、まさか今のを回避するとは…

直撃していれば、腕を消滅させる事が出来たのだが…」

 

「はぁっ!?腕っておま…殺す気かぁ!?」

 

 

俺の抗議に耳を傾ける様子も無く、相手は素早く地面に下り立つ。

何か無視されたみたいでむかついたので、今度は此方から仕掛ける事にしよう。

 

 

「今度は仕留める。覚悟するんだな。」

 

「…仕留める?

全く、さっきから仕留めるだの腕をもぐだのごちゃごちゃと言いやがって…」

 

 

俺は苛々を込めた言葉を吐きながら、相手を見据えて深く腰を落とし…

 

 

「いちいち物騒な奴だぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「!」

 

 

気を一気に高め、相手との距離を詰めて殴りかかる。

相手の顔らしき場所を狙って振った俺の拳を、相手は左手で受け止めた。

それならばもう一発と振った逆の拳も受け止められ、俺と相手は互いの手を掴みながら睨み合う。

 

 

「ぐぐぐぐぐぐ…!」

 

「はぁぁぁぁぁぁ…!!」

 

 

やがて大地が俺と相手を中心として陥没していき、地鳴りが轟き、敷石が割れる音がし始めた。

それでも、俺と相手は互いの手を離さない。

 

 

「ぐぬぬぬぬぬぬ…っ!!!」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…っ!!」

 

 

気が表面化する程の力を込めて相手を押しても、それ以上の力で相手は俺を押してくる。

…ぬう、このまま続けても境内の惨状が酷くなるだけだな…ならば!

 

 

「紅拳『界王拳(二十倍)』!!!」

 

「っ!!!」

 

 

俺はスペルを発動して力任せに相手の手を振り払い、相手の胴を目掛けて張り手を炸裂させる。

手を振り払われた事でバランスを崩した相手は対抗出来ず、

両足で踏ん張りながら地面を滑っていき、俺から数メートル程後退した。

 

 

「…く…」

 

「流石に効いたみたいだな。

ま、俺もまさか界王拳を使う事になるとは思ってなかったけど。」

 

 

俺がそう言ったと同時に、地平線から太陽が顔を出した。

その閃光に俺は一瞬目が眩んだが、直ぐに目を擦って視力を回復させ、相手を睨み付ける。

相手側も俺と同じ様な行動をとり、此方を睨んでいた。

 

 

「…。」

 

「…え?」

 

 

相手の姿を見た瞬間、俺は驚いた。

まず、女性であるという俺の予想は間違っていなかった。そこまでは良い。問題なのは他だ。

黒い袖無しのインナーシャツに、首の後ろで紐を結んでいるらしき赤い前掛け。

下半身には、何故か腰付近の両サイドに切れ込みが入っていてそこから太ももが見える、

袴とスカートを混ぜ合わせた様な赤い服を穿いている。

 

 

「…!?」

 

 

そして、何よりも俺を驚かせたのはその顔。

腰まで届きそうな黒髪ロングに、此方を訝しげな目で見つめているその顔は…

 

 

「…霊夢!?」

 

 

もみあげ付近の髪の毛を赤い布で結んでいる事と相成って、

見事に『博麗 霊夢』を思い起こさせるものであった。

俺は開いた口が塞がらず、思わず界王拳を解除して相手をまじまじと見つめる。

 

 

「…何をじろじろ見ているんだ。

お前が戦っていた相手が女だった事がそんなに意外だったか?

…まあ、私もまさかお前が子供だとは思っていなかったがな…」

 

「…。」

 

 

うむ、見れば見るほど霊夢だ。少し大人な霊夢だ。夢でも見てるのかな?

 

 

「…おい。」

 

「…え、ああはい、何ですか?」

 

「いや、別に何だと言うわけでは無いんだが…

…って違う!今は戦闘中なんだ!!戦いの腰を折るなぁ!!!」

 

 

霊夢にそっくりな彼女はいきなり怒り、思いっきり大地を殴りつける。

地面はまるで水上に波紋が広がるかの様に流動し、辺りに広がっていく。

やがてその揺れに耐えきれなくなった大地が割れて隆起し、俺に襲いかかってきた。

 

 

「おぉっとお!?」

 

 

俺はいきなり目の前に岩が現れた事に驚き、咄嗟に自分に向かってきた岩を叩き割る。

岩は砕け、庭石程の大きさとなって相手に跳ね返っていくが…

 

 

「せいやぁぁぁっ!!!」

 

 

此方に負けず劣らずの相手の剛拳によって砕かれ、砂利となって空を舞った。

…何て馬鹿力なんだ…俺が言えた事じゃ無いがな。

 

 

「…まだほんの子供なのに、私に匹敵する力を持っているだと…

お前は一体何者なんだ?」

 

「だから紀流 祠弥だって言っただろ!

それよりも、霊夢にそっくりなお前こそ何者なんd…」

 

 

俺が相手を指差し、名を名乗らせようとしたその時。

後ろで、障子が開く音が聞こえた。

 

 

「あ、霊夢、おはよう…」

 

「…何、これ?」

 

 

白い寝間着を着たまま、博麗 霊夢はこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…全く…帰ってくるんなら前もって連絡しなさいよ!」

 

「…すまん、霊夢…」

 

「しかもあろうことか祠弥に喧嘩売って、地割れ起こして敷石粉砕して…

迷惑千万としか言い様が無いわよっ!!!」

 

「…だ、だから何度も謝っているじゃ無いか…」

 

「『ごめん』で済むなら博麗の巫女はい・ら・な・い・のっ!!!」

 

「…うぅ…」

 

 

…えー、只今先程俺が戦っていた人が霊夢に説教受けてる所です。

障子閉めてても幻想郷の隅々まで響き渡りそうな大音量である。

因みに俺はと言うと、再び箒を使って飛び散った砂利を集めている所だ。

 

 

「…さっさっさっと…」

 

 

俺は取り敢えず集めた砂利を敷石のひび割れに詰め、

縁側に飛び乗って障子を開ける。

 

 

「霊夢ー、取り敢えず終わったぞー。」

 

「…あぁ、じゃあ元の場所に戻しといて。

で、どこまで話したのかしら!?」

 

「…。」

 

 

霊夢は正座で座布団の上に座っており、先程の人はその前で頭を畳に付けている。

…何か震えてないか?

 

 

「なあ霊夢、もうその辺にしておいたらどうだ?」

 

「…相変わらずあんたは優しいわね…良いわ。

良かったわねぇ姉さん、顔を殴ったにも関わらず許してもらえてっ!!!」

 

 

…ちょっと待て霊夢、今何て言った?

 

 

「…おい、霊夢。今『姉さん』って…」

 

「え、まだ名乗ってなかったの!?

全くもう…ほら!!!」

 

 

霊夢は頭を下げっぱなしの相手の頭をひっ掴み、無理矢理顔を上げさせて俺の方を向かせる。

相手はばつの悪そうな顔で此方を見上げていたが、やがて遠慮がちに口を開いた。

 

 

「…私の名前は『博麗(はくれい) 霊武(りょうむ)』。

ここにいる霊夢の姉だ。以後、宜しく頼む。」

 

「あ、どうも。宜しくお願いします。

…じゃねえ!霊夢、一体どういう事だ!?」

 

「どういう事も、こういう事よ。

この人は私の姉さん。で、博麗の巫女…に『なる筈だった』人。」

 

「…What!?」

 

 

ナンテコッタイ。霊夢の姉さんかよ。通りで強かったわけだ…

フリーザの兄貴にクウラがいる事を知ったレベルの驚きである。

 

 

「…けど、博麗の巫女に『なる筈だった人』って?」

 

「…『武者修行』…確か手紙にはそう書いてあったわよね、姉さん?

あれからもう…十年位経つのかしら?」

 

「…。」

 

「…もう一度訊こう、どういう事だ?」

 

 

  ~少女説明中~

 

 

「どう、理解した?」

 

「大体把握した。」

 

 

えっとだな、霊夢の話を要約すると…

本来は霊夢ではなく、霊武が博麗の巫女になる筈だった→しかし霊武はなりたくなくて家出→

→行方不明の霊武の代わりに霊夢が博麗の巫女になる→十年経過(今ここ)

…因みに霊夢が博麗の巫女に『任命』された時の年齢は三歳だったらしい。仕事出来ないだろ…

 

 

「…まあ、言いたい事は山ほどあるけど…

お帰りなさい、姉さん。」

 

「…ただいま、霊夢。」

 

 

霊夢は喜びと怒りが混じった様な形容し難い表情を浮かべ、少し頭を下げた。

 

 

「さてと祠弥、朝御飯にするわよ。

今日は三人いるから、いつもより多めに作らなきゃね…」

 

 

霊夢はそう言って立ち上がり、台所に向かう。

…霊武さんと二人で部屋に残されたが、気まずくてしょうがないぜ…

 

 

「…。」

 

「…。」

 

 

俺と霊武さんは互いの顔を盗み見、直ぐに逸らす。

…どうしよう、この状況…

 

 

「…じゃあ、俺は霊夢の手伝いがあるんで…」

 

「…あぁ、うん。申し訳ない。」

 

 

霊武さんはまた謝り、頭を軽く下げる。

…辛気臭いな…よし!こんな時には!!

 

 

「霊武さん、今度は全力で勝負しましょう!

何の気遣いもなく、一対一で正々堂々と!!!」

 

「…へっ!?

わ、分かった…?」

 

「ではこれから朝食を作ってきますので、暫く待っていて下さい!」

 

 

俺は部屋を飛び出し、台所に向かった霊夢を追う。

ファーストコンタクトがあれだったから不安だが、これからだ!これから!

 

 

「…何者なんだ、彼は…?」

 

 

どたばたと部屋を出ていった紀流を見て、一人残された霊武は首を傾げてこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、じゃあせーの…」

 

「「「頂きます!」」」

 

 

十数分後。

先程まで霊夢が説教をしていた部屋で、俺達三人は朝食を食べ始めた。

メニューは白米(いつもの三分の二)、味噌汁(いつもの三b(ry)、そして焼き魚(ry)である。

 

 

「…はぁ…少ないわねぇ…

初めて祠弥が来た時の朝食を思い出すわー。」

 

「…霊夢、私は少なくて良いから…」

 

 

霊武さんがそう言った瞬間、彼女のお腹の音が鳴り響く。

そのまま赤面して黙ってしまった霊武さんを見かね、霊夢は呆れ顔で首を振った。

 

 

「別に白米ならまだあるし、食べて良いわよ。

あ、食事の後にお風呂を祠弥に沸かさせるから、姉さん最初に入って。」

 

「…あ、あぁ…」

 

「…。」

 

 

やべえ俺の部外者感半端ねえ。いや、そもそも部外者だったか…

このまま存在を殺されるのも何だか嫌なので、俺は気になった事を質問する事にした。

 

 

「あの、霊武さん?」

 

「…何だ?」

 

「何であんなに強いのに、家出したりしたんですか?」

 

 

俺がそう訊ねると霊武さんは口の中の物を飲み込み、静かに口を開いた。

 

 

「…そうだな…

拠点防衛には不向きな性格だったんだよ、私は。」

 

「はい?」

 

「『博麗の巫女』として、神社に縛り付けられるのが嫌だった。

博麗の巫女になったら最後、妖怪を討伐したりする時や依頼を解決したりする時以外は…

…死ぬまで神社にいなくちゃいけないからだ…」

 

 

霊武さんは箸を止め、開いた障子から外を見る。

 

 

「こんなに世界は広く、多種多様な物に満ち溢れている。

なのに、何でその魅力から隔離されて神社の境内で一生を終えなくちゃならないのか。

…つくづく、博麗の巫女には不向きな性格だったと思うよ。」

 

 

成る程、『より広い世界を求めて』って事か。何か分かる気がする。

 

 

「そうねー。姉さんが飛び出しちゃったせいで、

代わりに私が『神社に縛り付けられる』事になっちゃったからねー。

本当に自分勝手で我が儘な性格してるわよ、姉さんは。」

 

「…。」

 

「…まあ、私も姉さんと同じ考えだけどね。

最近は至って平和で、別に年から年中神社に貼り付いてなくても大丈夫な時代になったし。

たまに妖怪やその他の馬鹿が騒動を起こしたりするけど。」

 

「その時戦った奴等も、異変が終われば皆揃って神社での大宴会に参加するしな。」

 

「…そうか…平和になったn…じゃない!!!

妖怪が!?神社での大宴会に!?参加するだと!?」

 

 

俺の言葉に衝撃を受けたのか、霊武さんは思わずちゃぶ台に手を付いて立ち上がる。

…味噌汁が溢れそうだよ…

 

 

「そうよ。

大丈夫よ、神社が食べ物とか全額負担するんじゃないから。」

 

「いや、そういう問題では…ううむ…」

 

 

霊武さんは自分の頭を押さえ、髪の毛をくしゃくしゃと掻き回す。

…しっかし、長い髪の毛だな…霊夢より長いんじゃないか?

 

 

「…姉さん、座って。

ちゃぶ台が揺れてちゃ、落ち着いて食事出来ないわ。」

 

「あ、すまん…」

 

「まあ、もう食べ終わったから良いんだけどね。

さっ、祠弥。お風呂沸かして。」

 

「承知した。」

 

 

俺は残っていた味噌汁を一気に掻き込み、お皿を持って立ち上がる。

そして台所の流しに皿を置き、お風呂を沸かす為の薪を取ってくる為に外に出た。

 

 

「…えーっと、湿気って無いのは…

これと…これと…これかな?」

 

 

俺は神社の裏に置いてある薪を二・三本適当に選んで空に投げ上げ、スペルを発動する。

 

 

「千刃『サウザーブレード』!!!」

 

 

紫の刃を数回振ると、薪は人の腕ぐらいの大きさになって地面に積み重なる。

それを俺はいっぺんに抱えて運び、風呂桶の下にほっぽりこんで規則正しく並べる。

 

 

「…はっ!」

 

 

薪がしっかり積み重なっているのを確認して、

俺は指の先に気を溜めて小さな気弾を作り出し、薪に向けて放つ。

気弾は薪に命中し、小さな火がついた。

 

 

「…本当に役立つよな、気って…」

 

 

戦闘以外の日常生活でも使えるからな、気は。

良し、後は沸くのを待つだけ…

 

 

「…やばい、水が入ってねぇっ!!!」

 

 

  ~紀流準備中~

 

 

「祠弥ー、沸いたー?」

 

「あぁ、沸いたぞー。」

 

 

…空焚きに時間を喰ったせいで少し温いけどな。

ま、入れるでしょう。

 

 

「ほら姉さん、早く入って!」

 

「…いや、着替えは…」

 

「これ。

箪笥の奥から適当に引っ張り出してきた奴だけど、まだ着れるでしょ?」

 

「…小さくないか?」

 

「長い間他の服に押し潰されてたから、そう見えるのも仕方ないわ。

一応着れると思うから、さっさと入って。」

 

「…だが…」

 

「ああもう、注文が多いわねぇ!

そんなに着たくないんなら裸でいれば!?」

 

「わ…分かったよ、入るよ…」

 

 

霊武さんの情けない声が聞こえると同時に、風呂場の扉を全力で閉める音がした。

多分霊夢が閉めたのだろう。

 

 

「…。」

 

 

俺はそのまま暫く黙り、霊武さんが湯船に入るのを待つ。

やがて桶で湯をすくう音が聞こえたので、俺は火力調整の為に火の前に陣取った。

 

 

「霊武さん、湯加減は如何ですか?」

 

「…あぁ、丁度良いよ…

何年ぶりだろうな、静かに風呂に入れるなんて…」

 

「…え?」

 

「今までずっと、川の冷たい水で身を清めていたからな。

それもなるべく無防備になる時間を減らす為に、素早く迅速に行っていたんだ。」

 

「…はぁ…」

 

 

どうやら霊武さんは、俺の想像以上に過酷な生活を送っていた様だ。

…一体何処で何してたんだろう。

 

 

「霊武さんは神社を出てからの十年間、一体何処で暮らしていたんですか?」

 

「うーむ、どう言ったら良いものか…

まあとにかく、『幻想郷では無い場所』としか言い様が無いな。」

 

「え、幻想郷では無い場所?

どうして幻想郷じゃ無いって分かったんですか!?」

 

「…何となく、だな。

幻想郷とは雰囲気が違ったんだよ、私の居住していた場所は。

やたらめったら強い妖怪が沢山いたのは覚えているけどね。」

 

 

何その『寝たら次の日腹の中』みたいなのが実現しそうな場所怖い。

 

 

「そいつらが襲ってくる度に応戦して撃退していたら、

何故かその辺りの妖怪が私に弟子入りを頼んできたっけ…」

 

「へえ、弟子入りを認めたんですか?」

 

「無論、認めなかったさ。

博麗の巫女として、妖怪に無駄な力を付けさせるのは止めようと決めていたんだ。」

 

 

…何か聞けば聞くほど霊夢よりも『博麗の巫女』である事を重んじているな…

いや、別に霊夢が巫女らしく無いとは言ってないぞ?

 

 

「…それでだ、えーっと…祠弥?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「…厚かましい様だが、少し湯の温度を下げてくれないか…?」

 

「わぁぁぁぁぁぁ!申し訳ありません!!今すぐに!!!」

 

 

  ~巫女入浴中&紀流調整中~

 

 

「出たぞ~、霊夢~。」

 

「あ、やっと出てきたのね…

だから言ったでしょ、着れるって。」

 

「う、うむ…」

 

 

俺が火力を弱めてから数分後。

白い着物と赤い袴という『巫女服』に身を包んだ霊武さんが風呂から出てきて茶の間に座った。

 

 

「…で、私の服は…」

 

「大丈夫よ、全部洗って干してあるから。

祠弥、後で姉さんの服を乾かしてくれる?」

 

「はいはーい。」

 

 

因みに服に向かって気を放出すると、水分が一瞬で蒸発してすっきり乾きますよ。

ただし加減を間違えると服が灰になる。前一度やらかして霊夢に殺されかけた。

 

 

「そう言えば姉さん、腕に付いてた振り袖みたいなのはどうしたの?」

 

「あ、あれか…昔妖怪と戦った時にもぎ取られた。

あの時は危なかったな…少し回避のタイミングが遅れていたら腕を持っていかれていたよ…」

 

「…もぎ取られたって…はぁ…予備ならあるけど、使う?」

 

「是非使わせてくれ。」

 

 

あ、そうか…振り袖が無かったから少し霊夢とは違ってみえたのか。

…いや、待てよ?

 

 

「十年間も一人で過ごしていたのに、何で服は破けたりしていないんですか?」

 

「博麗の巫女服には、代々の博麗の巫女の力が詰まっているのよ。

だからちょっとやそっとじゃ破けないし、大きさだって自由自在に変化するの。」

 

「…いや、服が私サイズなのは織り込まれていた布を伸ばしたからだぞ?」

 

「…え、そうなの?」

 

 

霊夢と霊武さんが服の話題で盛り上がっているので、

俺はその会話の妨げにならないように座布団から下りて縁側に移動し、空を見上げる。

 

 

「…良い空だな、本当に。」

 

 

俺はそう思い、手を伸ばす。

その手は虚空を掴むかと思ったが、丁度俺の手の中に何かが入ってきた。

 

 

「…ん?」

 

 

俺は手を引っ込め、握っていた手を開く。

桜の花びらが、ひらひらと舞って床に落ちた。

 

 

「…え、桜?」

 

 

おかしいな、昨日までは咲いていなかった筈…

俺がそう思った瞬間、突然神社目掛けて暴風が吹き荒れ…

 

 

「ぶっ!?」

 

 

凄まじい密度の桜吹雪が、俺の顔に直撃した。

俺は咄嗟に顔を払い、ため息をついて愚痴を言う。

 

 

「…ったく…一体何だよ…」

 

「祠弥、どうしたの…って何、この桜吹雪は!?」

 

 

霊夢の視線の先では、桜の花びらがまるで竜巻の様に躍り狂っている。

…いや、本当になんだこれ?

 

 

「まさか…」

 

 

俺はふとある事を考えつき、縁側から下りてそのまま上昇して神社の裏手を眺める。

先程まで蕾しかついていなかった桜の木々は、見事に満開になっていた。

 

 

「…どうなってんだ、こりゃあ…」

 

 

俺が霊夢達の元へ下降しながらそう呟くと…

 

 

「これは『異変』ね。」

 

 

霊夢が、そう宣言した。

そして、その声に反応した者がもう一人。

 

 

「やっぱり、ね♪」

 

「!?」

 

 

俺はその声に聞き覚えがあったので、直ぐ様振り向いた。

そこに立っていたのは…

 

 

「来たわよ、紀流♪」

 

 

傘をさしながら微笑んでいる大妖怪、幽香さんであった。




先代巫女が霊夢の母親なのは良くあるけど、霊夢の姉っていうのは珍しいと思うんだ。
ってなわけで、『博麗 霊武』登場です。
次回は未定。一週間後になるか一ヶ月後になるか。
感想、意見、アドバイス等々募集中。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。