東方有無録   作:印鑑

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第七十三話目。
ゆっくり読んでいってね!


幻想郷は今日も大混乱〜予報・花、所により弾幕

「来たわよ、紀流♪」

 

「幽香さん!」

 

 

オッス!オラ紀流!

今現在、桜吹雪を気ではね飛ばしながら幽香さんが此方に向かって歩いてきている所だ!

幽香さんの涼しい顔と気の大きさが比例していないぜ!

 

 

「…妖怪っ!?」

 

 

霊武さんはいきなり現れた幽香さんを警戒し、身構えて一歩踏み出す。

ちょっと待て!幽香さんに喧嘩売るのは俺の時よりも段違いに危険だ!神社が消える!!

 

 

「まぁまぁ霊武さん、幽香さんは敵ではありませんから…」

 

「…そうなのか?」

 

 

俺は霊武さんの前に立ち、必死に腕を振って彼女の歩みを止めた。

霊武さんはその場で止まったが、その目からは幽香さんへの警戒心が見てとれる。

そして、その視線に幽香さんが気づかないわけも無く…

 

 

「…あら紀流、あなたの前にいるのは誰?

何だか私と戦いたそうな目付きをしているけれど…」

 

「そんな事ありません!断じてありませんっ!!

ですよねえ、霊武さんっ!?」

 

「…あ、あぁ…」

 

 

俺は大声を張り上げ、霊武さんを無理矢理頷かせた。

何とか場の雰囲気を取り繕った俺は振り向き、幽香さんにこう訊ねる。

 

 

「で、幽香さん。今日は何で神社に来たんですか?」

 

「そうねぇ…暇だったから…かしら?

って言うのは嘘だけどね♪」

 

「…じゃあ、何なんですか?」

 

「博麗の巫女が言った通りよ。

私は『異変』が起こった事を伝える為に、この神社まで遥々来たの。

まあ、もう神社にも影響が及んでいるみたいだから、来る必要も無かったかしら?」

 

 

幽香さんはそう言い、自身の周りを飛んでいる桜吹雪に手を伸ばして花びらを掴み取る。

 

 

「…教えて、風見 幽香。

一体これはどんな異変なの?」

 

「『異変』って言う程の事でも無いんだけれどね。

ちょっと見てみなさい。」

 

 

幽香さんはそう言い、足元に咲いている蒲公英に目を向ける。

…そう言えば、あの蒲公英だって朝に掃除してた時には生えて無かったよな…

 

 

「この蒲公英、さっきまでは咲いていなかったでしょう?」

 

「えぇ、そうかもしれないわね。でもそれと異変に何の関係が…」

 

「♪」

 

 

幽香さんは霊夢の疑問には答えず、微笑みながら蒲公英に手を向ける。

すると、蒲公英の中から何か白い物が出てきた。

 

 

「「「?」」」

 

「これよ、異変の原因は。」

 

 

ただ驚く事しか出来ない俺達三人の前に、幽香さんはそれを掲げる。

何か雲みたいな形してんな…後何か透けてるし…何これ。

俺はそれが何なのかさっぱり分からなかったが、霊夢はそれが何なのかを理解したらしい。

 

 

「…幽霊?」

 

「正解♪」

 

「幽霊!?」

 

 

幽霊って…まあ確かにドラゴンボールの地獄にいた人魂その物だけど…

幽々子や妖夢みたいな人型の幽霊を見慣れてるから、何か新鮮だな。

 

 

「その幽霊とその蒲公英には、一体どんな関係があるんですか?」

 

「大量の幽霊がそこらじゅうの花に取りついて、一斉に開花させたのよ。

ほら、上にも沢山いるでしょう?」

 

 

幽香さんに促され、俺は首を上に向ける。

今まで雲だと思っていた物は全部幽霊の軍団でした。こうして見ると何か怖い。

その様子を見て、幽香さんの手に握られている幽霊がじたばたし始めた。

 

 

「…あぁ、まだ説明が済んでないから大人しくしてなさい…ね♪」

 

 

幽香さんの言葉と共に幽霊が少しへこんだのは気のせいじゃ無いだろう。

このままだと幽霊が握り潰されそうなので、俺は早急に結論を言った。

 

 

「つまりこの異変は『幽霊大量発生異変』って事ですか?」

 

「そうなるわね。

私は『妖精馬鹿騒ぎ異変』とも呼んでいるけど。」

 

「妖精が馬鹿騒ぎ?

あぁ、花が一杯咲いているからって事ね…」

 

 

良く見ると、何処かに飛んでいく幽霊達に混じって妖精達も飛んでいる。

…そして、面白半分に弾幕を幽霊達に向かって撃っている。幽霊達怒るぜ、ありゃあ…

 

 

「で、どうするの?

私の見立てだと、この異変は解決してもしなくても特に変わりはないわ。」

 

「解決するに決まってるじゃない!

こんなに分かりやすい『異変』なのよ?博麗の巫女である私が解決しないでどうするの!

…どうせ私が動かなかったら、あなたは言いふらすんでしょうし。」

 

「あら、良く分かったわね♪

流石は博麗の巫女♪」

 

 

幽香さんが霊夢をからかっている間、俺は霊武さんと一緒に空を見ていた。

 

 

「…あの幽霊、妖精達に近づいていきますね…」

 

「…あぁ、何か抗議している様な雰囲気だな…

あ、また妖精達が攻撃したぞ。」

 

「吹き飛びましたね。

先にいた幽霊達に受け止められて…今度は十体ぐらい引き連れてます。」

 

「妖精達も驚いている様だ。動揺しているのが目に見て取れる。」

 

「さあ、この攻防の行方h…げっ!?」

 

「何いつまでも上向いてんのよ、祠弥に姉さん…」

 

 

…霊夢よ、いくらなんでも喉に手刀は痛い。息が止まる。

霊武さんも同じ事をやられたらしく、喉を押さえて青い顔をしていた。

 

 

「…さてと、じゃあ異変解決といきましょうか!

協力してくれるんでしょう、風見 幽香?」

 

「そうねぇ…紀流が一緒なら良いわよ?」

 

「…とか言って、結局祠弥を好き勝手に振り回すんでしょうけどね…

仕方ない、祠弥!あんたも来なさい!!」

 

「元からそのつもりだ。」

 

 

霊夢は俺の返答を聞いた後、地面を蹴って宙に浮かぶ。

続いて幽香さんも浮いたので、俺も二人を追って数メートル上昇した。

 

 

「さて、最初は何処に行くべきか…」

 

「とにかく、幽霊達が飛んでいく方向に進んでみれば良いんじゃないか?」

 

「それが…よっ…一番…ほっ…だろうな…とっ!」

 

「?」

 

 

霊武さんの声が途切れ途切れなのを不思議に思い、俺は声の聞こえてきた方を向く。

しかしそこに霊武さんはおらず、代わりに真上から霊武さんの声がした。

 

 

「どうした…よっ…進まないのか?」

 

「…姉さん、まさか飛べないの?」

 

「飛べるぞ?

現に今、こうやってこの高度にいるじゃないか。」

 

「いや、そうじゃなくて…

目まぐるしく動き回ったりせずに、ずっと浮いてたりは出来ないの?」

 

「それは流石に出来ないな…」

 

「「!?」」

 

「何を驚いているんだ?」

 

 

え、あんだけ強いのに飛べないだと!?悟天以上に順序がおかしくないか!?

 

 

「…霊武さん、大きな穴が目の前に開いていたらどうしますか?」

 

「飛び越えるが?」

 

「…あ、そうですか…」

 

 

…何だろう、あまりにも強すぎて飛べる様になる必要性が無かったのかな?

今は気の放出を連続で行って飛んでいるみたいだし。

 

 

「飛べるのは霊夢と妖精、妖怪ぐらいのものだろう?

私が飛べなくたって、何ら不思議な事ではない。」

 

「…あの、俺は人間なんですが。」

 

「えっ!?お前は妖怪では無いのか!?

私と互角以上の力を持っている事や空を飛べる事からして、てっきりそう思っていたのだが…」

 

 

確かに霊武さんの言う通り、はたから見れば妖怪だよな、俺。

だけど人間なんだよなぁ…

 

 

「…とにかく、霊武さんは飛べないんですよね?」

 

「まぁ、そうなるな…ほっ!」

 

「丁度良いわ。姉さん、この機会に飛べる様になっておけば?

ここで飛べる様になれば、後々重宝するわよ?」

 

「しかし、今は異変を…」

 

「幽香の言う事が正しければ、今回の異変はそんな急ぎ足で解決しなくても良さそうだしね。

しばらく時間をとっても良いわよね、幽香?」

 

「五分だけなら待ってあげる♪」

 

「…幽香さん、流石に五分は短すぎるでしょう…」

 

「じゃあ一分♪」

 

「五分の一になってますよ!?」

 

「五十九、五十八…」

 

 

もうカウントダウン始まってるじゃねーか!

仕方がない!誰でも出来る舞空術教室(一分短縮バージョン)を始めようか!!

 

 

「霊武さん、まずは地上に降りましょう。」

 

「だがな…」

 

「五十二、五十一…」

 

「良いから早く!」

 

「わ、分かった…」

 

 

霊武さんは気を放出するのを止め、博麗神社の境内に降り立つ。

その後に続いて俺と霊夢が降り、俺は直ぐに口を開いた。

 

 

「…えーっと、まずは気を体内で練ってください。」

 

「練気の事だな。分かった。ふんっ!!!」

 

 

霊武さんが軽く腕を横に開くと、前にいた俺達が吹っ飛びそうになる程の暴風が吹き荒れる。

…何でここまで強いのに、今の今まで飛ぶ必要性を感じなかったのかなぁ…

 

 

「…で、次はどうすれば良いんだ?」

 

「後は『飛びたい』って思いながら地面を蹴れば良いのよ。」

 

「…その説明はちと適当過ぎるんじゃないk「おぉ、飛べたぞ!!!」What!?」

 

 

俺が視線を上にやると、両腕を開いて楽しそうに滑空している霊武さんの姿が見えた。

あの適当極まりない説明で飛べる様になるのかよ…まあ俺の説明も適当だったけど。

 

 

「成る程、確かにこれは良いな…そーれっ!!!」

 

 

霊武さんは急上昇し、一瞬で幽香さんと同じ高度にまで到達した。

そして俺達に向かって一言。

 

 

「後五秒らしいぞー!」

 

「やべっ!!!霊夢、行くぞ!!!」

 

「言われなくても!」

 

 

俺と霊夢は素早く地を蹴って飛び上がり、直ぐ様上空の二人の元へたどり着く。

幽香さんはまだ目を瞑って時間を数えていた。

 

 

「一…零!

あら、本当に一分で飛べる様になったのね。」

 

「お陰様でな。」

 

「…ふーん…そう。」

 

「…幽香さん、何でそんな残念そうな顔なんですか?」

 

「別に…」

 

 

幽香さんは何だ面白くないとでも言いたげな顔で無造作に傘の柄を弄くっている。

…まさか、また誰か刺すつもりか?警戒しとこう。

そして、その警戒は間違っていなかった。

 

 

「じゃあ飛べる様になった所で、先に進むとしようか…っ!!!」

 

「♪」

 

 

幽香さんがターゲットに指定したのは、まさかの出会ってから五分程度の霊武さん。

しかし霊武さんはその攻撃を見切り、傘の先端を鷲掴みにしてその進行を止めた。凄い。

幽香さんは何故か(まあ分かりきっているが)嬉しそうにしている。

 

 

「…中々やるわね、あなた♪」

 

「…何のつもりだ?

まさか最初から、私が飛べる様になったら勝負を挑むつもりだったのか?」

 

「そんな事無いわよ♪

これは言うなれば『力を試した』だけ。」

 

「ほう…」

 

「…ちょっと、二人共落ち着いて下さい…」

 

 

…何か場がどんどん険悪になっていく気がする。これは酷い。

そんなおろおろしている俺を見て幽香さんは満足したのか、微笑みながら傘を引っ込めた。

 

 

「今の私に戦闘の意思は無いけれど、あなたがそう望むのなら付き合ってあげるわよ?」

 

「ふん、白々しい事を…

いつかお前を『退治』しに行くから、そのつもりでいるんだな。」

 

「…あなたが?この私を?ふふふ…」

 

「…もう行きましょうよ…」

 

 

もうやだこの二人。幽香さんと霊武さんの喧嘩で幻想郷のお先真っ暗だよ…

俺はもう嫌になり、先に幽霊達を追っていった霊夢をのろのろと追い始める。

 

 

「…あなたも思うでしょう?」

 

「…何をだ?」

 

「紀流は人間にしては面白いって。」

 

「…。」

 

 

笑いながら飛んでいく幽香の後を追いながら、霊武は呟いた。

 

 

「妖怪の考える事は分からん」

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で…どうして…こうなった!?」

 

「どうなったもこうなったも無いわよ!

普通に飛んでたらいきなり襲いかかって来たんだから!!」

 

 

今現在、俺達は妖精達が撃ってくる弾幕の中を潜り抜けている。

一体一体の放つ弾幕の密度は薄いものの、それが数十体ともなれば…うん。

 

 

「邪魔ねぇ…それっ!」

 

「押し通るぞっ!はぁっ!!」

 

 

幽香さんと霊武さんは弾幕に全く怯む事なく、

レーザーや気合い砲らしき攻撃で妖精達を次々と蹴散らして道を作っていく。

…よし、俺もやるか!

 

 

「宇撃『ビッグバンアタック』!」

 

 

俺はスペルを宣言し、右手から青い気弾を撃ち出す。

気弾は高速で妖精達の弾幕の間をすり抜け妖精達の内の一体に当たり、

その妖精を中心として大爆発を起こして周りの妖精と弾幕をいっしょくたに吹き飛ばした。

 

 

「…す…凄い…」

 

「姉さん、このぐらいで驚いてちゃ後が大変よ?

祠弥の力はあんな物じゃない。もっともっと強くなっていくんだから。おっと!」

 

 

霊夢は後ろから迫ってくる妖精と弾幕に気づき、振り向き様に御札を投げて弾幕を相殺する。

そしてそれによって発生した煙に紛れて妖精達に近づき、

サマーソルトキックを連続で炸裂させて次々と地面に叩き落とした。

 

 

「…全く…これじゃきりが無いぞ…」

 

「じゃあいっぺんに片付ければ良いんじゃない?

それそれそれそれそれっ!」

 

 

幽香さんはそう言いつつ、傘から無数の光弾を撃って妖精達を迎撃していく。

 

 

「…良し、超サイヤ人の力を見せてやろう!だぁっ!!!」

 

 

俺は活躍している三人に負けじと気を高めて『超サイヤ人』に変身した後、

間髪入れずに両手に気を溜めて緑色の気弾を作り出し、スペルを発動する。

 

 

「双消砲『ダブルイレイザーキャノン』!!!」

 

「「!?」」

 

 

俺の発射した二つの気弾は驚いている霊夢と霊武さんの側を通り過ぎ…

 

 

「終わった…」

 

 

俺が妖精達に背を向けてダブルVサインを決めた瞬間、同時に爆ぜて周囲を一掃した。

 

 

「…これじゃあ、まるで話にならんな…」

 

「…。」

 

 

丁度俺の後ろで戦っていた幽香さんは、俺の決めポーズにどう反応するべきか迷っている様だ。

やがて、幽香さんはひどく困った顔で口を開き…

 

 

「…超サイヤ人になると、少し理性が飛ぶわけ?」

 

「馬鹿になるって事ですか?

まあ少し凶暴性が増して好戦的になるので、そう見えても仕方がないかもしれませんね!」

 

「…それで片付けちゃって良いのかしら…うーん…」

 

 

更に困り顔になった幽香さんを見て、俺は首を傾げる。

何故そんな顔をしているのかを訊ねようとした時、俺は背後に微かな『冷気』を感じ…

 

 

「暗魂『ダークスピリッツ』!」

 

「氷符『アイシクルフォール』!」

 

 

その場でバリアを展開し、後ろから飛んでくる弾幕を防いだ。

弾幕が止んだのを見計らい、俺はバリアを展開したまま体を回転させて相手に向き直る。

 

 

「あー!何で防ぐんだよー!」

 

 

そこには腕を振り上げて怒っている、他の妖精よりも少し大きくて青い妖精が浮いていた。

俺はチルノの顔を一瞥し、彼女の文句に答える為に口を開く。

 

 

「そりゃあ攻撃されたら防ぐだろ。お前は防がないのか?」

 

「あたいは避けるっ!」

 

「あ、そう。」

 

「それよりも、その金色の髪は『超サイヤ人』だな!

ちょうどよい!あたいは今ここで、祠弥に果たし状を突きつけることにするっ!」

 

 

チルノは俺を指差し、凄まじい冷気を全身から発生させて周りの温度を一気に下げた。

その意気や良し!受けて立とう!!

 

 

「良いだろう…絶望を与えてやる!!

来い、チルノォ!!!」

 

 

誰が聞いても悪役でしかない台詞を吐き、俺は気を一気に高めて辺りの冷気を吹き飛ばす。

 

 

「望む所だっ!!!

喰らえ…氷符『アイシクルマシンガン』!!!」

 

「そう来るか…ならば全て撃ち落としてやろう!!!

狂光『クレイジーフィンガービーム』!!!」

 

 

チルノは腕を振り上げ、下ろすと同時に無数の氷柱を超高速で撃ち出す。

俺はそれに対抗するべく新スペルを発動し、両手の指で氷柱に狙いを定めてビームを撃ちまくる。

 

 

「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃあ!!!」

 

 

双方の攻撃は最初こそ拮抗していたが、やがて紀流が少しずつチルノを押し始めた。

紀流の連続ビームはチルノの氷柱以上に短い間隔で放たれ、じりじりとチルノに迫っていく。

それでも、紀流は手を緩めない。

 

 

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ…!!!」

 

「ぐぅぅぅぅぅぅっ…」

 

 

そして、遂に紀流のビームがチルノの手元に到達した。

 

 

「あぐ…っ!!!」

 

「ハッハァ!お前程度の力じゃあ、まだまだ俺には届かんぞ!!

これで止めだ、消砲『イレイザー…」

 

 

俺が左手に気を溜め、高らかにスペル発動を宣言しようとした瞬間。

 

 

「な…っ!?」

 

「!?」

 

 

いきなり下から飛んできた紫色の霧にチルノは呑み込まれ、眼下に広がる森へと落ちていった。

俺は直ぐに助けに行こうとしたが、いきなり此方に突っ込んできた何かによって阻まれる。

その何かの正体は、俺も霊夢も良く知っている人物…

 

 

「「魔理沙!?」」

 

「おい、どこ見て飛んでるんだ…って何だ、祠弥か…」

 

「何だじゃねえっ!お前は何を仕出かしてくれてるんだ!!

俺とチルノとの勝負に水を差しやがってぇ…」

 

 

俺は激昂して魔理沙の首を引っ掴み、喉笛をぐいっと絞め上げる。

 

 

「痛っ!?ちょっと、落ち着けって祠弥…かはっ…」

 

 

魔理沙は空中でじたばたともがくが、そんな事を気にする俺ではない!

 

 

「覚悟は出来てるんだろうな、魔理沙…

丁度良い…チルノに撃つつもりだったが、こいつは貴様にくれてやろう!!!

消砲『イレイザーキャn「いい加減にしなさいっ!!!」いいっ!?」

 

 

魔理沙の顔に零距離で気弾を撃ち込もうとした瞬間、俺は首元に強烈な蹴りを喰らわされた。

その蹴りに驚いて俺の手が緩んだ所で、魔理沙は必死に喉元から手を振り払って俺から離れる。

 

 

「何すんだ霊夢!俺の邪魔をするつもりか!?」

 

「あんたは魔理沙を殺す気!?

喉笛なんて絞め上げたら息が止まる事ぐらい、あんたにだって分かるでしょう!?」

 

「それがどうした!お前には勝負をいきなり中断させられた怒りが分からんのか!?」

 

「何無茶苦茶な事言って…あ。

祠弥!直ぐに『超サイヤ人』を解きなさい!!」

 

「はぁ!?まだ戦闘中なのに何言っt「良いから早く!!!」分かりましたよ!!!」

 

 

俺は全身から沸き上がってくる苛々を抑え、気を静めて超サイヤ人を解く。

その瞬間、今までの苛々は何処かに飛んでいった。

 

 

「…やっぱり…また怒りっぽくなってたのね。」

 

「霊夢、どう言う事だ?

祠弥が金髪になった事にも驚いたが…」

 

 

驚きを隠せない霊武に対し、霊夢は溜め息を一つついて話し始める。

 

 

「祠弥が言ってたのよ。

『超サイヤ人になると理性が薄くなるから、俺が暴走しかけたら解く様に言ってくれ』って。

すっきりしたでしょ、祠弥?」

 

「…あぁ、すまん。

…ごめんな、魔理沙…」

 

「…げほっ…あぁ、大丈夫大丈夫。平気だぜ。

…いや、私が置かれている状況は決して平気じゃ無かった!!」

 

 

魔理沙がそう言うと同時に、またもや紫色の霧が飛んできた。

…良く見れば魔理沙の弾幕とは似ても似つかないじゃないか…激しく反省。

じゃあ、今の攻撃は一体誰が?

 

 

「こら、待てー!

スーさんを一杯吹き飛ばしておいて、『ああすまん』で済むと思うなよーっ!!」

 

「やべっ、もう追い付いて来やがったのか!」

 

 

声が聴こえてきた方からは、彼女に向かって霧を放ちながら突進してくる小さな影。

頭に細くて赤いリボン、そして袖口とスカートの裾に白いひらひらが付いている紫色のドレス。

そんな人形服の様な服を着た、まさに人形の様な少女だ。

 

 

「お前ちょっとしつこいぞ!」

 

「お前がスーさんに謝らない限り、私はお前を何時までも追い続けるぞっ!!!」

 

「だーかーらー!済まなかったって言っただろ!?」

 

「顔を見てない、スーさんの心配をしない、止まって確かめようともしない…

そして何よりも、敬意が全然籠ってないっ!!!」

 

「大体、あれはわざとじゃ無いんだ!

やたら群がってきた妖精を倒してたら、偶然弾幕が花畑に命中しちまっただけで…!?」

 

 

突然、言い争っていた二人に向かってレーザーが飛んだ。

二人は咄嗟に口論を中断し、素早く後退してレーザーを回避する。

レーザーの出所は、幽香さんが構えている傘の先端部だ。

 

 

「…ねぇ、下らない争いなら向こうでやってくれないかしら?

丁度良い場所を知っているから、案内してあげるけど?」

 

「…幽香さん、まさかその場所って言うのはあの世じゃ無いでしょうね?」

 

「正解♪じゃぁ、早速…」

 

「「止めて」くれ!!!」

 

 

魔理沙と少女は大慌てで幽香から離れ、手をぶんぶんと振って幽香の申し出を全力拒否する。

幽香さんは暫くの間、傘を二人に向けて微笑みながらその様を眺めていたが…

 

 

「駄目♪」

 

 

どうやらよっぽど癪に触った様ですね、うん。

御二人とも、どうか安らかな眠りを…じゃない!止めねば!!

 

 

「それっ♪」

 

「瞬動波『瞬間移動…」

 

 

その場に凍りついた二人に向かって放たれた幽香さんの極太レーザー。

俺はそれが傘から発射されたと同時にスペルを発動し、両腕を後ろに引いて気を溜め…

 

 

「…かめはめ波』!!」

 

 

一瞬で二人の前まで移動して光線を放ち、幽香さんのレーザーを相殺した。

 

 

「ひゅう…二人とも、大丈夫か?」

 

「あ、あぁ…」

 

「…え…っ!?」

 

 

さて、二人は無事だ。後は自分の身の安全の確保をしよう。

煙が晴れてくるにつれ、不機嫌全開の幽香さんの姿が見えてくる。

 

 

「…紀流…何が言いたいか、分かるわよね?」

 

「分かりますがその意見に賛成は出来ません。

一時期の感情で人を消し飛ばすなんて、到底認められませんよ。

…まぁ、俺も魔理沙を殺しかけたけど…」

 

「…。」

 

 

幽香さんは不満顔で俺の話を聞いていたが、不意に傘を上に向け…

 

 

「…それっ!!!」

 

 

そのままレーザーを放ち、直上で大爆発させた。

爆発点からは四方八方に光が飛び散り、地上に向かって落ちていく。

 

 

「…あーあ、綺麗じゃない花火ね…」

 

「…すみません、幽香さん。」

 

「謝罪は後で良いわ。

それよりも…」

 

 

幽香さんは俺から目を離し、後ろにいる二人を睨み付ける。

 

 

「あなた達二人は、一体全体何が原因で争っていたの?」

 

「こいつがスーさんに弾幕を撃って吹き飛ばしたんですよ!」

 

「私はわざとやったわけじゃ無いんだぜ!?

謝りだってしたのに、こいつときたら延々と追っかけてきやがって…」

 

「あれが謝る内に入るんだったら、スーさん達が風で頭を揺らすのだって謝る内に入るよ!!

いつまでも言い逃れしてないで、大人しく自分が悪いって認めたら!?」

 

「…なぁ、スーさんって誰だ?」

 

「鈴蘭の事!!!

人の友達を吹っ飛ばしておいてこんな態度なんて、あまりにも虫が良すぎると思いませんか!?」

 

「だからわざとじゃ無いって言ってるだろっ!!!」

 

「「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ…!!!」」

 

「…。」

 

 

…何これ。

とにかく『魔理沙が鈴蘭を弾幕で吹き飛ばした』って事かな?

 

 

「…魔理沙、素直に謝った方が…」

 

「何だと!?祠弥はあいつの肩を持つのかっ!?」

 

「…いや、そう言うわけじゃ無いが…」

 

「だったら、私達二人の話に割り込んでこないでっ!!!」

 

 

遂に人形みたいな女の子にまで怒られたよ。これは酷い。

 

 

「…分かったよ、もう好きにしてくれ…

はぁ…」

 

「…祠弥、ああいう状態の魔理沙には何言っても無駄よ。

あいつ、どれだけ自分に非があっても主張を貫き通すから。」

 

「うん、予想はしてた。

あーあ、誰かこの状況を一発で打開してくれないかなぁ…」

 

「「じゃあ私が…」」

 

「幽香さんと霊武さんは駄目です!

どうせ打開(物理)とでも言うつもりなんでしょう!?」

 

 

…本当にどうすんだ、これ。

大暴れしてた妖精達も周りで心配そうに見守ってるし。

 

 

「どうしても謝らないんなら、私にも考えがあるっ!」

 

「へぇ、奇遇だな。私も丁度良いアイディアを思い付いた所なんだ…っ!」

 

 

二人の口論がヒートアップし、今にも戦いが勃発しそうになった瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらずですね、『霧雨 魔理沙』。」

 

「「!?」」

 

「私の教えをしっかり実践しているかどうか見に来たのですが、

どうやら、記憶にすら残っていない様ですね。」

 

「…誰だ!?」

 

 

魔理沙が周りをきょろきょろと見回しているのに釣られ、俺達も声の主を探す。

やがて、その人物は妖精の間を通り抜けて(むしろ妖精が進んで退いていた)姿を現した。

 

 

「もう結論は分かりきっていますが、あれから何か、『一つでも』善行を積みましたか?」

 

 

そう魔理沙に向かって淡々と述べているのは、右側の髪が反対側に比べて長い、緑髪の女性。

幽香さんとまでは行かないが、匹敵するほど背が高い。

その頭には、赤と白の長い紐が付いた黒い王冠(?)が乗っている。

 

 

「…い、いやまあ…積んだと言えば積んだぜ?」

 

「それはどのような善行ですか?」

 

 

上半身には、白い袖がついた昔の日本で使われていそうな軍服的な服。

そして下半身には、赤と白の紐が縫い込まれた黒いスカートを身につけている。

 

 

「…本を…ちゃんと借りるって言って…その後返したとか。」

 

「当然の事ですね。ですが、貴方にとっては大きな進歩なのでしょう。

私からしてみれば、全く進歩している様には見えませんが。」

 

 

手に黒い文字が一杯書かれた笏を持ち、その女性は魔理沙の周りをゆっくりと回る。

…おいおい、これじゃまるで尋問じゃないか…

 

 

「…なぁ霊夢、あの人はは一体何者なんだ?」

 

「…『閻魔』よ。

全く、幽香や魔理沙以上に厄介な奴が出てきちゃったわねぇ…」

 

 

…え、閻魔?地獄にいるって言う、あの閻魔大王の事か?

 

 

「あれが!?」

 

「私が意味の無い嘘つくわけ無いでしょ。

名前は確か…」

 

「『四季映姫(しきえいき)・ヤマザナドゥ』。

貴方が『紀流 祠弥』ですね?」

 

 

いつの間にか、その女性は俺の目の前に立っていた。




いきなり登場、最高裁判長。次回は紀流説教会。
感想、意見、アドバイス等々募集中です。
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