東方有無録   作:印鑑

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第八十四話目です。
ゆっくり読んでいってね!





九ヶ月も投稿出来なくてすまぬ…すまぬ…


vsU.N.オーエン〜見えない勝機と迫る狂気

「…痛ーい!!!」

 

「…っ~…此方だって痛いさ!

だがそんな泣き事言ってて勝てると思ってるのか、フラン!?」

 

 

オッス!オラ紀流!

今現在俺は、フランの右ストレートが右頬に突き刺さった激痛を喋って誤魔化している所だ!

フランも額を押さえてるから反撃される心配も無いぜ!

 

 

「…やっぱり強くなったんだね、紀流お兄ちゃんは。

今の一撃、美鈴だったら数メートルは吹っ飛んでる筈なのに。」

 

「そりゃどうも。

けど、お前が強くなったのも分かるぞ。

もしも最初に会った時に今のパンチ喰らってたら、多分頭に大穴空いてただろうしな。」

 

「あの時はまだ玩具にしようと思ってたから、それは無いよー。

…けど、今回は違うからね?」

 

「分かってるさ。」

 

「じゃ、行くよー!」

 

 

フランは元気良く右手を挙げると同時に地面を思いっきり踏み締め、

地面すれすれの所を飛びながら此方に突っ込んできた。

 

 

「…甘いぞフラン!」

 

 

俺はフランをぎりぎりまで引き付けると、

距離が30cm未満になった時点で前進し、回転しながらフランの後ろに回り込む。

そしてそのままフランの背中にカウンターで右拳を叩き込もうとしたのだが…

 

 

「後ろっ!!!」

 

 

俺の拳が届く寸前にフランは両手を地面について急停止し、

仰向けになると同時に此方の拳目掛けて両足でキックを放ってきた。

 

 

「…何…っとぉっ!?」

 

 

不意の攻撃でタイミングをずらされた事と片手対両足だった事が重なり、

俺は後ろ向きに勢い良くぶっ飛ばされる。

何とか気を高めてその場で止まると、間髪入れずにフランが再び突っ込んできた。

迎撃する為の気を溜める時間は無いと俺は判断し、

瞬間的に掌から気を噴出してフランの突進の軌道上から逃れた。

…と、思ったのだが。

 

 

「それで避けたつもり?」

 

「え…」

 

 

瞬間、フランは俺の目の前にいた。

何が起こったのかを理解する前に、俺の体は本能で思いっきり仰け反る。

コンマ一秒後、それまで頭があった場所をフランの蹴りが通り過ぎていった。

 

 

「…何だ、今の移動速度は…全く見えなかったぞ…」

 

 

本能に感謝しながら後退しつつ、俺はフランの高速移動について考えを巡らそうとする。

…だが、一瞬でもそんな事を考えようとしたのがいけなかった。

 

 

「余所見は駄目だよ?」

 

 

フランはまた直ぐに、俺との距離を詰めてきた。

しかも今度は目と鼻の先、零距離と言っても差し支えない場所である。

眼前まで迫ったフランの笑顔を見て俺は漸く我に帰り、殆ど反射的に右手を突き出す。

 

 

「っ!」

 

「よ…し?」

 

 

当たるには当たった。

だが、相応の手応えが無い。

 

 

「くるっと回って…」

 

 

いつの間にか、フランの姿は俺の視界から消え。

 

 

「つ"うっ!?」

 

「いっかいてーん!!」

 

 

次の瞬間に両足で思いっきり首にロックをかけられ、そのまま前回りで地面に叩き付けられた。

しかも最悪な事に、頭からである。

 

 

「…お"っ…」

 

 

口に入ってきた大量の土砂と頭への強い衝撃が相まって、胃の中の物を吐きそうになる。

実際直ぐに喉の奥から酷い味の液体が沸いてきたので、胃液は逆流してそこまで来ていたらしい。

…あぁ、口濯ぎたい…

 

 

「まだまだー!スペルカードいっくよー!

禁忌『クランベリートラップ』!」

 

 

フランが元気良くスペルを宣言すると、彼女の周りに四つの魔法陣が表れる。

魔法陣はフランの周りを回りながら上昇していき、

向かい合っている魔法陣同士でそれぞれ赤と青の弾を生成し、

その弾は巨大な植物の蔓の様に数珠繋ぎになって空へと伸びていく。

 

 

「ばーん!」

 

 

やがてフランが此方を指差すと、

直立していた蔓の内の二本が突然物凄い勢いでしなり、

地面で仰向けに倒れたままの俺を叩き潰そうと襲ってきた。

このまま寝ていると挽き肉どころかパン生地になりそうだと思ったので、

俺は込み上げてきていた吐き気を気合いで誤魔化し、

上半身を起こしつつその反動で前方に飛んでクレーター内から脱出する。

直後、クレーターは二本の弾幕蔓によって凄まじい音と共に二重になった。

 

 

「ふふん、やるね。」

 

 

フランは微笑み、右手を軽く横に振る。

その動きを合図に、残りの二本の蔓が俺目掛けて倒れてきた。

しかし今度は蔓と蔓の間に大きな隙間があった為、俺はそこを目掛けて突っ込み、通り抜けた。

…頭までは。

 

 

「いだぁっ!?」

 

 

突然、首と背中に超高熱の大木を降り下ろされたかの様な激痛が襲った。

再び地面に叩きつけられては堪らんと飛ぶ事に意識を集中しようとするが、

下から襲ってきた同じぐらいの衝撃に肺の空気が叩き出され、思わず声にならない呻きを漏らす。

 

 

「…ぅっ!!!」

 

「あはは、苦しい?ねえ苦しい?」

 

 

フランは俺の周りを笑いながらぐるぐる旋回しつつ、

両手を振り回して蔓を操り、俺を滅多打ちにしてくる。

意識が飛びそうになる中で俺は手に気を溜め、薄目でフランの様子を見つつ好機を待つ。

 

 

「四つ同時に喰らっちゃえーっ!!!」

 

 

フランはそう叫び、笑顔で両腕を降り下ろす。

四つの蔓が一斉に襲ってきた瞬間、俺は防御体勢を解き…

 

 

「千刃『サウザーブレード』!」

 

 

スペルを発動して両手に紫色の気の刃を生み出しつつ回転し、

四本の蔓の弾と弾の間を正確に切り裂いた。

すかさず分離して軌道が直線的になった蔓の先端を避け、俺はフランに向かって飛ぶ。

 

 

「え?」

 

 

フランは俺が避けた事が意外だったらしく、腕を降り下ろしたまま固まっていたが、

俺が一メートル付近まで接近した時点でようやく事態を理解したのか、慌てて上昇した。

 

 

「今更遅い!」

 

 

俺はそう叫ぶと同時に右腕を突き出してフランの足を掴んで投げ飛ばし、

追撃とばかりに連続で気弾を発射する。

 

 

「だららららららららららららっ!!!」

 

 

五十発程撃ち込んだ時点で俺は上昇し、両手で一際大きな気弾を形成する。

攻撃の締めとしてその気弾を発射しよう…

…とした瞬間、振り返る間もなく背中を勢い良く蹴り飛ばされた。

 

 

「がはっ!?」

 

 

不意の攻撃だったので俺は踏ん張る等の対処も出来ずに地面目掛けて一直線に飛んでいき、

墜落してそのまま勢い良く顔で地面を数メートル削った後、紅魔館の壁に逆さまで突っ込んだ。

 

 

「同じ場所にずっと攻撃しつづけて後ろの私に気がつかないなんて、

攻撃してくれって言ってる様な物だよー?

紀流お兄ちゃん、やる気ある?」

 

 

壁に全身をめり込ませている俺に向かって、

いつの間にか地面まで降りてきていたフランは不満そうに話しかけてきた。

思わず言い返しそうになったが、口を開くと今度こそ吐きそうなので我慢する。

 

 

「もしかしてフラン、紀流お兄ちゃんの予想以上に強くなりすぎちゃった?」

 

 

…ぶっちゃけその通りだ。

まだ様子見モードとはいえ、超サイヤ人状態の俺を圧倒してるんだから。

 

 

「まぁ、それも当然だと思うよ。

 

 

 

 

 

…だってフラン、凄く頑張ったもん。」

 

「…!?」

 

 

瞬間、フランの発している気の質が変わった。

今までの元気溌溂とした雰囲気は消え、

紅く光っているその両眼からはフラン特有の威圧感…

所謂『純粋な狂気』とでも言うべき物が滲み出ている。

…やべぇ、威圧も相まって真面目に吐きそう。

 

 

「紀流お兄ちゃんと戦う為に、フランは頑張った。」

 

 

そう呟き、フランは右手を後ろに引いて此方に突っ込んでくる。

…速いが、避けられない速度ではない。

 

 

「…はあっ!!!」

 

 

気を放って壁を崩し、土煙に紛れつつその場から離れる。

数メートル飛んだ時点で振り返り、その場にいるであろうフランを見据える…

が。

 

 

「遅くはないけど、それじゃあ避けられないよ?」

 

「…っ!?」

 

 

…恐ろしい事に、フランはまた俺の後ろを取っている。

僅か数十秒間の間に、一体俺は何回背後を取られたのだろう。

 

 

「ふふふ、怖いでしょー?

さて、これからどうしようかなぁ。

パンチするか、キックするか、弾幕撃つか、頭突きするか…

ねぇ、紀流お兄ちゃんはフランにどうされたい?」

 

 

楽しそうに喋るフランの声は、俺の真後ろから聞こえてくる。

…その小さな息遣いの一つ一つで俺の髪を揺らせる程の、超至近距離から。

 

 

「こうして近くで見ると、やっぱり紀流お兄ちゃんって髪の毛長いよね。

でも、フランもかたっぽだけ伸ばしてリボンで結んでるんだよ。見る?」

 

「…」

 

「あれ、見ないn「そらぁっ!!!」へぶっ!?」

 

 

…だがそれだけ近くにいるという事は、

頭を思いっきり後ろに倒すだけで攻撃できるという事でもある。

 

 

「いっ…たいぃ…っ…」

 

「お、本当だ。確かに片方だけ長いな。

…まあ、知ってたけど。」

 

「うー…」

 

 

フランは顔を歪め、潤んだ眼を両手で擦っている。

その額の中心はぷくっと膨れ、小さなたんこぶが出来ていた。痛そう。

俺はフランに心の中で謝罪しつつ、彼女の『不自然な高速移動』についての考えを巡らせ始めた。

 

 

「…フランの移動速度は尋常じゃない。

しかしもっと恐ろしいのは、気を持ってしても動きが読めないって事だ。

瞬間的に気を放出して移動しているのは間違いないだろうに、何故…?」

 

 

…しかし、フランは俺の予想以上に強くなっているのだ。

俺が感知出来ないレベルの短い時間だけ気を放出し、動けたとしても何ら不思議ではない。

レミリアも飛んでもないスピードだったが、今のフランはそのスピードを余裕で超えている。

…げに恐ろしや、吸血鬼。

 

 

「ふう…酷いよ、顔に攻撃なんて…」

 

 

…っと、時間切れか。

 

 

「首に息かかる位近くにいたフランが悪い。」

 

 

俺はフランの不満声に淡々とそう返し、フランの顔を見据える。

まだ潤んではいるが、彼女の目もしっかりと俺を見据えていた。

 

 

「今度は私の番!

紀流お兄ちゃんがフランにした攻撃、数倍にして返してあげるよ!!!」

 

「やってみろよ。

但し、此方も大人しくやられてやるつもりはないからな?」

 

「上等だよっ!!」

 

 

フランはそう言い放つと同時に拳を構え、俺目掛けて突進してくる。

それを俺は腕を交差させて受け止め、そのまま押し返して追撃…

 

 

「うっしろー!」

 

「ぐうっ!?」

 

 

…しようと思った瞬間に後頭部に衝撃を喰らった。

咄嗟の反応で振り向きざまに蹴りを繰り出してみるが当たらず、

逆にまだ伸びきっていない足を掴まれる。

 

 

「だーかーらー、遅いって言ってるでしょ?

早く本気出さないと、壊しちゃうよ?」

 

 

そうつまらなそうに言うとフランは俺の足から手を離し、

間髪入れずに俺の胴に蹴りを喰らわせてきた。

当然の様に俺は吹っ飛ばされ、今日何度目だか分からない痛みを感じながら体を起こそうとする。

 

 

「ねえ紀流お兄ちゃん、もしかしてフランの事馬鹿にしてる?」

 

「!?」

 

 

顔を右に向けると、そこには吹っ飛ぶ俺と並行して飛んでいるフランがいた。

フランは不満満載のジト目で俺の事を見つつ、不意に語り始める。

 

 

「フランね、紀流お兄ちゃんが戦ってくれるって言った時、凄く嬉しかった。

だからフラン、その為に凄く頑張ったんだよ。

美鈴や咲夜やお姉様やパチュリーに戦い方について教えてもらったりもしたし、

咲夜と一緒に幻想郷中を回って紀流お兄ちゃんと戦った事ある人達と会って、

どんな戦い方をするのか、どんなスペルが使えるのか、どうやって撃つのか、

隙はいつ出来るのかを教えてもらったりもした。」

 

「…はあ…」

 

 

…成る程、そこまで本腰入れて対策してたのか…

つーか幻想郷の人達に俺の隙とか見切られてんのね。

そこまでして戦いに臨んでるのに相手が様子見モードじゃ、そりゃ苛つくよな…

俺は急にフランに対して申し訳なくなった。

 

 

「…でね、紀流お兄ちゃんについて色々調べて分かったんだけど…」

 

 

俺の反省など露知らず、フランは俺の顔から目を逸らさずに話し続ける。

やがて胴の痛みが引いた俺が空中で止まると、フランも同じように止まった。

 

 

「紀流お兄ちゃんは『受け身型』なんだ。」

 

 

…受け身型?

 

 

「相手の攻撃を見た後に攻撃したりするって事。

実際今までの紀流お兄ちゃんの攻撃は、全部私が動くのを見てからだった。」

 

「…」

 

「良いと思うよ、受け身型。

…けど、もしフランが紀流お兄ちゃんよりも速く動けたら?

フランの攻撃を避けた紀流お兄ちゃんがフランに攻撃するよりも速く、

フランが二回目の攻撃を叩き込めるとしたら?」

 

「…受け身なんて出来ないな…」

 

「でしょ?」

 

 

俺の困り顔を見て満足したのか、フランは得意気にふんぞり返る。

…しかし受け身型受け身型って言われても、

今まで戦闘スタイルなんて特に意識してなかったんだけどな。

言われてみればそうだった気がするだけで。

 

 

「でね、フランは紀流お兄ちゃんよりも速く動けるように、トレーニングしたんだ。

勿論スピードは真っ先に鍛えたけど、それと同時に攻撃力とか防御力も鍛えたんだよ。

最終的に紅魔館の皆を余裕で倒せる位にまで強くなれれば良いなって思ってたんだけど、

フランの特訓に付き合ってる皆もフランに合わせて強くなってくのに、

長ーい間気がつかなくてねー…」

 

「…それに気づいたのが、今日の朝って訳か?」

 

「…今日じゃなくて昨日だもん…

お姉様に『そんな目標だったなら最初から隠すな!!!』って怒られたの覚えてるし。」

 

「で、その結果紅魔館の皆の戦闘力がぐーんと上がったって訳か。

いわゆる一種の『怪我の功名』だな。」

 

「…そう、そうだよね!

全く、お姉様ももう少し私に感謝してくれても良いのに…」

 

 

…いやいや、他人の我が儘に付き合わされるのが大っ嫌いそうなレミリアに限ってそれはない。

しかし姉然り妹しかり、この姉妹は周りを巻き込んで大騒ぎするのが好きだな…

咲夜とパチュリーの胃がマッハでやばそうである。

 

 

「これで分かった、紀流お兄ちゃん?

本気を出さないって事は、頑張って特訓した私と皆を馬鹿にしてるって事なんだよ?

だから本気出してっ!」

 

 

フランは頬を膨らませ、駄々っ子口調になる。

…不安要素が残ってる間は成るべく気は温存しておきたかったが、仕方無い。やるか。

 

 

「…そこまで言われちゃあ、本気にならざるを得ないな。」

 

「おっ、待ってましたー♪

えーっと何だっけ、『(スーパー)紀流』っていうのになれるんだよね!」

 

 

…何故知ってるし…

と思ったが、俺の戦闘スタイルはほぼ調べ尽くされてるんだったな…

ため息をつきつつ俺はゆっくりと上昇を始め、フランも俺を追って上昇してきた。

 

 

「知っているんなら話は早いな。

言っておくが、超紀流になった俺は相当強いぞ?」

 

「ふふふ、知ってるよ。

幻想郷を破壊しようとしたピンク髪のお化けを倒したんでしょ?」

 

「その情報はちとばかし間違ってるぞ。

西行妖を倒せたのは皆の元気あっての事で、俺一人じゃどうしようもなかったからな。」

 

「謙遜なんてしちゃ嫌だよ、紀流お兄ちゃん。

私が会った人達皆に『あの紀流お兄ちゃんにだけには手を出すな』って言わせる位なんだから、

もっと胸を張って強さをアピールしても良いと思うよ?」

 

「…酷い評価だな…

けど、あながち…」

 

 

俺は地上数十メートル付近まで到達した時点で一旦言葉を切り、目を閉じた後…

 

 

「間違っちゃあ…いないぜぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 

会話中に密かに溜めていた気を、一気に解き放った。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

解放された気は限りなく膨れ上がり、辺りを黄金色に染めていく。

 

 

「…あ…もう駄目…」

 

「わぁぁぁぁぁぁ!パチュリー様ぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「あぁ、もうっ!!!

どうせ割られるだろうとは思ってたけど、何もこんなに早く割る事無いでしょう!?」

 

「…お嬢様、まさか割られる事を前提に考えておられたのですか?」

 

「…いや、別にそういう訳じゃ…って咲夜、貴方は大丈夫なの?」

 

「私はあくまでもパチュリー様の作られた結界を補強しただけですので。」

 

「あらそう、それは良かっt…いや、良くないわ。

今すぐパチェを私のベッドに運ぶから、貴方も協力して。」

 

「いえ、お嬢様の手を煩わせずとm「パチェは私の親友なのよ?」かしこまりました。

しかし、図書館で無くて宜しいのですか?」

 

「気絶してる人を椅子に座らせるのは難儀でしょう?

さ、早く。」

 

「承知致しました。」

 

 

パチュリーと咲夜の結界を吹き飛ばし、大地を揺るがし、気は尚も広がっていく。

 

 

「おー、すっごいなぁ…」

 

 

フランは今すぐ飛びかかりたい衝動を抑え、紀流の変身を見守る。

その口元からは、隠しきれない笑みが漏れ出ている。

 

 

「だあっ!!!」

 

 

やがて、紀流は一際大きな声で吼える。

同時に辺りの気は一斉に収縮し、燃え盛る炎の様になって紀流の体を包み込む。

鋭く逆立った金髪を凄まじい気で揺らしながら、紀流はゆっくりと目を開いた。

 

 

「待たせたな。これがお前の見たがってた『超紀流』だ。」

 

「…お…おお…」

 

「…何だ、震えてるじゃないか。

わざわざ変身してやったんだ、今更戦意喪したなんt「凄ーい!格好いいぃぃぃぃぃぃ!!!」…」

 

「前までみたいな青い髪の毛もかっこよかったけど、やっぱり金髪が一番似合うね!

その髪の色なら、フランともお揃いだし!」

 

「それは良かったn「うーん、けど髪の毛ピンピンに跳ねてるね。触ったら痛そうだなぁ…

ねえねえ、咲夜に切ってもらったらどう?」…遠慮しておく。」

 

 

相当興奮した様子で喋り続けるフランに押されつつ、紀流は内心で驚いていた。

何せフランは自分の『見た目』にこそ言及しているが、

『迫力』や『威圧感』を感じている様には見えないからである。

 

 

「…まだ予想の範囲内、って事か?つくづく恐ろしいな…」

 

「え、何か言った?」

 

「いや、何でもない。

じゃあ早速だが、ちょっと本気で攻めさせてもらうぞ。」

 

「良いよー。元々フランはそれを楽しみにしてたんだからね!」

 

 

フランは軽い口調でそう言いつつ、羽根をぱたぱたと動かす。

…攻めてきてほしくて堪らないって顔だな、あれは。

 

じゃ、遠慮なく。

 

 

「ふっ!」

 

 

俺は全身に気をみなぎらせ、フランの真正面に一瞬で移動し。

 

 

「…え「はあっ!!!」きゃあ!?」

 

 

彼女の胴体に右手を添え、一気に気を放出した。

咄嗟に反応出来ずに吹き飛ばされたフラン目掛けて俺は飛び、

顔目掛けて肘鉄を容赦なく打ち込む。

 

 

「…むんっ!」

 

「お?」

 

 

しかしフランも黙って二撃目を貰うつもりは全く無いらしく、

目を大きく見開きつつも両腕を交差させ、危なげなく俺の肘鉄を防いだ。

…と思っていたのか?

 

 

「フン…」

 

 

俺はフランの腕に触れている左肘を基点とし、くるっと回転してフランの横に移動する。

 

 

「…へ?」

 

 

フランにしてみればいきなり俺が消えた様に見えたのだろう、一瞬だけ彼女の動きが止まる。

 

 

「喰らえやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

その隙を見逃さず、俺は両手を組み合わせて頭上に振り上げて気を込め、

おまけに自分の全体重も乗せつつ、フランの頭目掛けて叩き込んだ。

 

 

「いっぎぃ!?」

 

「まだまだぁ!!」

 

 

フランのうめき声に少しだけ心が痛んだが、

ここで心を痛めるのはフランを馬鹿にしているのと同じ事だと思い直し、

彼女を追って急降下しつつ右拳に気を溜め、

体勢を立て直そうとしているフランの腹目掛けて叩き込む。

 

 

「へぐっ…」

 

 

悶絶したフランの腹から右手を首へと移してむんずと掴み、

俺は更に降下のスピードを上げる。

ほんの前まで遥か下にあった地面は、あっという間に目と鼻の先にまで迫ってきた。

地面との距離が残り数メートルになった時点で、俺は再び右手に気を溜め…

 

 

「そらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

思いっきり右腕を振るってフランを投げ、地面に叩きつけた。

激突の衝撃で凄まじい量の土砂が舞い上がるが、

俺はその土砂よりも速く上昇して数十メートル程の高度にまで到達し、

遅れて上がってきた土砂を気合い砲で掻き消す。

 

 

「ぬん!」

 

 

俺は右手を地面に向かって突き出して掌に気を溜め、直径三十センチ程の青い気弾を作り出す。

やがて発射準備が完了したのを感覚で確認すると、

目を凝らしてフランの姿を隠しているであろう土煙が晴れるのを待つ。

フランがいるかいないかを確認して無駄撃ちを避けたいという気持ちも勿論理由としてあるが、

何よりも今は、フランの高速移動の正体を確かめたいという気持ち、

即ち『俺の攻撃で伸びていてほしい』と言う気持ちの方が強かった。

 

 

「…うぅ…」

 

 

やがて煙が晴れると、

先程フランが俺を叩きつけた際に生じたクレーターよりも更に大きなクレーターの中心で、

大の字になって倒れているフランの姿が見えてきた。

取り敢えず残像とかの類いでは無さそうだと分かり、少し緊張の糸が緩む。

だが、重要なのはここからだ。

 

 

「よし…」

 

 

俺は思いっきり息を吸い込んで肺を満たすと、

何とか上体を起こして周りを見回しているフラン目掛け…

 

 

「俺はここだぞ、フラァァァァァァァァァンッ!!!」

 

 

喉が枯れる勢いで叫び、注意を此方に向ける。

 

 

「!?……っ!?」

 

「喰らえ!!」

 

 

俺の声と俺の用意している気弾で二重に驚いたフランの顔が驚愕の表情で固定された、

正にその瞬間。

 

 

「宇撃『ビッグバンアタック』!!!」

 

 

俺は待機させておいた気弾を容赦なくフランに向けて放った。

青い気弾は高速で飛び、瞬く間にフランの眼前に迫る。

 

 

「…っうっ!」

 

 

フランはまだ、地べたに尻餅をついた体勢のままだ。

接触まで残り一メートルとなった今では、

立ち上がって避けるなんて事はとてもじゃ無いが出来ないだろう。

…唯一避けられる可能性があるとすれば、あの謎の高速移動を使った時ぐらいだ。

そして、俺はそれを期待していた。

 

 

「…さあ、お前の特訓の成果、見せてみろ。」

 

 

俺がそう呟くと同時に、フランの姿は爆発に呑まれ、視界から消える。

そのコンマ数秒後、俺は瞬時に後ろを向いて両腕を広げ…

 

 

「暗魂『ダークスピリッツ』!!」

 

「ぐうっ!?」

 

 

緑色のバリアを展開し、後ろに回り込んでいたフランの拳を弾き飛ばした。

体勢を崩したフランの脇腹目掛け、俺はすかさず追撃の蹴りを叩き込む。

 

 

「あぐっ!!」

 

「まだまだぁ!殺輪『キルドライバー』!!」

 

 

俺は両手を頭上に掲げて全力で気を込め、輪っか状の気弾を形成して直ぐ様放つ。

フランは既に数メートル程俺から離れていたが、

キルドライバーはあっという間にその距離を詰め、フランの眼前まで迫る。

 

 

「どうするフラン、俺のスペルの事は全て知ってるんだろ?

だったら、そいつを喰らうとどうなるかも知ってるよなぁ!?」

 

「うん、知ってるよ。

だから…」

 

 

フランは後退しつつ、不意に右手を開いた状態で前に突き出した。

一瞬、その掌に赤い光が瞬いたと思った、僅かに後。

 

 

「『壊す』。」

 

 

フランがきゅっと右手を握り締めると、キルドライバーは爆発し、消え去った。

…正確には『キルドライバーの手前の空間』が爆発した、というべきだろうか。

 

 

「…そういやお前の能力は『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』だったな。」

 

「うん、そうだよ。

けどこの能力は、紀流お兄ちゃんに直接には使えない。

紀流お兄ちゃんの能力は『相手の能力を無効化する程度の能力』だからね。」

 

「おうおう、博識なこって。」

 

「…けど、今みたいに紀流お兄ちゃんの攻撃を防ぐ事には使える。

後…」

 

 

再びフランは右手を開き、俺へと向け…

 

 

「こんな風にも。」

 

 

握り締めたかと思うと、俺とフランの間の空間が爆発した。

爆風でフランの姿が隠れた、

そう認識した時点でフランの気は既に爆風の向こうには感じられない。

…やばい、次はどこから飛び出てくるか全く分からん。

 

 

「…集中しろ…何処からか出てくるのは確実なんだ…

その瞬間、攻撃してくる時に放つ気さえ読めれば…」

 

「攻撃出来るの?」

 

 

フランの声が何処からか聞こえてきた、正にその瞬間。

 

 

「出来るさ。」

 

 

俺は右腕を右に突き出し、気弾を一発作り出して発射した。

丁度そこにはフランが現れた所であり…

 

 

「きゃあ!?」

 

 

流石に反応しきれなかったのか、まともに顔で喰らっていた。

 

 

「生憎だが、同じ戦法はそう何度も通じないぞ?」

 

「あーん、また顔に当てたー…」

 

「顔で受けたそっちが悪いんだ、俺は謝らん。」

 

 

煙の中から乱れた髪を整えながら現れたフランを見て、

俺はぶーたれてるわりには大したダメージになって無いなと呆れつつ、ふと違和感を覚えた。

…このフランは、何かおかしい。漠然とした感覚でしか無いが、何処かが変だ。

 

 

「あーあ、まだ高速移動の正体も謎のままだってのに、

又分かんない事が増えちゃたまんないよ…」

 

 

そう言って溜め息をつくと、顔をごしごし擦っていたフランが口を開いた。

 

 

「頭抱えるのはまだ早いよ、紀流お兄ちゃん。

私にはまだまだ沢山、紀流お兄ちゃん用の秘密の作戦があるんだよ?」

 

「…ははは、わざわざ俺の為にありがとう。」

 

「えへへ、お礼なんて良いよー。

その代わり、しっかり全部受け取ってね?」

 

「…はぁ…」

 

 

…こりゃあ、長い夜になりそうだな…

そんな事を思いながら特大の溜め息を一つ突き、

俺は笑いながら突っ込んできたフランを迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はっ!?」

 

「あ、起きた。パチェ、大丈夫?」

 

「…え、えぇ…ここどこ?」

 

「私の部屋よ。

咲夜にも感謝しておきなさい、貴方を運ぶのを手伝ってくれたんだから。」 

 

「…え、あ、ありがと…」

 

「仕事ですので。」

 

「…そう言えば、結界はどうなったの!?」

 

「…あー…

…咲夜、教えてあげて。」

 

「破壊されました。」

 

「…もう嫌…」

 

 

…戦いは続く。紀流とフランドールは互いの動きを見切り、いなし、戦っていく。

しかし一人の少女が泣き崩れた事だけは、二人共に戦いの終わりまで知る事は無かった。




果たして戦いの行方はどうなるのか。
フランの秘密の作戦とは何なのか。以下次回以降。
来年はもっとちゃんと投稿出来るはずです!もうしばらくお時間w(破壊)
感想、意見、アドバイス等々募集中です。


余談


投稿遅くなって本当にごめんなさいorz
もうDB超の第六宇宙編はとっくに終わって未来トランクス編も終わったってのに…
ヒットとか合体ザマスとかゴクウブラックとか全王様とか出てきてオラわくわくしてたz(ry
次のシリーズは宇宙サバイバル編。めっさ楽しみです。
では、良いお年を。


更に余談


・宇宙サバイバル編の第七宇宙の代表十人を見て

…何だモナカはいないのか…(おい)
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