東方有無録   作:印鑑

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第七十五話目。
ゆっくり読んでいってね!


その判決、白か黒か〜最終法廷、審議開始

「…ス…(スーパー)紀流?

…何なんですか、それは?」

 

「今説明したばかりだ。

二度も言うのは面倒なんで、後は自分で勝手に想像してくれ。」

 

 

よう…俺が(スーパー)紀流だ!

超サイヤ人・第二段階へと進化した俺の前では俺のコピーなんざ雑魚に過ぎんぜ!!

現に今、手刀一発で消し飛ばしてやったからなぁ!!!

 

 

「ほ…祠弥…!?

超サイヤ人になってからまだ間もないって言うのに、もう新しい力を手に入れたの!?」

 

 

紀流の変化に、戦いを見守っていた霊夢達は驚く。

更に巨大化した気、少しだけボリュームの増えた金髪、そして筋肉で肥大した彼の四肢と胴体に。

 

 

「やたら筋肉質になったなぁ…

体格も良くなって、全身から『強者』のオーラが滲み出てるのが見えるみたいだぜ…」

 

「…そう?

私は前の紀流の方がましに見えるけど。」

 

「何幽香、紀流が自分より強そうに見えるのが不満なn…げほっ!」

 

「…まぁまぁ、落ち着け。

紫もあまり他人をおちょくるな。いつか痛い目見る事になるぞ?」

 

「…もう見てるわよ…はぁ…」

 

 

紫は痛む腹を擦りながら上を向き、自信満々の表情をしている紀流に視線を戻す。

ちなみに妖精&幽霊達はと言うと、紀流が超サイヤ人になった辺りから戦いが見えなくなり、

諦めて動きを追うのを止め、ひたすら二人が戦っているであろう場所を見ている。

 

 

「どうした、俺が怖くなったのか?

俺はただ気を高めてパワーアップしただけで、背だってお前よりも低いんだぜ?

言ってしまえば、ただの『筋肉だるま』だ。」

 

「…確かに、彼の力はより強大な物になっている事は間違いない…

しかし、今の攻撃だけでは彼の俊敏性が如何ほどかを判断する事は難しいでしょう…」

 

 

映姫は紀流の独白を聞くと同時に、相手について思考を巡らせた。

勿論独白をそのまま鵜呑みにするのでは無く、自分の考えも交えて冷静に判断する為である。

 

 

「来ないのか?なら此方から行くぞ!!!

とらぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

紀流はいつまでも攻めてこない映姫に苛立ち、気を放出しながら彼女に突進する。

その姿を見て、映姫は一旦結論を出すのを保留し…

 

 

「彼の身体能力の変化がどの様な物か…

この攻防で判断するっ!!!」

 

 

突っ込んでくる紀流に集中を戻し、両腕を交差させて防御の構えをとった。

紀流の拳が腕に炸裂した瞬間、映姫は凄まじい衝撃に襲われる。

 

 

「あ…ぐぅ…っ!」

 

「ほう、受け止めたか…

だが衝撃までは無効化出来…まあぁいっ!!!」

 

 

紀流は掛け声と共に気を拳に集め、

そのまま相手の体を通り抜けさせる様に気を放出して映姫を吹き飛ばす。

映姫が仰け反りながら飛んでいくのを確認すると、紀流は瞬時に右掌を彼女に向け…

 

 

「喰らえ!こいつが(スーパー)紀流の…

宇撃『ビッグバンアタック』だーっ!!!」

 

 

今まで撃ってきたビッグバンアタックの二倍はあろうかという青い気弾を形成し、放った。

気弾はその大きさに反して猛スピードで映姫の下まで到達、大爆発を起こす。

爆煙が上がって互いの姿が隠れると、紀流は腕を組んでその場で止まり、にやっと笑う。

 

 

「フン…」

 

「し…四季様っ!

くそっ…!!」

 

「…おいおい、落ち着けって…」

 

「これが落ち着いていられるかっ!

四季様の大ピンチだぞ!?」

 

「…あんたも閻魔の部下なんだったら、もっと閻魔の事を信じたらどう?」

 

「へっ?」

 

 

霊夢に促され、小町は上空の煙に目を凝らす。

瞬間、煙の中に黒い人影が映り…

 

 

「はぁっ!!!」

 

「ほう…」

 

 

その体から凄まじい気を発して煙を吹き飛ばし、再び紀流と向かい合った。

紀流はこれと言って驚きもせず、むしろ無事で当然だとでも言いたげなにやけ顔を浮かべている。

 

 

「…確かに、筋肉だるまと呼ぶに相応しい馬鹿力ですね。

身を持って体感したくはありませんでしたが。」

 

「戦いってのはそう言う物なんだよ。

生きるか死ぬかの、な。」

 

 

そう言いながら紀流は表情を真面目な物に変え、映姫を見据える。

映姫は紀流の表情が急に変わった事に不意をつかれ、思わず笑みをこぼした。

 

 

「…ふふふ…」

 

「ん?」

 

 

紀流が不思議そうに首を傾げたのを見て、遂に映姫は堪えきれなくなって笑いだした。

 

 

「…ふふふ…あはは!

もしも幽霊達が貴方の様な者達ばかりだったとしたら、私の仕事も増えるんでしょうね!!」

 

「面倒…って事か?

わざわざ閻魔さんに言われなくても、俺はしっかり自覚してるさ!」

 

「自覚しているのでしたら大人しく裁きを受けなさいっ!!!」

 

「うわっと!?千刃『サウザーブレード』!」

 

 

映姫は笑みを憤怒の表情に変えて紀流に突っ込み、笏を剣の様に振り抜く。

紀流は慌ててスペルを発動して紫色の刃を右手に纏い、これを弾いた。

 

 

「ひゅう…危ない危ない…

流石は閻魔、まだまだ元気そうだな。」

 

「…くっ…」

 

「ん?」

 

 

映姫が悔しげな表情を見せたのを紀流は疑問に思い、首を傾げる。

まあ、映姫が悔しがるのも仕方が無いだろう。

今の攻撃を紀流は防いだ=紀流の俊敏性は全く落ちていないという事が判明したのだから。

 

 

「…どうする…真っ向から挑んだとしても勝機は薄い…

かといって彼に不意討ちが効くとは思えない…」

 

「もしかして、肉弾戦の方が好みか?

良いだろう、こちとら伊達に(スーパー)紀流を名乗っちゃいないぜっ!!!」

 

「なっ!?」

 

 

映姫の思考も露知らず、紀流は『映姫は肉弾戦をしたがっている』と勝手に判断して殴りかかる。

 

 

「俺の一撃を喰らいなぁっ!!!」

 

「くっ…せいっ!!」

 

 

映姫は咄嗟に攻撃をいなし、カウンターの拳を紀流の胴にねじ込む。

が、紀流は何一つ表情を変えず…

 

 

「…ぬるいパンチだなぁ。」

 

「あっ!?」

 

 

そのまま右手を伸ばして映姫の両腕を素早く掴み、斜め上に掲げた。

映姫は宙ぶらりんの体勢でもがくが、両腕が自由になる気配は全くない。

 

 

「い…今すぐに離しなさいっ!」

 

「じゃあお前は『許して下さい』って言う極悪人を許すのか?」

 

「くっ…」

 

 

紀流の手を引き剥がそうと躍起になっている映姫を見て、紀流は笑顔を崩さずに口を開く。

 

 

「もっと真面目にやれよ、閻魔さん。

それとも、これが目一杯なのかな?」

 

「…当然…本気ではありませんよ!」

 

「ほう、なら遠慮無くぶつかってこいよ。

『本気』で…なっ!!!」

 

「ひゃぁ!?」

 

 

紀流は高く掲げていた映姫の腕から手を離し、両眼から気合い砲を放って映姫を後方に飛ばす。

そのまま紀流は間髪入れずに右腕を斜めに構え、人差し指と中指の先に紫色の気を溜め…

 

 

「星断『大地裂斬』!」

 

 

スペルを宣言すると同時に右腕を横に薙ぎ、放射状に広がる紫色の刃を放った。

驚いた映姫は一気に数メートル程上昇し、軽く息をつきながら再び紀流を見据えようとしたが。

 

 

「いな…けぼっ!?」

 

「…横だよ、閻魔さん。」

 

 

その場所には既に紀流の姿は無く、いつの間にか脇腹に鋭い蹴りを入れられていた。

紀流はゆっくりと足を映姫の脇腹から離し、二メートル程後退して口を開く。

 

 

「フフフ…どうだ?

今のはこれから見せる『最終攻撃』の為の準備運動に過ぎないんだぞ?」

 

「…そう…でしょうね…

そうで無かったら失望していましたよ。」

 

「フン、相変わらず人を苛々させるのが上手い閻魔だな…」

 

「その言葉、そっくりそのまま貴方に返しますよ。

但し、閻魔の箇所を『人間』に変えて…ですがね。」

 

「そうか…」

 

 

紀流の声は冷静だが、その体から発せられている気は先程よりも大きくなっている。

やがて、その気が一段と激しくなったかと思うと…

 

 

「でかい口をきくのもそこまでだ…今すぐ黙らせてやるぞ、覚悟しろ!!!

暗魂『ダークスピリッツ』!!!」

 

「…っ!」

 

 

紀流はスペルを発動して緑色のバリアを身に纏い、映姫に向かって突進を開始した。

 

 

「くっ!」

 

 

映姫は全速力で後退しつつ弾幕を紀流目掛けて放つが、紀流のスピードは全く落ちない。

むしろ弾幕が当たる度に飛ぶスピードを上げている始末である。

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「ぐっ!」

 

 

そして遂に、両者の距離は残り数メートルにまで縮まった。

紀流は勝利を確信し、思わず叫ぶ。

 

 

「その目障りな笏ごと、お前のプライドをへし折ってやるよ!!!」

 

「…へし折る?私の笏を?

…ふん。」

 

 

映姫は人を馬鹿にする様な態度で笏を握り直し、突進してくる紀流に向けて構える。

 

 

「四季様っ!?」

 

「まさかあいつ、祠弥の突進を受け止めようっての!?

無茶よ!普段の祠弥なら手加減するんだろうけど、今の祠弥は…」

 

「…やっと閻魔が痛い目見るのね…良いきみよ…うふふふふふふ…」

 

「…紫?」

 

「顔が怖いぜ…」

 

「同感…」

 

「五月蝿い!黙って見てられないの!?

特にあなた、何時までもにやけるな!!鬱陶しいのよ!!!」

 

「「「「「…。」」」」」

 

 

観戦者達が(幽香によって)固唾を呑まされて見守る中、

映姫は紀流に向かって小さな声でこう呟く。

 

 

「…貴方が強い事は認めましょう。

…『攻撃』がね!!!」

 

「は?」

 

 

紀流が首を傾げる間も無く、映姫は突進してくる紀流に自ら突っ込み…

 

 

「てゃぁっ!!!」

 

 

笏をバリアに突き刺し、強引に腕を捻ってバリアの中に笏を突っ込んだ。

 

 

「審判『ギルティ・オア・ノットギルティ』!!!」

 

 

映姫はスペルを紀流の眼前で発動し、

唖然としている紀流の顔目掛けて赤と青の大玉弾幕を撃ち込む。

 

 

「h…」

 

 

弾幕が当たる直前になって漸く、紀流は驚きの声をあげようと口を開きかけたが。

 

 

「…有罪っ!!!」

 

 

最初の一文字を言う前に、映姫の『判決』が下った。

弾幕が炸裂すると同時にバリアは砕け、紀流は顔から煙を上げながら後方に吹き飛ぶ。

映姫は飛んでいく紀流をしっかり両目で見据えた後、再び笏を紀流に向け…

 

 

「貴方も人間である以上、私の裁きを受けて貰いますよ。」

 

 

今度こそ止めとばかりに巨大な紫色のレーザーを放ち、その中に紀流を呑み込んだ。

レーザーはそのまま暫く発射され続け、やがて紀流を中心として大爆発する。

その威力は凄まじく、遥か下方で見守っていた観戦者達の目前まで爆風が到達する程であった。

 

 

「「祠弥っ!?」」

 

「やったぁ!閻魔様が勝ったー!」

 

「「やった!やった!!やったったー!!!」」

 

 

暴風の中少女と小町が手を繋いで小躍りする横で、魔理沙は目も当てられない程落ち込んでいる。

その様子に気付いた少女は躍るのを止め、得意気な笑顔を浮かべて魔理沙に声をかけた。

 

 

「でー?賭けは私の勝ちだよー?

さーて、早く謝ってもらおうかなぁー?」

 

「ぐぐぐぐぐぐ…っ!!!」

 

「嘘はつかないんだよねー?

さっき閻魔様にそう言ってたもんねー?」

 

「…お前ぇぇぇ…」

 

「…あんたも強情ねぇ。さっさと謝りなさいよ。」

 

「な!?霊夢、お前は祠弥の負けを認めるのか!?」

 

「は?そんなわけ無いじゃない。」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

 

霊夢の口から発せられた言葉に驚き、

幽霊や妖精達を含めたその場にいる人々は一斉に霊夢の方を向く。

その一糸乱れぬ動きに霊夢は少しだけ引いた後、言葉を続けた。

 

 

「祠弥は負けないもの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふうっ。」

 

 

やがて爆発による衝撃波は止み、再び幻想郷の空は静かな青い空に戻る。

それを見計らい、映姫は一度息を整えた後に前方に向かって喋り始めた。

 

 

「貴方は確かに強かった。

しかしその強さ故に慢心し、相手の考えや動きを読む事を怠った。

強大な力を持つ、主に妖怪に多く見られる欠点ですね。」

 

 

映姫は淡々と話を続ける。

 

 

「…甘い、甘すぎる。

そんな不完全な力では、幻想郷の法の番人である私の判決を覆す事など出来ません!

紀流 祠弥!これに懲りたら、これからは『一般的な人間』として生きていく事を心がけよ!!!」

 

 

映姫は最後の言葉と共に踵を返し、降下を始めようとする。

しかし。

 

 

「中々雄弁だねぇ、閻魔さん。

咲夜の説教に匹敵するかもしれないレベルの正論っぷりだ。」

 

「な…!?」

 

 

突如、前の空間から響いてきた拍手。

映姫が顔を上げると、そこには少し髪型が乱れた紀流が笑いながら立っていた。

 

 

「お疲れ様、マジで参考になったよ。

『一般的な人間』か。これからそう名乗る事にしようかな?」

 

「え?だって、貴方は私がつい今しがた…」

 

「気が大きくなったって事は、防御力も上がったって事だ。

つまりお前は、今の攻撃で完全にこの俺を怒らせてしまったんだよ。」

 

 

紀流は穏やかな口調で笑いながら喋っているが、

その目の光は消え失せ、どんよりと濁りきっている。

今までのやり取りを全く知らない人でも、紀流の目を見た瞬間にある事を察するだろう。

 

 

「♪」

 

「…っ!?」

 

 

紀流は今、飛んでもなく怒り狂っていると。

 

 

「…さあて、本当はもう少し(スーパー)紀流に慣れたかったんだがな…

気が変わった。一気に片を着けてやる。」

 

 

紀流はそう宣言し、ゆっくりと両手両足を横に開く。

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…!!!」

 

 

そしてそのまま全身の筋肉に力を込めて気を漲らせていき、

今のままでも十分大きかったオーラを更に大きく、激しい物へと変貌させた。

 

 

「くう…っ!?」

 

 

紀流を中心として吹き始めた暴風に映姫は思わず吹き飛ばされそうになり、咄嗟に踏ん張る。

暴風の発生源からかなり離れている場所にいた幽霊と妖精達もその爆風を受け、

抵抗すら出来ずに次々と風のまにまに飛ばされていく。

 

 

「きゃあ!?」

 

「おっと!大丈夫かい?」

 

「は、はい…

けどそこの人が言っていた通り、あの人間はやられて無かった…」

 

「なあに、心配する事は無いよ。

どれだけ化け物じみた奴が相手でも、四季様の判決は絶対さ!

何しろ四季様の能力は『白黒はっきりつける程度の能力』なんだからね!!」

 

「「あ…」」

 

 

小町が『能力』という言葉を口にした瞬間、

霊夢と魔理沙は『やばい』とでも言いたげな声を上げる。

 

 

「…え?一体どうしたんだい?そんな目で…」

 

「…はぁ…あんた、小町だっけ?

いつでも飛び出せる様に心の準備をしておきなさい。」

 

「へ?」

 

「…残念だったな…えーっと?」

 

「『メディスン・メランコリー』!

後馴れ馴れしく肩に手を置くなっ!!」

 

「心中お察しするぜ…」

 

「抱きつくなぁぁぁ!毒喰らわせるぞ!!」

 

「…紫、これは一体どういう事なんだ?

何が始まるんだ?」

 

 

いきなり始まった良く分からないやり取りに霊武は困惑し、横にいる紫に問う。

紫の返答はこうだった。

 

 

「見てれば分かるわよ。」

 

「あ、あぁ…そうか…っ!!」

 

 

霊武は急に大気の揺れを感じ、咄嗟に口を閉じた後に上を向く。

上空では台風クラスの暴風が吹き荒れる中、

紀流は横に開いていた両手を前に突き出し、両掌にエネルギーを溜め始めていた。

 

 

「…紀流は…一体何をするつもりなんd「四季映姫・ヤマザナドゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」!?」

 

 

霊武の呟きは紀流の叫びによっていとも簡単に掻き消され、誰の耳にも届かなかった。

いや、例え届いたとしても、誰もその疑問に答える事は出来なかっただろう。

 

 

「いくらお前が閻魔大王であるといっても、

こいつをまともに受け止める勇気があるかぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「な…まさか!?

あれだけの力を一度に解き放つつもりか!?」

 

「…多分大正解よ、霊武。」

 

「…い、いや…そんな筈はない…

だって、あんなものを撃ったら…っ!!!」

 

「…。」

 

 

幽香は無言で霊武の肩を叩き、地上を指差す。

その指の示す場所を霊武が見ると、既に亀裂が入って表面が捲れ始めている大地の姿があった。

 

 

「…!」

 

「ま、大丈夫よ。

私の花畑を吹き飛ばしたら消し飛ばすって言ってあるから♪」

 

「何を根拠に『大丈夫よ』なんて言えるんだ!?

撃つ前から既に幻想郷崩壊の危機だぞ!?」

 

「はははははははははぁ!!!無理だろうな!!!

何故ならお前は所詮、ただの臆病者だからだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「…っ!!」

 

 

再び頭上から降ってきた大声に、霊武だけで無くその場にいた全員が耳を塞ぐ。

その大声の出所である紀流の両掌には既に小さなエネルギーの塊が出来ており、

そこから発生した稲妻は地上まで届き、大地の惨状を更に酷い物へと変化させている。

 

 

「…それが貴方の本気ですか。

良いでしょう、こうなったら私自ら罰を下してあげます!!!」

 

 

気を溜め続ける紀流を見て、映姫も負けじと気を笏の先端に集める。

やがて映姫の背中からは三本の羽で出来た赤と青の翼が生え、そこも笏と同様に光り始めた。

自身に対抗しようとしている映姫を見て、紀流はにやっと微笑む。

 

 

「止めるんだ紀流!

げ…幻想郷が…いや、この星その物が…!!!」

 

「霊夢っ!!!

境符『四重結界』!!!」

 

「分かってるわよ!!!

夢境『二重大結界』!!!」

 

 

霊夢と紫は再び協力し、先程よりも大きな結界を生み出してその場にいた人々を包み込む。

 

 

「ほら、姉さんも霊力を解放して結界をするなりして!!!」

 

「えぇっ!?でも…」

 

「ええい、この際服が木っ端微塵になったって構わないわよ!!!

良いから早くして!!!」

 

「わ、分かった…はぁっ!!!」

 

 

霊武は困惑しながらも両手を広げ、結界を中から押さえて強度を上げる。

結界はどんどん出来ていき、もう少しで蓋が閉じるという所まで来た時。

 

 

「よっと。」

 

「「「!?」」」

 

 

幽香が、結界の外に出た。

そのまま幽香は急上昇し、紀流と映姫の元へと飛んでいく。

 

 

「あ…」

 

「姉さん!気を逸らさないで!!!」

 

「あんな馬鹿、今は放っておきなさい!!!」

 

「くっ…!!!」

 

 

霊武が再び気を込めたと同時に、結界は蓋を閉じて外の世界と完全に遮断された。

僅かに残っていた幽霊と妖精達は突然の事に驚き、何も出来ずにその場で固まっている。

 

 

「え…閻魔様…」

 

「…四季様…!!!」

 

 

二人の思いを感知したかの様に、映姫は突如気を高める。

そして、紀流も。

 

 

「審判『ラスト…

 終光『ファイナル…

 

 

二人は気を最高潮にまで高めつつ、同時に口を開き…

 

 

 

 

 

 

 

…ジャッジメント』っ!!!

…フラァァァァァァァァァッシュ』ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

同時に、凄まじい光線を放った。

どちらの光線も超特大、後は押し合いによる根気の勝負にもつれ込む…映姫はそう思っていた。

次の瞬間、黄金の光は触れる前に紫色の光を掻き消し。

 

 

「…ひっ!?」

 

 

そのまま映姫を呑み込み。

 

 

「…来るわよっ!!!」

 

 

幻想郷を揺るがし。

 

 

「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」

 

 

幻想郷を飛び出し、星を飛び出し。

 

 

「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

遥か宇宙の彼方で、超新星にも匹敵しそうな程の大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ…はぁっ…

手応え抜群っ!」

 

 

宇宙の彼方で大爆発が起こってから少し後。

その元凶である紀流は肩を上下させながらも、得意気な顔をしていた。

 

 

「…き、紀流…」

 

「幽香さん、いつの間にいたんですか?

いやー、大変でしたよ。範囲を小さく絞ると確実に相手が消し飛んじゃうんで…」

 

「…わざと範囲を大きくして、威力を拡散させたって事?」

 

「…はぁ…へへへ、そう言う事です。」

 

 

紀流は肩で息をつきながら、子供っぽい純粋な笑顔を見せる。

その体は既に元へと戻っており、気も先程に比べれば遥かに落ち着いたものになっていた。

 

 

「…祠弥ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「わぁ!?

れ、霊夢!?どうしたんだ!?」

 

「どうしたもこうしたも無いわよっ!!!

あんた、幻想郷をぶっこわす気ぃっ!?」

 

「いや、範囲調節はちゃんとしたさ!

相手を倒して、尚且つ残りのエネルギーが幻想郷を壊してしまわない様に…」

 

「…なあ祠弥、それってエネルギーを無駄に溜めすぎたって事か?」

 

「え…」

 

 

紀流が固まったのを見て、魔理沙は思った。

『あ、図星か』と。

 

 

「…紀流?」

 

 

霊武の声質に何かを感じ取った紀流は慌てて口を開き、超早口で弁明を並べ立てる。

 

 

「…いやぁ、つい調子に乗りすぎちゃっt「こんの大馬鹿ぁ!!!」アウチッ!?

最後ぐらいオーバーリアクションとっても良いじゃないk(ry」

 

 

  ~紀流弁解中~

 

 

「…ってわけだ。」

 

「駄目。」

 

「却下。」

 

「異議あr「四季様を一体全体何処にやったんだ!!!」」

 

「…そこにいるだろ。」

 

 

紀流が指差した先には、全身がぼろぼろになっている映姫の姿があった。

映姫は色々な感情が込められているであろう視線を紀流に向けるが、直ぐに紀流の姿は消えた。

 

 

「…むぐぅっ!?」

 

「四季様ぁ…死んでなくて良かったですよぉぉぉぉぉぉっ…」

 

「分かった、分かりましたから!!!

だから腕を離して下さい、息が詰まる…っ!!!」

 

 

小町の腕の中でじたばた暴れている映姫を見て、メディスンは唖然としている。

その背中に、そっと呼び掛ける者がいた。

 

 

「…すまん。」

 

「…え…え、え?

ちょっと、今更!?ここまで来て!?」

 

「…何か祠弥の事見てたら、こんな事に強情になってる自分が情けなくなってな…

お前の言う通り今更すぎるが、本当にすまなかったぜ!!!」

 

「…べ、別に良いよ…

私もあの二人を見てて、自分って何てちっぽけなんだろうって思ってた所だから…」

 

「「…。」」

 

 

黙りこくってしまった二人の横を通りすぎ、幽香は小町から解放された映姫の元へ向かう。

映姫は疲労の表情を浮かべながら小町に応答していたが、直ぐに幽香の視線に気づいた。

 

 

「どうしました?」

 

「あなた、何でここに来たの?」

 

「あ、確かに私も気になっていました。

四季様、何故今日はわざわざ現世に?」

 

「…私はただ、幻想郷の住民達の様子を見に来ただけですよ。

…いや、ちょっと待ちなさい!!!

小町!何故貴方がここにいるんですか!?仕事は!?」

 

「え?」

 

「「「!?」」」

 

 

映姫の大声に、その場にいた人々全員が映姫の方を向く。

皆の視線が集まっているのも気にせず、映姫は笏を高く掲げ…

 

 

「この大馬鹿者っ!!!」

 

「いたぁっ!?」

 

 

思いっきり、小町の頭に降り下ろした。

小町は咄嗟に頭を抱えるが、映姫は容赦なく続けて笏を降り下ろす。

 

 

「貴方が…さぼると…私にも…迷惑が…かかるんですよっ!!!」

 

「で、ですから…いたっ…今日は…痛い…暇どころか…ぐっ…

仕事が…あつっ…無かったんですよ…ひゃんっ!!!」

 

「出鱈目を言わない!

幻想郷は今、幽霊が大量発生しているんですよ!!仕事が無いわけ…」

 

「…ぐす…嘘じゃ…無いですよ…

今日に限って、一体たりとも幽霊が来なかったんです…

四季様から異変の事は聞いていただけに、これは何かあったんじゃ無いかと思って私も…」

 

「…幽霊が…来なかった?

そんな筈は…現に今さっきまで、幽霊は大量に…」

 

「あぁ、残りの幽霊達ならあちらに飛んでいったぞ。」

 

 

霊武はその方向を指差す。

確かにその方向の空には、幽霊達が大群で飛んでいたが…

 

 

「…あっちは…三途の河の方角じゃない…」

 

「え!?

じゃあ、幽霊達は一体何処へ向かっているの!?」

 

 

映姫は狼狽えるが、小町もこの質問には首を振るばかりである。

しかし話を聞いていた紫は、恐らく彼女にしか気づけない『ある事』に気がついていた。

 

 

「…冥界…」

 

「紫?」

 

「…恐らく幽霊達は、冥界に向かっているのよ。

何故かは分からないけど、ね。」

 

「なっ、冥界!?

まさか、私の裁きを逃れようと…!」

 

「いや、それは無いでしょう。

現に貴方、幽々子に冥界の幽霊達の管理を任せてるじゃない。

幽々子なら普通に追い返すと思うわよ…………っ!?」

 

 

突然、紫はその顔を歪めた。

皆が驚く中、紫は突如幽霊達と同じ方角へと飛んでいく。

 

 

「紫っ!?」

 

「ああおい、霊夢!?」

 

「くっ、一体どうしたんだ!」

 

 

紫の後を追って飛ぶ霊夢、彼女に続いていく霊武と魔理沙。

 

 

「…?」

 

「…小町、私達も行きますよ!!」

 

「え、ちょっと待ってください!

無茶ですよ、そんな体じゃ…」

 

 

少し遅れて飛んでいく映姫と小町。

 

 

「じゃあ紀流、行きましょ♪」

 

「えぇ…もう少し休んでからじゃ駄目ですか?」

 

「駄目♪

あ、あなたも来る?」

 

「…へ?」

 

「じゃ、決定ね♪それっ!!!」

 

「「わぁっ!?」」

 

 

紀流とメディスンの首根っこを掴み、幽香も飛び立つ。

 

 

「紫、いきなりどうし…」

 

「とにかく急ぐのっ!!!

…えぇい、幽霊邪魔!!!スキマを使うわよ、入りなさい!!!」

 

「えぇ!?何を…」

 

「そーれっ!!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

紫は巨大なスキマを三つ開き、別れて飛行していた一行を移動させた。

幽霊達が目指している場所と同じ、冥界へと。




紀流の大勝利で終わると思っていたのか!
というわけで、次回は超展開。ネタバレになりそうなのでそれしか言いません。
勘がもの凄く良い人なら分かるかも…

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