ひろプリに野良猫系キャラを入れてみた   作:獅子河馬ブウ

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第104話 絵本コンテストへの道

先日梳杉町での1人旅を終えてソラシド市に帰ってきたらんこ。彼女はソラやましろ達と楽しい日常生活を再び過ごし、早くも1週間が経過する。今日もらんこは虹ヶ丘家に遊びに来ている───

 

「うーん…何色のリップが良いかしら?」

 

──かと思いきや訪れておらずPretty Holicにやってきて幾つかの化粧品を手にとって見比べていたのだ。

何故、彼女が1人でこの店に来ているのか。理由は先日の旅行にて出会った恋太郎とその彼女達のものすげえイチャラブ(そのまんまの意味)を目の当たりにし、次にひかると会った時に自分も彼等の様にイチャイチャしたいと思ったらんこ。その為化粧をしてひかるに褒めて貰おうと考えているのだ。

そして、自身に合いそうな新商品のリップを見つけて手に取って暫く眺める。

 

(もし…このリップを塗ったらひかるはなんて言ってくれるのかしら?)

 

らんこの脳内には目の前のリップを塗ってひかるから可愛いと褒められる事を妄想するも内容が結構甘い雰囲気だった為、彼女は恥ずかしがって次第に顔が赤く染まる。そして、同時に脳内にまたいつもの声が聞こえてきた。

 

『メロメロ夢CHU♡』

 

誰だコイツ?

 

今回は義理の姉が大好き過ぎる地雷系アイドルの台詞だったのだが、今のらんこはそれよりもすぐに言いたい事があったため声を上げる。

 

「べ、別に可愛いなんて思ってないんだからね!!!」

 

「も、申し訳ありません…!」

 

思わず照れ隠しで言ってしまった発言にその後ろで聞いていた店員は申し訳なさそうな顔をしてらんこに謝罪をする。

取り敢えず一本試しに使ってみようと会計しに行こうとすると、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「あれ、らんこさん?」

 

「あっ、らんこちゃんだ」

 

「にゃんこ〜」

 

「こんにちはらんこさん」

 

「こんな所で会うなんて奇遇だな」

 

「ソラ、ましろ達…何であんた達も此処に?」

 

振り返ると其処には虹ヶ丘家の面々が店に入ってきたが珍しくあげはの姿は見当たらなかった。今日は実習日はなく休日だから普段なら一緒に皆と一緒にPretty Holicへ来ているものだと思っていたのである。

 

「実はあげはちゃんが最近此処でバイトを始めたから様子を見にきたの」

 

「あげは姉さんが此処でバイトを?」

 

今あげはは実習をしているにも関わらず虹ヶ丘家の家事の他にバイトまで初めたと聞かされ、そんな掛け持ちで体力的に大丈夫かと心配していると突然背後から何者かがらんこに抱き着いた。

 

「うひゃっ!?な、何っ!?」

 

「らんこちゃん私だよ〜♪」

 

思わず情けない声が漏れ、慌てて振り返ると其処にはあげはが立っていた。その姿は普段と異なり、Pretty Holicのエプロンを着込んでいたのだ。

 

「あ、あげは姉さん急に後ろから抱きついてこないでよ!」

 

「ごめんごめん。相変わらずの可愛さだったからつい抱きついちゃった。所でさっきから其処の棚を見ていたけどどうしたの?」

 

「べ、別に大した事はないわよ」

 

どうやらさっきまでリップを真剣に見ていた所を見られていた様でらんこは自身の考えを悟られぬ様に誤魔化そうとする。対してあげははニヤニヤとした表情を浮かべる。

 

「さてはひかる君を誘惑してエッチなことをするのが目的なんでしょ?」

 

「「「エッ!?」」」

 

「えっち?」

 

「あ、あげはさん!?」

 

「ちょっ!な、何を言い出すのよ!?」

 

突然のぶっ飛んだ発言にらんことソラ達(エルを除く)は思わず動揺してしまう。

 

「いやいやらんこちゃん達くらいの女の子ってそう言うのを妄想するのって当たり前だから恥ずかしがる事はないよ」

 

「だ、だから違うてばっ!!!」

 

暖かい眼差しで私は分かっているぞみたいな理解者面してらんこを宥めようとするあげは、対してらんこはあげはの言葉を否定する。

 

「あ、あげはさんのエッチって、何を言っているんですか!?」

 

「そ、そうだよ!Pretty Holicはコスメを取り扱っているけどそう言う如何わしい事を目的とするお店じゃないから!」

 

「そうだ!それに私もらんことエッチがしたいぞーッ!!!」

 

「ベリィベリーさんはどさくさに紛れてなに自分の欲望曝け出しているんですか!?」

 

あげはの一言でらんこ達の会話がヒートアップしていくとその騒がしさが気になったのかあげはと同じエプロンを着た女性が彼女達に近づく。

 

「あげはちゃん。なんだか声が大きいけどどうしたの?」

 

「あ、菜摘さんごめんなさい。友達がやってきたからちょっとはしゃいじゃって」

 

「アレをはしゃいだの一言で済ませるの?」

 

店内で騒がしくしてしまった事に菜摘と呼ばれた女性に謝罪するあげは。対して菜摘は「ううん、大丈夫よ」と言ってくれて許すとましろに視線を向ける。

 

「あ、もしかして貴女がましろんさん?あげはちゃんが言っていた友達の?」

 

「え、ましろんさん……あ、はい、虹ヶ丘ましろです…あの、貴女は?」

 

自分をましろんさんと何ともややこしい呼び方をする菜摘に一瞬呆気にとられる中、自分がましろと認めると恐る恐る菜摘が何者かと尋ねるとあげはが代わりに紹介する。

 

「この人は菜摘さん、私のバイトの先輩で普段は美大に通う大学生…ですよね?」

 

「うん、絵の勉強をしているの。あっ、後ましろんさんってあげはちゃんから聞いた話によればPretty Holicが好きなんだよね?」

 

「はい、Pretty Holicは大好きで私の癒しなんです!」

 

菜摘の質問にましろは強く返事をする。それを聞いた菜摘は嬉しそうな顔を浮かべる。

 

「そう言ってくれると私も嬉しいよ。あっ、そうだ。ましろんさん、Pretty Holicが好きな貴女に見込んで相談があるんだけど良いかな?」

 

「え、相談?」

 

詳しい事はわからないが取り敢えずましろは返事をすると菜摘は一同を連れて店の中にあるお試しコーナーへ案内された。菜摘は其処にあるコスメが置かれた棚の奥に飾られている海の中を描いた絵を見せる。

 

「うわぁ、綺麗…!」

 

「見事な海の絵ね…」

 

まるで本物と見間違える程の美しい海の中の景色を再現した絵にましろとらんこは思わず感想を口に漏らす。

 

「ふふっ、ありがとね。実はその絵は私が描いた絵なの」

 

「えっ、これを菜摘さんが!?」

 

「すごい…なんて綺麗な絵なんですか!?」

 

「きれー!」

 

目の前の絵を菜摘が描いたと聞いてソラ達も驚きの表情を見せる。ツバサも絵に関しては画家である父の絵を何度も見た事がある為、その父に匹敵する絵の腕前に感心を覚える。

そして、ベリィベリーも菜摘の描いた絵に感想を呟く。

 

「ああ、こんな見事な絵はスカイランドでも中々見かけないぞ」

 

「スカイ…ランド?」

 

『え?……ああっ!!!』

 

あまりの絵の凄さについスカイランドの事を口にしてしまったベリィベリーに一同は動揺を見せるが、その中でらんこは軽く咳払いをして軽く脇腹を突っつきながらベリィベリーに声をかける。

 

「何言っているのよ。あんたの出身はスカンディナビア半島でしょ。スカンディナビア半島」

 

「え…あっ、そ、そう…だった。いやぁ、この国の言語は難しいなぁ。あっ、ははは…!」

 

かつて学校に転入してきたばかりのソラの様にらんこはベリィベリーにフォローを入れるとベリィベリーもらんこの意図に気づいて彼女に合わせて誤魔化す。そんな様子に菜摘もキョトンとしながらも「そうなんだ…」と納得する。

 

「そ、それで菜摘さんは私に相談したい事ってなんですか?」

 

「ああ、実はこの棚に何か物足りない気がしてPretty Holicファンのましろんさんなら何かいいアイデアがあるかなと思って」

 

話題を逸らそうと考えたましろは先程菜摘が自分と相談したい事を思い出し、話しかけると菜摘も彼女のファンとしての視点で目の前の棚に何が足りないのか聞くとましろはその棚をじっと眺める。

 

「…菜摘さんこの棚を外してもいいですか?」

 

「ええ、いいけど」

 

ましろの提案に菜摘は応じて棚に乗っかっていたコスメを片付けて棚板を外すと海の中の絵の全体が露わになる。

 

「改めて見て思ったけどこの海の絵は本当に綺麗ですね。まるで人魚が住んでいそう」

 

「人魚…あっ、そうだ!皆んなちょっと待ってて」

 

何か閃いたのか菜摘は自身の絵を持って店の奥へと行ってしまう。その場に残された一同は菜摘は何をするのかと考えているとソラは気になる事を口に出す。

 

「所でさっき人魚って言ってましたが、人魚って何ですか?」

 

「ソラちゃん人魚を知らないの?」

 

ソラが人魚を知らないことにましろは驚いているとツバサも恐る恐る手を上げる。

 

「僕も人魚については知りませんが、魚の名前が付いているから恐らく海の生き物かもしれませんが最初に人が付いているので手足が生えた魚のことなんですかね?」

 

どうやらスカイランドには人魚が存在しないもしくは伝承が無いようでソラは知らない様だ。だが、同じ世界出身のベリィベリーは何故か得意気な表情を浮かべている。

 

「フッ、私は知っているぞ。この前食べた餡子が入ったフワフワでモチモチしたお菓子のことだな」

 

「ああ、あのヤーキターイに似たお菓子の事ですか」

 

「アレは美味しかったですよね」

 

ベリィベリー達は人魚をお菓子か何かだと勘違いしている様子にらんこ達は思わず苦笑いを浮かべる。それに気づいた3人は「え、違うの?」と言わんばかりの顔を浮かべる。

 

「それは人形焼きよ。人魚っていうのは上半身が人間で下半身が魚になっている生き物の事よ」

 

「え、そんな生き物が存在しているんですか!?」

 

上半身が人間で下半身が魚と聞いて鮭が好きなソラにとってその様な想像しづらい生き物が存在しているのかと驚きを露わにする。同時にソラは普段好物の鮭は切り身しか見た事がない。もしかして、鮭はその人魚なのではと嫌な事を想像してしまう。

 

「ううん、人魚は空想上の生き物だよ」

 

「え、存在しないのか人魚って!?」

 

ましろの口から人魚はいない事を知らされ思わず声を荒げてしまうベリィベリー。先程ましろが絵を見ながら人魚の存在を示唆する様な発言をしていた事から存在しているとばかり思っていたのだが、それが存在しないことに驚きだ。

 

「ま、まぁ、冷静に考えてみたら上半身が人間で下半身が魚である生き物が実在している訳ないですよね。存在がファンタジー過ぎますしね」

 

「少年、この世界じゃ人が鳥になる存在も十分ファンタジーな存在だと思うよ」

 

ツバサの発言にあげはは思わずツッコミを入れてしまう。それから一同は談話して数分間過ごしていると菜摘が戻ってきて絵を元の位置に飾る。しかし、その絵は先程と異なり中心にはピンクの髪に頭に王冠を乗せた女の人魚が描かれておりその姿から見て思うことはこの綺麗な海の生き物から慕われている人魚姫だろう。

 

『もっと褒めても良いのよ?』

 

誰だこいつ?

 

人魚の絵を眺めていたら相変わらずらんこの脳内から聞こえてきた知らない少女の声、しかし今回の場合は絵の人魚が喋った様に錯覚する。というかドヤ顔をしながら喋った気がする。

 

「これ凄く良い!新作コスメを使ったら人魚になれそうって感じする!」

 

「うん、ありがとうねあげはちゃん」

 

あげはから好評の声を貰えた事に描いた菜摘は嬉しそうにお礼の言葉を送る。

一方でソラ達は絵ではあるものの初めて見る人魚を食い付くように見つめていた。

 

「それにしてもこれが人魚ですか…綺麗ですね」

 

「きれー」

 

「ええ、正に人魚姫ですね」

 

「空想の生き物とはいえこんな珍妙な生き物がいるとはな」

 

人魚は実在しないがその絵に描かれた人魚は海の中でも反射する様に描かれた髪と下半身の鱗はどれも美しくスカイランド組の心を感動させていた。

 

「ねぇ、菜摘さん。この絵の人魚って何かのアニメや漫画のキャラをモチーフにしたの?」

 

あまりに早い時間でクオリティの高い人魚の絵を描いたことかららんこの言うように何処かのアニメ又は漫画のキャラをモチーフにしたのかと推測する。

 

「ううん、違うの。この人魚はアニメや漫画のキャラじゃないのよ」

 

「それじゃあ想像して描いたんですか?」

 

自分の想像した物をそのまま絵として再現したと思ったましろは流石美大の学生と尊敬の眼差しを向ける。

 

「それも違うの。実はこの絵に描かれた人魚は私が前に見た人魚を再現するつもりで描いたのよ」

 

『…え?』

 

「前に…見た…?」

 

前に見たと聞いて一同は目を丸くする。それは一体どういう事なのだろうか、前に見たというのは実際に本物の人魚を見たのかと一瞬考えた。しかし、人魚は空想上の生き物だと思い出しすぐにその考えは否定する。

 

「あ、ああ…よく水族館とかでやる人魚ショーに出てくる人魚の事をいっているんですか」

 

「ああ、それね」

 

ましろの言葉にあげは納得する。水族館でも実際に数多の魚がいる大きな水槽にて、人魚の格好をしたスタッフがその中を本物の様に泳ぐ物がある。菜摘の言う人魚はその事を指しているのかと考えれば何もおかしくはなかった。

 

「違うよ。私は本物の人魚を見た事があるの」

 

「ほ、本物を見たって!?」

 

「菜摘さんそれってどういう事!?」

 

水族館のショーではなく本物の人魚を見たと言う菜摘に一同は詳しく問い詰める。対して菜摘「ふふふっ」と笑みを溢した。

 

「実はね。去年の夏に私は偶々人魚を見たのよ」

 

「それってどんな時、いや…どこで見たんだ」

 

去年見たと聞いて一同は興味津々に菜摘を見つめて、彼女も自身が体験した去年の出来事を話し出す。

 

──────────

 

それは去年の夏、美大生の夏休みの間に学校から出た夏に相応しい絵を描くという課題を出されたのだが、あまり上手く行かず行き詰まっていた。

そんな時、気分転換で彼女はとある島でスクーバダイビング体験をするツアーに参加する事になった。住み慣れた都会から離れてその島の雰囲気や住んでる人の賑わい、更には美しい青い海の景色に菜摘はそれまで抱えていた課題のストレスが発散されていくのだ。

そしてそれから数時間が経過し菜摘は島の高台から夕陽が海に沈む光景を眺めていると突然地震が起こり、菜摘は津波が起こる可能性を考えて慌てて高台へと避難した。それから夕陽が沈み満月が海から浮かび上がるまで何度か地震が続きそれからピタリと止むと、海から何かが飛び出した。

 

─バシャン!!!

 

『っ!あ、あれって…!?」

 

高台の下に広がる森から何故か聞こえてきた水飛沫の音に菜摘は咄嗟にその方向を見ると其処には月を背に高く飛び上がる。月光に反射し美しいピンク色の髪とまるで宝石と思わせる水色の鱗の魚の様な下半身。彼女は自身の目の前を飛ぶのは御伽話に出てくる人魚だと理解したのだ。

そして翌日その島の住人から聞いた話によれば今いる島…南乃島には満月の夜に現れる森の人魚という伝承が残っていたそうだ。

 

──────────

 

「…それが去年の夏に私が体験した事よ」

 

「凄い…!」

 

「そんな…事が…!」

 

去年の夏に菜摘が体験した不思議な出来事にらんこ達は最後まで口を開かず聞き入ってしまってた。

 

「菜摘さんその時の写真はないの?」

 

「あるにはあるんだけど…」

 

そう言うと自身のスマホを取り出す菜摘だが何やら彼女の表情はあまりよろしく無く、一同にその時撮影した写真を全員に見えるようにするがそこに写っている写真は手元が震えていたのか少々ピンぼけしていた。しかし、確かに月を背にして宙を飛ぶ人魚が存在していた。

 

「ちょっと慌てて撮っちゃったから綺麗じゃないけどね」

 

「いや、これで十分ですよ。と言うかこれが人魚なの…なんて綺麗」

 

「凄い…これが本物の人魚!」

 

「菜摘さんの絵に描かれているのとそっくりです!」

 

「うん、本当にそっくりだよ。絵に描かれている人魚は写真よりはやや大人びさせてる。だから実際の人魚はましろん達と同じ子供っぽい姿だったけど綺麗だったわよ」

 

写真に写る人魚にらんことましろとソラ、そしてあげはは興奮しながら見つめる。空想上の存在かと思われていた人魚が本当に実在していたなんて興奮するのも無理はなかった。

 

「改めて見ますが菜摘さんの見た人魚も素晴らしいですがそれ以上にその人魚を元に描いた人魚の絵はより鮮麗されていてとても良いですよ」

 

「ああ、あげはが言ったように写真の方は子供っぽいがそれが大人になってより美しさがあって海の姫と言われても何ら違和感を感じさせないな」

 

「皆んなありがとうね。そう言って貰えると絵本を描く意欲が湧き上がってくるよ」

 

「絵本ですか?」

 

菜摘の言った絵本という言葉にましろは思わず反応する。すると菜摘は自身の描いた絵の隣の壁に指を差す。其処には"ソラシド市・みんなの絵本コンテスト"と描かれたポスターが貼られてあった。

 

「うん、あれに挑戦しようと思っているんだ」

 

「へぇ…自分の描いた絵本を出すのね。中々面白そうね」

 

そのコンテストには何人が参加するかは知らないが、其処に出される絵本は世間で有名な桃太郎や白雪姫などの名のある作品みたいに面白い絵本が出てくるのだろう。

 

「私は絵に自信があるけど、肝心なストーリーは中々思いつかなくてね…あ、そうだ。ましろんさんも参加してみたら?」

 

「え、私がですか!?」

 

菜摘から絵本コンテストに参加しないかと誘われたましろは動揺を見せる。

 

「へぇ、面白そうじゃん!ましろん!」

 

「私も良いと思いますよましろさん!ましろさんはエルちゃんを喜ばせているんですからきっと素晴らしい絵本を作れますよ」

 

「え…ええ……じゃ、じゃあ…やってみよう…かなぁ〜…」

 

周りに押される形でましろは自身もコンテストに参加しようと考えるが、そんなましろにらんこは声を掛ける。

 

「ましろ、別に強制はしてないわよ。嫌なら嫌で良いわよ」

 

「らんこちゃん…ううん、これは私が決めた事だからちゃんと頑張って絵本を作ってコンテストに応募してみるよ!」

 

「ま、ましろ?」

 

普段のましろならこういう目立つような自分程ではないものの苦手な筈なのに珍しく参加する意欲を見せた事にらんこは困惑の表情を浮かべる。取り敢えずましろがコンテストに参加する事を決めた為、一同(バイトのあげはを除く)は絵本作りに必要な道具を買いに行く為、Pretty Holicを出てホームセンターに向かうのであった。

尚、余談ではあるが店を出る前にベリィベリーが緑髪の女子を誘惑出来るコスメは無いかと菜摘に相談して困らせていた事は秘密だ。

 

─────────

 

それからホームセンターに向かった一同は絵本作りに必要な道具とついでにエルの遊び道具も購入すると近くの公園にやってきた。

エルは早速買ったばかりの遊び道具を使って砂場で遊び始め、そんなエルにソラとツバサが付き添う。ベリィベリーは近くのコンビニで人数分のジュースを買いに行った。

そしてましろは砂場の近くにあるベンチに腰掛けて絵本作りを始め、らんこもましろの隣に座り砂場で遊ぶ3人の姿を眺めるのであった。

 

「ねぇ、らんこちゃんは遊ばなくて良いの?」

 

絵本を作るのはましろである為、らんこもエル達と一緒に遊んでくる事を誘ったが彼女はそれを拒否する。

 

「いや、私は良いわ。だってあの砂場に私が混ざったりしたら他に砂場で遊ぶ子のスペースが減っちゃうでしょ」

 

らんことしては自分が混ざる事でエル達以外にも遊ぶ子供達が満足に遊べない事を配慮してベンチに座る事を選んだ様だ。

 

「ならさ、私の描いた絵本のシナリオを見てくれない?」

 

「私が?」

 

エル達と遊べない分自分の絵本作りの作業に手伝って欲しいと提案するましろ。対してらんこは自分が絵本作りに手を貸して良いのか疑問を浮かべる。

 

「うん、らんこちゃんって物事に対して真面目だから私の描くシナリオに修正点とか上げてくれそうだしね」

 

「な、何だか恥ずかしいわね」

 

ましろが自分を評価してくれる事にらんこは照れる。確かにらんこはこれまで相手に対して友達であろうとも忖度無く言いたい事をはっきりと言ってきた。ましろはそんならんこの公平さに自分の描くシナリオが客観的にどの様なものか判断して欲しいのだ。

 

「言っとくけど、私は思った事を素直に言うから後悔しないでよ」

 

「うん、わかってるよ。取り敢えず今描けた所まで見て修正箇所を幾つかあげてほしいの」

 

らんこが自分に協力してくれる事を察したましろはまだ未完成品であるものの自身が書いたシナリオの紙を渡す。対してらんこはその紙を受け取るとチラッと内容を覗く。

 

「…全体的に駄目ね。没よ」

 

「早っ!?まだ5秒も見てないのに!?」

 

一瞬で読み終えるだけでなく没と言われた事にましろの頭にはガーンというショックの音が響き渡り動揺を見せる。

 

「ど、何処がダメだったの!?」

 

「何処も何もさっき言った通り全部よ。このシナリオってただ色々と聞いた事ある話を詰め込み過ぎて何を伝えたいのか全くわからないわよ」

 

ましろの書いたシナリオには桃太郎や白雪姫、一寸法師などの数ある名作の内容をごちゃ混ぜにした様な物になっており、最終的には巨悪を倒す為それぞれの絵本の物語の主人公達が時に争い協力する。…大乱闘絵本ブラザーズと言う話になっているのだが、これでは誰が主役で何を伝えたいのか全く読者側からは伝わって来ない。…いや、一部の人間には伝わりそうだが兎に角無茶苦茶な話なのだ。

 

「例えるならあんたの書いたシナリオはかけ蕎麦に肉と天ぷら、かき揚げ、天かす、コロッケ、温玉をトッピングさせた様な物なのよ」

 

「何その例えは!?でも、何となく理解できちゃうのが不思議!?」

 

何故自身のシナリオをかけ蕎麦に例えたのかはわからないが何と無くらんこの伝えたい意味がましろには理解出来てしまったのだ。かけ蕎麦はあくまでもメインは蕎麦。トッピングはあくまで蕎麦を補助する役割だ。つまり話の土台である蕎麦に色々とトッピングした(盛り過ぎた)結果何が主役なのかわからないのだ。

 

「ましろの想像力は大した物だけど欲張り過ぎってのは良くないわ。基本的に絵本を見るのはエルの様な小さい子供なんだからテーマを一つに絞りなさい」

 

「うう…確かにその通りだよ」

 

ぐうの音も出ない言葉にましろは反省せざるを得なかった。確かにらんこの言う通りこれは子供に見せる絵本だ。それなのに子供の事を配慮せず安易に有名な絵本のいい所ばかりを盛りに盛った内容は子供達に理解するのは難しい。

兎に角ましろはアドバイスを聞いて一からやり直そうと新たにスケッチブックのページを開くと真剣な表情でシナリオを書こうとするが、中々思い浮かばず頭を抱えて悩み出す。そんなましろの姿を見てらんこは彼女に疑問を投げる。

 

「ねぇ、今更だけどどうして急に絵本を作りたいなんて思ったの?」

 

以前体育祭の種目決めではましろはソラにリレー選手に一緒になって欲しいと誘われた際は最初は断ったが、何やかんでリレー選手になった。それなのに先程の絵本コンテストでは普段引っ込み思案なましろが珍しくやる気を見せた事が今でも不思議であったのだ。

 

「実は前にゼインに言われた事が頭から離れなくて…」

 

「彼奴に言われた事…ですって?」

 

別世界からやってゼインの名を出された事にらんこは物凄く嫌な顔を浮かべる。しかし、取り敢えずましろの話を最後まで聞こうと耳を傾けた。

 

「ほら、前に保育園の時に私の輝きは世界を照らす優しい光。それさえあれば世界から悪意が無くなり、争いも消えて永遠の平和を作ることが出来るって言ってたでしょ」

 

「そういえばそんな事言ってたわね」

 

正直ゼインの意見を同意する様で癪ではあるものの、ましろの優しさには普通の人とは違う何かを感じさせている。実際過去に彼女の優しさによって自分が救われた事がある為、納得する部分があるのだ。

 

「正直あんな事を言われてピンと来ないの。私の様なこれと言って大きな夢がない人間が世界を平和に出来る…なんて今でも信じられない。でも最近エルちゃんに絵本を読み聞かせをする度にエルちゃんが笑顔を見せてくれて、更にはらんこちゃんがこの前くれたお土産の絵本を読み聞かせたらエルちゃんも物凄く喜んでいたの。だから私も今回やるコンテストで私も子供や大人も幸せになれる様な絵本を描けたら良いなと思って…」

 

「…ましろ」

 

今回のコンテストに参加する理由らんこは考えさせられた。ましろは以前夢は無いと言ってた。それは自分と同じだ。らんこは自身の夢はそのうち思いつくだろうと楽観的に考えていたがましろはしっかりと自身の夢…夢になるきっかけについて考えていたのだ。

 

「でも、やっぱり素人の私なんかが絵本なんて描ける訳ないy「そんな事ない!」ら、らんこちゃん?」

 

突然声を荒げたらんこにましろは驚きの表情を浮かべる。対してらんこはましろを真剣な表情を見つめる。

 

「確かに絵本作りは大変よ。絵やシナリオを作るのも一苦労すると思うわ。でも、絵本を作る事を決めたのは他ならぬましろ自身よ。それにましろは色んな人を幸せに出来る才能を持っているのよ。現にましろはソラや皆んなから常に日頃から感謝されているのよ。それは貴女のお陰で皆んな幸せになっている証拠よ」

 

「皆んな幸せに…」

 

らんこの言葉を聞いてましろは脳裏に家での生活にソラ達から常日頃感謝されている事を思い出すと胸がほんのりと温かくなった。

 

「あ、勿論私も感謝している事を忘れないでよね」

 

「ふふ、勿論だよ」

 

先程まで絵本を描く自信を無くしかけていたましろであったがらんこの言葉に再び自身の絵本を描く意欲が再燃する。

 

「よし、決めたよ!私絶対色んな人が読んで幸せになれる絵本を描いてみせるよ!」

 

「その意気よ。まぁ、私も暇だから最後まで付き合うわよ」

 

ましろが改めて絵本を描く意思を見せた事にらんこは笑みを溢しつつ彼女に出来る限り協力しようと考えたのだが、何やら砂場の方が騒がしくなっていた。

 

「あれ、どうしたんだろう」

 

「何かあったのかしら?」

 

砂場の方から何やらソラ達の困った声が聞こえてきた為、2人は絵本作りを一旦中断するとソラ達の元へ向かうのであった。

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