万魔の主の魔物図鑑   作:Mr.ティン

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章間 第4話 ~夜光のマイフィールド紹介 北西部~北部~

 ~北西部~

 

 北西部は西部の砂漠から荒れ地やステップを経て草原へと変わっていく。

 僕たちはその地形の変化を上空から眺めていた。

 僕たち全員をその背にのせて飛ぶのは、九尾の狐としての姿を取り大型化したここのだ。

 イオシスの町に、今朝万魔殿からやってきてくれた。

 この僕のマイフィールド巡りの間は、パーティーの仲魔であるメンバーは自由時間としていたはずなのだけれど……

 

「主様の事が待ちきれなかったので」

 

 まぁ、そういう事らしい。

 無下にも出来ないので、皆で乗せてもらっている。

 

「この付近はあまり特徴が無いんですよね。元々町とかも設定していなくて、僕の万魔殿と山側の温泉以外は普通の草原程度しか無かったんです」

「町、あるように見えるんだがな」

 

 関屋さんの言うとおり、僕の居城である万魔殿のある小島から伸びる橋の本島側は立派な町になっている。

 リアルの四国で言う松山の付近だ。

 

「テイムしたモンスター達の内の人化できるタイプが、万魔殿傍に住みたいといつの間にか町を作ってたみたいで……」

「そ、そうか」

 

 多分、マイフィールド内の運営を亜神や大魔王達に委ねた結果の一つなのだろう。

 確か、町の名前は直球的にパンデモニウム・サイドと呼ばれているらしいと聞いた。

 

「パンデモニウム・サイドの町は規模も主様のマイフィールドの中では最大になりつつありますえ。近く首都的な機能も備えるのだとか」

 

 僕達を乗せて万魔殿へと飛ぶここのがそんなことも教えてくれる。

 ……いや待って。その話は初耳なんだけど? 

 

「主様は外に出られ過ぎていて、御自分の世界の事を、変化を余りに存じ上げぬご様子。その分を妾達が見聞きしております故ご安心を」

 

 ううむ、ここのにまでこう言われてしまうと、本当に今まで足元がお留守気味だったと実感してしまうなぁ。

 とはいえ、今ここで悩んでいても仕方ない。

 もう僕の居城である万魔殿は目の前なのだから。

 

 

 ~万魔殿~

 

 僕の居城である万魔殿は、マイフィールドの北西のはずれの小島にある。

 本島とはしっかりとした石造りの橋で結ばれていて、行き来には不自由がない。

 島の形は円形で、遠くから見ると有名なモンサンミッシェルを彷彿とさせるような作りになっている。

 僕達は、橋のたもとでここのから降りる。

 彼女はすぐに人化して、僕達を先導するように歩き始めた。

 城の入口では僕のパーティーの残りであるマリィやリムにゼルが出迎えてくれた。

 他にも、万魔殿内の管理を任せている蟻女の女中達や、警備を担う蜂女の衛兵が左右に並んで、一斉に最敬礼して来る。

 ちょっと仰々しすぎる気もするし、自由にしてもらっていいんだけどなぁ。

 

「なんだかんだでここに来るのは初めてだが、悪くない作りだ。ちょいと有名どころのデザインに引っ張られてる気もするがな」

「す、すげぇな。王国系マイフィールドはどこもこんな感じだとは聞くけどさ……」

「……夜光。オレッチはお前の事を見所あるやつだとは思っていたが、間違ってなかったぜ。あのメイド服のデザインに、衛兵の鎧の機能的かつ理想的なフォルム……ちょっと今度じっくり話し合おうじゃぁないか」

 

 ホーリィさん以外は万魔殿に来るのは初めてという事で、それぞれに感想を漏らしている。

 関屋さんの指摘はまさしくその通りで、万魔殿は実在の有名な城を色々と参考にしているのをあっさり見抜かれてしまっている。

 特に外見もモンサンミッシェルっぽく仕上げたせいで、万魔殿と呼ぶには禍々しさが足りないかなと思う。

 とはいえ城内にはパーティーメンバーの眷属である吸血鬼とか悪魔とか魔獣とか竜人等がひしめいているので、名前負けはしていないのだが。

 ちなみに、ライリーさんとはがっしりと握手を交わした。

 メルティさんの古典的メイド服といい、魔像といい、どうにもライリーさんと僕の志向は近いものを感じる。

 

「居城と言っても、本当に住むのを優先したつくりなので、大したものをお見せできないのですけどね」

「いやいや、城ってだけでもすごいぜ。俺んとこの部屋と竜舎だけとかに比べたらよっぽど住みやすそうだしな」

 

 アルベルトさんはそう言うが、他の王国系プレイヤーの大宮殿などに比べたら、僕の万魔殿は楚々としたものだ。

 一応此処には僕の『マイルーム』があるし、同盟メンバーなら転移先に指定できるようにもしてある。

 とはいえ、それ以外の機能は限定的だ。

 ここはパーティーメンバー及びその眷属の住居としての機能優先で、特別な施設は数えるほどしかない。

 マイルームの傍に併設した個人的なアイテム保管庫と、召喚用の魔法陣を設置した部屋くらいだろうか? 

 

「後は……僕のギガイアスの整備エリア兼魔像工房が地下にある位ですよ」

「ああ、地下に工房があるのか。あのデカブツを手入れしてるのは別の場所かと思ったぞ」

「まかりなりにも仲間を野ざらしにはしたくないですし、50m級魔像用の転移魔法陣も設置する都合と、整備の人員の集約を考えると、本拠地の地下が最適なんですよね……」

「まぁ、気持ちはわかる」

 

 いまもギガイアスは蟻女のメイドたちの入念なメンテナンスを受けている。

 ライリーさんの魔像との一戦は、勝利こそ収めたものの、ダメージも大きかったのだ。

 

 さて、あまり見る場所は無い万魔殿の案内はこれくらいにして、先へ進もう。

 今度は北部エリアだ。

 

 

 ~北部エリア~

 

 僕達は、万魔殿を離れて北部エリアを東進している。

 僕らを乗せて飛ぶのは大型化したゼルだ。

 以前乗せてもらったときは羽ばたきの際の酷い揺れで酔ってしまったものだが、人を乗せるのに慣れたのか非常に安定している。

 

「見ての通り、北部は北西と北東の岬を挟んだ大きな湾になっています。その中の島々が北部の大きな特徴ですね」

 

 このマイフィールドがリアルの四国の地形を参考にしている以上、北部の海は瀬戸内海をイメージしている。

 つまり、大小の島々が沖に浮かんでいるのだ。

 

「この島々には、凶暴故に本島に配置できないようなモンスターや、逆にか弱すぎて外敵から身を守るのが困難なモンスター等を隔離や保護の目的で配置しています」

「ああ、そういうパターンもあるのか」

「テイムしても見境のない獣とかは居るだろうしなぁ」

 

 島ごとに気候を設定可能であるため、特殊な環境が必要なモンスターの設置にも向くのだ。

 食料アイテムをPOPする設定にしておけば飢えることもなく、わざわざ島の外に飛び出すようなこともない。

 

「あと、本島側には北部の中心にして宗教系NPCや学術系NPC達を配置した神殿都市クビーラもあります。そちらにも寄っておきましょう」

 

 僕は遠目からでもはっきりとわかる神殿群が並んだ町へ向かうように、ゼルを促した。

 

 

 ~神殿都市クビーラ~

 

 中央部から広がる山地、その北部側の一角に、その町はある。

 大通りには魔術師の工房が並び、それが山側に向かうにつれて神殿絡みのモノへと変わり、最後には七曜の神々の神殿へと変わる。

 その威容はまさしく神殿都市だ。

 

「ここが、僕のマイフィールドの魔術と奇跡面の拠点、クビーラですね。リアルの四国で言えば、金毘羅宮が在る辺りになります」

「神殿がいっぱいよね~うちのマイフィールドも大体こんなだけど」

「ホーリィさんの神聖都市に比べると、魔術系NPCやモンスターの配置もしています。僕の手持ちの蔵書もここの図書館で管理してますね」

 

 神聖系モンスターや悪魔系モンスターは、それぞれ別レイヤー扱いの天界や魔界に配置してある。

 しかし同類ながら人間に近いNPCやモンスターの場合、直接それらの亜世界に配置するのはダメージを受けたりとデメリットも多い。

 その為こういう町を作り上げたのだ。

 実際神殿では篤く七曜神に祈りがささげられ、また地下では魔術を司るとされる七大魔王に祈りがささげられている。

 

「それなのですが、ご主人様。実は、少しお伝えしなければいけないことが……」

「ええ、その、なんというか……」

 

 うん? マリィとリムが何か言いたげだ。

 視線を追うと、山の方の神殿に、見慣れない新しい神殿がある。

 ええと、アレは何だろう? 見覚えがある像が建てられているんだけど? 

 どう見ても、鏡の中で見る僕のこのアバターの姿だ。

 それを見て、ホーリィさんやライリーさんは大爆笑してるし、関屋さんは造りをしげしげと眺めてるし、アルベルトさんは純粋に引いている。

 いや待ってアルベルトさん、ちょっと色々こっちも混乱してるのでその目は勘弁してほしいのだけど!? 

 

「アレは、最近ミロードを崇めるために建てられた神殿ですの」

「僕って崇められるの?」

「この『世界』では、七曜神よりも上の存在なのは確かですもの。こうなるのも無理ないかと」

「私たちが気付いた時にはあのように……」

 

 二人は、本心では誇らしそうだけれど、僕の反応も想定しているのか何とも複雑な表情をしている。

 いや、割と放置気味でこの世界の運営を他人任せにしている身で、崇められるとか逆に羞恥心を煽られて困ってしまう。

 マリィとリムは魔王と闇司祭と言う事でこの町でも特別な存在だ。

 二人に頼めば、もう少し大人しめの何か程度に代えてもらえるかもしれない。

 

「……二人とも、このみんなへの案内が終わったら相談させてね……」

 

 なんだかどっと疲れた気もするけれど、まだこの先一番の難所が待ち構えているのだから、へたり込むわけにもいかない。

 何しろ、次は本島の中央部なのだ。

 そこは伝説級の巣。

 数多の竜族と巨人族、そして天界と魔界へとそれぞれ続く『門』が開いている場所でもあるのだ。

 

 ~中央部へ~

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