東方有無録   作:印鑑

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色々色々色々ありました。遅くなってすみません。
では、一と三分の二ヶ月以来の第七十八話目、ゆっくり読んでいってね!


冥界まるごと超決戦〜桜の怨霊は狂想曲を奏でる

「…ちっ、予想以上だな…」 

 

「…フフフ…」

 

 

…オッス、オラ紀流。

今現在俺は、幽々子の姿をした『西行妖』と拳をぶつけ合った所だ。

右手の指の関節全部から変な音がしたけど大した事は無いだろう、多分。

 

 

「でいやぁっ!!!」

 

「フンッ!!!」

 

 

すかさず俺は左手に気を溜め、西行妖の腹目掛けて拳を捩じ込む。

だがどうやら相手はそれを予測していた様で、俺の拳は不可視の壁みたいな物に弾かれた。

…別に腹に弾かれたわけじゃな…いやそんな冗談を考えてる暇があるかっ!

 

 

「散弾『トラップシューター』!!」

 

 

俺はその場で急上昇し、右手に気を溜めて緑色の気弾を大量にばら蒔く。

しかし西行妖は全く怯む様子も見せず、握っていた右手を開いて上空にかざした。

その瞬間、西行妖(木)の方が光り…

 

 

「うわっとぉーっ!?」

 

 

無数のレーザーが飛んできて俺のスペルを消滅させ、そのまま俺に向かって飛んできた。

咄嗟にかわして西行妖(幽々子)を睨み付けると、それに答える様に西行妖はにやっと笑い、

上空に向けていた右腕を動かして俺に右掌を向ける。

再び木の方が光輝いたので、俺はレーザーの二波目に備えて身構えたが…

 

 

「恋符『ノンディレクショナルレーザー』!」

 

 

魔理沙が放った七色のレーザーによって、西行妖が放ったレーザーの大半は掻き消され…

 

 

「じゃ、行くわよ♪」

 

「お前に言われなくてもやるさ!」

 

「「はぁっ!!!」」

 

 

残りのレーザーも、霊武さんと幽香さんのダブル気合い砲らしき衝撃波で消滅した。

西行妖は少し驚いた表情を見せたが、すぐに元の笑い顔に戻る。

 

 

「…全く、何考えてんだか検討がつかないn…おうっ!?」

 

 

その生気の感じられない顔を見つめていると、スペルを撃った後の魔理沙に後ろからどつかれた。

…危うく息が止まりかけたぜ…

 

 

「何余裕で受け止めようとしてるんだぜ、祠弥!

いくらお前が強いからって、霊夢や紫を一瞬で貫くレベルの攻撃を受け止めようなんて無茶だ!」

 

「…いや、反撃の機会を伺ってたんだが…ごほっ…」

 

「そんな事より、あいつの攻撃が帰ってくるわよ♪」

 

「え?」

 

 

傘を構えて後ろを向いている幽香さんに釣られて俺も後ろを向くと、

確かに幽香さんの言う通り、先程俺が避けたレーザーが此方に戻ってきている。

…さっき霊武さんと一緒だった時もそうだったが、凄まじいまでの誘導性だな…

良し、ここはさっきと同じ様に…

 

 

「波符『かめはめ波』!」

 

 

俺はスペルを発動して青い光線を放ち、その腕を合わせたままぐるっと回す。

かめはめ波は俺の腕の動きに合わせて動き、レーザーを打ち消していく。

だが今回のレーザーの量は俺の予想以上に多く、数本程消し損ねてしまった。

 

 

「げっ!」

 

 

俺は慌ててもう一発撃とうと両腕を後ろに引いたが、どう考えても間に合わない。

仕方がないので反撃を諦め、避ける事に専念しようとしたが…

 

 

「紀流、後ろだっ!」

 

「後ろ…っておい!?」

 

 

霊武さんの声に反応して後ろを向くと、そこには新たなレーザーが。

奥では西行妖が笑っている。

 

 

「背中を見せている敵に攻撃しないで、いつ攻撃するんだ?」

 

 

とでも言いたげな表情で。いや、まあ正論なんだろうけど…

何て言ってたら死にますね、うん。スペル発動!!

 

 

「暗魂『ダークスピリッt「それっ♪」ぎゃあ!?」

 

 

スペルを発動して緑色のバリアを張ったと同時に幽香さんに吹っ飛ばされました。

前に吹っ飛ばされてレーザーは相殺出来たものの、何だこの虚しさh…

 

 

「いいっ!?」

 

「…あ。」

 

 

いつの間にか西行妖に突進して吹き飛ばしていた。

何を言ってるのか分からないと思うが俺自身も何を言ってるのか分からん。

…だが、このチャンスを逃す手は無いっ!

 

 

「宇撃『ビッグバンアタック』!」

 

 

俺はすかさずバリアを解除して右手を西行妖に突き出し、青い気弾を作り出して放つ。

撃った気弾は見事西行妖の顔面に直撃、爆発が起こると同時に西行妖は爆風に呑み込まれた。

俺はその衝撃波に当たらない様に後退し、微笑んでいる幽香さんの横に並ぶ。

 

 

「…。」

 

 

勿論、不満を全面的に押し出した表情で。

だが幽香さんには俺の気持ちは伝わってはいない様であり、首を傾げて此方を眺めている。

 

 

「どうしたの、紀流?」

 

「…それって本気で言ってるんですか?」

 

「?」

 

「…もう良いです。」

 

 

…幽香さんの顔が素直すぎて怒る気失せたぜ…

さて、西行妖は…

 

 

「ハァッ!!!」

 

「…やっぱり、あの程度じゃ倒れないか…っ!?」

 

 

俺がそうぼやくと同時に、西行妖は煙を吹き飛ばしながら此方に突っ込んできた。

さっきの俺の攻撃による物だろう、顔の半分が焼け焦げているのが不気味さを増幅させている。

その顔に思わず怯んでいると、不意に俺の横から誰かが西行妖に向かって飛び出した。

 

 

「妖夢!?」

 

「手出し無用です、紀流さん!

幽々子様の体を乗っ取る様な輩を切り捨てるのは従者として当然の事っ!!」

 

 

妖夢はそう言いながら腰の刀に手をかけ、飛びながら居合いの体勢に入る。

西行妖は微笑みながらその様子を眺めた後、ふと口を開いた。

 

 

「主人の生前の肉体を切り捨てるっていうのかい?

随分と無礼な従者もいるもんだねぇ…」

 

 

半ばからかいに近いその言葉を聴いた途端、只でさえ素早い妖夢が更に加速したのが分かった。

まあ、今の台詞は完璧に妖夢を馬鹿にしてたからな…

 

 

「…かつて仕えていた主人の娘の肉体に取り憑いている…貴様らが言えた事かっ!!!

人符『現世斬』っ!!!」

 

 

妖夢は激昂しながら刀の柄を握り締め、『楼観剣』を抜き放って相手に斬りかかる。

瞬間刀の煌めきと共に妖夢の姿が消えたかと思うと、既に妖夢の刃は西行妖の前まで迫っていた。

西行妖は自身に迫る刀をちらと見、呆れた表情で首を振ると同時に右腕を顔の高さまで上げ…

 

 

 

 

 

避けるわけでもなく、反撃するわけでもなく。

そのまま、刀を右腕で受け止めた。

 

 

「…!?」

 

 

妖夢の腕が止まる。

刀は既に骨まで到達しており、その気になればすっぱりと行けるだろうに、何故そうしないのか。

 

 

「…フン…」

 

 

あまりにも、相手が堂々としているからである。

刀を腕で受け止めたりすれば、普通は痛みに顔を歪めたり思わず腕を引いたりするものだ。

しかし。

 

 

「…あ…あいつ…

刀が腕にめり込んでるってのに、全く動じてないぜ…」

 

 

西行妖がそんな素振りを見せる様子は、一切無い。

 

 

「ほら、どうしたの?

後少しだけ刀を動かせば、この腕をすぱっと切り落とせるんだよ?」

 

「…!」

 

 

妖夢は刀を持つ腕に力を込めるが、刃は全く進まない。

決して、生前の幽々子の腕を切り落とす事を躊躇しているとか刀の切れ味が悪いとかではない。

本気でやってやろう、そう心に決めて刀を握り締めているのにも関わらず、切れないのだ。

 

 

「…はぁ…どうしたのかしら?

それでも貴方は白玉楼の庭師兼剣術指南役、魂魄 妖夢なの?」

 

 

西行妖は再び呆れの込められた声を発した後、ゆっくりと妖夢に近づいていく。

その右腕を、刀に喰い込ませたまま。

 

 

「『鬼が鍛えたこの楼観剣に、切れぬ物などあんまり無い』んじゃなかったの?

それとも、その『あんまり』の中にこの体が含まれているのかい?」

 

「…!!!」

 

 

今の妖夢は恐らく、相手が誰であろうと鳥肌を立たせる程の殺気を放っている筈である。

だが、西行妖は全く怯んでいない。

…もしかしたら殺気そのものが西行妖には効かないのかもしれない。

 

 

「…全く…来ないんなら此方から行くよ?」

 

 

そう西行妖は言い放つと、刀に喰い込んでいた右腕をすっと外した。

そして、妖夢がその行動に反応出来ないでいる内に右腕を伸ばし…

 

 

「…!?」

 

 

妖夢の顔を鷲掴みにした。

 

 

「あーあ、なっさけない…

やっぱりずーっとぼくたちが見てたまんまのひとだね、おねえさんは。

けんのうではたかいようでいて、けっきょくどこかでつめがあまいんだ。」

 

「…!!!」

 

「『半人前』にいつまでも甘えている様じゃ、俺達どころか誰にも勝てないよ。

そもそも、俺達にそんななまっちょろい剣撃が効くと思ってたわけ?」

 

「…。」

 

「答える気力も無い、か…

じゃあ、これでさよならだな。」

 

 

西行妖はそう言い放ち、次第に妖夢の顔を掴んでいる手の力を強めていく。

 

 

「おい、なにやってんだ妖m…わっと!

そいつは幽々子じゃ無いんだ!!抵抗しなきゃ殺されるぞ!!!」

 

 

俺はレーザーを避けながら必死に叫ぶが、妖夢は動かない。

目の前で知人の顔が潰れる所なんて見たくは無いので、俺は妖夢を助けようと接近するが…

 

 

「っ!」

 

 

その道は、無数の人魂達に阻まれた。

人魂達は俺が硬直したと見るや、すかさずレーザーを放ち此方を灰にしようとしてくる。

レーザーの威力が馬鹿にならない事は十分身に染みて分かっているので、

俺は咄嗟に後退して距離をとり、スペルを発動した。

 

 

「散弾『トラップシューター』!!!」

 

 

無数の緑色の気弾はレーザーに当たって爆発していくが、全てを消すまでには至っていない。

それどころか、飛んでくるレーザーの数は逆に増えている。

 

 

「…幽々子を知ってる俺が言うのもあれだが、幽霊の癖に中々やるな…」

 

 

もう体が焼け焦げても構わないから人魂達を掻き分けて突進してやろうかと考えていたその時、

突如大爆発と共に前方からのレーザーが止み、俺の横に勝ち誇った顔をした誰かが並んだ。

 

 

「ふふん、動かない的に当てるなんてちょろいもんだぜ!」

 

「魔理沙か…助かったよ。」

 

「礼なんて…まぁ、されて悪い気はしないな…

じゃなくて、妖夢を助けに行くぞ!」

 

 

魔理沙は元気よくそう言い放って右手に持っている八卦炉に虹色の気を溜め、

そのまま人魂達に向けてスペルを宣言する。

 

 

「そこにいると火傷するぜー!恋符『マスタースパーク』!!」

 

「「「…!?」」」

 

 

自分達のよりも更に大きな光線が迫ってくるのに人魂は対応出来ず、呑み込まれて爆発していく。

魔理沙が止めとばかりに八卦炉を突き出すと、光線は更にその輝きを増して人魂を吹き飛ばした。

 

 

「さ、今の内にさっさと行くんだぜ!

人魂は直ぐに復k…わあっ!?」

 

「魔理沙!?」

 

 

魔理沙が喋りだしたと思って直ぐに、俺と魔理沙を分断するようにレーザーが飛んできた。

俺と魔理沙は咄嗟に避けるが、見事相手の思惑通りに分断されてしまう。

俺は直ぐ様魔理沙と合流しようとしたが、囲まれたので断念せざるを得なくなってしまった。

 

 

「…ちっ…」

 

 

俺の周りをゆっくりと回りつつ、人魂達が気を溜めているのが感じられる。

直ぐに撃たないのは限界まで気を溜めているからなのか、此方をからかっているからなのか。

まあいずれにせよ、何とかしないと確実に塵になって桜の肥料まっしぐらだという事は確かだ。

 

 

「仕方がない…超…サイヤ…わっ!?」

 

 

気を高めて超サイヤ人になろうとした次の瞬間、何かが此方に向かってぶっ飛んできた。

超サイヤ人になる為に集中していたのもあって俺はそれを避けきれず、腕を交差させて防御する。

…何か攻撃にしては柔らかい感じがするが、一体何が飛んできたんだ?

 

 

「…うぅ…っ…」

 

「…って、魔理沙かよっ!?」

 

 

『何か』の正体は先程分断された魔理沙だった。

衝突から二秒後ぐらいに俺はやっとその事に気付いて急降下し、

そのまま地面に落ちていく魔理沙の下に回り込み、両手で魔理沙をキャッチする。

 

 

「…魔理沙、大丈…うおう!?」

 

 

気絶している魔理沙に声をかける余裕も無く、俺は上空から飛んでくるレーザーを避ける。

その弾みでふと上を見ると、空が見えなくなるほど夥しい数の人魂が嫌でも目に入ってきた。

揃いも揃って、今にもレーザーをぶっ放しそうである。

 

 

「…こいつはやばいぞ…」

 

「まー、そう考えるのがだとうだろうねー。

いまぼくがめいれいすれば、きみたち二人はあっというまにきえちゃうんだから。」

 

 

子供の声が聞こえてくると同時に、密集していた人魂達の中から西行妖が顔を出す。

その手に、妖夢を掴みとったまま。

 

 

「最初に拳をぶつけ合った時は少し驚いたけど、どうやらあれが精一杯だったみたいね。

所詮、博麗の巫女や妖怪でも無いあなたが私達と戦おうだなんて…」

 

「…『おこがましいにも程がある』ですか?

私はそうは思いませんけどね。『待宵反射衛星斬』!!!」

 

「「!?」」

 

 

何者かのスペル発動の声と共に、無数の閃光が縦横無尽に空間を埋め尽くす。

閃光の通り道にいた人魂達は瞬時に真っ二つになっていき、そのまま爆発すらせずに消えていく。

 

 

「…何だぁ!?」

 

 

俺は一体何者がこのスペルを発動したのかが気になり、四方八方に目を凝らす。

しかし、その視界の何処にもそれらしき人物は見当たらない。

…だが、大体の予想はつく。

 

 

「…何処からか撃ってるんじゃなくて…

『閃光と一緒に移動してる』のか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて閃光が止むと、あれほどまでに密集していた人魂達は全て消滅していた。

勿論西行妖の周りだけではなく、後ろで幽香さんや霊武さんと戦っていた奴等もである。

その光景に西行妖が唖然としている様子を眺めていると、上空から先程の声がまた聞こえてきた。

 

 

「幽霊達は全て三途の川に送りました。

これでもう楽は出来ませんよ、西行妖さん?」

 

「…お前…は…」

 

 

その声に西行妖は驚愕する。

当然だろう、何故ならその声の主は自分が命を握っている筈の人物…

 

 

「妖夢!」

 

「如何にも私は妖夢です。

心配かけてすみませんでした、紀流さん。」

 

 

魂魄 妖夢の物だったからである。

 

 

「じ…じゃあ今私が掴んでいるのは…

まさか…っ!?」

 

 

西行妖は何か思いあたる節があったのか、自分が掴んでいる妖夢の顔をまじまじと見つめる。

すると、西行妖の見ている前で妖夢の姿は次第に縮んでいき…

 

 

「…え、人魂?」

 

「魂魄『幽明求聞持聡明の法』。

そういえば、紀流さんにはまだ…自分の事をこう言うのも変ですが、紹介していませんでしたね。

 

 

 

 

 

私の『半霊』の事を。」

 

 

…さっきまでそこら辺を飛び回りまくっていた、人魂へと変わった。

西行妖はまるでわけが分からないとでも言いたげな表情で人魂を見つめていたが、

その顔はみるみる内に険しくなっていく。

 

 

「…くそっ、通りで此方の言葉に反応しなかったわけだっ!」

 

 

西行妖は怒りの言葉と共に腕を振り上げ、人魂を妖夢に向かって放り投げる。

人魂は暫く西行妖の投げられたままに飛んでいたが、やがて減速して妖夢の傍らに収まった。

優しげな表情で人魂を撫でている妖夢を見て、俺は今一番気になっている事を訊ねる。

 

 

「…で、その人魂は何なんだ?」

 

「何なんだとは失礼ですね。

先程も言った様に、この霊は私の半霊ですよ。」

 

「…そもそも『半霊』って何だ?

まさかそいつ、そう見えて半分は人間なのか?」

 

「ですから、その半分が私なんですってば…」

 

「え、お前って幽霊じゃ無かったのか!?」

 

「…半分はそうなりますね。

私の種族は『半人半霊』。半分が人間でもう半分が幽霊なんです。」

 

「…はぁ。」

 

 

…全く分からん。何だ半人半霊って。半分生きてて半分死んでるって事か?

 

 

「…全く…普通の人間じゃ無いだろうなとは思ってたが、

まさかそんなややこしい名前の種族だったとは思わなかったぜ…」

 

「魔理沙!」

 

 

今まで腕に抱えていた魔理沙が急にもぞっと体を動かしたので、

俺は魔理沙を落としそうになりながらもしっかりと魔理沙を抱え直し、体勢を元に戻す。

魔理沙は薄目になりつつも、いつもの様に明るい笑みを浮かべて俺の呼び掛けに応えた。

 

 

「迷惑かけたな、祠弥…

でももう大丈夫だぜ…うぐ…」

 

「…俺には全然大丈夫に見えないんだが。」

 

「大丈夫…だぜっ!」

 

「うぉっと!?」

 

 

魔理沙は反動をつけて起き上がり、そのまま前に飛んで浮かび上がる。

…魔理沙って箒が無くても飛べたのか…

妖夢も俺と同じ様な事を思ったらしく、意外そうな表情をした後にそれを言葉に出す。

 

 

「魔理沙さんって、箒無しでも飛べたんですね…意外です。」

 

「ま、私も一応魔法使いだからな。

…でも、やっぱり箒じゃ無いと違和感があるな…

けど、箒はあいつに折られて今は無いし…ここは己の身だけで乗り切るしかないなっ!!」

 

「あら、あなただけであいつを倒せるっていうの?

じゃあ、私と紀流はもう帰るわ♪」

 

「「「!?」」」

 

 

いつの間にか俺の背後に佇んでいた幽香さんは俺の肩を掴み、嬉しそうにそう言った。

魔理沙は一瞬思考を停止させた後、我に帰って大慌てで喋り始める。

 

 

「いや待て!そういう意味じゃ無いんだぜ!!

お前は私が一人であんな化け物じみた相手に勝てると思ってるのか!?」

 

「別に思ってないわよ♪

『己の身だけで乗り切る』って言ったのはあなたでしょ?」

 

「さっきのは『箒無しで』って意味だぜ!!!」

 

「♪」

 

 

…幽香さん…絶対分かりきった上で言ってるよな、あれ…

そんな幽香さんを見かねたのか、霊武さんが幽香さんの肩に手を置いて幽香さんを制止した。

 

 

「…おい、あまり他人を困らせるな。

今はそんなふざけた事に興じている場面では無いだろう。」

 

「私は『真剣』だけど?」

 

「ふん、どの口がそんな事を言っているんだか…」

 

「この口♪」

 

「…。」

 

 

幽香さんの行くところに内輪揉めあり、ってか…

まぁ幽香さんは元々孤高の存在とか高嶺の花とかそう言った言葉が似合う人だから、

周りとあまり打ち解けようとしないのは仕方がない事なのかもしれないな。

 

 

「いい加減にしなさい、風見 幽香。

この様な状況下において、そういった不和感情を場に蔓延させるのは大変な罪になりますよ。」

 

「私は言いたい事を言っているだけだけど?」

 

「時には自分の感情を制御する事も必要です。

どうやら貴方は、紀流 祠弥以上に私の裁きを受ける必要がありそうですね…」

 

「裁きって事は、さっき紀流と戦ってたみたいにって事ね?

良いわよ。幻想郷で誰が一番強いか白黒はっきりつけましょう!」

 

「白黒つけるのは私です。」

 

 

…だとしても、戦いの火花をあちこちに広げるのは遠慮してほしいけど。

俺は一つため息をつき、西行妖の方を見やる。

西行妖は呆然とした様子で此方を眺めていたが、俺の視線に気づいて突然気を爆発させた。

 

 

「「「「「キサマラァァァァァァッ!!!

ナニカジュウヨウナコトヲワスレチャアイナイカネェ!!!」」」」」

 

「…忘れちゃいないよ、西行妖。

むしろ、何で今まで此方に攻撃してこなかったんだ?

やっぱり、人魂達が居なくなった事が災いしてるのかい?」

 

「復讐だの何だの言っておいて、結局あなたも他人任せの木偶の坊だったわけね。

攻撃を部下に任せて後ろで見守っている様な奴に、私と紀流が倒せると思ってるの?」

 

「「「「「…エエイ…ワレラガツカウコトノデキルチカラガ、

ヒトダマヲシエキスルコトダケダトオモッテイタノカ?」」」」」

 

「へえ、だったら見せてみr「「「「「華霊『バタフライディルージョン』ッ!!!」」」」」!?」

 

 

何という事でしょう。

人魂達のレーザーよりも遥かに高密度の弾幕が、西行妖から飛んできたではありませんかぁぁぁ!!!

 

 

「避けろーっ!!!」

 

「そんな必要無いわ♪そー…れっ!!!」

 

 

幽香さんは咄嗟に叫んだ俺を無視し、傘を開いて相手の青い弾幕を後ろに弾いていく。

後ろに弾かれた弾はしばらく進んだ後八つで一塊になり、

弾けて無数の光輝く蝶となって俺達に向かってくる。

 

 

「おい!少しは後ろにいる私達の事も考えろっ!!

魔符『スターダストレヴァリエ』!!」

 

「期待しない方が良いでしょうね…

転生剣『円心流転斬』!!!」

 

 

魔理沙と妖夢は同時にスペルを発動し、星形弾と回転斬りを放って蝶を次々と吹き飛ばしていく。

だがそれでも蝶を完全に消しきる事は出来ず、

残りの蝶は一度魔理沙と妖夢の横を通り過ぎてから反転し、二人の背中を目掛けて襲いかかる。

 

 

「千刃『サウザーブレード』!!!」

 

 

俺はスペルを発動して紫色の刃を右手に纏い、

迷わず蝶と魔理沙達の間に割り込んで迫り来る蝶と弾幕を纏めて切り裂いていく。

 

 

「私も助太刀するぞ、紀流っ!」

 

 

霊武さんも俺と背中合わせに立ち、豪腕・豪脚を振るって蝶や弾幕を叩き落とし始めた。

俺も負けじと新たに左手に刃を纏い、目に入った弾幕を片っ端から真っ二つにしていく。

 

 

「紀流、その調子だ!」

 

「霊武さんには負けますy…って危ないっ!!」

 

 

此方を向いて微笑んだ霊武さんの目の前まで弾幕が迫っている事に俺は気づき、

体を回転させて霊武さんの前に回り込み、弾幕を細切れにして気合い砲で吹き飛ばす。

 

 

「大丈夫ですか、霊武さん?」

 

「あ、あぁ…助けてくれた事には礼を言うが、

人の身を守る時はまず自分の身を守ってからにし…ろっ!!」

 

 

霊武さんはそう良いながら右足を後ろに引き、俺の頭上を目掛けて回し蹴りを放つ。

無数の何かがへこんで吹っ飛ぶ音が耳の真上でしたので、恐らく弾幕を蹴っ飛ばしたんだろう。

 

 

「全く…私を守って死ぬなんて止めてくれ。

私の命にそこまでの価値は無いからな。」

 

「そんな事言わないで下さいよ…」

 

「私が前に一緒に戦った時も、紀流はそうだったわね…

紀流は他人の事を心配し始めると自分の事を全く省みなくなるから、

結果的にその様子が危なっかしすぎて周りに心配されるのよ。」

 

「今の私やお前に、か?」

 

「ふふ、どうかしらね♪それっ!!」

 

 

幽香さんは笑顔で霊武さんに言葉を返しつつ、傘を構えて飛んでくる蝶を弾幕で相殺していく。

霊武さんはその様子を横目で見てふっと微笑んだ後、

突きや蹴りなどの体術を駆使して自身に迫ってくる弾幕を後ろにいなしていく。

俺は縦横無尽に飛び回る蝶を避けつつ、二人の様子を見守っていたが…

 

 

「…あ!」

 

 

俺は二人の死角から飛んできた蝶の軍団に気づいて思わず声をあげ、

咄嗟に気弾を発射して蝶を分散させる。

…と同時に真後ろで大爆発が起こり、俺はわけが分からぬままにその場で踏ん張った。

 

 

「…っ!?」

 

「紀流 祠弥、今の状況下で『他人の心配』をする事は周りに迷惑をかける処か、

まず間違いなく自分の首を絞める事になりますよ。」

 

 

俺が謎の爆発に関して首を傾げていると、不意に後ろからそんな声が聞こえてきた。

振り向くとそこには赤と青のレーザーを三本ずつ背中から生やして辺りの蝶を撃ち落としている、

呆れ顔の閻魔大王もとい『四季映姫・ヤマザナドゥ』の姿があった。

 

 

「私の教えを守って『一般的な人間』として振る舞おうとしているのなら感心ですが、

今はそう振る舞うべき時ではありません。

…まあ、そもそもそんな事は考えてもいないんでしょうがね…」

 

「…ええ、まあ…」

 

「だろうと思いました。では、敢えて言いましょう。

例え今の状況下で貴方が命を落とした場合、私は必ず貴方を地獄に送ります。」

 

「…そう言うとは思ってたよ。

して、その罪状は何なんだ?」

 

「『他人に必要以上の迷惑をかけた』『まだ生きられるのに命を落とした』という所でしょうね。

良いですか紀流、そもそも『生きる』という事はそれだけで罪なのです。

だからこそ貴方は…いや、生きとし生ける全ての者達は生涯の間善行を積み、

原初の罪を軽くした上で一生を終えなければならない。

ですが貴方はそれを守ろうとしない限りか、その上に更に罪を重ねようとしている…」

 

「…成る程な。

一生かけて償う罪を背負ったまま死んだら、そりゃ地獄行き確定だ。」

 

 

…どうせ一度死んだ身だから、いつどんな形で命を散らしても惜しくはない。

俺はその考えを持って幻想郷で生きてきたんだし、多分これからもそう思い続けるだろう。

…けど、それはあくまでも『俺の考え』だ。

 

 

「理解した様ですね。

貴方は今まで『自分が死んでも誰の迷惑にもならない』と考え、ここで生きてきたのでしょう。

…ですが、そんな事はあり得ません。貴方が先程かけられた言葉がその証拠です。」

 

「『自分の身を守れ』…」

 

「そう、貴方は少し自らを粗末にしすぎる。

少しは周りの者達の心情も理解し、他人を安心させる事が出来る様になるがいい!!」

 

「…反論は出来ないな。」

 

「でしょうね。」

 

 

…閻魔さん、凄いどや顔になってますよ。

あれ、そういえば…

 

 

「小町さんはどうしたんですか?」

 

「ああ、船頭の仕事に戻らせました。」

 

「…え?」

 

「戦闘の後に仕事をさせる程、私も鬼ではありませんからね。

仕事を定時に済ませる事は何よりも重要ですし。早めに済ませれば尚良いです。」

 

 

…こんな状況下で仕事の期限を厳守させる閻魔さんって一体…

まぁ妖夢も幽霊を三途の川に送ったとか言ってたから、きっと忙しいんだろうな…

俺は思わず、心の中で小町さんを応援してしまった。

 

 

「…では、早速他人を安心させて下さい。」

 

「あ、はい…」

 

 

と一応答えてみたは良いものの、一体どうしろと…

 

 

「安心させると言っても、頭を撫でたり一緒に寝てあげたりするという意味ではありませんよ?

心の支えとなる、という意味です。」

 

「…説明どうも。」

 

 

つまり、皆にとっての心強い味方になれば良いわけだな?

それなら俺にでも出来る筈だ、うん。

 

 

「ようし…じゃ、俺に出来る事をやってみるよ。」

 

「なら手早く行動して下さい。

思い立ったが吉日、ですよ。」

 

「はい。」

 

 

俺は取り敢えず気を高めてその場で急上昇し、西行妖を遥か上空から見下ろす。

西行妖は俺のその動作に気づき、スペルを止めて此方を見上げてきた。

 

 

「「「「「…。」」」」」

 

 

他の皆も西行妖の視線の先を辿り、俺に行き着く。

 

 

「祠弥?」

 

「一体紀流はどうしたんだ、あんなに高くまで上昇して…」

 

「私にもさっぱり…」

 

「…あぁ、そういう事ね♪

あなた達、身構えておいた方が良いと思うわよ?」

 

「え、何言って…」

 

 

魔理沙がそう疑問を述べようとした瞬間、紀流は静かに目を瞑り…

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

大地を揺るがす様な掛け声と共に気を爆発させ、自らの髪の毛を黄金に変色させた。

気の爆発によって冥界には凄まじい暴風が吹き荒れ、紀流以外の者は危うく吹き飛びそうになる。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「…やっぱりね。

さぁ紀流、思う存分暴れましょう♪」

 

 

皆が様々な反応を示す中、紀流はゆっくりと下降して西行妖と向き合う。

西行妖は暫くの間紀流の顔を呆然と眺めていたが、やがてこう呟いた。

 

 

「ふつうのにんげんじゃなかった、ってことかー…」

 

「まあ、な。

さっ、ウォーミングアップはこれ位にして、とっとと本気で来てくれ。

生憎こうなってしまった俺は、あまり忍耐強く無いんでね。」

 

「…そうかい。

じゃ、私達も一つ見せてやるよ…」

 

 

西行妖はそう言い、先程の紀流と同等の凄まじい気を放つ。

そして、こう続けた。

 

 

「「「「「セイシャダロウトシシャダロウトクップクセザルヲエナイ、

『サイギョウアヤカシ』ノシンノチカラヲナ!!!」」」」」

 

「果たしてその力、一度死んで生き返った俺に通用するかな?」

 

「「「「「フフフフフフ…」」」」」

 

 

西行妖は紀流の言葉を聞いて不気味に微笑んだ後、両手に扇子を構え、開く。

瞬間、西行妖の背後に不思議な絵が描かれている巨大な屏風の様な物が現れた。

屏風には所々に蝶が描かれており、まるで本物の蝶の様な質感を放っている。

そして、それが現れてから数秒後。

西行妖はゆっくりと両腕を上げ、スペルを宣言する。

 

 

 

 

 

「「「「「『反魂蝶』」」」」」

 

 

 

 

 

その言葉が西行妖の口から漏れた瞬間、絵の中の蝶達は一斉に絵の外へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、しっかりと並びなよー。

そこ、押すなー。」

 

 

ここは、三途の川の現世に近い対岸。

船頭である小野塚 小町は、大量の幽霊達を向こう側へと渡していた。

 

 

「はーぁ、全く…四季様も人使いが荒いなー…

あたいだって、何かの役にたてたかもしてないのに…」

 

 

何回も川を往復しながら、小町はため息をつく。

もういつもしている様に寝てしまおうかと思いながら彼女がそこらの岩に腰かけたその時、

何者かが河原の砂利を踏む音が彼女の耳に響いた。

小町は顔を上げて相手の顔を確認すると、ふっと笑って腰を上げる。

 

 

「やっと来たのかい、随分とのんびり歩いてきたじゃないか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亡霊のお嬢様。」

 

「…。」




反魂蝶、遂に発動。
はてさてこの先、どうなりますことやら…
次かその次の話で決着する…筈。
感想、意見、アドバイス等々募集中です。


余談

東方紺珠伝

未来予知可能になる『紺珠の薬』

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死ぬしか無い!
死ぬ事が出来ない!(終わりの無いのが終わ(ry

俺のそばに近寄るn(ry
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