遂に決着。
ゆっくり読んでいってね!!!
「…」
「大丈夫、紀流?」
「…」
「順調?」
「…」
「気は集まってr「五月蝿い!!!」…ごめんなさい…」
オッス!オラ紀流!
今現在俺は、幻想郷の力を借りて元気玉を作ろうとしている所だ!
横から此方を見守っている紫の胴が赤く染まってるのが心配でしょうがないぜ!
「…どう、紀流?
今溜まっている気で、あいつらを倒せそう?」
「そうさなぁ…」
俺は上を向き、元気玉の様子を見る。
西行妖に気づかれない様に結構上空で作っている為正確には分からないが、
大きさは約十数メートル程はあるだろう。
普通なら、十分過ぎる程の大きさなんだろうが…
「…駄目だな。
仮に今撃ったとしても、あいつらを倒すまでには至らないだろう。
…それどころか反撃してくるかも…」
「けど紀流、妖精達はもう限界みたいよ?」
紫にそう言われて後ろを見ると、明らかに疲弊している妖精達の姿があった。
妖精達は互いに肩を支えあっており、それはチルノ達も例外ではない。
「ぜー…ぜー…
祠弥、これ以上はもう無理だよ…死ぬ…」
「…妖精は死にませんよー…
と言いたい所ですけど、流石にこれが限界ですよー…」
「限界なのかー…」
「これでも足りないんですか、紀流さん…」
「…もう良い、良くやってくれた。
後は任せろ…と自信を持って言えないんだよなぁ、これが…」
俺は溜め息をつき、西行妖と戦っている皆に視線を移す。
「彗符『ブレイジングスター』!!
ほーらほら、私は此方だぜーっ!!!」
「「「「「…エエイ…ッ!?」」」」」
「私
花符『幻想郷の開花』!!」
魔理沙と幽香さんは同時にスペルを発動し、西行妖の周りを飛び回る。
西行妖は気を開放して二人を吹き飛ばそうとするが、それより早く二人は後退し…
「毒符『憂鬱の毒』!」
「審判『ラストジャッジメント』!!」
後から飛び出たメディスンと閻魔さんに交替し、自分達は素早く援護の弾幕を放ち始める。
その二人に西行妖が攻撃を仕掛ければ、直ぐに入れ替わりで妖夢と霊武さんが飛び出す。
それが終わればまた、魔理沙と幽香さんがスペルを発動する。
一見、非常に有効的な三段攻撃に見えるのだが…
「「「「「ハハッハハッハァ!!!
ドウシタドウシタ、ソノテイドノコウゲキデワレラヲタオセルトオモウカァ!?」」」」」
「…効いて…ないっ!?」
喰らっている西行妖本人は、全くと言って良いほどダメージを受けていない。
良く考えてみれば、それも当然の事かもしれない。
「…あいつ、ここまでやって余裕って…
正に『不死身』って奴だな…」
「…全くだ。」
「…あら、もう限界なの?
じゃあもう引っ込んでなさい、後は私がやるから♪」
「肩で息してるお姉さんが言っても期待出来n「え?」ひっ…」
何しろ、全員ここまでぶっ続けで戦っているのだから。
幽香さんや霊武さんですら肩で息をしているのだ、魔理沙や妖夢となると…
「…くっそ…」
俺は再び上空の元気玉を仰ぎ見るが、先程とあまり大きさは変わっていない。
焦っても元気玉が大きくならないのは分かっているが、やはり慌ててしまう。
「…紀流、どう?」
「全くでかくならん。
紫、本当に幻想郷中に呼び掛けたのか?」
「え、えぇ…呼び掛けたわよ?
幻想郷中の人間と妖怪達全員に聞こえるように…」
「そうか…おっかしいなぁ…じゃあ何で気が増え…
いや、待てよ…」
俺は少し気になる事を考え付き、少し頭で思考した後に紫に話しかける。
「…なあ紫、人里に行った事あるか?」
「…藍はしょっちゅう…」
「藍の事じゃなくて、紫はどうなんだ?」
「…無いわ。」
「じゃあもう一つ。
今までさっきみたいな方法で幻想郷中に呼び掛けた事はあるか?」
「…いいえ。」
「初めての試みだったのか?」
「…そうよ?」
「じゃあ集まるわけ無いだろぉぉぉぉぉぉっ!!」
「…へっ!?」
訳が分からないとでも言いたげな紫の顔。
全く、元気玉を放つ態勢じゃ無かったら頭を抱えてたよ…
俺はその欲求を溜め息一つだけで済ませ、紫に説明する為に口を開く。
「…あのな、知らない人の声で気を分けてくれって言われて気を分けるか?」
「?」
「だから、例え紫の事を知っている人がさっきの呼び掛けを聴いたとしても、
それが紫本人の声かどうかは分からないわけだろ?
そんな正体不明の相手に、皆が気を分けてくれると思うか?
そもそも紫の声を知らない人里の人達に至っては、ますます何の声なのか分からない。
『何処かの妖怪が自分達を騙そうとしている』と考えるのが普通だ。」
「…だから、協力してくれないの?」
「恐らくは、な。」
紀流の予想は間違ってはいなかった。
実際、紫の呼び掛けを聴いた幻想郷の住民達は…
「お嬢様、如何なさいますか?」
「気、分けてあげましょうよー。
声から察するに、相当困ってたみたいですし。」
「…確かに、あれはあの胡散臭いスキマ妖怪の声だったわねぇ…
あんな情けない声を聴くのは初めてだけど。」
「どうするの、レミィ?」
「分けるわけ無いでしょう!?
人が寝てる所を叩き起こしておいて気を分けろだなんて、図々しいにも程があるわ!!
…ところで、フランは?」
「…むにゃ…て…あげるー…」
「咲夜!直ぐにフランの手を下げさせなさいっ!!!」
「承知致しました。」
「…。」
「師匠、まださっきの声を気にしているんですか?」
「どうせ罠ですよ。
八雲 紫の声色を使うなんて、犯人は随分と大胆な奴みたいですね。
ま、私は騙されませんけどね。」
「そんな事はどうだって良い!
輝夜!今日こそ決着をつけて…ぐっ…」
「静かにしなさいよ、妹紅。
その祠弥にやられた右肩がすっかり治ったら相手してあげるから♪」
「…ぐぐぐぐぐぐ…紀流の野郎…」
「…祠弥を逆恨みして襲ったりしたら消し飛ばすわよ?」
「まあまあ、姫様も妹紅さんも落ち着いて…
師匠も何とか言ってくださいよ~…」
「…先程の声が本人による物なら…
…いや、例え本人による物だったとしても、それを証明できる者がいないのならば…
唯一それを証明出来そうな者は、麻酔でぐっすりと眠っているし…」
「おいおい、聴いたか?」
「ああ、聴いたよ。」
「何だったんだろうなぁ…
手を挙げて元気を分けろ、だったっけ?」
「さっき私の子供がふざけて手を挙げてみたんだけど、
手のひらから青い光の玉みたいなのが出て空に昇っていったわ…」
「えぇ!?大丈夫だったのかい?」
「大事には至らなかったんだけど、物凄く苦しそうに息をつき始めたから心配で…
今は落ち着いてるんだけど…」
「うえひゃぁ!?本当だ…青い玉が空に…」
「おい馬鹿止めろ!どっかの妖怪の罠かもしれないだろ!!」
「とにかく皆、絶対に手を空に挙げるなよ!!!」
「「「「おぉっ!!!」」」」
「…今のは間違いなく、八雲 紫さん本人の声…
…っ!?」
「はぁ…はぁ…すまない、阿求。」
「慧音さんでしたか…
あの声、聴きましたか?」
「ああ、この耳ではっきりとな。
どうだ、本人の声だったか?」
「恐らくは…」
「だったら、直ぐに人里の人間達に協力を要請しよう!
皆今の所は誰一人手を挙げていない様だが、私達が呼び掛けれb「駄目ですっ!」!?」
「…もしも…私が間違っていたら…そう思うと…
…ごめんなさい…っ!」
「阿求…」
大半の者が、気を分けようとはしていなかった。
紀流にそう言われた紫は焦り、目に見えておろおろし始める。
「じ…じゃあ…どうすれば良いの?
このままじゃ…幻想郷は…幽々子は…」
「ええい、ここで泣くな!誰も拭く物持ってないんだ!!
泣く暇あったらどうすれば良いか考え…!?」
俺が必死に紫を宥めようとしていると、
短い閃光とカメラのシャッター音らしき音が右から聴こえた。
そして、今の状況にそぐわない呑気な声。
「あやややや…これはスクープですね…
『西行寺 幽々子の反乱!幻想郷乗っ取り計画の真実に迫る!』
…って感じの記事タイトルでどうでしょうか、紀流さん♪」
「射命丸 文…」
俺が最も苦手なタイプの一人、新聞記者さんのご登場だ。
「…どうした、俺に取材でも申し込みにきたのか?」
「はいっ!今度こそ逃げられませんよー…というのは嘘で、
花が咲き乱れるこの異変を取材している際に『偶然』通りかかっただけです。
しかし驚きましたねぇ、まさか西行寺 幽々子がこんな騒動を起こすとh…ぐえっ!?」
「!?」
元気に喋っていた文が突如喉を詰まらせた様な声を出した為、俺はその方に顔を向ける。
見ると文の首には二本の手が伸びており、その手は思いっきり首を締め上げていた。
横を見ると、その目に怒りを宿した紫がスキマに両手を突っ込んでいる。
「…幽々子は…悪くない…
そんな記事書いたら…本気で…殺すわよ…っ!!」
「落ち着け紫!」
「書かないわね?本当に?
…本当なら、返事をしなさいっ!!!」
「…ーっ!…ーんっ!!」
文は頭を前後にぶんぶん振り、紫の言葉を理解した事を精一杯示す。
それ見て紫はようやく文の首から手を離し、スキマから手を出して胸の前で組んだ。
文は二・三度咳をして軽く深呼吸をした後、再び口を開く。
「はぁ…はぁ…では何なんですか?
先程あなたは幻想郷の住民達に『手を挙げろ』と呼び掛けていましたが…」
「説明している暇は無いわ!
貴方も手を挙げなさい!!幻想郷の未来が懸かっているのよ!!!」
「…ふーむ?」
「…協力しないんなら…!!!」
「…紫、お願いだから落ち着いてくれ。
…ちょっと思い付いた事があるんだ。」
「…え?」
首を傾げる紫。
同じ様に首を傾げている文に対して、俺は自分の思い付きを話す。
「今この場で起こっている事を新聞に出来ないか?
この状況を幻想郷中の皆に伝えれば、きっと協力してくれる筈だ!」
「出来ますよ。私は新聞記者ですからね。」
「じゃあさっそk「ですが、紀流さんが望む様には出来ないと思います。」っ!?」
「いくら私が速く記事を書いて新聞を刷って幻想郷中にばら蒔いたとしても、
到底あなたが望む様に素早くは出来ません。
新聞を刷る為には、一度山に戻らなければいけませんし…」
「そうか…
良い案だと思ったんだけどなー…」
「…すみませんね、こんな時には役立たずで。」
「いやいや、無茶なのは分かってたさ。謝る事は無い。
…けど、これからどうする…?」
元気玉は大きくならない、幻想郷の住民達が気を分けてくれる気配も無い。
最早万事休すかと俺が思ったその時、紫がふと何かを思いついた様に口を開いた。
「…ねえ天狗、貴方の新聞って人間達も読んでいるの?」
「え?まぁ、はい…定期講読してくれる人もいます。」
「貴方、人里の人達には知られている?」
「それは勿論。
取材者に名前を覚えて貰う事は、良い新聞を作る為に大切な事の一つですからね!
ですが、何故そんな事を?」
「…完璧だわ…
天狗!協力しなさい!!」
「え!?何にですか!?」
「…紫、何を思い付いたんだ?」
「…まあ、見てなさい。
何にって…勿論『取材』よ。」
「「?」」
『幻・想・郷の皆さぁぁぁぁぁぁん!!
咲き乱れる花の中、如何お過ごしでしょうかぁぁぁぁぁぁっ!!!』
「「「「!?」」」」
紫の提案から数分後、幻想郷中に再び声が響き渡る。
但し今回は紫の声では無く、元気に満ち溢れた文の声であるが。
『どうもこんにちは、お初にお目にかかる人は初めましてぇぇぇ!!!
私は『文々。新聞』の記者兼発行者の『射命丸 文』と申しますぅぅぅぅぅぅっ!!!』
「…新聞記者…?」
「あの姉ちゃんか!」
「蕎麦屋の大将、
お前さん今の声を知ってるのかい?」
「あぁ、常連さんなんだよ。
…けど、あんなにはっちゃけては居なかった気が…」
人里の人々の呟きを掻き消して、文の声は続く。
『普段は新聞のみで幻想郷の様子を伝えている私ですがぁぁぁぁぁぁ!!
今回は普段と少し趣向を変えて、現場からリアルタイムで取材しまぁぁぁぁぁぁす!!!』
「…だから五月っ蝿いわよ!!!
咲夜、今直ぐに全部の窓を閉めてきなさいっ!!!」
「窓は既に全て閉まっています。
この声は外からではなく、頭の中に直接響いてきているのでしょう。」
「つまり耳に栓をしても毛布にくるまっても無駄って事ね。
残念ね、レミィ。」
「…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「どうしたの、お姉様?
そんなにイライラしてると長生き出来ないよー…」
「えぇっ!?」
「…って美鈴が言ってた。」
「えちょっとお嬢さm…ぎゃあっ!?」
吸血鬼のイライラの犠牲になった者の頭の中にも、文の声は響く。
『今のままでは信頼性に欠けると思いますが、心配はいりませぇぇぇぇぇぇん!!!
ただいまより、この声が私本人である事を証明しまぁぁぁぁぁぁすっ!!!』
「…。」
「…天狗の新聞記者ね…
何度か竹林に迷い混んでいたのを追い返した事はあるけど…」
「そもそも胡散臭いのに、
本人証明なんて意味ないよ。ねえ師匠?」
「…そうかしら?」
「「「?」」」
「妖怪は信用出来なくて新聞記者は信用出来るっていうの、永琳?
…動かないで妹紅、落ち着いて座ってられない。」
「てめえぇぇぇぇぇぇ…ん?」
輝夜にのし掛かられている妹紅の耳には、こんな声が聴こえてきた。
『さぁ皆さん、人里上空を御覧くださいぃぃぃぃぃぃっ!!!』
「…人里上空?ぐえっ!?
いきなり立ち上がるなっ!!!」
「…飛べばここからでも見えるわよね。
永琳、鈴仙、てゐ!行くわよっ!!」
「「「はいっ!!!」」」
「おい輝夜、私は…」
「あなたは言わなくても来るでしょ?」
「…。」
永遠亭の者達は輝夜を先頭にして地を蹴り、人里が見える場所まで浮かび上がる。
その視線の先には、およそ常識では有り得ない『光景』…
「…おいおい…」
「何だい、ありゃあ…」
冥界での行われている大激闘の様子が、空一杯に広がっていた。
人々が口をあんぐり開けて上空を見上げていると、その光景は文の顔のドアップへと変わる。
『只今空間が繋がりましたぁぁぁぁぁぁ!!
人里の皆様こんにちは、改めまして射命丸 文ですっ!!!
今現在私は、冥界で行われている大激闘の真っ直中にいまぁぁぁぁぁぁ…ぜぇ…ぜぇ…』
『もっと声を張りなさい、天狗!!!』
『…無茶言わないで下さいよ…こんなに声出したの初めてなんですから…』
『泣き言なんて聴いてる暇は無いの!!
幻想郷の住民達、当然見えているわよね!?
目を見開いて良ーく見なさい、今幻想郷で何が起こっているのかを!!!』
紫の声と共に場面は変わり、度重なる爆発の中で戦っている少女達が映し出される。
『さあ私は今、幻想郷を破壊しつくさんと企んでいる『西行妖』、
そしてその魔の手から幻想郷を守ろうとしている者達の戦いの真っ只中にいますぅぅぅっ!!!
ここで少しお話を聞いてみましょう!どうですか、勝てそうですk「「「「「五月蝿い!!!」」」」」
…御覧の通り、激しい戦いが繰り広げられていまぁぁぁぁぁぁすっ!!!』
文は西行妖と少女達の周りを高速で飛び回り、決死のレポートを続ける。
そのあまりの凄まじさに誰も声が出せないでいると、一人がこんな事を言い出した。
「待て、確かにこれが本当に起こっている事だったら凄いが、信用するのは早いんじゃないか?
何処かの妖怪が見せている幻覚だっていう可能性もまだ捨てきれn…」
その言葉が終わらない内に、上空から何かがその者の横に落ちてきた。
周りにいた人々が確認すると、落下地点の土は黒く変色し、白い煙が立ち上っている。
「…え?」
「…光の玉が落ちてきた様に見えたが…」
人々が固まってしまった所に、またもう一つ何かが落ちてくる。
その何かは最初の物より小さかったものの、人里をパニックにするには十分すぎる大きさだった。
「…家の中に逃げ込めぇぇぇ!!!」
「「「「わぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」
『…あぁ、皆さん落ち着いて下さ…げほっ…
何故空間の裂け目を戦いの間近に開いたんですか…』
『こうでもしないと…』
『それで人里に被害を出したら意味ないでしょうがっ!!
取り敢えず、もう一度呼び掛けt「皆さん、待って下さいっ!!!」!?』
「「「「!?」」」」
逃げる人々の頭上を、懇願する様な声が通っていく。
その声の主は、たった今全力で走ってきたかの様に肩で息をしている一人の少女。
「…阿求先生…」
「あの記者さんが言っている事も、八雲 紫さん…最初の声の人が言っている事も全て本当です!
本当に、世界に危険が迫っているんですよ!!」
「「「「…」」」」
「…ですから皆さん、どうか…
手を挙げて、気を送ってあげて下さいっ!!!」
阿求はそう言いながら両手を挙げ、目を瞑って力を込める。
やがて皆の見ている前で、彼女の掌に小さな青い光の玉が形作られて空へと上がっていった。
その姿を見てもまだ踏ん切りがつかない人々に、今度は阿求とは別の声で力強い言葉が響く。
「阿求の言う通りだ!
私は阿求を、そしてあの人達を信じるっ!!!」
「けーねせんせい!
よーし、せんせいがあげるならわたしもー!!」
「おれもー!!」
「ぼくもー!!」
その言葉に真っ先に反応したのは小さな子供達であり、皆次々と慧音と阿求に倣って手を挙げた。
子供達の掌に形作られた光の玉は阿求のよりも小さいものの、同じ様に空へと昇っていく。
「…ふん、子供達や先生様達が信じてるって言うのに、
俺達が手を挙げない道理は無いよな!!!」
「大将~、それ狙って言ってませんか?」
「るせぇ!お前は黙ってろ!!
さあ皆、手を挙げて『元気』って奴を分けてやろうぜ!!!」
蕎麦屋の店主はそう言い放つと、その大きな両手を天へ突き上げる。
横に立っていた店員らしき男はそれを見て肩をすくめた後、仕方ないといった感じで手を挙げた。
その様子を見て、今まで迷っていた人達も一人、また一人と手を空に向けて挙げ始める。
「…えぇい、こうなりゃやけだ!持ってけドロボー!!」
「…死にはしないよな?」
「そんな物騒な事を考えるな!
阿求先生も言ってただろ、ここでやらなきゃ世界がやばいって!!
どっち道死ぬんなら、精一杯やってから死んだ方が良いだろ!!!」
「…お前が一番物騒だろ…っ!」
皆好き勝手な事を言いつつも光の玉は確実に増えていき、上空で合体して何処かへ飛んでいく。
その頃冥界では、突然大きくなり始めた元気玉に紀流が驚いていた。
「ははは、これは凄い!
一気に来たぞ、どーんって、どーんって!!」
「どうですか紀流さん、それで足りますか!?」
「…いや、まだだ!
さっきよりはずっと大きくなったけど、まだこんなもんじゃ足りない!」
「あ…あれでまだ足りないんですか!?
見る限り、もう直径二十メートル以上にはなっていますよ!?
…それに…」
文は一旦言葉を切り、不安そうに人里上空に繋がっているスキマへと目を移す。
そこには、挙げていた腕を下げて次々と道にへたりこんでいく人々が映っていた。
「…人里の人達も、もう分けてくれる元気が残っている様には…
本当に、それだけじゃ足りないんですか?」
「…くそっ!」
後一歩という所で望みが絶たれ、紀流は思わず舌打ちをする。
その肩を紫は優しく叩き、こう言った。
「…大丈夫よ、紀流。まだ気は集まるわ。」
「何!?」
「まだ、気を分けてくれていない者だっている。
その人達は、私の声でもあの天狗の声でも動かない者達。」
「…それが何d…っ?」
疑問を声にしようとした紀流を口に指を置いて黙らせ、紫は微笑んでこう続けた。
「…その者達を動かせるのは、貴方だけ。
さぁ、叫びなさい。このスキマに向かって、声高らかに。」
「…分かった。」
「…それで良いのよ…♪」
「お嬢様、分けてあげましょうよ~!
ほら、咲夜さんもパチュリー様も…」
「五月蝿い!これ以上無駄口叩くと減給するわよ!!」
「…元々美鈴にお給料なんてあげてないでしょ、レミィ。
で見に来たは良いけど、結局どうするn『幻想郷の皆ぁぁぁぁぁぁっ!!!』えっ!?」
「この声は…」
「紀流お兄ちゃんだーっ!!!」
フランが喜んで手を挙げる間にも、紀流の声は続く。
『幻想郷を救う為に、後もうちょっと、あと少しだけで良い!
俺に…元気を分けてくれぇぇぇぇぇぇっ!!!』
「祠弥!祠弥の声だわ!!
ほら四人とも、もたもたしてないで手を上に挙げなさい!
私達は不老不死の蓬莱人なんだから、気なんて幾らでも分けてあげられるでしょう!!!」
「…姫様、私とてゐは蓬莱人ではありませんy「屁理屈言わない!!!」…はぁ…」
「私達は不老不死じゃ無い者なりに頑張れば良いんだよ、鈴仙。」
「…ふん、誰が紀流なんかn「それっ!」っておい、何すんだ!?」
「何って、元気を分けるのよ。
…姫様に嫌われたくないんなら、大人しく協力した方が良いと思うけど?」
「…っち…」
嫌々ながら、妹紅は左手を挙げる。
その掌からは人里の人々のそれよりも大きな光の玉が飛び出し、冥界に向かって飛んでいった。
輝夜と永琳、そして鈴仙とてゐの掌からも、それぞれ妹紅レベルの大きな光が飛び出していく。
「ほら、お姉様達も早く挙げて!!」
「合点承知しました、フランお嬢様!!」
「…~っ…!!!」
「レミィ、素直になりなさいよ。」
「五月蝿い!私は…」
「ここであの人間に恩を売っておけば、
今後何か起こった際に優位に立てるかt「咲夜、あなたも挙げなさい!」仰せのままに。」
今まで何度も、異変を解決してきた紀流の声。
「紫様の為にも一緒に挙げるぞ、橙!」
「はい、藍様!」
その声は、彼と出会い、戦い、そして彼の戦いを間近で見た者にとっては…
「メルラン、リリカ!」
「「分かった」わ」よ」、姉さんっ!!!」」
最も、信頼のおける声である。
「この声…間違いない、あの時の…」
「久し振りに聞いたわね、紀流の声も…
ね、上海?」
「シャンハーイ!」
その声で、呼び掛けられたならば。
「協力しろってか、何か癪だなぁ…」
「あれ、まだ肩に抱えられた事気にしてるの~?」
「そ、そんなわけ無いだろっ!
分かったよ!!挙げれば良いんだろ、挙げれば!!!」
「ふふ~ん…」
応えない者は、まずいないだろう。
「…頑張りなよ、紀流~…
酒…また一緒に飲もうな~…ぐぅ…」
そして、その者達の『応え』は。
「…おっ?おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
元気玉の巨大化という形で、紀流へとしっかり届いていた。
紀流と一緒にずっと上を見上げていた文も元気玉が巨大化した事に驚き、思わず声をあげる。
「す…凄いっ!!!
紀流さん、もう直径五十メートルはありますよ!!!」
「あぁ、これだけあれば…十分だ!!」
紀流は嬉しさ全開の笑顔で急上昇し、遥か上空に作っていた元気玉の真下に移動する。
「…近くで見ると、本当にでかいな…なんて感動してる場合じゃない!
皆、西行妖から離れろぉぉぉぉぉぉっ!!!」
紀流は思いっきり叫び、西行妖と戦っていた魔理沙達に避難を促す。
しかし、ここに紀流の誤算があった。
「「「「「…ン…ナンダ…ナアッ!?」」」」」
「ぜぇ…ぜぇ…遅いぜ、祠弥…」
元気玉の標的である西行妖は疲れていないが、
その為の囮となっていた魔理沙達は疲労困憊状態であるという事を失念していたのである。
西行妖は信じられないといった表情で元気玉を見つめていたが、やがてにやっと笑い…
「「「「「…アンナモノヲ…ツクッテイタノカ…
ダガ、ソレモムダニナッテシマッタナ!!!」」」」」
「…あ…っ…」
「閻魔様!?」
一番近くにいた映姫の頭を掴み、上空の元気玉の方へとかざした。
「「「「「ニンゲン、ソレヲウッテミロ!
ウッタラサイゴ、コノモノノアタマガクダケチルゾッ!!!」」」」」
「なっ、お前…っ!!!」
「卑怯…者がっ!!!」
「「「「「ナントデモイウガイイ、ムリョクナルモノドモヨ。
マアソモソモコンナヤツヲタテニシナクトモ、ヨケルノハタヤスイコトダロウガナァ!!!」」」」」
「あの野郎…こてこての悪役みたいな事しやがって…」
そう怒りつつも、紀流は迷っていた。
撃てば、映姫が犠牲になる。撃たなければ、皆の元気が無駄になる。
「……ぐぅぅぅぅぅぅ…っ!!!」
「…私に遠慮などいりません、早く撃っ…あぐっ…うぅぅぅ…っ…!!」
「「「「「フフフフフフフフ…ドウスル、ニンゲンヨ。
モシモマヨッテイルノナラバ、ワレラガソノマヨイヲタチキッテヤロウ…!!!」」」」」
西行妖は笑いながらそう言い、映姫を掴んでいない方の腕を紀流に向けてかざす。
そしてゆっくりと、だが確実に紀流を消し飛ばせる量の気を溜め始めた。
「くっそ、どうする?
どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする…!!!」
「「「「「ハハハ!ナヤミ、クルシンデイルソノカオハサイコウダゾ、ニンゲン!!
サア、コレデサイゴダ…クタバルガイィッ!!!」」」」」
「う…わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
西行妖が邪悪な顔で腕を後ろに引いたのを見て紀流はもう堪えられなくなり、
喚きにも近い叫び声をあげながら元気玉を発射しようとした。
その瞬間、何かが西行妖の少し後ろで光ったかと思うと…
「四季様に…触れるなぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「「「「「ッ!?」」」」」
一筋の閃光が走り、西行妖の腕は映姫の頭から離れた。
そのまま落ちていきそうになる映姫の体を支えたのは、青い着物を着た赤髪の女性。
「こ…こま…ち?
何故、貴方が…」
「罰は後でいくらだって受けます。
ですから今は、安心して休んでください。」
「…分かりました…
…ありがとう、小町…」
「…四季様…」
小町は安堵した表情で目を閉じた映姫を両手でしっかりと抱えた後、
此方を恨み全開の目付きで睨んでいる西行妖を負けず劣らずの目付きで睨み付ける。
「「「「「キ…キサマァァァァァァ…!!!
ユルサン、コロシテヤ…「てやーっ!!!」ヘアッ!?」」」」」
今にも小町に襲いかかりそうになった西行妖の顔面を思いっきり蹴りつけたのは、
西行妖と同じ格好、髪色、顔、をした半透明の女性。
その姿を見て思わず声をあげた者は二人いた。
「「幽々子」様!!!」
「あら、あなた達も私の名前を知ってるのね。って事は知り合い?
積もる話はあるけれど、とにかく今はこの私もどきを倒すのが先決よ!!
死神さん、皆を連れてここから離れる準備っ!!!」
「分かった!
そこの天狗さん、私の周りに皆を集めてくれ!!」
「分かりましたっ!
ほら、あなたも捕まって下さい!!」
「…すまない…わね。」
「良いんですよ!」
文はそう元気良く答え、その自慢のスピードで皆を次々と背負い、小町の元へやってきた。
妖精達もパニックになりながらも協力しあい、どやどやと小町の元へ集う。
「これで良いですか!?」
「ばっちりさ!
人間、後は頼んだよ!!」
「「「「「ニガスカァァァァァァァァァ!!!」」」」」
その場から離れようとした皆に対し、西行妖は溜めた気を放とうとする。
しかし…
「…サンキュー、皆。」
「「「「「!?」」」」」
紀流の呟きと共に、突如西行妖の上空数メートルの地点に現れた巨大な気弾。
その直径五十メートル以上の大きさに、西行妖は思わず恐怖し…
「「「「「コノォォォォォォォォォッ!!!」」」」」
瞬時に気を溜めていなかった方の腕にも気を溜め、両手から凄まじい量の気を放出した。
それと同時に、紀流は息を大きく吸い込み…
「…
幻想郷中の元気を貰って出来た元気玉を、西行妖に向かって全力でぶん投げた。
西行妖の放った気は元気玉に触れるや否や、紙切れの様に粉々になって消え去る。
「「「「「ナニィィィィィィィィィッ!?」」」」」
「くたっばっちまぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
西行妖はその顔に驚きと恐怖を浮かび上がらせ、両手を前に出して全力で元気玉を受け止める。
しかし元気玉はそんな西行妖の努力も空しく、どんどんその手を呑み込んでいく。
「「「「「…ア…アァァァ…コンナ…コトガ…」」」」」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁっ!!!」
「「「「「…コンナ……コト…ガ…」」」」」
元気玉はやがて西行妖の腕をすっぽりと覆い尽くし、そのまま体も呑み込むかと思われたが…
「「「「「アッテタマルカァァァァァァァァァァァァッ!!!」」」」」
「うっ!?」
最後の最後、元気玉に呑み込まれる直前で西行妖は気を爆発させ、元気玉を一気に押し返した。
西行妖の思わぬ反撃を喰らった紀流は体勢を崩すも、直ぐに体勢を戻して元気玉を押し続ける。
「紀流さん、そこだ!いけーっ!!」
「まけるな、祠弥ーっ!!」
声を枯らしつつ、皆は必死になって紀流を応援する。
しかしその思いとは裏腹に、紀流は次第に西行妖に押され始めた。
「ぐぐぐぐぐぐぐぐぐ…!!!」
「…だ…駄目だ…!
肝心の紀流自身に…気が殆ど残っていないっ!!」
「「「「「なっ!?」」」」」
「そんな…ここまで来て、やっぱりまけちゃうの…?」
「…紫さん、先程の様にもう一度皆に呼び掛け…」
「…ごめん…なさい…駄目みたい…」
「なっ…!」
呆然としてしまった文の横で、魔理沙は悔しさを爆発させる。
「くっそぉぉぉぉぉぉっ!
う…恨むぜ…!!私達の…力の無さを…!!!」
「「「「「フッ、フフフフフフフフフハハハハハハハハハハハハ!!!
ヤハリ、タダノコケオドカシニスギナカッタカ!!!
ニンゲン…イヤ、『キリュウ ホコラヤ』ヨ!!!
サイゴハジシンノワザヲハネカサレ、シツイトゼツボウノモトニチルガイイ!!!」」」」」
「…後…もう少しなのに…
ちくしょう…俺にもっと力があれば…」
力が欲しい。今はとにかく力が欲しい。
力。力。力。力。力力力力力力力力力力力力力…
「…ん?」
ふと、紀流の目は自身のベルトへと止まった。
そこにあったのは、霊夢から託された一枚のお札。
「あ…」
これを受け取った時に霊夢が言っていた言葉が、紀流の頭に浮かんでくる。
『頼んだわよ、祠弥…
私と紫の二人の分…しっかりと、あいつに…叩き込んで…やりなさいっ!!!』
そうだ、まだ霊夢の分をあいつに叩き込んでいない。
しかし、それを叩き込むには力が…ああ、何だ。
「…あるじゃないか、力。」
そう紀流が呟くと同時に、彼の姿は元気玉へと呑み込まれた。
皆は目の前の光景が信じられず呆然となってしまい、誰も悲鳴一つあげない。
そんな中、西行妖だけは大爆笑していた。
「「「「「アーッハッハッハハハッハアアハッハアアアハッハァァァ!!!
サイゴハアッケナイモノダッタネェ!!
ジツニ『ブザマ』デ『オロカ』デ『アワレ』ナサイゴダッタヨ!!!アハハハハハハハ…」」」」」
西行妖は腹を抱えて、笑いこげていた。
…だがやがて、少しおかしい事に気づく。
「「「「「…?」」」」」
元気玉が、いつまでも漂ったまま爆発しないのだ。
むしろ良く見ると爆発するどころか、次第に小さくなってきている。
やがて、その直径が二メートルよりも小さくなると…
「「「「「…!?」」」」」
「…誰が『無様』で『愚か』で『哀れ』だって?」
「「「「紀流っ!!!」」」」
そこには不敵な笑みをその顔に浮かべた人間、紀流 祠弥が浮かんでいた。
その髪の毛は金色に変化して逆立っており、紀流が『超サイヤ人』である事を示している。
「「「「「ド…ドウイウ…」」」」」
「…最後に、ほんっっっっっとうに最後に言うぞ。
『降参』しないか?ここで散るのはお前達の本望じゃ無いだろ?」
「「「「「…ッ!!!」」」」」
西行妖はその紀流の問いに答えず、その場から急上昇して紀流との距離をとろうとする。
「…はぁ…」
そんな西行妖の姿を見て紀流はため息をつき、瞬時に気を高めて西行妖に向かって飛ぶ。
「…逃げようってなら、容赦はしないよ?」
「「「「「コ…コノォ…アガァッ!?」」」」」
追ってきた紀流に対して西行妖が行動を起こす前に、既に紀流の拳は西行妖の腹を捉えていた。
…お札を握り締めた『左手』が。
「…そんなに、生きたかったのか?」
「「「「「…ア…」」」」」
紀流は静かに問いかけるが、西行妖は呻きしか漏らさない。
答えが返ってこないのを確認すると、紀流はそのまま西行妖の体を左手で頭上に持ち上げ…
「…だったら今は、精々俺に倒される事で罪を償うんだな!!!
喰らえ…『龍拳』っ!!!」
右手を握り締めて一気に気を溜め、左手を降ろすと同時に西行妖の腹目掛けて叩き込む。
するとその瞬間紀流の手元で大爆発が起こり、その爆風の中から巨大な金色の龍が姿を現した。
「グォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
金色の龍は咆哮をあげながらそこらじゅうを飛び回った後、
突如とぐろを巻きながら急上昇して雲の中に入り…
その雲ごと、爆ぜた。
「…ほ…祠弥…」
魔理沙はそう呟き、ふらふらっと皆の前に出る。
皆の視線の先にあるのは当然、爆発があった後に龍が出てきた場所。
やがて、視界を遮っていた煙が晴れると…
「…ふうっ。」
疲れきった、だがそれを感じさせない程の喜びをその顔に浮かばせている紀流が皆の目に写った。
誰が最初に飛び出したのかは分からない。
だが、後の紀流によると…
「此方に向かって飛び出してきたのは、皆ほぼ同時だった」らしい。
…終わったな…後は宴会だけなのだ…
というわけで無事決着。え、大技を二つも使うなって?気にするな!
次は予告通り宴会。花映塚編最終話。
感想、意見、アドバイス等々募集中です。
余談
先週のドラゴンボール超
一番盛り上がった場面・本編終了直前のフリーザ宇宙船内部シーン
理由・タゴマが生きていたから
ヒャッハー!色々言っておいて結局生かしておいてくれた!!流石はフリーザ様だぜ!!!
さあタゴマよ、ザーボンやドドリアレベルの戦闘力を発揮して映画以上の活躍を魅せるのd(ry
…せめてシサミレベルには活躍して、お願いだから。