東方有無録   作:印鑑

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早苗の九字刺しと大界王神の大界王神烈斬って似てるよね(おい)
というわけでお待たせしました第七十四話目。
ゆっくり読んでいってね!


逆転裁判・幻想郷編〜理不尽な判決を覆せ!

「貴方が、『紀流 祠弥』なんですね?」

 

「…あ、えぇ、まぁそうですけど…」

 

 

…オッス、オラ紀流。

今現在、俺は『四季映姫・ヤマザナドゥ』なる人物に凝視されている所だ。

…何だろう、喋ったら殺されそうな気がする。

 

 

「…ふむ。」

 

「…あの…」

 

「あぁこれは失礼、申し遅れました。

私は地獄で閻魔をしている『四季映姫・ヤマザナドゥ』と申します。」

 

 

…さっき名乗ってたよな?それともあれは霊夢に言ってたのか?

よし、とにかく此方も名乗っておこう。

 

 

「あ、どうも。

知っている様ですが、紀流 祠弥です。」

 

「…。」

 

「…で、えーっと…四季さん?

俺に一体何の用ですか?」

 

「何の用か?それは貴方が一番良く分かっているのでは無いですか?」

 

「…へ?」

 

 

…ちょっと待て閻魔さん、あなたは何を言ってるんだ?

俺は閻魔が自ら出向いてくる程の事をやらかした覚えは無いんだg…

 

 

「…祠弥、あんた何かしたの?」

 

「断じてしてない!!信じるな!!!」

 

 

何で周りの人達は俺を咎める様な目で見てくるんだ!?

…全く、迷惑千万だよ…

 

 

「どうやら、自覚が無いようですね。」

 

 

…自覚っておい…そこまで言うんなら余程問題になる事をしたんだろうな、俺は。

なら聞かせてもらおうじゃないか!

 

 

「すいませんが、何が問題なのか具体的に説明してもらえませんかね?

今記憶を当たってみたんですが、全く身に覚えが無いんですよ。」

 

「分かりました。何故私が貴方に会いに来たか、

それは貴方が『幻想郷の規則』を破っているからです。」

 

「…『幻想郷の規則』?」

 

 

何それ初めて聞いた。幻想郷にも憲法があったりするのかな?

 

 

「人を殺しちゃ駄目とか、盗みを働いては駄目とかですか?」

 

「それは常識に分類されます。

古来より人間は、幻想郷で最も立場の弱い生き物。

この世界に住む人間達はそれをわきまえ、日々を送っています。」

 

「…俺もわきまえてるつもりなんだけどなぁ…」

 

「いえ、貴方は博麗の巫女と共に異変解決に乗りだし、幾度も異変を解決している。

その辺りの妖怪や妖精よりも、遥かに大きな力を行使して。」

 

 

…その辺りって…妖精達や妖怪達に失礼じゃないか?

 

 

「そして何よりも、貴方は人外の存在を恐れていない。

その証拠として、本来人間が畏怖するべき存在である妖怪と共に行動し、異変を解決している。」

 

 

四季さんはそう言いながら、首を動かして幽香さんの方を睨む。

不敵に笑っている事からして、多分幽香さんは自分の事だって分かってるんだろうな…

 

 

「それを言うなら、私だって前の異変は紫と一緒に解決したわよ?」

 

 

霊夢の口から紫の名前が出た途端、閻魔さんは大きな溜め息を一つついた。

 

 

「…八雲 紫…やはり彼女も、私の教えに全く従っていない様ですね。

幻想の賢者たる者がそんな調子では、異変が起こって当然です。」

 

「…私の管轄能力に問題があるって言いたいわけ?」

 

「その通りです。」

 

 

いつの間にか、俺と閻魔さんの間には紫が佇んでいる。

普段ならスキマから体の半分を出して微笑みながら出てきそうな物だが、

今回はそんな様子は全く無い。全身出てるし、顔も真剣そのものだし。

 

 

「進んで出てきたという事は、自身の罪を自覚しているんですね?」

 

「別にそうじゃないわ。

閻魔が愚痴を言うなんて、珍しい事もあると思っただけよ。

でなきゃ、誰が貴方なんかに…」

 

 

紫は閻魔さんを邪魔で邪魔でしょうがないとでも言いたげな顔で見ている。

…紫は結構自由人だから、閻魔さんみたいに厳格な人が苦手なのかな?

 

 

「まあ、貴方の態度云々の話は後でするとして。」

 

「…そのまま忘れなさいよ…」

 

「今は紀流 祠弥、貴方の事が先決です。」

 

 

おっ、やっと視線が俺に戻ってきた。

このまま存在を抹消されるんじゃ無いかと不安で堪らなかったぜ…

 

 

「で、何ですか?

『普通の人間』である俺が異変を解決しているのが問題なんですか?」

 

「それもそうですが、一番の問題は先程も言った様に『人外の存在を恐れていない』事です。

そもそも普通の感覚の人間なら、妖怪と一緒に異変解決に乗り出したりなどしない筈でしょう。」

 

「けど、私は…」

 

「博麗の巫女が普通の人間ではない事ぐらい認知しています。

普通の感覚の人間に、博麗の巫女は務まりませんからね。」

 

「…私が言えた事じゃ無いが、確かにそうかもな…」

 

「魔理沙、それどういう意味?

私が化け物だとでも言いたいわけ?」

 

 

霊夢の目が何か怖い気がするが気のせいじゃないよね。うん。

そんな空気も気にせず、閻魔さんは言葉を続ける。

 

 

「とにかく、貴方は一度己の存在を見直した方が良い。

このまま人間から逸脱した行動を取り続ければ、貴方は間違いなく地獄に落ちるでしょう。」

 

「…え"ぇ!?」

 

 

地獄かー。フリーザとかに会えると良いなー。

…じゃねえっ!!!

 

 

「いきなり地獄行き確定ですか!?

まぁ確かに神社吹き飛ばしたり永遠亭崩壊させたり霊夢の服燃やしちゃったりしましたけd…」

 

「そう、貴方は少し世界の理を乱しすぎる。

今ここで私の裁きを受けて、普通の人間がどの様に生きるべきかを思い出すが良い!!!」

 

 

閻魔さんはそう言い放ち、笏を俺の眼前に突きつけた。

…『これで決まり』的などや顔にいらっと来たから、ちょいとばかし反論させてもらおうか…

そう決めた俺は軽く咳払いをし、口を開く。

 

 

「…ちょっと待った。

その言い分に対して、少しばかり異議を唱えさせてもらっても良いか?」

 

「そんな事をする必要は無い!!

少しは身の程を知れ、紀流 祠弥!!!」

 

 

あくまでも押し通すつもりか…ならば(俺にとっての)正論攻撃だぁ!!!

 

 

「正しい事の為に力を使って、何が悪いんだ?

前の異変もその前の異変もその前の異変も、下手すれば幻想郷が滅びてたかもしれないんだぞ?」

 

「滅びは自然の本来あるべき姿!

妖怪が引き起こした異変で結果的に幻想郷が滅びたとしても、それは自然の常という物だ!!!」

 

「…はぁ。」

 

 

閻魔さんの反論に対し、俺は呆れ顔で肩をすくめて首を横に振る。

勿論、相手の苛々を煽って自身に有利な状況に持っていく為だ。

 

 

「自分に被害が出なければ関係ないって感じのその言い方、まさに『てっぺん』だな。

こうやって時々幻想郷に来て、今みたいに独りよがりの屁理屈を押し付けて回ってるわけかい?」

 

「屁理屈!?それは貴方の方だろう!!

よくそんな幼稚な理屈で私の言葉を否定できると思いましたね!?」

 

「『毒を持って毒を制す』。

屁理屈には強引な理屈をぶつけて対抗するものでしょう、閻魔さん?」

 

「…私の言う事が…『毒』ですってぇ…!?」

 

 

紀流と映姫の議論(口喧嘩)は次第にヒートアップしていく。

その様子を周りの人々は数メートル程離れた場所で見守っている。割って入れる者などいない。

いや、正確には…

 

 

「…丁度良さそうな的が出てきたわね…♪」

 

「止めろ!あの閻魔を狙うぐらいなら私を…」

 

「じゃあ遠慮無く♪」

 

「本気にするなぁ!」

 

 

割って入ろうとする幽香を、霊武が自身を犠牲にして止めようとしていたが。

そんな二人を呆れた目で一瞥した後、霊夢は再び紀流に視線を戻してため息をついた。

 

 

「あの閻魔に反論出来るなんて、やっぱり紀流は凄いわね…」

 

「…ふん、良いきみよ!

紀流ー、頑張りなさーい♪」

 

「紫…」

 

「「「…。」」」

 

 

紀流と映姫を囲んでいる幽霊と妖精達も、今や争いを止めて喧騒の行方を見守っている。

 

 

「どうあがいても、貴方は『黒』です!

貴方も自ら地獄に落ちたいと思っているわけではありませんよね?」

 

「そうだな…

地獄をのんびり観光した後、瞬間移動でこの世に戻ってくるのも良いかもしれないなー。」

 

「…~っ!!!」

 

 

のらりくらりと閻魔さんの話を横に流していると、

案の定閻魔さんはぶちぎれて笏を思いっきり横に薙ぎ、凄まじい気を放ってきた。

…戦闘モード、って所か…良いだろう。

 

 

「ほう、実力行使か?

そう言うのを待っていt…じゃない、お前がその気なら此方も遠慮はしないぞ?」

 

「…私の判決に『異議』を唱えるとは…

やはり貴方は『普通の人間』ではありませんねっ!!!」

 

「その判決には『異議あり』だな。

誰が何と言おうとも、俺は『普通の人間』なんだ。それ以上でもそれ以下でも無い。」

 

「…何を言っても無駄だと言う事が今やっと分かりましたよ。

私の説法も聞く耳持たず…救いようがありませんね、貴方は。

ですから…」

 

 

閻魔さんは俺にゆっくりと近づき、俺の顔を見下ろす。

その目付きはまるで、空高くから遥か下界を見守っている…

いや、裁きを下そうとしていると言った方が正しいだろうか。

 

 

「この私が直々に、地獄まで連れていってあげますよ。」

 

「大人しく付いていくと思うか?」

 

「力ずくでも。」

 

 

その言葉が終わると同時に、紀流と映姫は気を爆発させた。

両者の体から発生した衝撃波は互いの体に直撃したが、両者の体勢は全く崩れない。

むしろ、紀流は笑っている。

 

 

「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」

 

「全くもう…祠弥も性格悪いわねぇ…」

 

「いや、むしろ祠弥っぽいんじゃないか?

例え相手が閻魔だろうと、自分の考えは押し通s…貫き通す。それが祠弥だぜ。」

 

「え?紀流ってそんなに強引なの?」

 

「…貴方相手の時は別なのよ、幽香…

…歩く爆弾低気圧を刺激したくないんでしょうね、紀流は。」

 

「え?」

 

「…何でも無いから早くその傘を引っ込めて。」

 

 

紫はそう言いながら自身に向けられている幽香の傘の先端を指で横にずらし、

凄まじい気の奔流の中にいる二人に視線を戻す。

 

 

「…。」

 

「…。」

 

 

紀流と映姫は顔を突き合わせ、暫くその場に佇んでいたが…

 

 

「…来いよ…」

 

「…良いでしょう…」

 

 

本人達にしか聞こえない程の小声で言葉を交わした後、

一瞬で周りの者達の視界から消えた。

 

 

「「「!?」」」

 

 

まるで白昼夢の様な出来事に、妖怪と妖精達からはざわめきが上がる。

そんな中、霊夢達はと言うと…

 

 

「…弾幕裁判の始まり、ね。」

 

「あぁ、その様だな…」

 

 

首を曲げて空を見上げ、遥か上空でぶつかり合っている二つの影を見ていた。

 

 

「あなた達、何で空を見てるの!?

さっきは閻魔さんに中断させられたけど、まだ私とスーさんの怒りは…」

 

「…さっきから五月蝿いわね…

魔理沙、こいつが怒ってるのはあんたのせいでしょ?何とかしなさいよ。」

 

「…はぁ…分かったよ。」

 

 

魔理沙は溜め息を一つついて上空の戦いから目を離し、ぷんすか怒っている少女に目を向ける。

そのまま魔理沙は相手の顔を覗きこんでいたが、

やがて何かを思いついた様な顔になって口を開いた。

 

 

「…じゃあこうしよう。

私とお前で、祠弥と閻魔のどっちが勝つかに賭けるんだぜ。

閻魔が勝ったら、私はお前の言う通りに謝ってやる。

けど祠弥が勝ったら、今日の喧嘩は全部水に流す…ってな感じでどうだ?」

 

「…ふん、そこまで言うんならそれで良いわよ!

じゃあ、私は閻魔様の方に賭けさせてもらうわ!」

 

「じゃ、私は祠弥だな。」

 

「…馬鹿だな、閻魔様に人間が敵うわけ無いのに…

え、今閻魔さんと人間が戦ってるの!?」

 

「五月蝿い…」

 

「ひっ!」

 

 

幽香は顔を下ろさずに目だけを動かし、少女を黙らせる。

彼女の威圧をまともに喰らった少女は恐れおののき、その場で縮こまった。

 

 

「…そんな奴と賭け事してる暇があったら、あなたも上を向いたらどう?

まぁ、見えるとは思えないけどね…」

 

 

そう言って、幽香が再び視線を上空に戻そうとしたその時。

 

 

「…あちゃぁ、やっぱりこうなっちまったかぁ…」

 

「「「?」」」

 

 

その場にいる何者の物でもない声が、空を見上げている霊夢達の耳に入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とぇいっ!!!」

 

「…フンッ!!!」

 

 

紀流の放ったオーバーヘッドキックは、映姫の笏によって受け止められ、弾かれる。

攻撃を防御された紀流は逆さのままお礼とばかりに気弾を乱射したが、

映姫はその場から動く事無く笏を振り、全ての気弾を掻き消した。

 

 

「うーむ…無駄の無い完璧な防御だな…」

 

「…思った以上に、紀流 祠弥は力が大きい…

私に異議を唱えるだけの事はあると言う事ですか。」

 

「「さて、どうするか…」」

 

 

両者は同時に思考を始めるが、それも現実時間に換算すればほんの一瞬の事。

 

 

「「とにかく相手の「防御を」「攻めを」崩すっ!!!」」

 

 

二人は全く正反対の答えを同時に出し、同時に行動を起こした。

 

 

「散弾『トラップシューター』!」

 

 

紀流は右手に気を込め、緑色の気弾を無数に放つ。

 

 

「嘘言『タン・オブ・ウルフ』!」

 

 

映姫は笏で円を描きつつ、笏の先端から青色の弾幕を撃つ。

二人のスペルはぶつかり合い、小さな爆発と共に煙幕が発生して互いの姿を覆い隠した。

 

 

「『気合い砲』!」

 

 

紀流はいち早く次の行動に転じ、目から気を発して煙を吹き飛ばす。

直ぐに紀流は映姫の姿を捉え、次のスペルを発動しようとしたが…

 

 

「…さぁ、お次はこれだ…っ!?」

 

 

それよりも早く、紀流に向かって赤い弾幕が飛ぶ。

咄嗟に弾いた紀流の目の前には、その額に笏を真っ直ぐ突きつけている映姫の姿。

笏の先端は赤く光り輝き、凄まじい量の気が溜まっている事を示している。

 

 

「今度こそ黒ですよ、紀流 祠弥。」

 

「…そいつはどうかな?

魔口『超魔口砲』!!!」

 

 

笏の先端から赤い弾幕が放たれたると同時に、紀流の口からも緑色の波動が放たれた。

瞬間、二つの光は溶け合い…

 

 

「うぐぅ!?」

 

「ごふっ!?」

 

 

激しく弾け、紀流と映姫を吹き飛ばす。

 

 

「くうっ…!」

 

 

映姫は閃光をもろに全身に喰らって激しく弾き飛ばされたが、

直ぐ様体勢を立て直して煙の中にいるであろう紀流に笏を向ける。

 

 

「…うぶっ…少し呑み込んだ…ぁっ…

ぐ…げほっ!!!」

 

「っ!?」

 

 

紀流の口からは、咳の代わりに気弾が放たれた。

当然映姫にもこの攻撃は予想出来る筈もなく、咄嗟に笏で受け止めて上に弾く。

 

 

「…あー、すっきりした…

…歯、欠けたりしてないよな?」

 

「…。」

 

 

映姫は笏を見、又直ぐに紀流へと集中を戻す。

その時笏には肉眼では確認出来ない程小さなひびが入っていたのだが、映姫はそれに気づかない。

何故なら。

 

 

「紅拳波『二十倍界王拳…」

 

「…審判『十王裁判』!!!」

 

「…かめはめ波』っ!!!」

 

 

その事に気づく余地も与えず、紀流が巨大な空色の光線をぶっぱなしたからである。

映姫も負けじとスペルを発動し、自分の分身を九体生み出して別々に拡散弾幕を撃たせた。

単体の十倍の量の弾幕はいとも容易くかめはめ波を貫き、紀流を目掛けて飛んでいく。

紀流は驚くが、にやっと笑ってこう呟いた。

 

 

「…しゃらくさい、一気に突破してやるよ!

暗魂『ダークスピリッツ』!!!」

 

 

紀流は界王拳を発動したまま新たなスペルを宣言し、緑色のバリアを展開する。

そして迫り来る弾幕の嵐を見据え、躊躇無く突進した。

 

 

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ…!!!」

 

「…あの弾幕の中を…通り抜けるつもりとは。

ですが…」

 

 

映姫はそう呟き、笏を構えていない方の腕を横に振る。

その動作を合図にしたかの様に、映姫の召喚した九体の分身は紀流を取り囲み…

 

 

「逃れられはしないっ!!!」

 

 

一斉に弾幕を放ち、紀流のバリアを打ち砕いた。

バリアを破られた事に紀流は驚愕し、あわやその命も風前の灯かと思われたが…

 

 

「ちぃっ…超っ!サイヤ人っ!!!」

 

 

弾幕が当たるほんのコンマ一秒前に紀流は気を高め、

黄金の戦士『超サイヤ人』に変貌し…

 

 

「はぁーぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

体の奥底から気を解き放ち、弾幕を分身ごと纏めて跡形も無く消し飛ばした。

紀流は辺りの弾幕が消滅したのを確認すると、映姫の方を向いて大笑いを始めた。

 

 

「フフフッ…ハハハハハハハハハ!!!

どうした映姫、お前の力はこんなもんか!?」

 

 

紀流は映姫を挑発するが、映姫は冷静さを失わずに紀流を観察する。

 

 

「…あれが紀流 祠弥最大の特徴、

『髪色を黄金にする事による身体強化』…超サイヤ人ですか。

全く、人間離れした技を遠慮もなく!」

 

「さぁてと、しっかり避けないと吹っ飛んじまうぜ?

双消砲『ダブルイレイザーキャノン』!!!」

 

 

紀流は両掌にエネルギーを収縮させて緑色の気弾を作り出した後、

連続で腕を振り下ろして『全力投弾』とでも言うべき勢いの気弾を映姫に向かって投げた。

 

 

「ぐうっ!!」

 

 

映姫はまず最初に飛んできた気弾を受け止め、弾き返そうとする。

しかし間髪入れずに二つ目の気弾が迫ってきた為、映姫は咄嗟に笏の上で最初の気弾を滑らせ…

 

 

「…ふんぬっ!!!」

 

 

二つ目に飛んできた気弾といっしょくたにし、二つ纏めて地上へと弾き飛ばした。

気弾は暫くの間混ざりあいながら落ちていったが、やがて激しい爆発を起こす。

それもよりによって戦いの行方を見守っている者達がいる高度で、だ。

 

 

「紫、止めるわよ!

夢符『二重結界』!!」

 

「境符『四重結界』!!」

 

 

霊夢と紫はいち早く反応し、結界を発生させて爆発をその中に閉じ込める。

しかし所詮は一時しのぎ、いつまでも閉じ込めておけるわけは無いが…

 

 

「姉さんっ!!!」

 

「あぁ、任せておけ!

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!!」

 

 

霊夢の合図と共に霊武は結界の前に立ち、全身に気を纏って右手を後ろに引き…

 

 

「てりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

目にも止まらぬスピードで空気を切り裂き、凄まじい威力の拳を結界に向かって叩き込んだ。

空で地震が起こったかの様な大振動の後、結界には少しずつひびが入っていき…

 

 

「…ふうっ。」

 

 

霊武の安堵の溜め息と共に砕け、中から優しい風が吹いて彼女の長い髪を靡かせた。

 

 

「…え、今何をしたんだ!?」

 

 

魔理沙は何が起こったのかを咄嗟に理解出来ず、思わず傍らにいる幽香に訊ねる。

幽香も今回ばかりはやな顔一つせず、淡々と霊武がした(であろう事)を説明した。

 

 

「恐らくあいつは、結界の中に閉じ込められていたエネルギーを相殺したのよ。

それもスペルでも弾幕でもなく、己の拳のみでね。」

 

「ほー…」

 

 

幽香はそう言いつつ、霊武と話している霊夢と紫の二人に視線を定める。

 

 

「あーあ、袖びりっびりじゃない…

普段の服じゃ無いんだから、もう少し考えて行動してよ!!」

 

「…しかし、今の力で丁度あの攻撃が相殺出来るんだぞ?

力を抑えながらというのはちょっと…」

 

「霊武、もういっそのこと上は脱いじゃったら?

そっちの方が動きやすいんじゃないかしら?」

 

「…さ、流石にそれは…」

 

「…。」

 

 

幽香は暫く彼女達のやり取りを眺めた後、魔理沙に視線を戻す。

魔理沙は目を輝かせて霊武を見つめていたが、幽香の視線に気づいて口を開いた。

 

 

「…ひゅう…そんな事が出来るのかぁ…

やっぱり、人間って凄いぜ…」

 

「…紀流の攻撃を相殺したって事は、あいつの強さは紀流に匹敵するという事…

冗談のつもりだったけど、今度本当に勝負を挑んでみようかしら…♪」

 

「…おい、幽香?」

 

 

魔理沙の呼び掛けを幽香は無視し、再び上空の戦いに集中し始めた。

そんな彼女を見て魔理沙は少し落ち込み、横に立っている人物に向かって口を開く。

 

 

「…全く、本当に凄いんだなぁ、お前の上司は…」

 

「そりゃあそうさ。

何せ四季様は、地獄で一番偉い『最高裁判長』。」

 

 

そう答えたのは、赤髪をツインテールにした高身長の女性。

体にはロングスカートと着物を混ぜ合わせた様な青と白の布を重ねた半袖の服を来ており、

腰には巨大な一文銭の付いた腰巻をしている。

 

 

「この私、『小野塚(おのづか) 小町(こまち)』の上司なんだからね!」

 

「…あんた、閻魔様より偉そうだね。」

 

「滅相も無いさ!ははは…」

 

 

小町はそう言い、空を見上げる。

相変わらず、二人の戦いは続いている。

 

 

「…四季様…無茶し過ぎないで下さいよ…」

 

 

激しく動き回る映姫を見て、小町はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ…はぁ…」

 

「フフフ、中々やるな。

伊達に閻魔をやっているわけじゃあ無い様だ。

だがっ!!!」

 

「なっ!?」

 

 

紀流は右手を前に突き出し、不意に光線を発射する。

映姫は咄嗟に笏を振り、それによって発生した気で光線を掻き消したが…

 

 

「上っ!?」

 

「その高くなった鼻、一気にへし折ってやるよ!

喰らえ!殺輪『キルドライバー』!!!」

 

 

紀流は両掌を合わせて輪っか状の気弾を作り出し、頭上から一気に映姫目掛けて振り下ろした。

気弾を見つめたまま動こうとしない映姫を見て、紀流は勝利を確信したが…

 

 

「何っ!?」

 

 

映姫に目前まで迫っていたスペルは、横から何者かが乱入してきた事によって爆発した。

勝利を確信していた紀流は乱入者に憤り、思わず叫ぶ。

 

 

「誰だお前は!死にたいのか!?」

 

 

しかし、紀流の叫びに答えた声は紀流を驚愕させた。

 

 

「お前こそ、人を殺したいのか?」

 

「…え"っ!?」

 

 

それもその筈。

煙が晴れていく中、映姫を守る様にして立っていたのは…

 

 

「…審判『浄頗梨審判 -紀流 祠弥-』。」

 

 

紛れも無く、紀流 祠弥その人そのものだったからだ。

 

 

「「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」」

 

 

紀流の驚愕と同様に、観戦者達も驚愕している。

誰であろうと、いきなり同じ人間が二人もいるとなれば…

 

 

「波符『かめはめ波』!」

 

「うわっとぉっ!?」

 

 

驚かずには、いられない。

紀流は映姫の方の紀流が放ってきたスペルに驚き、間一髪で回避する。

しかし、その避けた先には…

 

 

「そらっ!!!」

 

「げっほうっ…!!!」

 

 

既に紀流が瞬間移動で先回りしており、紀流の背中をこれでもかとばかりに蹴り飛ばす。

紀流の飛んでいく方向には、先程の位置のまま映姫が佇んでいる。

 

 

「…紀流 祠弥。判決を言い渡します。

貴方は…」

 

 

映姫は笏を真っ直ぐ紀流へと向け、言葉とスペルを宣言する。

 

 

「…『有罪』です。

罪符『彷徨える大罪』っ!!!」

 

「宇撃『ビッグバンアタック』!!!」

 

 

スペル宣言と同時に映姫は笏をゆっくりと横に動かして線を描き、

その線上から無数の笏を生み出し、紀流目掛けて乱射した。

 

 

「「祠弥っ!!!」」

 

「…賭けは私の勝ちだね!」

 

 

片や閻魔のスペル、片や超サイヤ人のスペル。

誰もが『閉廷する』と思った。

…だが。

 

 

「完防壁『パーフェクトバリヤー』!!!」

 

 

紀流は紀流に蹴飛ばされた時点で既にスペル発動の準備をしており、

今が好機とばかりに両手両足を一気に広げて紫色の衝撃波を放ち、間一髪二人のスペルを消した。

 

 

「…くっ…」

 

「我ながら中々しつこいな…

まぁ、俺とお前は同じ『紀流 祠弥』。

一対一じゃ勝負がつかないが、生憎今は二対一。いずれお前は負けるのさ。」

 

「ほう…

お前はさっき閻魔さんのスペルによって生み出された、俺自身ってわけか。」

 

 

紀流が紀流を睨み付けると、

紀流はふわっと空を横切って映姫の前に立ち、再び口を開いた。

 

 

「『俺』は『お前』、『お前』は『俺』…

ただ一つ違うのは、俺は超サイヤ人で姿が固定されているって事かな。

お前はパワーを消耗するが、俺は消耗しない。お前に勝ち目は無い。」

 

「その通りですよ、紀流 祠弥。

いい加減私の裁きに抗い続けるのは止めて、自身の罪を認めてはどうですか?」

 

「…確かに、そうするのが懸命だろうな。

じゃあ俺からも一つ言わせてもらおう。」

 

 

紀流は顔をきっと上げ、紀流を指差してこう言い放った。

 

 

「『お前』は『俺』じゃねぇっ!!!」

 

「「っ!?」」

 

 

紀流の台詞に二人が怯んだのを見逃さず、紀流は更に畳み掛ける。

 

 

「もしもお前が本当に俺だって言うなら、これから俺が何をするか当ててみろよ。

まぁ、無理だろうな!お前は所詮『さっき』生み出されたコピー!!

だから、たった今俺が思いついた事を当てるなんて『不可能』だ!!!」

 

「くっ…!」

 

「姿を固定したのは失策だったな!

はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…っ!!!」

 

 

紀流はその場で腕を曲げ、全身に気をみなぎらせていく。

そして紀流を包む金色のオーラが一瞬膨張したかと思うとオーラは爆ぜ、強烈な光を放った。

 

 

「…くうっ…一体何を…!?」

 

 

激しい気が渦巻く中、紀流が見たものは。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ…」

 

 

全身からバーナーの炎のごときオーラを放っている、

自分に比べて遥かに体格の大きな『紀流』だった。

 

 

「え…?」

 

 

その姿を、しっかりと視認する暇も無く。

 

 

「でりゃぁっ!!!」

 

 

その者が放った『手刀』によって紀流は体を両断され、煙となって爆散した。

 

 

「…ここまであっさり倒せるとはな…

やっぱり、修行しておいた甲斐があったぜ。」

 

「…あ…貴方は…」

 

「ん?」

 

 

映姫の声に反応し、その戦士は映姫の方を向く。

 

 

「貴方は…紀流 祠弥では無いんですか…!?」

 

「違うな…

俺は『超サイヤ人・第二段階』の紀流 祠弥、すなわち…」

 

 

右手の親指を自身に向け、にやっと微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『(スーパー)紀流』だ!!」

 

 

 

 

 




スーパー紀流、
     爆誕。
…というわけで今回も相変わらずの予告詐欺。
紀流に説教するんじゃない、紀流が説教するんだ。

【挿絵表示】

次回、紀流のものすげえ大活躍が見られるよ!楽しみにしててね!!

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